それは人類の「衛星ムーン」への移住計画が水面下で活動されているある日の事。  
「ねえ…エックス。相談があるんだけど」  
オペレーターのエイリアが、エックスに相談を持ちかけてきた。  
「なんだい? 改まって」  
エックスと彼女は、みんなには内緒(とは言っても殆どバレバレ)ではあるが、人間で言うところの恋人同士である。  
人間と完全に同じ思考を持つレプリロイドである以上、恋愛感情が芽生えるのも当然と言える。イレギュラーハンター内では、ストレス等によるイレギュラー化予防と任務をスムーズに遂行する意味も含め、そういった交際も黙認されている。  
それでこの二人、お互いの間での隠し事とかは極力しない事を心掛けていたが、こういう風に相談を受けたのは初めてだった。  
「え、えっと…あのね……」  
「……?」  
もじもじとしながら言葉をつまらせるエイリア。  
いつもの仕事のときの凛々しい表情とは段違いだ。  
彼女は丁度先日、事務用アーマーを新調したばかりだった。今まで上げていた髪を降ろし、全体的なシルエットも彼女のスタイルを崩さないようにスッキリとしたデザインに変わっている。  
エックスはその様子を"可愛いな〜"とニヤけながら眺めていると。  
「私を……鍛えてほしいの!!」  
「ハイ←ーーー??」  
その言葉は、エックスにとっては全く予想打にもしなかった言葉だった。  
 
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。  
なんでまた突然? 君はオペレーターが仕事だろ?」  
「オペレーターは続けるわ。でもそれ以外にも…エックスの役に立ちたいの!  
せめて、自分の身を自分で守れるぐらい…! エックス達が、安心して任務を遂行できるように…。お願い、エックス」  
彼女のまなざしは真剣そのものである。  
彼女の言う事はもっともだ。でもどうもエックスは乗り気にはなれなかった。  
それはエイリア自身も傷付く可能性が増えると言う事である。彼女を危険な目には合わせたくないし、なにより惚れた女性を守る事が出来なければ、男が廃ると言うモノである。  
しばらく悩んでいるうちに、エックスの脳裏にピーンとアイディアがひらめいた。  
「(…そうだ! ここはわざと厳しく…ビシバシやればあまりの厳しさに諦めてくれるかも…)」  
「あのー。もしもーし…」  
エイリアが心配そうに見つめているとエックスは彼女の両肩をがっちりと掴み、うさん臭い満面の笑みを浮かべた。  
「わかった。それじゃあ今から特訓だ!!」  
「えーっ!? 今からッスか?」  
さっきまで散々悩んでいたくせに、突然開き直ったかのように乗り気になるエックスにビビるエイリア。  
「やるからにはビシバシいくからねエイリア!  
…それから特訓のときは俺の事はコーチと呼ぶ事!」  
「はっ、ハイ、吾郎さ…いや、コーチ!!」  
妙に張り切るエックスにイヤな予感を覚えながらも、取り敢えず素直に従う事にしたエイリアだった。  
 
そんなこんなしてるうちに、エイリアがコーチ…エックスに連れられてきたところは、ハンターベース地下一階のリラクゼーションセンターに備えられた、バッティングセンターだった。  
「あのーエックス。ここで一体なにを…?」  
不安そうに挙手するエイリア。  
「コーチと呼べ! ひろみ!!」  
「はっ、はいぃ!!(ひろみって誰?)」  
エックスの異常な迫力に圧倒されるエイリア。  
「えー、ゴホン。ここではバッティング練習をしてもらいます。」  
「それだけでいいの?(ひろみって誰…?)」  
ほっとしたのもつかの間。  
「…ただし、1000回!!」  
「えーーーーーーーーーーーっ!?」  
「なお、100本ごとにボールのスピードが少しずつ早くなって来るから気を付けるよーに!」  
「せ、1000回??? 戦闘とどんな関係が???」  
「これはゼロも非番の際にやってる訓練なんだ。野球のスイングで人工筋肉がしなやかになって全身が鍛えられるし、…なによりダイエットにもなるよ?」  
「…うっ!! が、がんばりますコーチ!」  
人間でもレプリロイドでも、女性は"ダイエット"と言う言葉に弱い。エイリアは疑問を感じつつもエックスを信じて、自分自身に喝を入れて頑張ってみる事にした。  
 
