「君の顔を見てると、放っておけないって思うの」
それが本当かどうかは……俺には解らない。解りたくない。
「あ、ここにいたんだ?」
お気に入りの場所でいつものように一人でいると、新入り……響ミソラとか言ったか……が声をかけてきた。
正直、ソロはこの新入りが一番気に入らない。必要以上にこっちに話しかけてくるし、その内容も大抵が友達とかキズナとかでいらいらする。
そして何より、この女は取引――仲間の命と引き換えでここにいるだけに過ぎない。べたべたとひっつく必要性はないはずなのに、それをやってくるのでますますいらいらする。
「……」
解りやすいようにそっぽを向くが、それでもミソラはこっちに話しかけてきた。
「ねえ、どうしてあまり話しないの? どうして何にも言ってくれないの? たまには……」
「何も話すことはない」
話をさえぎるように言うと、ミソラはしょぼんとなる。普通の男なら慰めるだろうが、自分は関係ない。
と、そこまで考えて、ふと「もし怪しい動きをしたら、殺すなり何なりしろ」というエンプティーの言葉を思い出した。
別に奴の言うことを聞くつもりはなかったのだが、少し脅しをかけておくのもいいだろう。
ふらふらとどこかへ行こうとするミソラの腕を強引につかみ、勢いでこっちに引き寄せる。抱き寄せるような形になったので、自然と二人の顔は接近した。
「え? あ……」
予想通り顔を赤くする彼女を見て、このまま好き勝手してやろうかとも思う。
……が、その先が想像できてしまったので、その考えはすぐに消した。涙まみれにあの男の名前を呼ばれ続けるなんて、ぞっとする。それに、自分の過去を抉るようで嫌だ。
「しないの?」
「萎えた」
それだけ言って、すぐに手を離す。こっちとしては、それで終わったつもりだった。
……つもりだったが。
「……いいよ? 別にやっても」
ミソラの一言に目をむいた。
「本気か」
「本気だよ」
「それでご機嫌を取るつもりか」
「そんなんじゃないよ」
「なら何故だ」
「放っておけないから」
真顔で言い放たれ、完全に絶句する。どうしてこの女は、ここまで薄気味悪いことを言えるのだろうか。
いらいらする。
「……後で後悔するなよ」
押し付けるように唇を当てた後、すぐに舌を差し入れる。抵抗されると困るので、手で抑えた。
「ん……っ」
「……む……」
最初に舌でかき回せば、後は相手の方も乗ってくる。湿った音と共に過去の嫌な思い出が蘇ってくるが、専念することでそれを打ち消した。
身体が熱くなってきたところで唇を離す。離れた舌と舌の間で糸が引いていたが、すぐに消えた。
「な、慣れてるね……。こういうの、何回もした事あるの?」
「……過去に、な」
好き者の女性たちに囲まれて強姦された、とはさすがに言えないので黙っておいた。
代わりに勢いで押し倒して、服の中に手を入れる。さっきのディープキスですっかり感度が上がっていたらしく、触れただけで彼女は震えた。
「……あ……」
その声にどきりとするが、理性でその思いをねじ伏せる。これはあくまでも、いらいらする相手を黙らせる手段で、自分が気持ちよくなるためではない。
服の中に滑らせた手が柔らかな乳房を揉むのと同時に、汗で濡れた首筋に口付けた。
そのまましばらくは、手と舌で彼女の身体をもてあそぶ。服の下では手が動きづらいので、いっそのこと下着ごと上にずり上げた。
硬くしこった先端を軽くつまむと、ミソラの身体がびくりと震える。
「……ん……あぁ……っ」
ミソラの息が荒くなってきた。快感に耐えたいのか、組み伏せているこっちの腕をつかんで放さない。本当に始めてなのか、と内心疑ってしまった。
「足、開け」
あえて淡々と命じると、ミソラは何の疑問もなく足を広げる。もう考えが浮かばなくなっているのか、ズボンと下着を下ろしても何の反応もなかった。
「起こすぞ」
そう言って、ゆっくりと身体を起こさせてひざの上に乗せる。勢いで、まだ服に覆われた自分の胸とミソラの胸がぶつかり合った。
