今日も今日とてアストラルは仕事中。  
穂波に魔法知識をスパルタで教えられているいつきの元に、  
棒付きキャンディを咥えたみかんがとてとてと歩いてきた。  
その手には包装紙に包まれた新しい飴を持っている。  
 
「おにーちゃんしゃちょー、お疲れ様。アメあげるね」  
 
唇の間から延びた棒をぴこぴこさせながら、器用に喋るみかん。  
ぴりぴりと包装紙を破いていく可愛らしい姿に、いつきが笑顔を返す。  
 
「ありがとう、みかんちゃん」  
「ほら社長よそ見しない!」  
「ちょっとだけだから、待ってよ穂波」  
「……はぁ、まったく、しゃぁないなー」  
 
いつきの言葉に穂波も少し気を抜き、事務用の椅子をギシッと揺らす。  
ぼーっと見ている蒼氷色の瞳(アイスブルー・アイ)の視線の先で、  
包装紙を破ってつやつやした飴を露出させた巫女服小学生が口を開く。  
 
「はい。みかんが食べさせてあげるね。……目を閉じてあーんってして」  
「えっと、こうかな。……あー」  
 
素直に従ういつきに、みかんが悪戯っぽくマリンブルーの瞳を輝かせる。  
自分が咥えていた棒を掴んで、可愛らしく舌で押し出しながらキャンディを取り出すと、  
それをいつきの口の中に突っ込んだ。そして、手に持っていた新しい飴を自分で咥える。  
 
呆然とした穂波が目を丸くする前で、飴を口に入れられたいつきが口を閉じて目を開いた。  
表面が溶けた少し生暖かい飴を、(……あれ?) と思いながら転がし、甘く溶けた唾液を飲み下す。  
ちょっとした疑問が氷解したのは、続くみかんの言葉によってだった。  
 
「えへへ、間接きすだね、いつきおにーちゃんっ」  
「え? ……あ!」  
「ちょお、みかんちゃんっ!?」  
 
頬を染めて悪戯っぽく笑うみかんに、いつきが状況を理解して赤面する。  
声を荒げる穂波に一歩後ろに下がってから、ツインテールを揺らして微笑する。  
 
「わたしだと思って味わってね〜」  
「え、えっと……うん」  
 
左目を丸くして赤面したいつきが肯くのを見て、満足げに踵をかえす。  
 
(ええええ!? アリなんか? そんなんアリなんかーーー!?)  
 
衝撃の光景を目の当たりにした穂波は色々と葛藤しながら心の中で頭を抱えていた。  
 
                        ☆  
 
後日。  
「(大丈夫や、穂波、ウチならできる……) あ、あああ、あのな、社長」  
「ん、なに? 穂波」  
「き、き、今日は暑いし水分補給した方がええで?」 ←飲みかけのペットボトルを渡そうとする  
「……は? なに言ってるの穂波」  
「(ちくしょー!) な、なんでもないねん。ほななーー!」  
 
その日のアストラルの裏庭には、ペットボトルを地面に置いた隣で三角すわりをして落ち込む  
ケルト魔術・魔女術課正社員の姿があったとかなかったとか。 おしまい。また見てマギカ!!  
 

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