だが…それはエイリアの予想以上に厳しいものだった。  
「ハイもっと振りかぶる!」  
「はっ、はい〜!」  
「ボールをよく見て!!」  
「む…むりでぇ〜す!?」  
「バットをしっかり握る! そんな事では甲子園へは行けないぞ!!」  
「な、何の事よ〜!?」  
「姿勢を崩さず! ハイワンツー、ワンツー!」  
……  
結局エイリアは400と半分程度で完全にバテてしまった。  
「こ、コーチぃ〜…。もうバテバテでぇ〜す…  
(な、なんか途中から全然違う事してたような…)」  
無理もない。事務仕事しかしていないサポートレプリロイドである彼女に戦闘レプリロイドの体力がある訳がない。  
「452回か…ま、初めてにしては上出来な方かな。  
…さーて次は射撃練習場へ行くよ?」  
「えー…? ちょっと待って…」  
「ダーメ! 厳しくするって言っただろ?」  
「ひぇぇ〜! 誰か助けてぇ〜!!」  
まだヘロヘロなエイリアの腕を掴んでずるずる引っ張るエックスだった。  
……  
 
そんなこんなをしてるうちに、数時間が過ぎていった。  
「あっ! いたいたエックスさーん!」  
「…ご苦労さまです。エックスさん」  
エイリアに付き添っているうちに自分もトレーニングをしていたエックスがエネルギードリンクを飲んでる最中、二人の女性型レプリロイドが声を掛けてきた。  
「やあパレット。レイヤー。二人とも今日の職務は終わりかい?」  
二人はエックスの前に立つと、形式の通り軽く敬礼をした。  
背の低い緑の事務装備をした、活発そうな少女型のレプリロイドがパレット。反対に背が高く、目を切り揃えられた長髪で隠れた紫色の事務装備をした女性型レプリロイドがレイヤー。二人とも最近司令部に配属された新人オペレーターである。  
「は、はい。あの…。エイリア先輩を見ませんでしたか…?」  
「エイリア?」  
「先輩と夕ご飯一緒に食べる約束してたんですぅ〜」  
「…あ、ああ。エイリアならそこに……」  
エックスが後めたそうに指を指した先には……  
「………?」  
「は!!」  
そこにはエックスのハードな特訓で完全に燃え尽きたエイリアがいた。  
「エイリア先輩が……まっ白な灰になってるですぅ!!」  
 
「い…一体なにしたんですか…?」  
「ああ。エイリアが俺に"鍛えてくれ"って言ってきたものでね。  
取り敢えずイレギュラーハンターのトレーニングメニューの半分を体験学習させてみたんだよ」  
「あ゛…。レイヤー…パレット…わんばんこ〜」  
ようやく後輩の二人に気付いたエイリアはぐったりしながらも手で軽く挨拶をする。  
「先輩には似合わない古典的なギャグ…。全力出し切っちゃったんですね…」  
「あのレイヤー。冷静に見てる場合ぢゃないと思うです…」  
「コーチぃ〜。まだやるんすか〜?」  
魂が抜けたような情けない声を出す。  
エイリアが臨界点に達してるのは誰の目から見ても明らかだ。  
心配そうに見つめてるパレットとレイヤー。  
「いや。今日はこれで終わりだ。よく頑張ったねエイリア」  
エックスはエイリアの肩を手でポンと叩くと。にこりと微笑んだ。  
「…! きゃっ?」  
そしてエイリアの背中と脚を掴んで、いわゆる"お姫様抱っこ"の形で軽く抱えてしまった。  
「ちょちょっとエックス!? ここ人前! 恥ずかし…」  
「暴れるなよエイリア! 数時間の運動で燃え尽きてたくせに、  
どうせまともに歩けやしないだろ?」  
「〜〜〜…」  
ようやくエイリアは、顔を真っ赤にしながらも納得し、大人しくなった。  
 
