「…ん、…ふぅ…」  
 
某国にあるホテルの一室  
薄暗い部屋の中に私の籠もった声だけが響いていた。  
 
シャツの前をはだけ、自分の乳房を軽く揉んでみる。  
やはり私の掌では覆いきれず、十分な快感は得られない。  
もどかしくなり着ているものを全て脱ぎ、ベッドの外に放り出す。  
 
「…ん、…あぁ!」  
 
自らの秘裂を何度もなぞり、最後に一番敏感な芽を摘み上げた時  
 
「んん!!」  
 
自分でも驚くほど甲高い声を上げ、私は絶頂を迎えた。  
 
(…やはりこんなことで満たされはしないか…)  
 
乱れた息を整え、身体の火照りが徐々に冷めてゆくに連れて、胸の中にはいつもの空しさが蘇ってきた。  
 
あの日から  
私の『一番大切なもの』を失ったあの日以来、時々どうしようもない空しさと喪失感に苛まれ、押しつぶされそうになる。  
その度に自分を慰めていたのが、徐々に回数を増してゆき、何時しか習慣となっていた。  
 
かつては天才科学者と称えられもしたが、今ではある目的の為人目を避けるように諸国を回る生活を送っている。  
 
世界を回って私が知ったこと  
 
それは  
誰もが自由に、平等に生きられる国など、この世には存在しないという事だった。  
少なくとも今まで回った国の中には、存在しなかった。  
 
存在するのは、愚かな指令者と、それに疑問すら抱かずにただ従うだけの愚民ばかりの国だけだった。  
私のように大切なものを失い、悲しみ嘆く者達も数多く見てきた。  
 
そんな世界に、何時しか私は疲れ果てていた  
 
「オリヒメさま。」  
 
機械的な声にはっと我に返った  
気だるい身体を起こし、声のした方向に顔を向けると。  
 
「…エンプティー」  
 
扉の前に、魔道士のような鎧を纏った男、エンプティーが佇んでいた。  
どうかしたのかと声を発しかけたが、自分の置かれた状況を思い出し  
 
「あ……!」  
 
急いで傍らにあった毛布で自らの身体を覆う  
 
「………?」  
 
エンプティーが不思議そうに小首をかしげた  
 
…そうだ、今私の目の前に居るのは『エンプティー』なのだ……  
何度も確認し、解りきっていたはずなのに…  
 
先ほどの自身の慌てようを思い出し、自嘲と、それを上回るほどの空しさが込み上げて来た  
 
「どうした?エンプティー」  
 
「おショクジをおモちイタしました」  
 
よく見れば、エンプティーは手に紙袋を持っている。  
 
「…今はよい、そこに置いていってくれ」  
 
テーブルを指し示すとエンプティーは素直に従い、手に持っていた袋をテーブルに置く。林檎が一つ袋から転がり落ちた。  
 
「…オリヒメさま、いかがナさいました?タイオンがツウジョウよりタカいようですが…」  
 
「……何でも無い」  
 
「ワタシにデキることがゴザいましたら」  
 
「もうよい!下がっておれ!!」  
 
空しさからか、つい声を荒立ててしまった  
 
「…ハイ」  
 
一礼をし、その場を後にしようとするエンプティー  
 
その後姿が  
過去の映像と重なって見えた  
必ず戻ってくると言って戦地に発ち、二度と戻って来ることの無かった、あの後姿と。  
 
「……待ってくれ!」  
 
気が付いた時には  
エンプティーを後ろから抱きしめていた  
 
「…行かないで」  
 
あの時は言えずにいた言葉が自然と口を突いて出てきた。  
 
「……一人に、しないで……」  
 
「オリヒメさま」  
 
私の心情を察したのか、背中越しにいつもの様に機械的な声が聞こえてきた  
 
「ワタシはイツでもアナタのオソバに、あのオカタのブンまで、アナタをおマモりいたします」  
 
そう言って振り返ると、私の身体を優しく抱きしめてきた。  
 
二人でベッドの縁に腰掛けると、エンプティーの外装を解除する  
そこには、愛した男と瓜二つの顔があった  
 
「オリヒメさま…」  
 
「今だけは、オリと呼んでくれぬか?」  
 
エンプティーは、少し戸惑った(様に私には見えた)顔をしたが  
 
「ワかった、オリ」  
 
そう言って私の目をじっと見つめて……  
それ以上何もして来ない  
 
「……どうした?」  
 
「いえ、ここからどうすればヨいものか…」  
どうやら、データに無い事に戸惑っているらしい。そのことが妙に可笑しかった  
 
「そうだな、まずはキスしてくれ」  
 
そう言うと、エンプティーは怖々と唇を合わせてきた  
 
「ん……」  
 
唇を一瞬合わせるだけのフレンチキス。  
エンプティーの唇は冷たく、人で無い事を改めて実感させられた。  
 
「そうではない、こうするのだ」  
 
そう言うと、エンプティーの頬に触れ、ゆっくりと唇を寄せ  
 
「ふ…うん」  
 
唇を少し開き、舌でエンプティーの歯をなぞる。  
私の求める事を理解したのか、エンプティーも口を開き、舌を出してくる。  
 
暫く互いの唇と舌を味わった後、名残を惜しむように唇を離すと、私の物であろう唾液が二人の間に銀の橋を掛けた。  
 
「次は、そうだな…」  
 
そう言うと身体に纏っていた毛布を外す。  
 
「次は胸を頼む」  
 
エンプティーの手を取り自分の胸へと導く。  
 
エンプティーは壊れ物を扱うかのようにゆっくりと指を動かし始める。  
しかし、その動きは弱く、快感というよりは、むしろくすぐったく感じた。  
 
「ん、もう少し力を込めろ」  
 
言われた通りに徐々に力を強めてくる。  
 
「ああ、いいそ、その調子だ……ふぁ!?」  
 
突然、胸に激しい刺激を感じ、思わず声が出る。  
エンプティーの指が乳頭を摘み上げたのだ。  
私の反応の違いを感じ取ったエンプティーは、そこを重点的に攻め始める。  
 
