これは、アクセルとパレットが秘密の行為を済ませて部屋を出たあと、  
パレットを呼び出すためにそこへ訪れたレイヤーのお話である。  
 
「今日もゼロさんのアシスト、できなかったな……」  
そんな不謹慎ながらも不本意な仕事を済ませ、交代のためにパレットを呼ぼうとするレイヤー。  
聞くと、彼女はアクセルと共にとある一室で待機しているとのことだった。  
仲がいいわね、と微笑ましく思いながら、レイヤーはその部屋に足を運ぶ。  
そして到着、呼び出し音を鳴らす。しかし反応はない。  
行き違いになったのかと思い、数回のノックを置いて部屋に入る。予想通り、部屋には誰もいない。  
「もう、どこかしら…」軽くぼやく。  
もうここにいても意味はないと考え、早々に部屋を出ようとするレイヤー。  
だがその時、部屋の隅にある雑誌にふと眼がいった。  
 
「これ、一体?」  
隠してある、というよりは部屋の隅に押し込んであるといった置き方をされている雑誌。  
パッと見て、人間の住む地下に研修に行った際に持ち帰ったものだと推測する。  
「もう、誰がこんな・・・」  
生真面目かつ忠実な彼女にとって、厳密には違反とされているその行為は、気持ちのいいものではなかった。  
しかし、  
「・・・・・・・・・・けど、少しだけ・・・」  
彼女もレプリロイドの一体である。人間の文化に対して、行動を起こさせるほどの興味があるのだ。  
「けど、内容はなんだろう?」  
その雑誌は外見が痛んでいて、中身が判別できない。他に手もなく、素直に、適当なページを開いた。  
その時だった。  
 
「・・・・・・・・・・・・!!!」  
彼女の顔が、まるで噴出すマグマのように、見るにも熱い赤色に染まった。  
「なななななんあんあなあんああな・…!!!!」  
まるで絵を見るように、彼女は混乱していた。口は回らず、顔は見るからに真っ赤に染まり、体もピンと張って動かない。  
彼女の開いたページには、レイヤーに勝らずとも劣らない豊かな胸の女性が、恋心を抱く男性との性行為を妄想して、自分の胸を揉んで自慰をしているシーンが描かれていた。  
彼女の潜在するその能力は本人の意思に関わらず発揮されてしまい、レイヤーは一瞬しか見てないそのページの内容は把握してしまった。  
「ここここおっこk、こんなぁ!!不潔です!!!」  
自分に言い聞かせるような大声を上げて、彼女はバンッと雑誌を閉じた。未だ彼女の顔は赤い。  
その閉じた際の音を最後に、少しの間、部屋の中は完全に沈黙していた。  
その間レイヤーは、頭の中で何度も[不潔]という言葉を浮かべていた。  
(あんなの・・・・・だめよ!自分の体触って興奮して、あまつさえ好きな人と勝手に妄想の中で楽しむなんて・・・・・・・)  
生真面目かつ心が未発達な彼女には、それらの行為は自尊心を損なうような印象があるようで、  
容易くは受け入れられないようである。  
(・・・・・・けど・・・)  
しかし、  
(実際やってみたら、どんな風になるんだろう・・・)  
生真面目かつ勤勉な彼女にとって、知らないことを知りたいという願望が、じきに行動に移させた。  
 
ロボットでありながら、まるで人間の様に心臓をドキドキさせている。  
そしてそのドキドキに気付かないほどに、その頭は完全に夢中になっている。  
普段の冷静で悠然な姿は、今のレイヤーにはない。  
I(・・・・よし・・・)  
真っ白い頭で、対して真っ赤な顔で、手にしている雑誌をゆっくりと開く。  
開いたのは、先ほど偶然開いたところと同じページだ。  
(・・・・・!!!!)  
初めて見るものでもないのに、変わらずレイヤーはパニックになる。とっさに、持つ両手をピンと伸ばして距離をとる。  
だが、今度は捨てない。勇気を出し、遠くから段々と近くへ、その視線を雑誌に向けていく。  
 
