木の葉をそっとかき分けてみると、案の定人間の若い青年と女性が、ベンチに腰掛けながら互いの服の中をまさぐっている。  
その後ろを見ても、別のカップルが木の下でもう既に本番を初めてしまっていた。  
「(……っ!!)」  
「(う、うわぁ…)」  
前にゼロと興味本位で人間の女性のアダルトビデオを見た事があったが…それよりも凄まじいものである事は違いない。  
誰もそれを止めようとはしないし声も掛けない。干渉もしない。それがここでの暗黙のルールである事をエックスは理解した。  
そして、即座に自分達がここでするべき行動も。  
エックスは、他のカップルの情事を目撃してしまってすっかり固まってへたり込んでしまっているエイリアの後ろに廻り込み、そのままガバリと抱き締めた。  
「きや…、ちょっ…ちょっとエックス…!! な、なにを…!?」  
「なにをって…、何かこう、燃えてこないか? ムラムラと、さ?」  
突然のエックスの行動におたおたするエイリア。だがそんな彼女とは正反対にエックスは落ち着き払っている。  
だが…、目は狼のように鋭く、息も荒くなっている。  
まさしく"まさにプッツンキレてもうた猿や!"状態である。(何故大阪弁?)  
「(ううっ、これってひょっとして…盛りがついたってやつなの!?)」  
「エイリア…!」  
キスしようとする。だがエイリアは彼のアゴを掴んで、必死になって遠ざけようとする。  
二人っきりの部屋の中なら嬉しいところだが、妙に気恥ずかしくていけない気がしてしまう。  
「だ…だめよエックスっ! こんなところじゃ…見られちゃうっ…」  
「見せればいいじゃない? 誰も見るだけで邪魔はしないよ?  
それに…あの人たちに負けないぐらい君を愛してる自信はあるよ?」  
観覧車の中で指輪をくれたときの彼はどこに行ったのやら。  
エックスは自分のアゴを掴んでるエイリアの左手をはがして、薬指の指輪にチュッとキスする。  
 
それを見たエイリアはとうとう観念したのか、抵抗するのをやめてしまった。  
エックスから帽子とメガネを取って、そっと自分の横に置いた。  
「もう…。エックスったらケダモノみたいよ…」  
「じゃあ今から…二人でケダモノになっちゃおうか…」  
「…バカ…」  
そんなエイリアを優しく抱きかかえながらエックスは上着を脱いで、彼女の下の草むらにそっと敷いて彼女を横にさせる。これで一応は、地べたの直接の冷たさは感じないはずである。  
「愛してるよ、エイリア…」  
「もう…こんな所で…言わな…んっ……」  
今度は邪魔もなくエイリアの唇にキスをする。  
何度も、何度も啄むようなキスをしているうちに、自分の五感がなんだか研ぎ澄まされてくような、妙な感覚に陥る。  
風の音も木の葉の音も、他人の喘ぎ声も。…そして、自分の動力炉の鼓動も。なにもかもが耳をつんざくほど大きく聞こえる。お互いの身体を触る手の感触が、いつもよりも過敏で熱い。  
「ンンッ…ふぅ…は、むぅん……」  
「っく……、んっ、……」  
そのうちに濃密になっていく口付けも、普段のものより甘ったるく、絡み合ってる舌も熱く、甘い。  
キスされながらブラウスを脱がされてるのを肌で感じたエイリアは、エックスの逞しい背中に腕を回した。  
「んぷぅっ…く、は、はぁっ……はふ、ぅっん…ぷぁっ…」  
ようやく唇を離した頃には、エイリアは温度の上がった息を吐いて、瞳を潤ませている。顔は桃色に染まり、官能的な艶やかさをかもし出す。  
 
