"夢"を見る。  
『ゼロ…』  
また、同じ夢を。  
『ゼロ…儂の、最高傑作……!!』  
『貴方と…一緒にいたかった……!! ゼロ…』  
シグマ。レプリフォース。イーグリード。カーネル。  
手に掛けてきた多くのイレギュラー。同僚。  
そして……アイリス…。  
俺の、罪の証。  
どう購えばいい? どう償えばいい?  
……何の為に、戦えばいい……  
 
「……っ!」  
またいつものように、魘されながら目を覚ます。  
私物のほとんどない静かな部屋。カーテンから差し込む目映い光の線と微かに聞こえる小鳥のさえずりが、朝である事を告げていた。  
「夢。か…」  
寝癖で垂れた前髪を手櫛で軽く整えると、汗がぽたぽたと落ちる。寝ている間に、冷却装置が勝手に働いていたらしい。  
「こんなみっともねぇ所、エックス達には見せられないな」  
ゼロは苦笑いすると、気怠い気分のままベッドから起きて洗面所に向かっていった。  
 
 
そして、朝のミーティングの時間。  
ハンターチームのメンバーが一堂に会している中…。  
「あれっ? ゼロはどうしたの?」  
ゼロの姿だけが、見当たらなかった。  
アクセルがキョロキョロと辺りを見回す。  
「変ですねぇ。ゼロさん結構早起きさんですのに…  
そういえばレイヤーも見かけませんね〜」  
パレットも首を傾げる。  
シグナスがそんな二人をみてふぅっ、と一つため息をする。  
「…何だ二人とも。知らなかったのか?  
今日はゼロは休みを取っているぞ」  
「えっ?」  
心底驚いた顔をするアクセル。  
有休を使っての休みなんて、ゼロは殆どした事がない。  
…少なくとも、アクセルが入隊した以降は。  
「それとレイヤーは、俺の頼みでお使いに出かけてもらってる」  
「え〜っ? どうしてですか?」  
パレットはすかさず隣の席に座っているエイリアに話し掛ける。  
「…そういえば、二人は知らなかったのよね。今日がどういう日か」  
「そうか。もうあれから何年も経ってるんだよね…」  
エックスもエイリアも、しみじみと感慨に深ける。  
「「(どゆ事???)」」  
アクセルとパレットは、訳がさっぱり分からず首を傾げるだけだった。  
すると突然、アナウンスが鳴る。  
『ピンポンパンピン…追悼時間5分前です。全職員は作業を中止してご起立の程を願います…』  
 
今日の日は。  
かの"レプリフォース大戦"の終戦日だった。  
イレギュラーハンターとレプリフォースと言う、いわば兄弟も同然の組織同士による、あまりにも悲しい潰し合い。  
かつてメモリアルホールが建てられていた場所は今は取り壊されて、代わりに石像と慰霊碑が建てられていた。  
澄んだ青空の中、風に運ばれて鐘の音が聞こえて来る。  
見上げる程高い慰霊碑の下には、多くの参列者と献花が捧げられていた。  
その後ろの小高い丘の上に、ゼロは立っていた。手には赤い薔薇と霞草の花束。  
いつもの赤いアーマーは身に付けず、黒を基調とした動きやすい洋服を代わりに着ていた。  
彼の目の前には、大きな樹と、墓標のように建てられた小さな石があった。  
片膝を付き、そっと花束をその石の下に置く。  
「…また、来てやったぞ」  
ゼロにとって、ここは想い出深い場所。  
ここは、親友のカーネルと、アイリスと初めて出会った場所。  
暴走していくレプリフォースを止めるべく、カーネルと決闘を挑んだ場所。  
そして、今日は…  
生まれて初めて心の底から愛した少女が…、アイリスが死んだ日。  
しかも、自分の手で…!!  
確かにエックス達第三者の目から見れば、結晶体に意識を乗っ取られてしまっていた彼女を止めるにはアーマーボディを破壊するしかなかった。不可抗力。不幸な事故として片付ける事もできるだろう。  
…だが、ゼロには出来なかった。助けられなかった。…守れなかった。  
彼自身のメモリーに、罪の記憶としていつまでも刻まれ続けた。  
自分を作ったと言う、あの老人の悪夢のように。  
「………っ」  
無意識に、拳を握る力が強くなり、下唇を噛んでしまう。  
「……ん、ゼロさん」  
突然、自分を呼ぶ微かな声が後ろから聴こえた。  
ふと我に返るゼロ。  
後ろを振り返ると、白い百合の花束を持った菫色の髪の女性レプリロイドが立ちすくんでいた。  
 