(・・・スッ・・・スゴイ・・・・・・)  
レイヤーは段々と冷静さを取り戻し、その内容をじっくりと観察できるようになっていた。  
内容は、部活動の先輩に恋心を抱きながらも接近する機会を得られない女性が、妄想の中でその相手と性行為を楽しむシーンを想像しながら、  
その大きい胸を弄って自慰をする、というものである。  
妄想という行為はレプリロイドにとって通常でないがゆえ、その内容に、レイヤーは恥ずかしさを通り越してどこかで感心する部分があった。  
そして同時に、レイヤーはその女性に同調するようになってきた。自分と、その女性を重ねあわせているのだ。  
(この人…私と似ている・・・)  
憧れの先輩であるゼロ。そしてその彼に恋心を抱きながらもなかなか近づけない自分。まさしく、雑誌の女性と同じ状況である。  
(・・・私も人間だったら、この人みたいなこと、するのかな・・・)  
無垢な恋心からの衝動。  
最初は恥ずかしいとしか思えなかった女性の行為が、レイヤーはいつしか、納得と興味を抱くようになっていた。  
(私も・・・ゼロさんと・・・こんなこと・・・)  
そしてその思いは、段々と実行されていく。女性を参考に、レイヤーの手が動く。  
 
ふとしたことから、恥ずかしい本を手にしてしまったレイヤー。  
最初はその内容に対して恥ずかしく思うしかなかったが、その主人公である少女と自分を重ね合わせるに連れて、  
ゼロを人一倍想う一面も相まって、やがて受け入れていった。そしてその受け入れた心は、やがて事に興味を抱き、行動に移させる。  
レプリロイドの性能によって成せる、本の少女に負けないくらいの妄想を抱いて、その手が段々と体に触れていく。  
 
その部屋には、レイヤーとゼロがいる。他には誰もいない。音もない。  
殺風景でがらんとした部屋には、シンプルなベッドが一つ。  
レイヤーは床に足をつけて、そのベッドの横側にちょこんと座っている。  
ゼロは、それを包むように後ろに座る。脚はレイヤーの外側に置き、両腕は首下を巻いて、顔を神秘的な紫色に染まる髪に添える。  
二人の脚と、胸と背中と、腕と首と、頬と髪が、密接に触れ合っている。  
体温のないはずのレプリロイドなのに、二人は暖かさを感じあっている。  
その間は長く、果てない沈黙だったが、二人はそれを感じないほどに、時間を共有しあっていた。  
『・・レイヤー・・・いいか・・?』  
唐突に、ゼロが口をあけた。その時間に浸っていたレイヤーは、ハッとする。  
「ハ、ハイッ!?」  
見てわかるほどに、状況が見えてない反応である。  
しかし、その衝動で話しかけた人に眼をやると、スッと血の気が落ち着いた。  
視界に入ったのは、ほのかに顔を赤らめながら、自分を見てくれているゼロの顔だ。その顔は、普段の殺気染みたものとは違う、優しい顔だった。  
思わず相対してしまった互いの視線に恥ずかしみ、顔を赤くして真正面に向きを変えるレイヤー。  
けど、あのゼロの顔を見たとき、決意した。やっぱり彼は、私の憧れの人だと。彼なら、何でも許せると。  
「・・・・・・・・お願い・・します・・」  
レイヤーは願った。ゼロが、私の相手をしてくれることを。  
ゼロは、その思いを組んだ。そしてまずは、レイヤーを思い切り抱きしめた。痛くないほどに緩ませながら、精一杯。  
レイヤーはその時、レプリロイドには流れない涙がその瞳から流れたような、そんな気がした。  
 
一刻の後、強く抱きしめてくれたゼロの手はやがて解け、体に向かっていく。  
直向に、ゼロの強い大きい手は、レイヤーの下胸に触れた。  
「・・ヒァッ・・・・!!!」  
すると思わず、レイヤーは悲しいような声を上げた。それに反応して、ゼロの手が止まる。  
レイヤーはこの時まで、心の準備はしてきた。少なくとも、感じた衝動を我慢できるくらいには。  
けれども、できなかった。ゼロの抱きしめに感極まってしまい、今のレイヤーには、それを我慢する余裕がないのだ。  
胸から、頭へ脚へと電気が走るような、痺れる感覚。頭への電気は心の余裕を奪い、脚への電気はその身を硬直させる。  
顔はまるで物で染めたかのように紅潮し、身は震え、頭は混乱し、心の動悸で呼吸が乱れる。  
ゼロを前にして、その身を許したというのに、情けない。恥ずかしい。羞恥心が、さらに彼女を攻め立てる。  
(これじゃいつまでも、いつもの私でしかない・・・)  
レイヤーは落ち込んだ。変われてない自分に、半ば諦めを抱いた。  
 
