とある日のハンターベース。  
この日、エックスとゼロとエイリアは任務に出ており、レイヤーは別の仕事を処理していた。  
残ったアクセルとパレットは、緊急時に対応できるようにベースのとある一室で共に待機していた。  
 
パレ「ねぇアクセル。これ見て」  
アク「ん、何?」  
唐突なパレットの呼び声にアクセルが振り向く。  
するとパレットは、部屋の真中の机の上に置いてある、古い雑誌を指さしていた。  
雑誌の表面はだいぶ傷んでいて、外見だけではどんなものかは判別がつかない。  
アク「これがどうしたの?」  
パレ「えへへ、ほら」  
パレットは口で答える代わりに、雑誌の一ページを開いて見せた。  
見てみると、紙面には男女が激しく性交しあう場面、いわゆるセクースの最中が描いたあった。  
パンパンという激しい効果音と、ページ中に飛散する汗の雫。  
男性の陶酔混じりのハァハァという息づかいに、恥見聞を捨てた女性の淫らな喘ぎ声。  
絶頂間際の最盛のシーンが描かれたページ内は、なんとも淫猥であった。  
そう、この雑誌は、いわゆるH系統の成年誌であった。  
アク「うわぁ……すごい……」  
アクセルは、開かれたページ内を夢中で見ていた。その顔は、ほのかに赤みを帯びている。  
機械とはいえ男性である以上、本能的にその行為に対する興味が、一挙に現れているようだ。  
パレ「これ、この前人間さんのいる地下世界に研修で行った時に見つけたんだ。  
   本当はいけないことなんだけどね……」  
パレットはそう言ったが、アクセルはあまり、というか全然聞いてなかった。心はまるっきり本に奪われている。  
パレ「………………」  
その反応にムッとしたか、パレットはアクセルの顔を両手で挟み、荒々しく自分の顔に近づけた。  
アク「うわ!?」  
パレ「ねぇ、聞いてってば!!」  
アク「き、聞いてるよ! で、何!?」  
言葉がまるっきり矛盾しているアクセル。そしてパレットの手を解く。  
するとパレットは急に態度がしおらしくなり、顔を下に向けた。そして、か細い声で言う。  
パレ「…ねぇアクセル……これ、やってみようよ………」  
パレットは、随分恥ずかしそうな様子だった。口をギュッと結び、その眼も弱弱しい。  
顔も真っ赤に染まっており、視線もまちまちに動き、明らかに落ち着きがない。  
アク「……? これって何さ」  
そんなパレットを知ってか知らずか、いやきっと知らず、アクセルは間の抜けたように言う。  
そんなアクセルの態度に、パレットの恥じらいは転じて怒りとなった。  
パレ「だーかーら! この本に描いてあることを二人でやってみようよ!!」  
パレットは感情の一線を通り越して、真っ赤な顔で半ばやけくそに言った。  
アク「………エッ!?」  
 
アク「な、なに言ってんのさ!突然」  
アクセルは、突然のパレットの言葉に明らかに動揺していた。  
確かにアクセルは、男性という本質上、これらの行為に興味は抱く。夢中にもなる。  
しかしそれは、自分はレプリロイドであるということを認識したうえのことだ。  
繁殖活動の必要がないレプリロイドには、当然性器はない。故にセックスはできない。なのでこれらの行為は、視覚的に楽しむしかない。この程度なら、パレットもわかってて当然のことだと思っていた。  
しかし予想に反した。  
普段から情報解析などで頭の働くパレットが、自分にもわかるようなことを当たり前のように言う。  
アクセルにとって、それは疑問以外の何モノでもなかった。  
だがそれ以上に、アクセルには疑問に思うことがあった。それは、  
アク「えっと、それに、何で相手が僕なの!」であった。  
鈍いの極みとしかいえない言葉だが、しかし本人は真剣である。  
 
パレットはその言葉を聞くと、さっきまで爆発した感情の影響で真っ赤だった顔が、  
急にスーッと青くなっていった。怒りは悲しみに、恥ずかしさは自虐へと変わってしまったようだ。  
そして顔を下に向け、声も明らかに小さくなる。  
パレ「…だって……やってみたいんだもん………」  
そういうと、パレットは窄まってしまった。体育座りをし、顔を膝と組んだ手の内に隠してしまう。  
その肩は、フルフルと震えているようにも見えた。  
アク(…………)  
この状況は、さすがにアクセルも困った。  
普段から(子供っぽい一面が通じ合って)仲良くしているパレットを悲しませるのは、  
こんな展開であっても気分が悪い。何より、女性を悲しませるということに耐性がないのだ。  
アク「……わかった。わかったよ」  
この状況を修繕するには、自分が降りるしかない。アクセルなりに考えた結果が、この言葉だった。  
そしてアクセルは、パレットの方を抱き、寄り添った。  
アク「だからさ、起きてよ…。ねっ?」  
その言葉にパレットはゆっくりと顔を持ち上げた。内心、アクセルはほっとした。  
そして何かでぬれたパレットの顔をアクセルは指で拭う。パレットは小さく「うん……」と頷いた。  
 
 
 