「…レイヤー、か」  
「やっぱり…来てたんですね」  
「ああ。まぁ、な。みっともない所を見られてしまったな」  
レイヤーはゼロの隣に来ると、しゃがみ込んで花束を置き、祈りを込めるように両手を握った。  
それまで両目を覆っていた髪が前に垂れ、彼女の翠色の瞳が覗かせる。  
「(……!? ア、アイリス………!)」  
ゼロはその姿に、何故かアイリスの姿をだぶらせていた。  
髪の色も、容姿も似つかないはずなのに。たったひとつ同じなのは、瞳の色だけ。  
…それだけの筈なのに。  
「あ、あのう…ゼロさん?」  
ふと気付くと、レイヤーは真っ赤な顔をしてこちらを見ていた。  
「何か…私の顔に付いていますか?」  
「あっ、いや…すまない(てっ…天然だな)」  
そうか。この性格も…。初めて出会った頃の彼女にそっくりなんだと自分の中で納得した。  
「…レイヤー。そういえばお前は何故ここに?」  
「エックスさんに聞いて来たんです。今日はゼロさんにとっては特別な日だって事…。そして、いる場所と言ったら、ここしかないって事。  
"本来ならば俺も行きたいところだけど、俺は適任じゃない"って言ってました」  
「そうか。だが…もう俺の背中を追い掛けるのはやめたほうがいい…」  
「…えっ!?」  
突然のゼロの言葉に、レイヤーは目を丸くして驚く。  
「なんで…そんな、いきなり?」  
「お前も、エックスを通じて知っているんだろう?  
……アイリスの事を」  
レイヤーはおずおずと、一度だけ首を縦に振る。  
「俺は……女を不幸にしてしまう。  
あの時それが……身に染みて分かった。結局俺は…」  
 
「そんな事ありません!」  
普段のおどおどとした彼女らしからぬ、強い口調だった。  
「そんな事……ないと思います。  
多分…いえ、きっと。ゼロさんにそんなに想ってもらえて…アイリスさん、幸せだったと思います…!!  
幸せか不幸かなんて、その、そ、その人それぞれの気持ち次第なんじゃないですか?」  
「……レイヤー」  
はっと気付き、すかさず深々と頭を下げるレイヤー。  
「すっ……すいません! 生意気言ってしまって!」  
「いや…」  
そんな彼女の頭を、子供をあやすように撫でるゼロ。  
「ぜっ、ゼロさ…」  
レイヤーは嬉しさと気恥ずかしさのあまり、目の前がクラクラしてしまっていた。  
「さ。そろそろ帰るぞ。休みを取ってきた訳じゃないんだろ?」  
…返事はない。  
「レイヤー?」  
見ると、彼女の頭から白い湯気がどんどん立ち込めてくる。  
「おっ、おい!?」  
彼女は、あまりの嬉しさのあまりオーバーヒートを起こしてしまっていた…。  
だがその顔は、心底幸せそうな顔だった。  
 