奇麗だ、とエックスは心から思った。  
普段のときも、肌を重ねてるときも、彼女は奇麗だと何度も思った。だが、今日の彼女は何倍も美しく見えてしまう。  
人間と変わらない服装に身を包んでいる為なのか、このような場所でセックスをしようとしてるからなのか、それとも…。  
ちらりと自分がはめたエイリアの指輪を見る。  
エイリアの首筋と鎖骨の辺りに舌を這わせながら、ブラウスの下に着ていたタンクトップを捲り上げて、白のレースのブラジャーの留め金に手を掛ける。  
それを外すと横たわっても形の崩れないエイリアの白い双丘が露になる。  
何度もエイリアとセックスをしているくせに女性の下着を脱がした事はてんで少なく、失敗する事も多かったが今回は上手くいった。  
「や…エックス……」  
ふにふにと両手で形を変えさせながら、彼女の双丘の頂きにある桜色の突起に軽くキスをして、そのまま口に含む。  
「ん…んあっ……」  
口で包むように含み、舌で愛撫する。吸っていない反対側も、指で優しく、丁寧に刺激する。  
エイリアは声を出さないように自分の指を含んで必死に我慢をしている。  
互いを入れ替えながら、何度も刺激していくうちに、それは堅さを帯びていき、エイリアの指越しの声も大きくなっていく。  
「むう、んー…」  
エックスは胸への愛撫をやめて、エイリアの口から指を出させる。  
「はぁ…、だ、だめっ…! 声、がぁっ…」  
「もう…我慢しなくたっていいんだよ…。聞かせて? いつもの君の感じてる声を」  
そして唾液のべったり付いた指を口に含んで、丁寧に舐め取る。  
「…んっ!」  
そんな仕種でさえも、エイリアは敏感に感じ取る。  
エックスはそんな彼女の姿を愛おしく想いつつも、もっと高まらせてやりたいと、そっとミニスカートに手を入れて、中のショーツ越しに彼女の秘所を触る。  
 
「!! ひゃっ…!!」  
ショーツ越しでも、そこはもう既に濡れているのが理解できる。  
「何だ。君もすっかり欲情してるじゃないか…エッチだね、エイリア」  
途端に彼女の顔が茹で蛸のように真っ赤になり、顔を両手で覆う。  
「やだ…そんな事言わないでぇっ……!!」  
そんな彼女の可愛い仕種をもっと見たいと思い、エックスはショーツの中に手を入れて入り口に指を割り込ませる。  
「っひっ…!! や、ああっ!」  
入り口のところを少し刺激しただけで、エイリアは背筋をピンと仰け反らせる。  
「ほら、凄く感じてる」  
「ゆ、ゆっちゃ…やだぁ…! ひゃんっ、アアっ! だ、だめぇ!!」  
ショーツを膝の近くまで捲り降ろし、今度は指を中に入れる。出し入れする度にエイリアの秘所からは厭らしい水音がぐちゅぐちゅと音を立てる。  
「聞こえてる…? この音は君から出てるんだよ? 凄いね。もうびちゃびちゃだよ」  
「う、ああっ…!! えっく、えっくすぅっ…!!」  
瞳に涙を溜めながら喘ぐエイリア。ふいにエックスは自分の背に回されてる彼女の手に力が入っていくのを感じた。  
「…ひょっとして、イきそう?」  
ぷるぷると震えながら、エイリアがコクコクと首を縦に振る。  
「いいよ。イって…ほら」  
エックスが駄目押しとばかりに、指を出し入れするスピードを速くする。  
「やぁっ…! も、もうダメぇっ…!! 私、イッ、ちゃ…!  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」  
エイリアの背中が二、三度、痙攣を起こし、秘所からは愛液が噴水のように吹き出た。  
完全に絶頂を迎えた証だった。  
 