だがその時だった。  
『大丈夫か?』  
後ろから、ゼロの言葉が聞こえた。心の余裕が消えても、その身が例え動かなくても、彼の言葉は聞き逃さない。  
その言葉は短く、愛想にかけるものだった。しかし、優しかった。  
ゼロさんが、私を心配してくれている。その意味が、彼女の多大な不安をかき消した。  
そうだ。今私は、迷惑をかけてはいけない人がいる。私はこの憧れの人のために、頑張らなくてはいけないんだ。  
負けられない。私のためにも。そして何より、ゼロさんのためにも。  
「・・・大丈夫です、お願いします・・」  
必死で声を絞った。顔を見る余裕はないので、その心意気がゼロ本人に伝わったかはわからない。だが、そう信じたい。  
『・・・優しくする』  
すると、そう言ってゼロは、またレイヤーの体を優しく抱いてくれた。  
レイヤーは、その言葉と行動に、心底安心する。そして再度決意する。彼のために、頑張ると。  
 
ゼロの手は再度、レイヤーの胸に触れていった。最初はお腹から。優しく、さするように。  
そこは胸とはまた違い、しなやかさを保ったすべるような肌をしていた。  
それは美しく魅力的であり、スタイルの良いレイヤーでこそ成せる部分といってもいい。  
見た目を奪うその胸に隠れた部分にも、彼女の美しさは、いくつも潜んでいるのだ。  
そして、その手の位置は段々と上がってゆき、アーマーの下から見える乳房に触れていく。  
(・・・・・・!)  
幾度目の、強烈な感覚。けれどもレイヤーは、必死に耐える。一時の身の硬直をとき、彼の手を受け入れる。  
手は、乳房の下方を優しく撫でていった。感覚に慣れさせようという、ゼロの計らいかはわからない。  
感触は、ひとしおに柔らかく、それでいて油断をすればすぐにも力強くなってしまいそうなくらい、弱々しい。  
豊かさに比例して増した感度は、レイヤーの一番の特徴的部分であり、一番の弱点であるのかもしれない。  
だがレイヤーもやがて、まだまだ余韻は残るものの、段々と、その感覚を受け入れられるようになっていた。  
「・・・ン・・・ァ・・・」  
その予兆か、レイヤーは無意識に、寂しそうなため息をつくようになってきた。  
感覚を恐れていては出ない、感じている吐息だ。  
 
ゼロはそれを見計らってか。  
手をレイヤーのアーマーに回し、その豊かな胸を防備するものを巧みにはずした。  
彼女の弱点は、文字のごとく無防備となり、大きく揺れながらあらわになった。  
 