「う、うーん…」  
まだ感じる熱っぽさと頭痛に頭を抱えながら、レイヤーは目を覚ました。  
「よう。起きたようだな」  
ベッドの隣には、ゼロが椅子で腰掛けていた。  
キョロキョロと見渡すとそこは、自分のの部屋ではなかった。  
あまりにも簡素で、私物が少ない。  
「ああ。ここは俺の部屋だ。お前の部屋のコードキーを知らなかったんでね。  
悪いな。殺風景な部屋でよ」  
レイヤーは今日メモリアルホール跡地へは徒歩で行った。ライドチェイサーが見当たらなかった事から、ゼロも同様のはずである。  
するとゼロは自分を背負って……!!  
「どうした。また顔が赤くなっているぞ? 熱でもぶり返したか?」  
「いっ、いえ…あ、有り難うございました」  
起き上がろうとすると、ゼロはブランケットを掴み、それを静止させる。  
「えっ、あっあの…」  
「いいから寝てろ。ライフセーバーの話だと働き詰めで疲れも溜まっているそうだからな」  
確かに思い起こせば、ここ最近はデータ整理で随分と徹夜も多かった。  
月に一度の定期メンテナンスだって、エイリアとパレット同様ドタキャンしてしまっていた。  
「そ、それじゃあ…お言葉に甘えさせてもらいます」  
「ああ。少し待ってろ。タオル取り替えて来る」  
「はっ、はい…」  
椅子から立ち上がって、ぱたぱたと遠ざかっていく足音を聞きながら、レイヤーはブランケットを顔まで覆いかぶさる。  
ふわりと香る、ゼロの独特の匂い。それを胸いっぱいに吸い込むだけで、なんとも言えない幸せな気分になってしまう。  
 
「…アイリスさんも、この匂いでこんな気分になったのかしら…」  
ふと、その様子を頭に思い浮かべてしまう。  
次第にドロドロと感じてしまう、嫌な感情。  
…嫉妬。  
ずっと憧れていた。遠くから見続けるだけで、ナビゲートでサポートできるだけで幸せだった。…はずなのに。  
公私共にパートナーであり恋人でもあるエックスとエイリアを、正直羨ましく思っていた。だが自分には、踏み出す勇気がない。なかった…。  
「待たせたな」  
ブランケットがめくられ、すぐにレイヤーの頭に冷たいタオルの心地いい感触が走る。  
タオルの下から、顔を覗かせるゼロ。  
普段見たことのない、ゼロの優しい表情。  
その顔を見てると、嬉しさと同様に嫉妬もまた込み上げてきた。  
 
(ソノヒョウジョウモ、アノヒトニミセタノデスカ?)  
 
「さて、あとはゆっくり寝て…おわっ!?」  
ベッドから去ろうとするゼロの手を、レイヤーの手が掴み、自分のほうに引き寄せる。女性レプリロイドのか細い腕力とはいえ、不意を喰らったゼロはバランスを崩し、彼女の身体を覆いかぶさるような形でベッドに倒れ込んだ。  
 
「レイヤー…? お前」  
「…て下さい……」  
「えっ」  
「抱いて、下さい…!」  
「バッ…お前、何を言って…」  
普段の彼女からは信じられない言葉に、動揺を隠せないゼロ。  
「もう……嫌なんです。貴女の背中だけを見るのは……イヤなんです」  
レイヤーの瞳から、大粒の涙がぼろぼろ零れ落ちる。  
そのか弱い姿に、ゼロは思わず胸を痛めた。  
"似ている。"改めてそう思った。今のレイヤーの姿は、初めて抱いたときのアイリスの姿にあまりにも似ていたのだ。  
「アイリスさんの代わりでもいい…。貴方と同じものを…同じ目線で見たいんです…! だから……!!」  
その後の言葉は出なかった。ゼロが彼女の唇を自分のそれで塞いだから。  
「…っ!」  
やや強引だったが、女の扱いに馴れていない、不器用なゼロの精いっぱいの思いやりだった。その優しさが、温もりと共に直に伝わって来る。  
そして、これがレイヤーにとってのファーストキス。  
唇を離した二人は、しばらく見つめあっていた。  
「責任は…持てないぞ」  
ゼロの言葉に、レイヤーはコクンと頷いた。  
 
