「さて、お風呂に入りましょうか」  
「うんっ」  
猫屋敷とみかんの会話を聞いていたいつきは、思わず飲んでいたお茶を吹き出した。  
「あー、お兄ちゃん社長、汚いんだー!」  
みかんに指差され、穂波から出された宿題やテキストにかけてしまったお茶を拭き取りながら、いつきが尋ねる。  
「お風呂に…って、猫屋敷さん、みかんちゃんと一緒に入ってるんですか?」  
「はい、いつもそうですけど?」  
「ええぇ!?だって一応みかんちゃん女の子だし…」  
「でもみかんさんが小学校に入る前から知っていますし、家族みたいなものですよ。」  
「そうだよー」  
みかんまでがそう言うので、納得せざるをえない。  
「そういうものなんだ…」  
「それに、一人だと髪を洗うとき大変ですからね」  
「むっ、みかんは一人でもちゃんと洗えるよぅ」  
そんな二人のやりとりを見ていると、親子に見えなくもないような気がしてきた。  
(女の子って、何年生までお父さんと一緒にお風呂入るんだろう…?)  
そう思いながらいつきは浴室へ向う二人を見送った。  
 
「…まぁ家族は家族でも、親子ではなく夫婦なんですけどね」  
「えへへー、みかんは猫屋敷さんの奥さんだもーん」  
 
浴室でこんな会話が繰り広げられていようとは、いつきは知る由も無かった。  
 

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