「済まないけど二人とも。夕食は今度にしてやってくれないか。俺はエイリアを部屋まで送っていくからさ」  
「「はっ、はい!」」  
二人とも改まったようにビシッと敬礼する。  
「いいよ。そんなに改まなくっても。…おやすみ」  
「ごめんね二人とも…また都合を付けるからね。おやすみ」  
「…お、おやすみなさい…」  
「おやすみなさいです…」  
エックスがエイリアを抱えて去った後も、二人はポカンとしていた。  
「う、うわー…エックスさんけっこう大胆ですぅ」  
「…ああいうのを、"ラブラブ"って言うのですかね…」  
「でも…エイリア先輩羨ましいです。エックスさん、強くてカッコ良くて優しくて…。  
ワガママでお子さまなアクセルとは全然違うです」  
「そうね…。でもアクセル君にもいい所はあるわ…。  
エックスさんも素敵だけどゼロさんもクールで知的で……憧れます」  
「うーん…でもゼロさん、ああ見えて結構ナイーブなところもあるですよ?  
亡くなった恋人の事をまだ引きずってるとか…」  
「あっ…そういえばアクセル君もああ見えて…」  
いつの間にか時を忘れて、"ハンターベース内のいい男"話に華を咲かせる年頃の二人であった。  
 
……  
エイリアの部屋の前に立ったエックスは彼女を抱えながらコードキーを何の戸惑いもなく入力し、中に入る。  
明かりを付けた彼女の部屋は、きちんと掃除はされているものの、デスクの上は資料だらけ、備え付けの専用のノートパソコンはメモがペタペタ貼付けっぱなしなどかなり両極端。それでも殆ど片付けられずにほったらかしのエックスの部屋と比べれば奇麗なものである。  
そして部屋の奥にある可愛らしい"コブン"と"メットール"のぬいぐるみの置いてあるベッドに、エイリアの体をそっと降ろす。  
「ほーらエイリア。もう着いたよ」  
「う…。あ、有り難とねエックス…。」  
「俺はテキトーにエネルギーブロックでも食べてるからさ。エイリアはおフロでも入ってきなよ」  
各職員の部屋には人間のマンションと殆ど変わらない最低限の生活設備が揃っている。  
「えーめんどくさぁ〜い…。シャワーで…」  
「ダメだ!! 入ってきなさい!!  
女の子が身だしなみに気を付けなくてどうするんだ!」  
エックスに妙に凄まれるエイリア。  
これではどっちが保護者なんだか分かりゃしない。  
「はっ、はーい…」  
エイリアは気怠そうに起きると、よろよろしながらバスルームの方に歩いていった。  
…それをエネルギーブロックをかじりながら見届けたエックスの瞳が、キュピーンと輝いた。  
 
……  
「ふ〜う…今日は疲れたぁ…」  
一人か二人ぐらいのスペースの小型のバスタブに、エイリアは湯舟の顔半分まで浸かっていた。  
「でもまさかエックスがあんなに厳しいなんて思わなかったわ…。  
流石は第17精鋭部隊の隊長さんってとこかしら…」  
今日の事を思い出し、感慨に深けるエイリア。  
「でも…私って体力ないなぁ…。エックス、がっかりしちゃったかも…」  
好きだから、足手まといにも役立たずにもなりたくない。  
だが今回の特訓でエイリアは自分の非力さを実感してしまった。  
ひょっとしたら、幻滅してしまったのかも。  
そんなネガティブな考えになってしまっていたそのとき。  
「俺がなんだって?」  
バスルームの扉の外から、突然愛しい人の声が聞こえてきた。  
「えっ!! えっ、エックス…わた、わたしまだ入って!」  
「いいじゃないか一緒に入れば。俺も入れるぐらいのスペースはあるだろ?」  
カチャカチャとアーマーを脱ぎ捨てる音がする。  
「でっでもまだ私体洗ってない!」  
「それがどうしたんだい今さら?」  
自動ロックされてたはずのドアがあっさりと開き、防護ウェアも下着も全部外したエックスが入ってきた。  
 