それを見たあと、ゼロは彼女の菫色の髪をかき分けて、おでこに口付けを落とす。  
「…ん」  
レイヤーの身体がピクンと反応するのを見ると、唇を首筋に何度も落とし、アーマーの代わりに着させたタンクトップ越しに、彼女の豊かな胸を右手でそっと揉みしだいていく。優しく、包み込むようにゆっくりとした愛撫。  
彼女の乳房はタンクトップ越しでも、柔らかく、それでいて弾力を富ませてゼロの指を押し返す。  
「っひゃっ…は…」  
そして、タンクトップを脱がせると仰向けになっても全く形崩れしない見事なまでの膨らみを持った乳房が露になった。  
「…っ、やっ! あ、あんまり見ないでください…」  
レイヤーは真っ赤になって、慌てて片手で隠すものの、流石に片手だけで隠しきれる大きさではない。かえって男の目から見れば官能的に見えてしまっている。  
「…隠さなくていい」  
「えっ、で、でも私いつもおっき過ぎるかなって…コンプレックスで…」  
「いや…。充分に魅力的だと思うぜ」  
ゼロは薄笑いを浮かべると、そっと胸を隠そうとしてる手をどけて、片方の乳首に舌を這わせる。  
 
「そっそんな事…! ふあっ…」  
そのまま唇で含み、歯と舌先で愛撫する。  
もう片方も充分に指先で刺激すると、今度は顔をそちら側に移して刺激していく。  
「ひゃう、んはぁっ! は、ああっ……」  
責め続けて間もないのに、レイヤーの声には甘い響きが混じっていた。  
「(…もう感じているのか? やっぱり胸の大きさとか何とかは関係ないようだな)」  
何日か前に酒の勢いでの男だけの猥談で、"女の乳は巨乳がいいか貧乳がいいか"というくだらない議論をした事があった。  
 
<再現VTR>  
X『断然あったほうがいいだろう!』  
A『そうかなぁ。ちっちゃくてもかわいいとおもうけど?』  
M『それはパレット嬢だけの話でござろう』  
D『俺は貧乳派だな! なんつーの? 自分好みにできるっつー役得が…』  
Z『……』  
E『俺もある程度はあったほうがいいと思いますけど…。  
よく言いません? 巨乳の女は感じにくいって』  
A『うん。それ聞いた事あるよ』  
M『ふむ…。刺激に対して鈍感になってしまっていると言われるでござるからなぁ』  
X『俺は断固反対だ。エイリアってちょっと胸に息吹き掛けただけで感じてるんだぞ? それがかわいいの何って…ハァハァ』  
A『なんだよ! それを言うならパレットだってかわいいんだよ!! もう"ぷにぷに〜"って感じでさ!! ハァハァ…』  
Z&D&M&E『……へいへい』  
<以後エックスとアクセルが放送出来ない言葉を交わりながら口喧嘩した為、再現不可能>  
 
……という風なあほな話だったが、エックスだけが"巨乳は感じにくい"説に反対していた理由が今はよく分かった。  
ゼロはその際、アイリスの胸を思い浮かべたが巨乳でも貧乳でもない、いわゆる"美乳"という種別だったせいで、なんにも言えずにいたのだった。  
「…随分、感じやすいんだな」  
「いっいや……、そんな事ないっ…」  
わざと意地悪な口調で言ってみると、レイヤーは涙を浮かべて震える。  
ゼロは薄笑いを浮かべると彼女の頭を少し強引に撫でた。  
「あ…ゼ、ゼロさ」  
「嘘はつかなくていい。お前のいろんな顔が見てみたいから…」  
囁くように言いながら、指を胸から腰に、おへその辺りを彷徨わせるようにゆっくりとなぞる。  
そして、長く美しい太腿を陶磁器を扱うように丁寧な触りながら、薄布越しに彼女の最も敏感な部分に到達した。  
「……!! そっ、そこは…」  
一瞬、レイヤーの端正な顔が恐怖の色で歪む。  
彼女の初々しい反応に、ゼロの頭の中にひとつの疑問が浮かんだ。  
「(こいつ…ひょっとして……)」  
だが、頭を振払い、その考えは少しの間忘れるようにした。  
「恐がるな…。大丈夫だから」  
ゼロはできる限り、優しい口調でレイヤーを落ち着かせる。  
ある程度呼吸が整ったのを見ると、はいていたショーツをゆっくりと脱がせ、髪と同じ色をした薄く生え揃った茂みにそっと指を入れた。  
即座にぴちゃりとした水音がそこから聞こえて来る。  
 
