ネット上のナビの群れから少女型ナビが飛び出してくる。  
「ふぅ、やっと新曲の楽譜ファイルが落とせたわ…。混雑するとは思ってたけどちょっと酷すぎよ。」  
ロールはため息をつきながら音楽ショップサイトのリンクエリアまで移動する。  
「えーっと、後は夏服のカタログ、か。ファッションサイトへのリンクは…」  
軽く見渡したが辺りには適当なリンクがなかったのでロールは先に進んだ。  
「メイルがいれば、一度プラグアウトしてそのままお気に入りで飛べるのにな…。」  
そのメイルは現在、夢の中。  
ナビは真夜中でも全く問題なく活動できるので、このような「お使い」もできるのだ。  
ネット上の"看板"プログラムはただでさえ見分け辛いのに大量に並んでいることが多く、  
その上、あっちに行ったりこっちに行ったりでじっとしていない事もあり、  
広いエリア上から目的の一体を探すのはナビにとってかなりの苦労である。  
「近道無いかなぁ…」  
右往左往するプログラムを見ながらそんなことを考えていた。と、足に何かが引っかかった。  
「きゃっ!?」  
周りに気をとられていたため、足元にウイルスがいたことに気がつかなかったのだ。  
ウイルスにつまづいて、そのままロールは目の前にあったリンクに飛び込んでしまった。  
 
リンクを抜けて薄暗いエリアに放り出されるロール。  
「…ちょっと危ないかなー…。」  
Uターンして戻ろうとするロール。が、不運にもそのリンクは一方通行だった。  
ロールは一気に心細くなってしまった。  
それも当然の話で、オペレートのない状態で強力なウイルスと遭遇することは  
即デリートと言ってもいい。危険な状態である。  
「と、とにかく別の出口を探さなきゃ!」  
震えながらも歩き出そうとしたとき、足元の妙な感触に気がつく。  
何か、地面がボールのようなもので埋め尽くされているような、そしてそれが動いているような。  
思わず一つを掬い上げてみると、その正体がなんであるかがわかってしまった。  
メットールだった。床に居る全てが。  
「ひっ!?」  
一瞬、硬直するロール。しかしメットールは得意の衝撃波攻撃をしてくるでもなく、  
ころころわさわさとひしめき合っているだけだった。  
それでも、ウイルスはウイルスである。いつこちらに向かってくるかわかったものではない。  
雑魚中の雑魚といっても、床を埋め尽くしている全てが一斉に攻撃してきたらたまったものではない。  
ロールは慎重にその場から歩き始めた。  
 
しかし、しばらく歩いても出口は見つからず、周りはメットールだらけだった。  
そのメットールも腰の辺りまで来るほど積み重なっているような状態だ。  
「一体どうなってるのよ…」  
その一言をつぶやいた次に踏み出した足は、地面をとらえていなかった。  
メットールに埋まっていた階段に気がつかず、踏み外してしまったのだ。  
ロールはそのまま下の階層まで一気に落ちてしまったが、幸いなことに大量のメットールが  
クッションになって、ダメージを受けることはなかった。  
落ちたところから少し進むとメットールの数が減ってきた。だんだんと床が見えてくる。  
"この先、秋原町エリア"と書かれた看板を見つけて全身から力が抜けた。  
薄暗い道を進む。異常事態から開放される喜びで、足取りは速くなっていった。  
しかし、その先にあったのは、  
「何よ、これ…。」  
またしても大量のメットールだった。今度は山のように積もって道をふさいでいる。  
「…。そっちがそう来るなら、こっちだって!!」  
意気込んでロールがその"山"に向かったとき、"山"の中から女性型ナビが頭を出した。  
彼女はそれ以上動かず、ただロールを見ているだけだった。  
ロールは自分以外のナビに出会えたことがうれしくて、彼女に近づいた。  
 