「あ…、あう…。アァ……」  
「…イッちゃったね…エイリア。凄いな。太腿までべっちょりだよ」  
「……ッッ!」  
外で絶頂してしまった背徳感と気恥ずかしさでイヤイヤと顔を振るエイリア。  
「え、え、エックスが…エックスが、悪いんだもん…!」  
「…まあ、俺も君の事は言えないかな?」  
「えっ!?」  
エックスは素早く膝の辺りまで降ろしていたショーツを片方の脚に引っ掻けるように取り去ると、カチャカチャと音を立てて自分のベルトを外し、ズボンのチャックを開けてもう既に隆々と熱いぐらいに脈打っているペニスを取り出す。  
「俺ももう、これ以上我慢出来そうにないから」  
ぐいっとエイリアの両足を両の脇に抱え込んで、脚の間に入る。先端が彼女のクリトリスに触れると、即座に彼女の身体が電気を流したような反応を見せる。  
「や…、だめ、これ以上されたら…本当に……おかしくなっちゃうよぉ…」  
涙を零して、こちらを見上げてくるエイリア。即座にゾクゾクとした高揚感がエックスを襲う。  
エックスが彼女を愛した大きな理由のひとつがこれだった。  
"自分以外に、涙を流せるレプリロイド"。  
彼はエイリアと初めて肌を重ねたあの時、初めてエイリアが自分と同じように涙を流せる事を知ったのだ。  
それ以来、エックスはエイリアの涙が好きになった。但し、戦いで傷付き、心配をいっぱいかけさせた時の涙ではない。二人っきりで恋愛映画を観たり、こうして肌を重ねた時に流す涙が。この上もなく奇麗に感じるのだ。  
「おかしくなっていいよ…。俺も…」  
「えっ…! む、ンンッ……ん〜〜〜〜〜!!」  
唇を唇で塞ぐ。そしてそのまま、自身を彼女の熱くうねった膣内に沈めていった。  
 
やがて固く自己主張していたペニスが全て彼女の中に陥没したのを確かめると、唾液の糸を作りながらキスを解く。  
「ンァッ…、えっ、くすぅっ…! 何で…、どうして、なのぉ?」  
「……!」  
ぽろぽろ涙を流しながら震えた声を出すエイリア。  
"しまった。怒らせてしまった…"と一瞬エックスは不安な顔を見せる。  
だがそれは、無駄な心配だった。  
「どうして…? こんな、誰か…に、見られちゃってるかも…しれないのに…! どうして、こんな、幸せな気持ちになっちゃうの…? 私…、変だよぉ…! イレギュラーに、なっちゃったのかなぁ…?」  
堪らなくなったエックスは、彼女の背中に手を入れて、子供をあやすように背中をさする。  
「…変な事じゃないさ…! 俺だって…そうなんだ。  
この気持ちががイレギュラーだと言うのなら、俺だって喜んでイレギュラーになるさ…!」  
「エックス…!!」  
ようやく安心したのか、泣きながらも彼女の顔に安堵の笑みが戻った。  
「だから、動いていいかい? もう俺これ以上…」  
「ん…、ごめんなさい。動いて…! 貴方の、好きにして…!」  
最後にもう一回だけ、軽く唇を合わせるとゆっくりと、それでいて力強くエイリアの中で動きはじめた。  
イソギンチャクのようにぬるぬると、包み込むように律動するエイリアの膣内は彼女の呼吸に、エックスのペニスの動きに合わせて、時にきゆうきゅうに、時に柔らかく締め付けていく。  
 
「はぁっ…! あっ! あっ…! えっく…えっくすぅっ…!!」  
「っ、くっ…! エイ、リア……!」  
やがてエックスの腰の動きも、激しいものに変わる。先端が彼女の膣内の一番奥にこつこつと当たる度に、エイリアの嬌声も甘く大きくなっていく。  
先ほどまでうるさいぐらい聞こえていた雑音は、もう聞こえない。聞こえるのは互いの熱い声と、動力炉の音だけ。今こうしているときだけは、世界は二人だけだった。機械の身体を持った、アダムとイブ。  
「ふぁァっ! えっ、エック…! すきっ、えっくすっ…好きいぃっ…!!」  
「エイリア…! エイリアっ、えい…りあ……!!」  
最早エイリアにも、エックスにも。先ほどまでの余裕は全くない。只ひたすらに名前を呼び合う。  
お互いの身体で高まった熱は熱く溶け合い、更にお互いを加速させていった。  
やがてエイリアが赤く染まりきった顔を振りながら、彼の背中に回した手に力がこもる。  
膣内がきつく締まっていくのを感じたエックスもの動きも、それに同調するように激しくなる。  
「やぁ…! もう、もう私っ…! 飛んじゃうよぉっ…!!」  
「ああっ…! いいよ、俺も…もうすぐだから」  
互いの限界を知らせあうかのように、互いの手と手をきつく握りあう。  
エイリアの膣が、エックスのペニスを絞るように収縮すると、同時に彼の腰も、駄目押しとばかりに彼女の中を穿つ。  
 
