最近、ふと思ってしまう。  
結局私達と人間との違いって何なんだろう…と。  
私達レプリロイドだって、感情を持ってる。人間と同じものだって食べられる。そして、恋愛だって。  
 
『ミッション終了。これより帰投する。』  
「了解。お疲れさまでした」  
『まったく、五件も立て続けに起こったんだもんなぁー、体がいくつあっても足りないよ〜』  
『おいおい、愚痴を言うんじゃないアクセル』  
『そうだ。これが俺達の仕事なんだからな…給料安いけど』  
「ぼやいてないでさっさと帰る!」  
『『『……はーい』』』  
今日の任務も無事に終わった。  
今日はイレギュラー事件が二件、事故が三件起こった。  
また二体…私達の同胞「だった」モノが処分された。  
 
「よし。今日の任務はこれで終わりだ。各自休んでくれ」  
「了解です。シグナス司令官」  
「お疲れ様でーす」  
この一言で、イレギュラーハンターの職務は終わる。  
あとはそれぞれが定期メンテナンスをしたり、街に出て遊んだり、自分の部屋に戻って暇つぶししたり、食事をしたり…と、様々だ。  
レプリロイドだってストレスが過度に溜まると任務に支障を来すし、最悪イレギュラー化する事だってたまにある。  
こういう点も人間と殆ど変わらない。  
そして、私は。  
私の……場合は。  
自分の部屋の前に立ち、キーコードを入力するとお決まりの機械的な音とともにドアが開く。  
中に入ると、もうそこには明かりがつけられていて…  
「や、エイリア」  
「エックス……」  
かの伝説のレプリロイドの名を受け継ぐ、青い外装のレプリロイドが、私のベッドに腰掛けていた。  
 
「全く、通信機能があるんだから一言言って入ってよね。いっつもいっつも」  
悪態を言いながらも、私もエックスの隣に腰を降ろす。  
「ははっ、悪かったよ。次からは気をつけます」  
エックスは苦笑いをしながら、今まで冠っていた青いヘッドパーツを外す。そうすると中から無造作に切りそろえられた、ちょっぴり長めの茶色い髪が露出する。  
「エックスの髪って、奇麗ね」  
「そっ、そうかい?」  
ゼロのようにしなやかに長くもない。アクセルのように固めてもいない。でも、心からそう思う。  
「俺にとっては…エイリアの方が奇麗だと思うけど?」  
そう言いながら彼は私のへッドギアに手を掛けて、そっと優しく外してくれた。  
少しくせのある私の髪がふわりと降りる。  
「ほら、こんなにさらさらしてて、ふんわりしてて…。知ってる? ゼロの髪ってヅ…」  
「ちょっと待って。…それは言わない方がイイと思う…」  
私は慌てて彼の口を塞ぐ。  
「あ。そ、そうだった。スイマセン」  
今頃ゼロ、くしゃみでもしてるのかしら。  
 
それを想像して心の中で笑ってると、エックスは予告もなしに私の手袋と、腕アーマーを外していく。  
「あ、ちょ、ちょっとエックス?」  
「髪だけじゃない。君の手だって、こんなに奇麗だ」  
そう言って、私の手に、腕に、優しく口付けるエックス。  
もう、駄目。胸の高鳴りが止まらない。メイン動力炉の音なんだって判っているけど。止まれない…  
「え、エックス……」  
「エイリア。好きだよ」  
エックスの少し固めの唇が、私のそれと重なった。  
そう、これはいつもの光景。私は…いつも、毎日こうして……彼に、エックスに抱かれている。  
私は…彼を。エックスを、…愛している。  
 
「むっ、ふむぅっ……ん、ん…」  
エックスの味覚装置…舌が、私の口の中を少しずつ蹂躙していく。彼は、いつだって優しい。決して、無理強いはしない。  
やがて私も、エックスのそれと絡め合わせたり、吸い上げたりしていた。部屋中にぴちゃぴちゃとした厭らしい水音が響いていく。  
構造的には味は殆どしないはずなのに。なんでこんなに甘く感じるのだろう。  
やがて彼が名残惜しそうに唇を離すと、私達の間に細長く白い糸が出来て、そっとお互いの胸部パーツの下に落ちる。  
「…いいかい?」  
優しい笑みを浮かべて、私の頭を撫でながら、私に問いかけるエックス。  
髪を梳いてくれる手が…気持ちいい。  
私は今、一体どういう顔をしてるのかしら。きっと茹でた蟹みたいに、まっ赤っかになってるのかも…  
答えなんて、分かりきってるはずなのに。優しさで言ってるのか意地悪で言ってるのか、最近判らなくなる。  
「…ん」  
私は肯定の意味を込めて、首を一回だけ縦に振る。  
いつも方法は異なってるけど、私からの返事がこれからの…二人だけの時間の合図だった。  
 