「………」  
金魚みたいに口をパクパクさせて顔を真っ赤にするエイリア。  
彼はタオルも何も巻かないで入ってきているのだ。…もちろん、前も丸出し。  
「何恥ずかしがってるの。俺達お互いの体全部知ってる仲じゃないか」  
「で、ででででも前ぐらい隠し…」  
「おフロってのはずっと昔からの社交場! 人間もレプリロイドも関係なし!! タオル等は邪道!!!  
…って、これはゼロの受け売りなんだけどね」  
シャワーのスイッチを押して、体に温水を浴びせるエックス。  
髪が水に濡れて垂れ下がり、いつもと違った印象になる。エイリアはエックスと何度も肌を重ねながらも、彼のこんな姿を見るのは初めてだった。  
取り敢えず全身一通りシャワーを浴びたエックスは、エイリアの隣のスペースに体を入れた。  
湯舟の量が増して、少しお湯が溢れ出る。  
「それに俺達…こうして一緒におフロ入った事なかっただろ?」  
「う…。そ、そうだけど…」  
バスタブが少し狭いので、ちょうどエイリアはエックスに抱き締められてる感じで、寄り添うように湯舟の中に入っている。  
「まだ、恥ずかしい?」  
「え、エックスは…恥ずかしくないの?」  
「ん? そりゃあエイリアといるときはいつも恥ずかしいさ。さっきだって結構恥ずかしかったんだぜ」  
 
意外な一言だった。  
"なんだ。おんなじなんだ。"そう思うと無性に可笑しくなっていった。  
「ふふっ…、やっぱり私達って似たもの同士ね」  
「だから心も体も、戦いのときの相性も最高なんだよ。  
ゼロもアクセルも俺にとっては大事な相棒だ。でも俺が心から命を預けられるのは、君しかいない」  
「エックス…」  
濡れた手で、エイリアの頭を撫でる。  
撫でられる度に、彼女の頬はお湯の熱気も合わさって赤く染まってゆく。  
「…でも驚いたよ。君が特A級のハンターでさえ音を上げるトレーニングコースを半分もこなせるなんてさ」  
「えっ!? ほんと?」  
「ほんとほんと。  
だから、君だけが慌てて俺達のようにならなくたっていいんだ。  
一緒に戦ってくれている事には変わりないんだからさ。…一緒に強くなっていけばいい」  
そう言いながら一瞬触れる程度の軽いキスをする。  
「…んっ!」  
ピクン、と可愛い反応をするエイリア。  
「え…エックス、ひょっとして、ここで?」  
「ここじゃあ嫌かい? どのみちお風呂から上がっても俺は君を抱くつもりだけど?」   
また意地悪な笑いを浮かべるエックス。  
もうこうなってしまっては何を言っても無駄だし、エイリア自身も一度火照ってしまった心と体を抑える事なんてできはしない。  
「ダメな訳…ないじゃない」  
「そういうと思ってたよ」  
「エックスの…わがままっこ……ンンッ…」  
今度はさっきよりも、深く口付ける。  
「ン…ンん、フー…ふぅ……」  
がっしりとエイリアの頭と背中を押さえ込んでキスをするエックス。  
エイリアも彼の背中に手を回す。  
やがて音を立てて、舌を絡み合う音と、二人が動く事で湯舟が波打つ音がひとつになっていたが、口付けを交わし合ってる二人にはそれを知る由もなかった。  
 
