一夏のアバンチュールに必要なもの。
それは、開放的な心と、少しの勇気。そして……
「ああっ! 大介さんいいわぁー!」
「叶さんっ! 俺もう……」
一人の女性が木に手をついて大介に激しく突かれていた。
女性はウェーブのかかった長い銀髪を振り乱し、結合部からラブジュースを垂らしながらあえいでいる。
紫の面積の小さいセクシー水着をずらし、その巨乳がゆさゆさと大介が腰を打ち付けるたびに揺れている。
彼女の名前は新条叶。
大介がこのリゾート地で出会ったグラマラスな女性である。
夜の人気のないこの椰子の木林で、二人のセックスはクライマックスを迎えようとしていた。
「出ますっ!」
大介が一際強く腰をうちつけ、彼女の丸く柔らかな尻に密着させる。
突き入れられたペニスが子宮口に出会い、我慢の限界を超えて男の本能のままに射精を開始する。
どぴゅる! どくどく!
「はぅぅ……いっぱい出てるわ大介さん……」
「うああ」
叶をかき抱き、乳をもみしだきながら小刻みに震えて射精を続ける。
直に感じる彼女の柔肌とフェロモンを漂わせた香りに脳がくらくらと痺れ、驚くほど大量の精液が発射されていく。
バックから女に精子を注ぎ込むその姿はまるで獣の交尾だった。
オルガズムを迎えた叶も、快楽にあえぎながら膣を律動させ、
射精が終わってからもしばらく身体を密着させたまま、二人は潮風にあたりながら荒い息をついていた。
「……ふぅ」
大介は身体を起こすと、腰を引いて彼女の膣内からペニスを取り出す。
ペニスはぬらぬらと叶のラブジュースで光沢を放っていた。
そして、獣の交尾にはないものがつけられている。
「んふ……いっぱい出たね」
ぱちん
叶がペニスからコンドームを引き抜いた。
先端は今叶の膣内で射精された新鮮な精液でふくらんでいる。
「はむ」
叶はすぐに精液にまみれた大介のものをフェラで吸い取り、満足げにその夜の性交を終えた。
一夏のアバンチュールに必要なもの。
それは、開放的な心と、少しの勇気。そして……女性の身体のための、避妊具。
行きずりの相手とセックスをするときのエチケットである。
(叶さん、最初会ったとき虫とコンドームは大嫌い≠チていってたのにな)
彼女はヘソピアスやシルバーアクセを身につけたファッションから、奔放で無責任そうにみえるが、避妊具を常に携帯している。
欧米の女性など、女子高生でもコンドームを持つのは当たり前という。
日本の意識が低いのか、欧米がドライなのかは分からないが、女性のためには当然後者の方がいいのだろう。
むしろ、彼女は旅先で男を当たり前のようにつまみ食いするからこそ、そういったことに敏感なのかもしれない。
大介は教師だから、正しい行動だとは思う。しかし、生でヤリたいのは男の本能だ。
翌日
一緒に露天風呂へ行きましょう、と誘われて露天風呂の脱衣所に入ったとき、大介はあることに気づいた。
おそらく叶さんのことだ、温泉で裸なのだからお互い盛り上がってエッチしようという流れになるはずだ。
温泉内で盛り上がって本番までいくとして、二人とも全裸だ。手元にコンドームは当然ない。
勢いで生でできるかもしれない、と大介は考えた。
風呂桶にゴムを入れていくこともできるけど……
どうしよう?
1.ゴム無しセックスしたい
2.きちんと避妊する
1.の選択肢を考えてみる。
ゴム無しの叶さんの膣内はどれだけ気持ちいいことだろうか。想像しただけで息子が反応してしまう。
何を迷う必要があるだろう。
叶さんもそこまで厳しくはないだろう。ここは開放的なリゾート地の、開放的な露天風呂だ。
生挿入くらい快感を倍増させるスパイスに過ぎないと許してくれるはずだ。そもそも叶さんは快楽主義者なのだから。
大介は初めて彼女と関係をもった数日前のことを思い出す。
南国の日差しの眩しい真っ昼間。彼女に誘われた神社の裏で、突然始まった男女の行為。
彼女のルージュを引いた唇がペニスをくわえ込み、紫のアイシャドウを塗った瞳が挑発的に見つめてくる。
一発目を口内で暴発させ、そのまま口の中で復活したところで、叶がペニスを放して立ち上がった。
フェラの最中に手際よく自ら愛撫して濡らした花弁を指で開くと、白い肌にピンク色の花が咲いた。
甘いハイビスカスに、ぴくぴくと先走りを垂らすいびつな雄しべ。
大介は叶の腰をひきよせ、立位の姿勢でインサートしようとし、叶は御神木を背にして片足を彼に絡めて挿入しやすいようにした。
叶が片手を大介の首にかけ、互いの吐息の分かる距離で、彼女は花弁の奥底に突き入れようとする男のものをもう片手でやんわりと包んだ。
クチュクチュと先走りとフェラのときにねっとりと絡みついた唾液でぬめるペニスをしごきながら、叶が耳元でささやいた。
「ねえ、大介さん、持ってる?」
「はぁはぁ……何を?」
早く挿入したいところでおあずけをくらった大介は、今にも叶を御神木に押しつけて強制挿入してしまいそうな勢いだ。
ペニスはそのときを待ち望み、膣奥で精を放たんとそそり立っている。
「ス・キ・ン」
「え……なんだって?」
大介は彼女がわざわざはっきりと言ったことを聞き返した。
その言葉がなぜか場違いな気がした。
スキンって、なんだっけ?