私とエックスがこういう関係になったのは…あの忌わしい「コロニー落下事件」のすぐ後だった。  
あのとき彼は友の…ゼロの正体を知り、失ってしまった。ゼロの他にも…たくさんの仲間たちを失った。  
ゼロは後に帰って来れたけど…あのときは私もエックスも、精神的にも肉体的にも、どうしようもなくなっていた。  
悲しくて、寂しくて。他人の肌が欲しくて…  
そのときに私とエックスは、レプリロイドの垣根を超えた…男と女の関係になった。  
 
出会ったときは…夢や精神論ばかり口にする彼を…内心冷ややかに見ていた。  
でも…だんだん、通信でサポートしているうちに、彼の戦いぶりや優しさを知るうちに……いつの間にか、私はエックスに惹かれていた…  
それを自覚したときから、いつかはこうなるのだと…期待していたのかもしれない。  
 
固めのベッドにそっと横たえられ、カチャカチャと音を立ててエックスが私の事務用装備を外していく。  
いつもされてる、いつも脱がされてるはずなのに、どうしていつも恥ずかしく感じてしまうんだろう。  
やがて私もエックスも、外装を全部外し終え、その下に着ていた防護ウェアも脱いで、肌色の人工皮膚だけの姿になる。  
「奇麗だよ、エイリア。いつ見てもほんとに奇麗だ」  
「…や、そんなに…見ないで……」  
私の肌には、まだ昨日した「行為」の跡が少し残っている。  
やっぱり恥ずかしい……。でも、愛しい人に自分のこの姿を見られているってだけで、もう私の体は熱くなってくる。  
「エックスの、身体だって…」  
私の細く弱々しい体に比べて、エックスの逞しい体…。  
分厚い胸、適度に人工筋肉の付いたお腹。  
正直言って羨ましい。  
「そっ、そうか? 俺の体、こんなに傷だらけなのに」  
エックス、真っ赤になっちゃってる。  
…知っているよ。その傷の一つ一つが貴方が…エックスがどれだけ人々のために戦って、どれだけ多くの同胞達のために涙を流してきたのか。  
「それがいいの。私はそんな風に他の人達のために傷付いてきた貴方が…」  
"その後は言わなくていい"とでも言うかのように、彼は私の唇をそっとまた塞いだ。  
ああ、やっぱり私はエックスが好き。こんな感情、研究員時代の同期だったゲイトにすら感じた事はなかった。  
彼は彼で、相当モテていたようだけど…  
 
何度も何度もキスをすると、次第に唇が私の顎の下や首にまで降りていく。  
時々舌を這わせて、時々ちくりとするような感覚を与えながら。  
そしてゆっくりと、私の両の乳房を揉みあげていく。その感触を楽しみながら。  
「…んっ!」  
エックスの指で形を変えて、刺激される度に私の背中に電気が走るような感触が来る。実際に流れてる訳じゃない。防護ウェアを外した私達の体は危険を察知し易いように敏感になっている。  
本来ならただそれだけの筈なのに、こうやってエックスに触られているときだけは、こんなに敏感に感じてしまう。  
まぁ、エックス以外に触られた事はないんだけど…  
「ん、んあっあ!」  
エックスの舌が私の左の乳房に寄って…その先の頂きをちろりと舐める。  
私の反応を見ると、今度は唇全体で吸い上げてく。歯で甘噛みして、空いた右の乳首は指でくりくりと弄る。  
「ふ、あっ、だ、めぇっ…」  
「…片方だけじゃだめ? …じゃあ右の方もやってあげるよ」  
そう言って左右を変え、今度は右の乳首を唇で攻めてくる。  
「そっ、そんな事言ってな…むぅうっ!」  
何度もされてるはずなのに…私はエックスの一つ一つの仕種に未だに慣れない。  
 
「大きくなったよね。エイリアの胸…柔らかくて甘くて……とてもいいよ。ずっと触ってても飽きないよ」  
「だっ、誰のせいだと…」  
確かにここ最近、胸の装備がきつい感じがする。私達レプリロイドは、成長しないはずなのに。  
「はいはい。俺ですよ。どうせなら君専用の新しい装備を作ってもらえるよう頼んでみるけど?」  
クスリと意地悪な笑みを浮かべるエックス。普段の熱しやすくて、お子さまのアクセルと漫才みたいなケンカしてるちょっと子供っぽい彼とは大違いだ。  
何倍も、大人びて見えてしまう。…厳密に言えば、作られて二十年近くしか経ってない私よりも彼のほうが「年上」なんだけど。  
「いいわよそんな……ああっ!」  
エックスの手が、私のあそこ…生殖部分をそっと刺激した。  
私達にとっては擬似的なものでしかないところ。…でも、彼を受け入れる場所。  
「胸だけじゃないね。ここも、凄く敏感になった」  
彼の言う通り、私のそこからはもうとろとろと液体が流れ出ている。  
どうしてこんなところまで精巧に人間に似せられているのだろう…。  
彼が体勢を入れ替えて、私のそこに顔を埋める形の体勢になる。  
当然、私の顔の前にはギンギンに自己主張した…あの、その…。彼の…ペ、ニスが、ある訳で。  
 