「あ!や!ちょ!ちょっとま……ああ!!」  
 
強すぎる刺激に耐えかね何とかエンプティーを制止しようとするが  
 
「ふああぁぁぁ!!!」  
 
エンプティーが左の乳房に口を付け、強く吸い上げた瞬間、私の身体に激しい電流が流れた  
 
「も、モウしワケありません。カラダがカッテに」  
 
自分でやった事に驚き戸惑っているらしい  
私は息を整えながら  
 
「…ハァ、ハァ…いや、よい。それよりも、他に何か思うことはあるか?」  
 
「いえ…それが…」  
 
見れば、エンプティーは体の一部を両手で覆い、腰を少し引いている  
 
「ふふ、よい、『それ』は別におかしな事ではない、手を除けてみよ」  
 
エンプティーの身体は可能な限り人と同じ構造に作ってある。  
『それ』、つまり『勃起』は当然の反応だといえる。  
 
私の言葉に従って手を除けると、エンプティーのモノはすでに張り詰めていた。  
 
「そなたの思うとおりにしてみよ」  
 
そう言ってベッドの上に座り直し、足を少し開く。  
私の秘所は先ほどの絶頂によってすでにしっとりと濡れていた。  
 
「シツレイします」  
 
エンプティーは私に覆いかぶさると、もう一度唇を重ねてきた。  
 
「ん…」  
 
そしてそのまま、自らのモノを私の秘所に当てがうと、一気に最奥へと沈めていった。  
 
ずぷぷぷぷ!!  
 
「んんんん!?」  
 
膣内を満たす熱い物を想像していたが、エンプティーのモノは予想に反して冷たく、口を塞がれていなければ間違いなく悲鳴を上げていただろう。  
 
エンプティーは唇を離すと  
 
「デンパであるワタシには、ヒトのヌクもりはアりません。オドロかせてしまいモウしワケありません。オリ」  
 
無表情にそう呟いた。  
 
「い、いや、久しぶりの感覚に少し驚いただけだ。続けろ」  
 
なぜそう言ったのかは自分でも解らない、しかし  
 
「…ハイ」  
 
気のせいか、エンプティーの表情が少し柔らかくなった気がした。  
 
そしてエンプティーはゆっくりと腰を動かし始める  
 
「ん、ん、あぁ!」  
 
エンプティーに突かれる度、喉の奥から喘ぎ声が漏れる  
 
無意識に行われるエンプティーの仕草の一つ一つが  
乳房を弄る掌の感触が  
膣内を削る肉棒の感覚が  
その全てが私の一番大切なもの、ヒコの面影と重なってゆく  
 
「ああ!!ひ、ヒコ!ヒコぉ!!」  
 
何時しか私は、涙ながらに愛しい男の名前を呼んでいた  
 
「オリ」  
 
エンプティーはそれでも尚無表情に腰の動きを早めてゆく  
 
「あ!!あぁぁぁぁぁぁ」  
 
エンプティーの肉棒が、私の最奥を貫いた瞬間、今日何度目かの絶頂と共に、目の前が真っ白になった  
そんな私を黙って見届けたエンプティーは、ゆっくりと自らのモノを私から抜き取った。  
 
「…ん」  
 
その淡い刺激によって覚醒した私は、すでに外装を纏いベッドの横に佇んでいたエンプティーに語りかける  
 
「…どうした?そなたはまだ達してはいないであろう?」  
 
「…オリヒメさまがマンゾクナされたヨウですので、コウイをシュウリョウイタしました。」  
 
その機械的な返答に、一気に現実に引き戻される。  
そうだ  
私の目の前に居るのは所詮紛い物の存在。  
私の一番大切なものは  
ヒコはもう  
何処にも居ないのだ  
世界中を探しても、ヒコを蘇らせる手段は何処にも無かった。  
 
言いようの無い空しさが、悲しみが、再び胸に蘇ってきた。  
仰向けに倒れ、熱くなった目頭を手の甲で押さえる。  
 
何故  
何故ヒコは死ななければならなかった。  
 
何故  
何故私はこのような悲しみを味わわなければならない。  
 
何故、なぜ、ナゼ  
 
この世界はこうも愚か者であふれているのだ  
 
悲しみ、空しさ、そして怒りの入り混じった自問の果て。  
私の頭の中に、一つの結論が浮かび上がった。  
 
「エンプティーよ」  
 
目頭を押さえたまま、静かに語りかける。  
 
「ハイ」  
 
「この世界には治療が必要なのかもな」  
 
「チリョウ、ですか?」  
 
「そうだ。この世界に巣くう癌細胞を取り除かなければ、いずれ世界は駄目になってしまうだろう」  
 
身体を起こし、エンプティーの顔をしっかりと見定め、続ける。  
 
「この世界に今必要なものは医者だ、いや、神と言ったほうが正しいな」  
 
エンプティーは黙って私の言葉を聞いている。  
 
「この世界を正しい方向に導ける、全能の存在が必要なのだ!」  
 
エンプティーは、何も言わない  
 
「私が、いや、わらわが神となり、この世界を正しい方向に導く。…手伝ってくれぬか?エンプティー。」  
 
暫しの沈黙の後、すでに明るみを帯び始めた部屋に機械的な声が静かに響く。  
 
「ワタシはイツでもアナタのオソバに。」  
 
その言葉を聞いて  
私の胸の中に溢れていた空しさが、ゆっくりと消えていくのを感じた。  
 
 

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