さっき以上にどきりとしたが、それも理性でねじ伏せた。酔いしれたりしたらダメだ、と硬く心に言い聞かせる。
片手で彼女を抱き寄せつつ、もう片方の手は晒された茂みの方へと行く。服の上からでもわかるほど、そこはしっとりと濡れていた。
だが今回は、そこで指を止めずにもっと先へと進む。そして目的の場所を見つけると、ためらいもなくそこに指を入れた。
指を入れた瞬間、ミソラの身体が跳ねる。
「っ! そ、そこ、お尻……」
「解っている」
ぐちゅぐちゅとかき混ぜると、ミソラの顔が少し歪む。抱きつけるように身体を寄せると、ちゃんと抱きついてきた。
近くなった彼女の耳元で、ぼそっとつぶやく。
「お前、初めてはあいつにやるんじゃないのか? ……もう少し考えろ」
ミソラが顔を赤くしたのが、気配で解った。何故だか解らないが、見なくて良かったと心の底から思う。
その間にも、指はきっちりと尻の辺りを動き回り、快感を与えていく。動きに合わせてミソラがむずむずと動くので、こっちもかなりたまらない。
「あ……う……、ん……あぁっ」
「く……っ」
正直、こっちも熱に浮かされて何をしているのか解らなくなってきた。とにかく彼女の全部が欲しくてたまらない。
気づけばむさぼるように乳房に食らいつき、赤い痕を残す。本当は何もつけないはずだったのに、いつの間にかいくつも痕をつけていた。
「……あ……気持ち…い、い……」
「ミソラ……!」
口が彼女の名前をこぼすが、相手はもう何も聞こえていないらしい。荒い息とあえぎ声を返してくるだけだ。
「…あぁっ!」
びくりとミソラの身体が跳ね、ぽたぽたと蜜がこぼれる。そろそろ、お互い限界が近いようだ。
この状態では挿れにくいので、またミソラを押し倒す。今度はうつぶせにして、尻がよく見えるようにした。
「……行くぞ」
一息ついてから、一気に彼女の中に挿れる。この形は初めてなのだが、わりとすんなり行けた。
ただミソラの方は辛いらしく、苦しそうな顔なのが解る。手は握り締められ、身体はぶるぶると震えている。
「力を抜け。かなりきつくなるから……」
「ぅ、ん……っ」
震えながらも徐々に力を抜いているらしく、こっちのきつい感覚も消えていった。締め付けてくる感覚が、かなり気持ちいい。
尻をつかんで固定すると、一気に自分のものを押し込んだ。
「あっ、あああっ!」
最奥をついたショックか、ミソラが軽く達した。その勢いで大きく締め付けられたので、自分も勢い余って出しそうになるが、頑張ってこらえる。
それでも、締め付けられる快感にどこまで耐えられるか解らない。頭を何度も振って、意識を集中させた。
「動かす……からな」
「んっ、あっ!」
先が見えそうなくらいに抜き、同じ勢いでまた押し込む。それだけで、もう頭の中が真っ白になりそうだ。
とは言え、後はもう抜いては挿れての繰り返しだ。それこそ、お互いが完全に達するまで。
「ん……く……っ」
「あぁん、あっ、はぁぁっ! あぁぁ!」
激しい律動は二人の理性を溶かし、本能――本当の気持ちをはっきりさせていく。
「ミソラ……っ、いい……ッ!」
「あ……ん、ソロ君……いいよぉ!」
互いの名前を呼び合ったその瞬間、二人の限界が来た。
頭がぼやけたままに自分のものを押し込んだ瞬間、一番の締め付けに一瞬意識が飛ぶ。
「ぐっ……!」
「ああああああああっっ!!」
吹き出した液が一気に少女の中に流れたのを感じながら、眠るように目を閉じた。
「さっきも言ったけど、放っておけないって思うの。君を見てると」
「……」
ぐったりしているらしく、こっちに寄りかかりながらミソラが言う。
「何でだろうね?」
「……俺が知るか」
突き放すように身体を動かすと、ミソラは転がりそうになる。当然、支えたりはしない。
そう、支えたりはしない。誰かに頼ったり、信じたりなんかはしない。
でも。それでも。
彼女の言葉を、ほんの少し信じたいと思う自分がいるのも、また事実だった。