「っあっ…!! だっ、だめぇっ…あぁっ!」  
レイヤーの身体はまるで電流を流されたかのように仰け反らせる。  
恐怖心で力が隠っていた手足も、ゼロがその太く逞しい指を動かす度にだんだんと力がなくなり、ガクガクと震えていく。  
人指し指で陰核を弄び、残りの指は擦るように大陰唇を刺激し、少しだけ入り口のほうに指を沈めてみると、愛液が泉が湧き出るかのように溢れていき、太腿を濡らしていった。  
「(指でやっているだけなのに、結構きついな…)」  
「くぁっ、あんっ、ああ、はああっ! ぜ、ゼロ、さ…」  
もうその可憐な唇から漏れる声は完全に甘味を帯び。表情も恐怖と快楽が程よく入り交じった艶やかなものになっていた。  
「(……そろそろ、もう充分に準備は出来たはずだ)」  
彼女の秘部ももう充分に濡れ、ほぐされたのを確かめると、ゼロも今まで着ていたシャツとズボンを脱ぎ、レイヤーの身体に覆いかぶさる。  
「…あ……」  
自分の視界に入ったゼロのアーマーも何も付けていない肉体に、レイヤーは思わず見蕩れた。  
雲の隙間から覗く月の光のような金色の髪。人工筋肉が適度に付いた逞しい身体。全身を覆う無数の傷痕。それら全てがレイヤーの眼には美しく見えた。例えるなら、ルネッサンス時代の彫刻のように。  
「(ああっ……! ゼロさん素敵ですっ……!!)」  
「…レイヤー?」  
思わず凝視していたが、ゼロの言葉でハッと我に返る。  
 
「あっ? は、はいっ」  
「そろそろいいか? 堪えられそうにないんだが…」  
言われると、下のほうで脈打っている彼の逸物はもうはち切れんばかりになっている。  
「(うっ、うわぁ……、すっ、凄……)」  
その迫力とグロテスクさに、思わず息を飲んでしまうレイヤー。  
動力炉の鼓動が落ち着くのを待ってから、大きく二、三度深呼吸をする。  
「………き、来て…くださいっ……」  
小声で一言、言うと力を抜いて身体を楽にして、ゆっくりと目を閉じた。  
ゼロはコクンと頷いて自身の逸物を濡れそばったレイヤーの秘部へと導き、入り口に亀頭を当てがう。  
「…………っ!!」  
途端に再び緊張し、震えながら身を固めたレイヤーに、宥めるように軽く唇を重ねる。  
「…痛かったら、言えよ」  
ゼロのその言葉で、彼女の表情も緩やかになった。  
そして、ゆっくりとレイヤーの奥のほうに自身を沈めていく。  
「あぐっ……!!」  
レイヤーは小さく悲鳴を上げ、ゼロの背中に腕を回した。  
この反応で、先ほどの疑問が確信に変わった。  
「やっぱり…、初めて、だったんだな?」  
結合してる部分からは、彼女の純潔の証が流れている。  
彼女は涙を流し、ぜぇぜぇと息を荒くして頷く。  
 