「ふぁ……やぁ、ん!」  
唇を離したあと、エックスは彼女の柔らかい乳房をふにふにと揉み始める。  
「ン…、ちょ、待ってエックス…」  
エイリアは彼の愛撫を敏感に感じながらも、それを慌てて止めさせた。  
「…どうしたの」  
いいところでお預けを喰らったエックスは不安そうな顔をする。  
「えっと……。あの、ね…。  
きょ、今日は私から…その、して…あげたいと言うか…」  
顔を赤く染めながら小声で爆弾発言をする。  
「え…い、いいの?」  
してあげる……  
"してあげる"→"フェラチオ"→"ご奉仕するにゃん"という風にエックスのCPU内で切り替わる。  
普段の彼女を知ってる仲間が、あの後輩達がエイリアがこんな言葉を口にするなんて誰が想像するのだろう。  
エックスは彼女の本来の姿を、自分しか知らないと思うとなんとも言えない高揚感に襲われる。  
「……うん…。今日はいっぱいエックスに苦労を掛けちゃったし…  
ここ最近は私がされっぱなしだし…」  
確かにここの所、エイリアはマグロ状態で殆どエックスがリードしてあげていた。エックス自体は飽きる事はなかったが、このままではマンネリ化は否めなかっただろう。  
「エックスにも…、気持ち良くなってほしいから」  
「(か……可愛い……!! 可愛いよエイリア!! ハァハァ)  
じゃ…俺のここ……してくれる?」  
エイリアは潤んだ瞳でおずおずと、頭を下げた。  
エックスは萌え死にそうになるのを必死に我慢しながらも、バスタブから腰を上げ、少し背をもたれさせて楽な姿勢を取る。  
「あ…凄い……。もうこんなにかちかちになって…」  
もう既にビンビンに脈打っているエックスのペニスに、エイリアは頬を染めながらその桜色の唇を近付け、先端にチュッとキスする。  
「…!! くはっ…」  
そして、ゆっくりとその小さな口で、エックスのペニスを口いっぱいに頬張る。  
全部は口の中に入りきらないものの、彼女は拙いながらも一生懸命頭を前後に動かして奉仕した。  
 
「うっ…、〜〜…!」  
エックスはそのぎこちないテクと潤んだ上目遣いに早くも来そうになってしまうが、男の意地で必死に我慢している。  
「(あ……、エックス、かわいいかも?  
今日はビシビシしごかれちゃったから……ちょっと仕返ししちゃえ)」  
エイリアは彼のペニスを口から出すと、今度は自分の両の乳房でそれを優しく包み込む。  
「うぁ…、エイリア。いつの間にそんな…」  
「いつの間にって…教えたのはエックスよ…んっ」  
「そ、そうでした…く、あぁっ」  
胸で包みながら、飛び出ている先端を口に含む。  
口の中の亀頭を舌で刺激して、乳房の動きを速くしてみると、言葉には出さないものの面白いぐらいに反応してくる。  
「う…、くっ、エイリアっ……!!」  
「えっふふ……、ひもひいい……?」  
「し、しながら喋ら…はひっっ!!?」  
一瞬気を抜いたその瞬間、エックスは遂に根負けした…。  
ビクン! ドプッ、ドク、ビュルッ……!!  
エイリアの頭を掴み、彼女の口の中いっぱいに精液を吐き出す。  
その匂いと量にむせ返りそうになりながらも、エイリアは彼の白濁の液体を全部飲み込んだ。  
口からエックスのペニスが離れると、唾液と精液の混じった糸が滴り落ちる。  
「あ…。ごめん。だ、大丈夫だった?」  
「ン…、へい、きだよ…? エックスのだもん、イヤな訳ないじゃない」  
 
「エイリア…」  
涙目でにこりと微笑んでくれる彼女に心の中で謝罪しながら、今度は逆に彼女のほうをさっきまでの自分と同じような姿勢にさせる。  
「じゃあ今度は俺がしてやる番だね…。エイリア。左脚を上げてみて」  
「…こ、こう?」  
言われた通りに、左の脚を湯舟から出す。エックスはその柔らかい脚を掴んで、バスタブの側面に引っ掻けるような形に置く。  
「……! ちょ…こんな格好…」  
「なかなかいい眺めだよねぇ〜、エイリア?」  
それはちょうど、彼女の秘部がエックスに対して丸見えな格好になってしまっていた。  
もうそこはヒクヒクと蠢き、お湯とは全く違う液体が濡れそばっている。  
エックスはそれを見てまたもやちょっと意地悪な笑みを浮かべた。  
「ちょ、ダメ……んんーっ!」  
彼が上げた左足から舌を這わせ、愛液で濡れた秘所を丁寧に舐める。  
「や、ああ…エッ、クス…、そんな…」  
「今日は運動したから、汗のしょっぱい味も混じってるね…」  
「やあっ…! そんな事言わないでぇ…ああんっ」  
クリトリスを舌先で弄び、奥まで丁寧に舐め取る。  
「ひゃんっ! ひっ……、はぁんっ、あっ、あ!!」  
つい先ほどとは正反対の光景だった。  
エックスは彼女をより高まらせてあげようと、彼女のクリトリスを口に含んで音を立てて吸う。  
それと同時に指を2本、中に挿入させてぐちゅぐちゅと掻き回す。  
「だ、だめぇ! そ、そんなとこ…ヒァァっ!!」  
エイリアはその全身に走る快感に嬌声を上げ、濡れた髪を水を飛ばしながら振り乱している。  
 