「あのっ、えーっと、大丈夫ですか!?そこから出られますか!?」  
「…ちょっと力が足りないの…手伝って…。」  
メットールの中から手を伸ばすナビ。  
「わかりました!」  
ロールは彼女の手をとった。その手に力がかかる。メットールの山の一部分が崩れ、  
ナビが引っ張り出された。二人とも多少メットールに埋まったが、動けないほどではない。  
「もう大丈夫ですよ!…?」  
開放されたと言うのにナビはロールの手を離さなかった。  
ロールの手を握ったままナビは体を起こした。  
メットールに埋まっていて見えなかったその腹部は人間の妊婦のように膨らんでいた。  
違うのは、そこが透明で胎内が見えていること、そしてその中に居るのがメットールだという事。  
「ひっ!?」  
情報が混乱して過負荷に陥ってしまったロールを、異形のナビはしっかりと抱き締めた。  
それは回復したロールが必死に抵抗しても抜け出せないほどのものだった。  
「イヤっ!!放して!」  
ロールはナビに対して攻撃を加えようとするが、攻撃のほとんどはメットールに当たるばかりで  
ナビには大したダメージを与えられないままだった。  
空しい抵抗が続く間、ナビはロールを仰向けにして、下半身を足の間に割り込ませた。  
プログラムであるナビには生殖器は無い、当然強姦等の概念は無い。  
それゆえにロールは何をされるのかわからず、目を背けることが出来なかった。  
 
ロールが見たのは、ナビの足の間から太いパイプのような管が生えるところ、  
それがゆっくりと曲がるところ、それが自分の足の間に押し当てられるところ、  
「ぎゃあああああっ!!がっ、うぅっ!!」  
自分の絶叫と共に感じたのは激痛だった。一撃でデリート寸前に追い込むダメージのような痛み。  
お腹がぎしぎしと音を立てる。表面感覚が内側の歪みを中枢に伝え、それは不快感として処理された  
ナビはがくんがくんと体を揺らし、管をロールに突き刺していった。  
「ぐっ!くっ、あうぅっ!!」  
ロールは苦痛から逃れるため、必死で管が抜けるように、相手から離れるように動こうとした。  
ロールが逃れようとする時に生まれる新たな歪み、逃がすまいとするナビの強引な動き。  
それらが更なる苦痛となってロールを襲った。  
しかし、その内にロールのプログラムが書き換えられ、苦痛が快感に、不快感が幸福間へと変わっていった。  
「ふっ、うあっ!ああああああああ!!」  
次第に恐怖、苦しみ、幸福、怒り等が、同時に、急激に変化し続け、パラメータが処理しきれなくなり、  
快感だけを動物的に求めるようになっていった。  
 
「もっとぉ!!もっとゴリゴリしてぇ!!!」  
ロールとナビの接合部分からプログラムの欠片が飛び散る。  
「ふぅぅぅ、ん!あはぁっ!!」  
ナビの体がビクンと波打ち、管がひときわ太くなる。  
以前のロールなら耐え切れないような苦痛を与える状態だが、今のロールはそれを最高の快楽に感じた。  
太くなった管は、ロールの中に何かを吐き出していった。  
「う!?ふうっ、あはっあはははっ!」  
ロールのお腹は送り込まれたものでいっぱいになり、ロールの姿をナビと同じようにしていった。  
急激に風船のように膨らんだお腹の表面は激痛を訴えたが、それも快感として処理された。  
ずるっ、とロールの股間から管が引き抜かれる。管の刺さっていた所にはぽっかりと穴が開いた。  
「もっとぉ…」  
ロールは膨れたお腹に苦労しつつも屈んで、穴に自らの両手を突き込み、自ら快感を得ようとする。  
その間に、ナビはどこかへと姿を消していった。  
「あふ、あはぁ、ふあっ!!」  
ロールの手に何か硬いものが触れる。それは穴を押し広げ、手を押しのけて、  
そしてロールに最高の快感を与えてから、外に転がり出た。  
「あ゙ああああああああああっ!!」  
もはや理性の残っていないロールの視界に映ったのは、黄色いヘルメットだった。  
 
ピピピピピ!  
「熱斗くん!メールだよ!」  
「こんな朝から、なんだって?」  
「えーっと、読み上げるね。ウイルスバスティング協会から、新ウイルスの危険性と対処法、だってさ」  
「へぇ、なになに。"このウイルスはメットール種を大量に増殖させるもので、かなりの危険性がある。"」  
「メットール程度ならあんまり怖くないけどなぁ?」  
「"一番重要な点は、このウイルスはナビ内部に侵入し、そのナビを隠れ蓑、栄養源にする点である。  
 また感染したナビ自体がウイルス化してしまう。  
 感染を防ぐためのバッジファイルを添付したので、ナビにインストールすることを推奨する。"」  
「このファイルかな?早速インストールしておこうっと。」  
ピピピピピ!  
「またメールか?」  
「こんどはメイルちゃんからだ。…!」  
「"ロールが行方不明"!?急がなきゃ!!」  
 
END  
 

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