「本当に良かったのか? 俺なんかで…」  
できる事なら、辛い思いは、痛い思いはさせたくない。  
ここで彼女が"NO"と言えば、止める事も辞さない覚悟だった。  
「いっ…いいんです」  
レイヤーは首を振って、ゼロに対してにこりと微笑んだ。  
「……レイヤー」  
まるで、聖母のような笑み。  
今までいろんな人間の女や女性レプリロイドを抱いてきたゼロだったが、この笑みを見る事ができたのはたったの二人だけ。  
一人は今抱いているレイヤー。もう一人はもちろん…。  
「わた、し…、いま、幸せです……!! ゼロさんに、こう、してもらえてっ…。  
だ、だから…最後まで、…して、ください…!」  
その従順さに、ゼロの胸は罪悪感と幸福感が入り交じる。  
「…わかった」  
そしてゼロも彼女の背中に腕を回すと、一気に彼女の一番奥まで貫いた。  
「!! かはっ…!!」  
一気に来た破瓜の痛みに、レイヤーの背中と両脚がしなる。  
「(くっ…!! 充分に濡らした筈なのにギチギチに狭いなっ…!)」  
ゼロは取り敢えず、このまま動きたい衝動をグッと我慢してレイヤーが落ち着くまで待つ事にした。  
暫くするとようやく力が緩まり、表情も柔らかくなる。  
 
「大丈夫か?」  
「はっはい…、なんとか。でも…」  
「でも…、なんだ?」  
「ゼロさんって、優しいんですね…」  
「…………そっ、そうか?」  
今更ながらも、ちょっと照れてしまう。  
「はい…。だから、動いても…いいですよ? 私、大丈夫ですから」  
もう一回だけ唇を合わせると、ゼロは彼女の身体を労りながらゆっくりと動いていった。  
「んくっ……、はっ、んはっ、はぁ……」  
動く度に愛液と血液の混じった液体が音を立てて溢れ出て、ゼロの逸物を締め上げる。時にはイソギンチャクのように柔らかく、時には万力のようにきつく。  
「ひゃっ…あ、あっ、ふぁっ…! ゼ、ロさ……」  
最初は痛みを我慢していただけの表情も、だんだん艶っぽく、声色も甘くなっていった。  
ゼロのほうももっと味わってみたくなり、自然と腰の動きが速くなっていく。最早さっきまでの余裕も気遣いも吹き飛びそうだ。  
「はぁっ! ひっ…、お、奥までっ…あっ、あ、あっ、ぁふぁ、んはぁぁっ!」  
「っく…(…絞まるッ……!!)」  
激しくなっていく腰の動きにぎしぎしとベッドが軋み、レイヤーの奥のほうでゼロの逸物の先端がこつこつと壁に当たる。  
 
彼を全身で感じているレイヤーに、初めて来る絶頂の波がだんだんと理性と言う堤防を押し上げて向かって来る。  
「ひゃぁ、ああっ…くる、ゼロさんっ、なにかっ…来ちゃうっ…ああっ」  
「あ、ああ…。いいぜ。受け入れろ。そういう…、ものなんだからなっ…!」  
そう言うゼロも、そろそろ限界だった。ラストスパートを駆けるように、これまでにないぐらい腰を動かす。  
「んあっ、だ、だめぇっ! き、来ちゃうぅっ!!」  
そして遂に、互いの堤防は粉々に崩れさった。  
「ゼロさ、ゼ、ロぉぉっ…! ふあああぁぁああああっっっっっ!!」  
レイヤーの身体がビクビクと痙攣し、ゼロの肉棒を搾り取るかの如くぎゅっと締め上げた。  
「…!! っくっ!!」  
ゼロはこのまま中に出したい気持ちを押さえて逸物を一気に抜き取り、彼女の白いお腹に向かって爆ぜる。  
「あ…はぁ、あつ、いっ……」  
レイヤーは自分のお腹に放たれる熱い感触に酔いしれながら、その目をゆっくりと閉じた。  
 