快楽に占領された思考回路に、そんな単語はなかった。でも、どこかで聞いたような、それも、大事なことのような……
んもう、と叶が言い聞かせる。
「ゴム、コンドーム、ペニスサック、明るい家族計画、風俗業界ではプロテクタとも言うわねぇ」
「カゾクケイカク……」
獣だった頭と、いきり立っていたペニスに冷や水がかけられたような気がした。
追い打ちをかけるように叶がいつものけだるげな口調で言う。
「ごめんなさぁい。避妊わぁ、してねぇ」
「ひにん……」
呆然としている大介を見て、叶は半脱ぎのジーンズのポケットからコンドームを一枚取り出した。
ぴりっ
口にくわえて封を切り、円形のゴムを取り出すと、片手でいとも簡単に大介のペニスにくるりと被せる。
そこには薄紫のスキンに覆われた、女にスペルマを注ぎ込むことのできない安全なペニスがあった。
「ダメよぉ? こういう時に男の子が気をつけてあげないとぉ」
叶はそう言ってから自らペニスを膣へインサートした。
ゴム越しでも、叶の膣内は名器と呼ぶにふさわしい粘膜とテクニックを持っていた。
めくらめっぽうに腰を振る大介と、緩急をつけて腰をくねらせる叶。
コンドームによって快楽の調節もできるのか、叶は巧みに大介の射精を抑えつつ、自分も昇り詰めていく。
「ひぁああんっ!!」
「うああっ!?」
叶が達し、大介も子宮口まで深く突き入れた瞬間に締め上げられた快楽にあらがえず、そのまま精を放った。
しばらく抱き合って余韻に浸っていた二人は、汗ばんだ身体を離し、それにともなって大介のペニスも力なく叶の膣から引き抜かれた。
ちゅるん
情けない音をたてて、ペニスを抜き終わらないうちにコンドームが叶の膣口にひっかかって外れてしまった。
「あん……もう、中で外れたらアブナイんだから気をつけてぇ」
薄紫のコンドームを股間にぶら下げ、そこからボタボタとザーメンが垂れてくる。
その柔く肉感的なふとももをつたい、白くねばついた筋をつくる。
ちゅくっ!
叶がコンドームを抜き取り、草むらへ捨てた。
その後何事もなかったように服を着た叶は、大介に「またね……」とキスをして去っていった。
子宝の神社で、避妊セックスをするという皮肉に大介が気づいたのは、もう少し後になってからだった。
回想を終え、彼はううむとうなった。
2.かなぁ……。
叶さん、快楽に正直な反面で一度も生でさせてくれないし、外見と違ってセーフティセックス派だ。
少し惜しいような気もするが、大介はきちんとコンドームを数枚、風呂桶に入れて行くことにした。
この時間帯は利用者も少ないはずだし、ばれることもないだろう。
大介が露天風呂へ入ると、既に叶は身体を洗っているところだった。
だいぶ長くゴムを持って行くべきかどうか悩んでいたようだ。
「大介さん、ちょっと……」
叶が彼を認めるや、色っぽい声で彼を呼んだ。
「なんです?」
「背中を流して欲しいのぉ」
うっとりとした表情で、彼女は大介にそう頼んだ。明らかに誘っている。
彼は真っ白い叶の背中に手を回した。
絡み合うような愛撫の後、大介はそれとなく聞いてみる。
「叶さん、入れていい?」
叶は跪くと彼のものを両手で握った。
「あぁん。お口でイカせてあげるわ」
ゴムがないから、と言わなかったのは彼を気にしてのことなのだろう。
大介もそれを察することはできた。
「叶さん……」
大介は風呂桶からコンドームを叶に取り出してみせる。
「あらぁ」
叶は一瞬呆気にとられたようにそれを見た。
「うふ……用意がいいのねぇ」
「もちろん」
「ありがと。こうやって協力してくれると助かるわぁ」
珍しく苦笑しながら、彼女はコンドームの封を開けた。
艶めかしい露天風呂での情事で、ピリッと封を開ける音が乾いて響く。
「着けてってお願いしても着けてくれない人とかもいるんだ。やっぱり、そういうの怖いし……」
きゅっとその白い指先で天を向いた大介のペニスに被せながら、彼女がちらりと本音を漏らす。
「なんか分かるな。叶さん、良すぎるから」
「本当は避妊って男の人がするべきものなのよぉ?」
「う……ごめん」
いつもけだるげな叶にしては珍しく、少しトゲのある口調だ。
そういえば、ピルが普及しているわけでもないのにゴムの消費量は減少しているというし、それだけ無責任なセックスをする男女が増えたということだ。
叶にも何か苦い思い出があるのではないかと大介も感じた。
だが、自分は彼女の何を知っているというのか。
そこに至って、彼は少しそれが悔しかった。
「まぁ、いいわぁ。さ、入れていいわよぉ」
叶はその美尻を向け、自ら花弁を開いて誘った。
またいつもの調子だ。
リゾート地の夜は、こうしてまた更けていくのであった。
<終わり>