腰もガクガクとしている事から、限界が近い事がエックスの目にも分かる。  
「俺も一回出したんだ…。エイリアも一回イきなよ?」  
「ひっ、やぁ……、も、もうだ、め、あああああああああっ!!」  
エイリアの背中が何度も仰け反り、その秘所からは大量の愛液が吹き出る。いわゆる"潮吹き"という奴なのだろう。  
「良かった?」  
「……うん。気持ち良かった…。  
け、けど…まだ終わり……じゃないんでしょ?」  
エイリアがお湯の中のまだ元気なエックスのペニスを見て、真っ赤にして訪ねる。  
「モチのロン。  
…手を付いて、お尻をこっちに向けてみて」  
「あ、うん…、こ、これでいいの?」  
エックスに言われた通りに、エイリアは彼のほうに向けてお尻を突き出す。  
「ああ。じゃあ…いくよ………」  
エックスも身を乗り出し、もうとろとろに濡れたエイリアの秘所に自らのペニスを当てがう。  
「ん…、来て……エックス…」  
了解したエイリアが瞳を閉じると、エックスはゆっくりと、自身を彼女の中に侵入していった。  
「ひゃ、あ…! あああああっ…!!」  
挿入はあっさりと済んだものの、エイリアの体はガクガク震えている。  
それが落ち着くのを待つと、エックスはゆっくりと腰を動かし始めた。  
「ひゃん、ああっ、すご…、えっくす、気持ち…いいよぉ…!  
反応を見つつ、強度を変えれば美しい快感の声を上げる。  
「ああ…。やっぱりエイリアの中……、最高だよ」  
バックで貫きながら、たぷたぷと揺れるエイリアの胸を少し乱暴に揉みしだく。  
先端を指でこりこりと苛めながらも、腰の動きをそれに合わせて強くする。  
「ひぃっ! ああっ…! だ、ダメぇっ……!!」  
お湯の温度と、エックスのペニスの熱さで目眩がするような感覚に襲われるエイリア。  
 
「あっ、ふあ、あひっ、え、エックス…お願い……! 向き、変えて…!」  
「え…? どうしたんだい?」  
「か、顔が……、見たい、エックスの顔を見ながら…イきたいのぉっ…!!」  
彼女のこんな可愛い願いを聞き届けられない男はいない。  
「分かったよ…! …っと!」  
エックスは挿入したまま彼女を自分のほうに向けさせ、俗に言う駅弁スタイルの格好になる。  
「ひゃん! あんっ! あっ、あっ、あっ! エックス…えっ、くすぅ!  
お、奥…、奥まで、届いてるよぉっ……!!」  
「エイリア…エイリアっ」  
そのまま動きを早めれば、エイリアは声にならない喘ぎを盛らす。  
もう理性も殆どない状態にも関わらず、時に激しく、時に優しく動くエックスには、エイリアに対する愛しさだけが取って見えた。  
やがてエイリアは、エックスの逞しい背中を抱き締め、きゅっと爪を立てた。限界が近い証。  
「やぁ…!! もう、ダメぇっ…!! わたしっ、イッちゃ…イッちゃうよぉっ……!!」  
「そう、だね…! 俺もそろそろっ、限界…!」  
「お願い、私のっ、わたしのなかにぃぃっ…!!」  
「ああ、エイリアっ…!! 一緒に…!」  
そして、一気にエイリアの全身を絶頂の波が襲った。  
「えっくすっ! えっ、く…ああああァァァあああ――――――――――!!」  
ドクッ!ビュクン!ドク、ビク、ビュルッビュクッ…!!  
膣内にエックスの熱い欲望が放たれた瞬間、エイリアは意識を手放した。  
 