「あっ、ふあァっ!! イ、くっ…イクぅっ!! えっ、くすぅっ!!  
ンアァあああああ――――――――――!!」  
「くっ、ああっ…! エイ、リアァァッ!!」  
ビクン…ビクン!ビュクン!ドプッ、ドクン、ビュルッビュクッ…!!  
ビクビクと互いの身体が跳ねる。エックスの白濁の液が子宮の奥の奥まで流れ込んでいくのを感じた瞬間、エイリアの頭は真っ白になっていった。  
しばらくその場に折り重なるように倒れ込み、お互いにぜぇぜぇと荒く息をする。  
エックスが瞳をそっと開けると、涙と快感で潤みきったエイリアの瞳がすぐ目の前にあった。  
「エイリア…」  
「エックスっ…」  
どちらともなく、触れる程度のキスをした。  
「良かったよ…。たまには、こういうのもいいかもね? エイリア」  
「もう、バカなんだから…!」  
真っ赤になってそっぽを向くが、否定はしないエイリアだった。  
 
服装を整えて、木の下でしばらく寄り添う二人。  
周りは、相変わらずお盛んのようだ。この調子ではさっきまでの情事を見ていたと言う出歯亀は殆どいないだろう。  
「…そろそろ帰ろうか? 遅くなるとさすがにヤバいだろうし」  
エックスが立ち上がり、片手で自分と彼女の荷物を持つと、もう片方の手をエイリアに差し伸べる。  
「…ん。そうね……」  
その手を握って、エイリアも立ち上がろうとするが。  
「…? あ、あれ?」  
「? どうしたの?」  
どうしても立てない。腰に全然力が入らないようなのだ。  
「こっ…腰が……抜けちゃったみたい…」  
涙目で引きつるエイリア。  
「しょうがないなぁ……ほら」  
エックスがやれやれとため息をひとつすると、腰を降ろしてエイリアに向かって背を向ける。  
「えっ? エックス…」  
「おぶってあげるから。ホラ早く乗って」  
顔を赤くするも、渋々従うエイリア。  
彼女の体重を確認すると、エックスはゆっくり立ち上がり、エイリアをおぶさりながら帰路を歩きはじめた。  
 
「えっ? エックス…」  
「おぶってあげるから。ホラ早く乗って」  
顔を赤くするも、渋々従うエイリア。  
彼女の体重を確認すると、エックスはゆっくり立ち上がり、エイリアをおぶさりながら帰路を歩きはじめた。  
「え、エックス…、重たく…ない?」  
「ん? ぜーんぜん」  
エイリアは気恥ずかしさに、ついつい背中に顔を埋めてしまう。  
エックスの逞しくて、広くて、暖かい背中。その心地よさと安心感で、ついついうっとりとしてしまう。  
「ほんと…何でオトコは平気なのかしら…」  
「ま、この辺はオトコの特権ってヤツでしょうね。こうして支えてやるよ。  
…これから、一生ね」  
更に顔を赤くしてしまったエイリア。  
「も、もう! 責任取ってくれなきゃ承知しないんだからね!」  
ぽかぽかとエックスの背中を叩く。だがその顔は心底幸せそうな笑顔。  
「あたっ、あたたっ! 分かりましたから暴れるなって!」  
バランスを崩しそうになるものの、エイリアの可愛い照れ隠しに顔が綻んでしまってしょうがないエックスだった。  
 
これは余談だが。先ほどの熱く激しいセックスをたった二人の少年と少女が最後まで見てしまっていたのを、二人は知らない…。  
 
 
以上、イレギュラーハンターの休日でした。  
 
*おしまい*  
 
 

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