 
気が付くとゼロは、真っ青な草原の中にいた。  
「……ここは?」  
すぐ隣には、大きな樹。  
「そうか。ここは…」  
『ゼロ…』  
後ろから、懐かしい声が聴こえた。  
振り向くと、そこには亜麻色の長い髪の少女。  
「アイ…リス……」  
『私ね。あなたをずっと見てきた…。いっつも危なげに見えたよ。  
でもね…』  
「………」  
『今は違う。  
大丈夫だって思ってる。あなたが危ない道を突き進もうとしていたのを…ずっと誰かが止めていてくれてた』  
「…誰か……?」  
ゼロの頭に、あの蒼いアーマーのレプリロイドの姿が浮かぶ。  
「確かに、な…」  
『あなたはもう独りじゃない。かけがえのない仲間が…あなたを包み込んでくれてるよ』  
今度はいつもバカ騒ぎしてる仲間の顔が浮かぶ。  
「包み込んでるって言うか…ギューギュー締め付けてるって感じなんだが…」  
アイリスはクスッと笑って、ゼロの身体をぎゅっと抱き締める。  
「…アイリス?」  
『何でもひとりで背負い込もうとしないで。  
皆があなたの力になってる。そしてあなたも…皆の支えになってるんだよ。  
 
それを忘れないで。忘れないでね――――――――――・・・・』  
 
 
そしてゼロは、再び現実の世界に戻った。  
自分はベッドから半身を起こしてる状態。右隣にはレイヤーが規則正しい寝息を立てている。  
「……夢? か…?」  
だが、いつも見ている夢とは随分違っていた。冷却装置は作動していないし、不快さも全くない。  
むしろすっきりとしている。  
「…ん……ゼロさ…ん」  
もぞもぞと動いて寝言を言うレイヤー。ゼロは微笑みながら彼女の頭をくしゃくしゃと撫でる。  
 
「…アイリス。お前のお陰で…、俺はなんの為に戦えばいいのか…思い出す事ができたような気がする。  
そして…、レイヤー。お前はアイリスの代わりなんかじゃない…!  
 
……ありがとう」  
 
そうだ。戦い続ければいい。  
友を守る為。誰かの支えとなる為。  
自分の中に死神がいるのなら、それとも戦ってやる。  
そして必ず勝つ。  
運命に打ち勝つ為に。……生き抜く為に。  
 
・END・  
 
 
 
*おまけ*  
朝。  
レイヤーが目覚めると、既にゼロの姿はなく、代わりに置き手紙が置いてあった。  
"先に出てる。腰に気を付けてシャワーしっかり浴びとけ ぜろ"  
「…ゼロさん……」  
ちょっと乱暴な口調ながらも、自分を気づかってくれる不器用な優しさがレイヤーには堪らなく嬉しかった。  
そして、グキリと痛む腰を押さえながら、よろよろとシャワールームに向かうのだった。  
 
そしてその頃、食堂では…  
「おいおい。ゼロ飲み過ぎだよ! もう20本めだぞ?」  
「…やかましい」  
ゼロがもの凄い勢いで牛乳を一気飲みしていた。テーブルの上にはカラになったビンが縦横無尽に転がっている。  
後ろではアクセルとパレットが"おっはー"をしているが全く気付かない。  
「(…くそ。レイヤーの背が俺より高いとはっ……!!)」  
ゼロ、175センチ。…レイヤー、183センチ。  
昨日は全然意識してなかったが、明らかにレイヤーのほうが背が高い事を思い出したのだ。  
「(…畜生。このままじゃ並んで歩けるかっつーの!)」  
まさか女の為に「身長を調節してくれ」とゼロの性格上言える訳がない。  
「何だよゼロー。朝っぱらからやけ酒みたいに…」  
「黙れコナン婚。」  
アクセル、撃沈……。  
 
ゼロとレイヤー。二人の春はまだまだ遠そうである。  
そして(誰にも見えないが)ゼロの後ろではアイリスが、"ダメだこりゃ"といった表情で両手を仰いでいた。  
 
*おしまい*  
 
 
 

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