 
……  
 
エイリアは"夢"を見ていた。  
ここのところ毎日のように見る"夢"。  
それは本来レプリロイドは絶対見るはずのないもの。  
だが…彼女はそのとき確かに見ていたのだ。"夢"を…。  
 
その中の自分は、赤ちゃんを抱えていた。  
愛しい人と同じ黒に近い茶色の髪に、翠色の瞳の男の子。  
そしてその傍らに、エックスもいる。  
エックスがぎこちなさそうに赤ちゃんの頭を撫でる。  
くすくすと笑う赤ちゃん。  
それにつられて、自分達も笑い合う。  
赤ちゃんの着ている服の左胸には、『Trigger』と刺繍されていた。  
 
……  
 
「ん…」  
「気が付いた? エイリア」  
気が付くと、エイリアは自分のベッドの中にいた。  
裸のまま、ブランケットの中で抱き寄せられるような形で。  
「ビックリしちゃったよ…まさかあのまんま気を失うなんてさ。  
身体は拭いたけど…ほんと、ごめん」  
「ううん、いいの。その代わり…」  
「その代わり?」  
「朝までずっと、抱き締めていて?」  
「…いいとも。お安い御用さ」  
エックスは一瞬、驚いたような表情を見せたが、すぐに了承し、再びブランケットを肩までかけてエイリアの体を温めるように抱き締めた。  
「…エックス」  
「なんだい……」  
「また、鍛えてね。一緒に強くなろ…」  
「…ああ」  
情事の気怠さと眠気で、二人のまぶたがゆっくりと下がっていく。  
「エックス…愛してる……」  
「俺も…だよ……。エイリア…」  
再びエイリアは、あの幸せな夢の中に戻る。だがエックスも、彼女と全く同じ夢を見ていた事を、まだお互い知る由もなかった。  
 
 
*おまけ*  
翌朝。  
「うーっス、おはよう」  
「おはようございまーす!」  
ゼロが眠たそうに通路を歩いている。もちろんその背中に垂れた髪の毛には、カール状の寝癖が…  
そのうちに、食堂からアクセルと新人オペレーターのパレット、レイヤー。ゼロの部下のひとりであるマグネ・ヒャクレッガーが出てきた。  
「あっ! ゼロおっはー!」「おはようございますです!」「…お早うございます」「お早うでござる隊長殿」  
「おう。お前ら朝飯済んだのか?」  
「それがまたアクセル牛乳とピーマン残したんですよ? もー信じられないです」  
「パレット嬢の言う通りにござる。好き嫌いはいかんでござるぞアクセル殿」  
「私達レプリロイドにもメインエネルギーとオイル系統以外の栄養素は不可欠なんですよ…」  
朝から言葉の袋叩きにあうアクセル。  
「もーいいだろ好きずきなんだから!   
あっ、そういえばゼロ。エックスはどうしたの?」  
「ああ。今から迎えに行くとこなんだ。朝のミーティングも近いしさ。  
…どーせまたエイリアの部屋だろ」  
「うはー! エックスってオトナだよねー!」  
「ドキドキするです…」  
「そうだ。これからみんなで迎えに行かねぇか? ちょっと脅しちゃおうぜ」  
『さんせー!!』  
満場一致でエックスとエイリアの部屋に行く事になったが……。そこにはにわかには信じがたい異様な光景が広がっていた。  
「ほらエイリア、髪をちゃんと解かす!」「ふぁ〜い…」  
「ドライヤーのコンセント入れっぱなしにしない!」「ご、ごめ〜ん」  
「ハイ食事のときはちゃんと手を合わせて!"いーたーだーきーます"!」「…いーたーだーきーます!」  
「エイリア、そのフットアーマー俺の! ああ歯もちゃんと磨く!!」  
その光景を、5人はポカーンと見ていた。  
「…主夫だな」「主夫だね」「主夫です」「主夫だわ…」「主夫でござる」  
それでも本人達は結構幸せそうだった。愛の力は偉大なり。おそまつ。  
 
おわり  
 
 

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