「エイリア。俺のも…やってくれないか」  
「ん…」  
私はそっと彼のペニスの先にキスして…ゆっくりと口に含んでいった。  
「うっ、ああ…! いいよ、エイリア…」  
データ上では、エックスのペニスは大きいほうらしい。流石は伝説のレプリロイドの後継者と言ったところだろうか。  
でもそんな事は、今更どうだっていい。  
私が彼のペニスを含みながら頭を前後に動かしていると、エックスも私の大陰唇を指で開いて、クリトリスと奥のほうまで、丹念に舐めあげてくる。  
「ん! んぶぅっ、ふぐ……」  
彼は私の一番感じるところを全部知ってる。感じる所全てを、私がやって欲しいようにしてくれる。  
私だって、負けてられない…! 私だって、いっぱいいっぱい、彼に感じて欲しい。  
部屋中に、私と彼が溢れさせる、厭らしい水の音が広がっていく。外に聞こえちゃうんじゃないかってぐらい。  
「エイリアっ…」  
エックスが腰を引いて、ペニスを私の口から出す。同時に私のあそこを攻めるのも止める。  
私を仰向けに寝かせて、脚を開かせる。  
「あ……、え、エックス…」  
…いよいよ、エックスがそのペニスで…私を犯してくれる……。いつものように、愛してくれる。  
不粋と言われるかもしれないけど、私はそれを期待していた。  
 
「…エイリア」  
エックスのペニスが…私のそこに当てがわれて…  
「……!!?」  
挿れて…くれない?  
どういう訳かエックスは、挿入せずに入り口のところをペニスで何度も、何度も摩り合わせていた。  
挿入されていないけれども、クリトリスが刺激されてなんとも形容しがたい中途半端な快感が来る。  
「え、エックスっ…や、なんで……ああんっ」  
「エイリアが可愛いものだから…ちょっと苛めたくなっちゃってね。  
でも、俺はこれも結構気持ちがいいよ?」  
クスリと笑って、更にペニスを擦り付けるエックス。  
「あ、やぁ…意地悪……しないでぇ……! あ、は、はや、くぅ…」  
「早く? なにを?」  
エックスは私の口からその先の言葉を言ってくれるのを期待してる。こんな、恥ずかしい言葉…彼の前でしか言えない…。  
「早く…あなたの、あな、たのペニスを……! 私の中に、入れてぇっ…!」  
「…了解♪」  
妙に楽しそうな返事のあと、エックスは私の大陰唇を指でそっと広げて…私の膣内に一気に挿入した。  
「んぅっ! は、入ってく、あああああ―――――っ!」  
私の身体に、待っていましたとばかりに電流みたいな快感が走った。  
 
「ふう、うぅっ…え、くすぅっ…」  
肩で荒く呼吸をしてる私に、エックスは優しく額にキスをしてくれた。  
「焦らしちゃって悪かったね…。動くよ?」  
エックスがゆっくりと動き始めた。  
ぎし、ぎしとベッドが軋む音がして、それと同時に私のあそこがエックスのペニスで掻き回される音がだんだんと大きくなっていく。  
「あ、あー! あひっ、ひぃ、ひぃぃっ!」  
突かれる度に、私の奥に…子宮口にこつんこつんと先端が当たっている。その度に頭がくらくらしてゆく…  
「凄いよ…! いつもよりもこんなにぬるぬるして、締め付けて…よっぽど欲しかったんだね、エイリア」  
「あー、あふぁぁ! そ、そう、わたしっ、欲しかったのぉ! エックスのがお、奥っ! お、くに、来てるのおっ! ヒァアッ!!」  
体位を変えられ、バックから突かれる。まるでケダモノみたいな格好。でも…キモチイイ……。  
「あー! あー!! え、えっくすぅっ! えっくすぅぅ! こんな格好、や、あぁ!」  
「イヤって言ってる割に、随分と腰を動かしてるじゃないか。やらしいね」  
「え、エックスのが…気持ち良過ぎ、るからぁ…こ、腰が、腰が勝手に動いちゃうのぉっ…!」  
もう頭のCPUの中はぐちゃぐちゃ。ぬとぬと。ぐちゅぐちゅ。ぱちゅんぱちゅん。  
バグッたかのようにもう訳が判らなくなっちゃってる。只エックスしか感じられない。  
 