「…! ヤダ…!」  
思わず、両手でその胸を覆い隠すレイヤー。胸はアンダーウェアによってじかに露出はしていないが、  
その乳房の形から頂までが鮮明に浮き出しており、むしろいやらしかった。  
「ゼロさん…あの…」  
ゼロの思わぬ手の早さに困惑するレイヤー。人前では決して脱がないアーマーを、あれだけ素早く外されるとは考えていなかったようだ。  
だがそんな彼女をよそに、ゼロの手は、そのふさぐレイヤーの手を除けようとする。  
「…心配するな」  
ゼロの短い一言。だがレイヤーは、彼の言葉に反抗する、術も心も毛頭無かった。  
恥ずかしさは拭いきれてないが、彼女はゆるりとその手を下ろした。裸同然の豊かな胸が、再度露になった。  
「レイヤー、キレイだ…」  
そんな一言を残して、ゼロの手が、レイヤーの胸に包むように触れていった。  
「ん…」  
手はゆっくりと、丁寧に、その乳房の膨らみ越しの布を這っていく。  
時には下から持ち上げるように、時には上から撫でるように、時には指に力を入れて淡く握るように、その胸を優しく苛めていく。  
「…〜〜…」  
先のことで、レイヤーの感度は随分と落ち着いてきたようだ。ゼロのやわやわと胸を揉む手に、素直に気持ちよさを感じていた。  
手が動くたび、快感を繋ぐとため息と、切なさを含む小声が漏れる。時には指を軽く噛み、余韻を分散しながら愉しんでいる。  
その顔は、普段のように高潮し、紅くなっていた。だがその紅さは、恥ずかしさからではなく、気持ちの高揚からなる快楽の証であった。  
しかしすぐに、その感覚は、満足感を越え、欲求不満へと至っていく。  
「あの、ゼロさん…」  
「…? なんだ」  
唐突なレイヤーの呼び声。そう思えば、急にまた、彼女の体が震えてくる。  
「…もっと…強く揉んでください…」  
さすがにこの言葉は恥ずかしかったか、彼女の顔がまた急に紅くなっていく。だが、それほどに精一杯言葉を絞ったのだ。  
対しゼロは、言葉ではなく、その手の動きで答えた。  
手には、レイヤーの乳房へ指をうずくまるほどに力がこもった。ギュッと圧力がかかり、その胸の形が大きくひしゃげる。  
「あうぅっ!!ふわあああ!!」  
強烈。ゼロの太くて硬い指が、一気に、感覚極まる胸に喰い込むのだ。今までの甘い感覚は軽く吹き飛んでゆく。  
この一挙に押し寄せる快感に、レイヤーは我慢できずに大声を上げてしまった。  
「う、う、う、うぁあ…ああああ…!!」  
その感覚がすごければ、余韻も今までのものと比べ物にならない。ゼロからのなんでもない感触が、今のレイヤーにはなんでも快感へと変わっていく。  
ただ指が胸に触れているだけで、ビリビリと胸に電気が走る。それは頭に上り、体中に高揚が巡っていく。  
そのあまり、瞳からは軽く涙がこぼれ、口の脇からはだらしなく涎が垂れてきた。  
普段の彼女からは想像もつかないこの姿が、今の彼女の状態を表しているようだった。  
 
「ふぁっ・・・んうう・・・ふぅん・・・・  
 ゼロさん、もっと・・・もっと弄ってください・・・!!」  
レイヤーの欲求が開放されてから数刻。  
今や彼女は、完全に、身も心も快楽に寄せていた。  
時にレイヤーは、ゼロに舌で自身の首筋を舐めさせ、胸の頂を痛いほどに攻めさせ、尻を執拗なまでに愛撫させた。  
自分の思いつく限りの、快楽を得る方法を試させているのだ。  
そしてその度の結果に満足し、そして更なる快楽を求めようと身を高ぶらせている。  
その事を破廉恥に思っていた先の姿はどこへやら。彼女は度の快感に、心から、火照て汗ばみ紅潮した顔に笑みを浮かべていた。  
「レイヤー、次はどうして欲しい?」  
ゼロのクールな声。これもまた、レイヤーの喜びの一つ。  
「あぅ・・・胸が・・良いです・・・・・」  
レイヤーは多少惑いながらも、素直に答えた。  
その彼女の要望に、ゼロの手は素早く応える。手は彼女の豊かな胸を包み込み、形が大きくひしゃげるほどに揉みしだく。  
「うぅ・・・はぁっ・・・」  
それに応えるように、レイヤーからは甘い言葉がよく聴こえる。  
彼女のシンボルであり、一番の弱点である胸は、今では一番の性感帯でもある。  
そこへの刺激は、うなじや尻を攻められるより、より一層の快感を得るのだ。  
「ゼロさん・・気持ち良いです・・・」  
ゼロの手が動くと同時に、レイヤーは声を漏らす。  
まるでスイッチを押すと反応する人形のように、今のレイヤーは、人間らしさを築く真っ当な理性が当に吹っ飛んでいた。  
 
