「フン……暇つぶしにもなりゃしねえな」
つまらん、本当につまらん。
はっきりいって、俺の不満と退屈は頂点に達していた。
モデルVのかけらに群がってくるガーディアンやハンターどもを片っ端から殺るのに、
数十分どころか数十秒もかからなかったからだ。あのモデルZXのロックマンと違って、
どいつもこいつも雑魚以下レベルの奴ばかりで、全く手ごたえも歯ごたえも感じられない。
残りの連中も、今頃はパンドラの手で全滅していることだろう。
そう思っていたちょうどそのとき、
「プロメテ……今……終わった」
パンドラが通信機を通して、『仕事』の終了を伝えてきた。
「戦闘員は……全員処分……非戦闘員も……全部……捕まえた」
「そうか」
パンドラの抑揚の無い口調の報告に、俺は答える。
モデルVのかけらを回収し、雑魚を全部片付けたとなれば、もうこんなところに用はない。
俺はこんなしけた場所から、とっととアジトに帰りたくて仕方なかった。
「帰るぞ、パンドラ」
俺は通信機越しにそっけなく伝えると、周囲に転がっている雑魚どもの屍を無視して
その場を後にした。
アジトに帰ってすぐ、俺はまっすぐ自室に戻った。
パンドラには、『ゆっくり休みたいから、何があっても部屋に入ってくるな』と
きつく言いつけてある。
もっとも、もうアイツには部屋の『秘密』がばれているかもしれないが。
俺は、部屋の片隅に置いてあるガラクタに向かって歩き、覆っている布の片端を掴んで
思い切り引きずり下ろした。
大きく翻る布の中から現れたもの――ブロンズで造られたセルパンの胸像の正面に向かい合う。
……あの野郎、セルパンカンパニー創立何十周年記念だがなんだか知らんが、
こんな悪趣味なものを俺に押し付けやがって。あんまりにも腹立つので、『改造』の際に
そのインテリぶったバカ面にヒゲだのなんだの落書きしてやったがな。
むかつきながらも俺は右手の人差し指と中指でVの字をつくり、目の前のバカ社長像の鼻の穴に
ズブリと思い切り突き刺す。かちりと小さな音と同時に、バカ社長像のすぐ脇の壁が縦に
大きくスライドしていく。
あっという間に現れた大きな長方形の空間の向うに、簡単な造りのエレベーターが待ち構えていた。
俺はバカ社長像の鼻の穴の奥――隠し扉のスイッチから指を離すと、エレベーターに乗り込んだ。
人差し指でコンパネに触れると、エレベーターが大きい音をたてながら動き出し、ゆっくりと
下降し始めた。
「さて、今日はどういう風に楽しもうか……?」
一人ほくそえむ俺を乗せたエレベーターは、ひたすら最下層を目指して下降していく。
エレベーターの終点にあるもの。
そこにはパンドラやセルパンはもちろん『あの男』でさえ知らない、俺だけの秘密の空間、
いわゆる『隠れ家』が存在している。
そして、俺の退屈や鬱憤を晴らしてくれる存在――『エール』が俺を待っている。
早くエールの顔がみたい。そして、今日もあの身体を堪能したい。
脳裏にエールの痴態を思い浮かべながら、俺はエレベーターの速度を速めた。
エレベーターを降りた先には、電子ロックつきの大きな扉があった。
俺は電子ロックの端末にすばやく暗証番号を打ち込み、カードリーダーにカードキーをさっと通す。
と、その刹那、ピーという音とともに、ロックが解除され自動的に扉が開いた。
「今帰ったぞ、エール」
俺の視界に現れたのは、数百年前の某国の一般家庭の住居を再現した造りの玄関と、
「おかえりなさい、プロメテ」
正座して三つ指をつき、深々と頭を下げて俺を出迎えるエールであった。
その姿は、全裸にピンクのフリルつきのエプロンといういわゆる『裸エプロン』といういでたちだ。
ロリロリした顔立ちとはうらはらに、大きく丸みを帯びたバストやムチムチとした太ももが
エプロンの端からはみだしていて実にけしからん…もとい、いい眺めだ。
モデルZXのロックマンとして、何度も何度も立ちはだかっていたエール。
そんな奴を数ヶ月前に拉致して以来、洗脳と何回かの調教を経て今では俺専用愛玩奴隷として、
主の俺にかいがいしく奉仕している。
あの勝気で生意気な性格も、絶対服従の精神を叩き込まれたおかげですっかり借りてきた猫
のようにおとなしく変わっていた。
「ねえ、今すぐお風呂に入る?それとも、お夕食にするの?」
と、エールが新妻よろしく俺に尋ねてくる。
「そうだな……」
俺は考え込む。
風呂場で超高級ソープランド仕込みのアワアワヌルヌルテクニックに酔いしれてもいいし、
エールの手料理を女体盛りでしゃぶりつくすのもいい。
だが今は別に空腹ではないし、どうせこれから『運動』して汗をかくのだから風呂は後回しだ。
ならば、答えはひとつ。
「先にお前をいただこう。風呂やメシは後でいい」
そう答えて、俺はエールを軽々と抱きかかえる。
…………そこ、『それなんて新婚もののエロゲー?』と言うな。
「うん、わかった」
エールは嫌なそぶりも全く見せず、頬を桜色に染めながら俺の腕の中でにっこり微笑む。
ああ、なんて可愛い笑みなんだ。そんなに見つめちゃ鼻血が出そうじゃあないかぁ!
たまらず、俺は自分の唇をエールの唇に重ねた。
「あ……んっ、んふう……」
俺の唇に、柔らかい感触が伝わってくる。
だが、唇を重ねただけじゃ物足りん。
自分の舌を使ってエールの唇をこじ開け、するりと口の中へ侵入させてみる。
一瞬、エールの身体が強張ったが気にしない。
エールの舌を軽くつついて刺激してから絡めると、エールも反応して絡み付いてきた。
ピチャ……ピチャ……ジュル……ジュル……レロ……
「んっ……ん……ふう……」
玄関に淫猥な水音とエールのくぐもった喘ぎ声が響く。
さんざん唇と舌を味わいつくした後、
「ぷはあ」顔を離すと、お互いの舌先からツー……と銀の糸がたれ、途切れる。
「ハァ……ハァ……ぷろめてぇ……」
エールが荒い息をつきながら、とろんとした目で俺を見つめてくる。
そんなにモノ欲しそうな目をしやがって。
ようし、今夜もたっぷりいろいろ可愛がってやろうじゃないかぁ!!