「エイリア…俺も、君のが…とても、気持ちがいい…」  
やがて体位を正常位に戻され、エックスは私を激しく貫きながらキスしてきた。  
下と同じぐらい、激しく口の中を犯してゆく。  
「むふぅんん、んんふー、んっんんー!!」  
二重の快感で呼吸すらも苦しい。…でも、嬉しい…!  
「んぷあっ…、あっ、ひっ、ひんんっ…すっき、好きっ…」  
キスを解いた瞬間、ぞくぞくとした感じと一緒に、奥からどんどんと込み上げてく。  
絶頂……オルガニズム。  
「わ、わたっ、し、もう…だめ、ダメぇぇっ……」  
「エイリア……エイ、リア……!!」  
私の絶頂が近い事を感じ取ったエックスは、私をぎゅっと抱き締めてくれた。ラストスパートとばかりに更に腰を打ち付けていく。  
「あ、あ…! い、くっ、イクっ……! エックス、わたしっ、イッちゃう、のおおっ!」  
「くっ、俺もっ、そろそろっ……!」  
「きて! きてぇぇ!」  
エックスの最後の一撃が来た瞬間に、私の膣内に熱いものが走って…  
「くぁっ! あ、あぁああぁあ――――――――――!!」  
ビクンビクンと、私の背中が弓のように反り返る。それと同時に私の膣に、エックスのDNAプログラムが…人間で言えば精子が、私の奥の奥までたっぷりと注がれていった。  
 
「あ、ああ…流れ込ん、で…!」  
「エイリア……」  
私もエックスも、しばらくの間お互いを抱きあっていた。もちろん、挿入したまま…  
人間のセックスに比べれば、私達のは擬似的なものでしかない。  
でも、いつ死を迎えるかも判らない今で…私に女としての悦びを与えてくれたエックスを…心から感謝している。  
それでも、私達と人間とは…決定的な違いがある。  
疑似生命体である以上、"それ"は当たり前だ。"それ"は分かっている。分かっている、けれど……"それ"を思うと、無性に悲しくなってくる…  
「…エイリア?」  
はっと、エックスの声で気が付く。  
私はいつの間にか、泣いていたらしい…  
「エイリア、俺、今日は随分ひどい感じに抱いちゃったね…ごめん」  
彼が私の額にそっと口付けて、優しく抱き締めてくれる。  
「…ううん、エックスのせいじゃないの…」  
「じゃあ、どうしたんだい?」  
「…前に言ったわよね? 私…"夢? レプリロイドがどうやって?"って…」  
「ああ、そんな事もあったね」  
今思えば、とても馬鹿らしい一言だ。  
「私…夢ができたの。エックスと一緒に戦えてから、こういう風な関係になれてから…」  
「どんな夢…? 教えて、くれるかい?」私は少し躊躇った。  
「わ……笑わない?」  
叶わないと分かってる夢。でも…  
「笑うもんかよ」  
エックスは優しく微笑んでくれた。  
 
「私……、エックスの、子供が産みたい……!」  
 
「……!!」  
予想通り、驚いた顔をするエックス。  
私達は………レプリロイドは、子供が産めない…。  
エックスの表情を見たくなくて、悲しくて、思わずそっぽを向いてしまう。  
「バカよね私。ほんっとにバカ…! なにが一流のCPUなんだか…!   
オペレーター、失格よね…!」  
ところが、エックスは抱き締める力を強くして、私の頭をちょっと乱暴に撫でてきた。  
「っきゃっ、ちょ、ちょっとエックス?」  
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」  
言葉になっていない奇声を発してる。  
「やばい、なんか俺凄く嬉しいかも」  
「え、な、なんで……?」  
「何でって…好きな女の子が俺の子供産みたいなんて言ってくれたら、男なら誰でも嬉しいと思うけど?」  
 
「……!! で、でも私達レプリ…」  
「そんなものこの際関係ないさ。それにいつか…人間もレプリロイドも垣根なんかなくなる…子供を産んで育てて…、そんな日が、きっと来る…!!」  
今のこの状況を考えると、本当に夢物語のような話。  
でも、エックスのこの言葉で…、私は、救われたような気がした。  
「だから、一緒に頑張ろう。エイリア…! ゼロ達と、…俺と一緒に。」  
「っ!! はっ、はい……!」  
私の返事を聞いたエックスは、わざとチュッと音を立てて、軽くキスをしてくれた。  
 
やっぱり、貴方を…"ロックマン"エックスを好きになって…良かった。  
私の夢は叶わなくたっていい。それでも、私は幸せ。  
 
愛する勇者に抱き締められながら、私の意識は深く暗いオフラインの世界に入っていった。  
 
end  
 
 
 

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