352 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2006/01/17(火) 03:57:24 ID:+K1PLfeo 
>>351  
そして状況が落ち着いてきた頃。  
アク「…でも、一体どうするのさ。僕にはこの腰あたりについてる変な棒はないし、  
   パレットだってその棒を入れる穴なんか付いてないじゃんか」  
アクセルの言う「腰あたりの棒」と「それを入れる穴」とは、男女の性器のことである。  
パレ「それは、わかってるよ。だから…」  
アクセルの言葉にパレットはそう言うと、雑誌のページをペラペラとめくっていった。  
そしてじきに手を止め、新たに開かれたページに一部分を指差した。  
パレ「これ。これなら、私たちでもできるよ」  
アク「……?」アクセルは雑誌を覗き込む。  
パレットが開いたページは、男性と女性が前戯を楽しんでいるシーンが描かれていた。  
ネチョネチョと音をたてて男性の口に滑り込む女性の舌と、男性が女性の股座を手に探らせて  
怪しく指先を動かしているところが、印象強く描かれている。  
そしてパレットが指差したのは、二人が激しくキスをし合っている部分だ。  
アク「これって…なに?」  
パレ「ちゅー、っていう行為だよ。お互いの唇や舌を、合わせたり絡ませあうんだって」  
情報解析に詳しい故というべきか、パレットは事前の調査を欠かしていない。  
しかしちゅーとキスを混同するあたり、人間の語録に対する知識はまだまだ乏しいようだ。  
アク「でもさ、こんなことして何の意味があるのさ。お互いの口を合わせるなんて、  
   全然たいしたことないじゃない」  
アクセルは先の激しいセックスシーンが印象強く残っているせいか、このキスという行為に、  
身勝手ながら物足りなさを抱いていた。加えて、その行為自体の意味も理解できないでいるようだ。  
パレ「ん〜、だからだよ。そんな単純な行為で人間さんは気持ちよくなれるっていうんだから、  
   きっと何かすごいモノがあるんだと思うの」  
と、パレットは反論する。この言葉に嘘はないが、それが第一目的ではないのは言わずもがな。  
アク「でもなぁ……」  
しかしアクセルは納得していないようで、眉間に淡くしわを寄せている。火付きも相変わらず悪い。  
 
そんな様子に、パレットの感情は痺れを切らし、またも一線を越えてしまった。  
パレ「ん〜もぅ!アクセルのいくじなし!わがまま!!優柔不断!!!自分勝手ぇ!!!!  
   男の子ならちゅーの一つもしてみてよ!!!!!」  
アク「エッ…ワッ!?」  
パレットはまたも、両手でアクセルの顔を挟んだ。  
そして顔を引き寄せ、自分の口をアクセルの口に一気に押し合わせた。  
アク(!!!!!!)  
 
パレットと唇を合わせている間は、いかほどの時間がたっただろうか。  
アクセルはただ、その突飛な展開に流され、そして終わりを待つしかなかった。  
しかし……  
アク(パレットの唇、気持ちいいな…)  
アクセルの頭は未だ混乱しているが、しかしその片隅で、そう思ったのは覚えている。  
暖かく、柔らかく、そして気持ちいい。  
チューとはこういうものなのかと、自分なりに考えていた。  
パレ「………ムゥ〜〜ップハァ!!」  
そうしていると、パレットが顔を赤くして口を離した。  
赤面なのは、恥ずかしいからでもあるが、行為に夢中になっていたせいらしい。  
そしてアクセルは、息を整えているパレットを目にやりながら、さっきまで重なっていた唇を、  
まるで女性のようにひたひたと触れている。その顔は、パレットに劣らず赤い。  
 
パレ「フゥ…。ねぇ、アクセル…」  
アク「!!エッ、なに、何さ!?」  
アクセルはその呼び声にドキリと反応した。本人は視界に入っていたが、意識は配ってなかったようだ。  
アクセルは改めて彼女に目をやる。すると未だ顔に赤みを帯びるパレットが、また自分に顔を近づけてきた。  
アク「ちょ、ちょっと…!」  
先の恥ずかしさが頭から離れないか、パレットにまともに視線を向けられない。  
しかし、そうして焦るアクセルをよそに、パレットは落ち着いて言った。  
パレ「ねぇ……、気持ち…よかった?」  
その顔は真剣そうである。  
 
アク「……うん、気持ちよかったよ」  
アクセルは頬を掻きながら、視線を下に向けながらも、嘘偽りなく思いを言った。  
その言葉を聞いたパレットは、無垢な満面の笑みを浮かべた。嬉しそうに、手を合わせて喜んでいる。  
その姿を見たアクセルは、初めて、パレットのことを可愛いと思った。  
今までただの友達程度にしか思ってなかった彼女が、自分を思って必死に行動してくれた。そのギャップがさらに、その思いを煽る。  
パレ「ねぇ、アクセル」  
アク「ん、なに?」  
パレ「もう一回、やってもいい…?」  
パレットはまた顔を赤く染めながら言った。けどその顔は先と違って、可愛さと余裕に満ちた表情だ。パレットらしい顔だなと、アクセルもふと思った。  
アク「うん、いいよ」  
アクセルは、それに素直に応じた。パレットが相手なら、良いと思えたからだ。  
 
 

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