だがその中、ゼロの手はかすかに不審な動きをしていた。レイヤーも段々と、そのことに気付く。  
不審な動き。ゼロの手が、意図的のように、その頂に刺激を与えないのだ。  
今の彼女の一番敏感なところ。一番気持ち良いところ。そこを弄られない、焦らし。  
今でも充分気持ちが良いが、レイヤーはそのことで素直に満足できなかった。  
「・・・あの・・ゼロさん・・・」  
「なんだ、レイヤー」  
「あっ・・・あの・・・ちゃんと、弄ってください・・・・」  
事をちゃんと考えられるようになると、彼女は急にしおらしくなる。恥ずかしげを帯びた声で、ゼロにそう囁く。  
「あぁ、そうか。すまないな」  
ゼロの答えに、レイヤーは安心する。早く快感を得たいと、心急ぐ。  
だが一転、彼女は不意を突かれた。  
ゼロの手はその胸に行かず、レイヤーの尻下にするりと入り込み、手のひらで滑々と撫で始めたのだ。  
「あっ!!」  
予想だにしない刺激に、レイヤーは反応が大きくなる。脚がビクリとはね、下半身がビリビリと痺れてくる。  
先も尻は弄られたが、それはレイヤー自身が要望したことであったため、体も心も事前に準備が出来ていた。  
だが今は、完全に無防備状態。胸の余韻がそれを煽って、ただ触られるだけで気持ちが高ぶる。  
「んっ・・・ゼロさん、違います・・・!!」  
しかし、レイヤーの願いはそこじゃない。あくまで、要望に応えて欲しい。  
素の生真面目さが働いて、彼女は行為を静止させようと言った。  
だが、あくまでゼロは素直に応じない。  
「ん、そうか?ならこうしよう」  
そう言うとゼロは、唾液を纏った歯で、レイヤーの荒れた髪から垣間見える耳たぶを淡く噛んだ。  
 
「あっ!!そんなところダメぇ!!」  
普段は長い髪に隠れていて目にもつかないところが、ヒヤッとしヌメっとした唾液の感触と、淡くとも噛まれる刺激に平気でいられるはずがない。  
レイヤーの体に、ゾワゾワとした寒気と、身震いするような痺れが走る。  
そのあまりに寒々しい感覚に驚き、レイヤーは顔を移してゼロの口から抜け出そうとする。  
しかし、それを噛まれている最中にやったせいで、歯が余計に耳に喰いついてしまった。  
「痛!!」  
歯は深く食い込み、つい痛みを引き起こしてしまった。  
レイヤーはそれに反応して、咄嗟に動作を止める。  
「ふふっ、可愛いぞ、レイヤー」  
予想外に痛がるレイヤーを気遣ってかはわからないが、痛がる彼女の様子を見て、ゼロは言葉をかける。  
そしてゼロは、その口に含んだままのレイヤーの耳を、そのまま舌で舐めだした。  
「はぁぅ・・・!!ダメですってば・・・」  
痛みにかぶせるように、刺激が連なる。  
そのくすぐったい感覚は気持ちを落ち着かせ、彼女もやっと耳の刺激を受け入れられるようになった。  
 
段々と積極的なってきたゼロに、マイペースに楽しもうと考えていた自分の考えは通じないと、レイヤーは半ば諦めを抱き始めた。  
けど一方、愛するゼロが自分の体で愉しんでくれているという事を実感できるのが、何よりの幸せにもなっていた。  
 
「んっっっ・・・ひぃぁ・・・・・!!」  
もうどれほどの時間が経ったかわからない。もうどれだけ弄られたかわからない。  
けれども、レイヤーは本当に幸せだった。この嬉しい時間がいつまでも続けばいいと本気で思っていた。  
 
「うああっ あっ・・あっ!」  
触れば反応する人形のように、レイヤーは面白いように声を出す。  
揉まれ、湿気とぬめりを帯びた胸は柔らかくしなり、増した肉感が卑猥に映る。  
時に這うゼロの舌でさえ、その胸に飲まれてしまいそうなくらいだ。  
未だアンダーウェアは解けていないが、その特有のざらざらとした感触が、レイヤーの感度をいやらしく焦らす。  
「ぅぅっ・・・ゼ、ゼロさん・・・」  
その時だ。気の迷いか、勢いによる衝動か、レイヤーはだらしなく開いた口を、ゼロの唇に近づかせていった。  
レイヤーは本能的に、ゼロにキスを求めていた。  
ゼロから見たレイヤーの顔は、色っぽく艶っぽく高潮し、眼には涙を浮かべ、閉じもしない口からは溢れるように涎が垂れている。  
髪は振り乱し、じわりと汗もかいている。けれども、ゼロの顔を見るその瞳だけは、ゼロを想う彼女の理性が生きていた。  
一見すればただだらしないこの様子も、その瞳は本物だった。そしてその瞳があったからこそ、彼女は本当にきれいだった。  
ゼロは、自分の唇を求める彼女の口を受け入れた優しく唇を重ねた。そして力強くその舌を彼女の口で暴れさせる。  
それに反応して、レイヤーも舌を交える。ぬめった舌が交差するその感覚は、彼女を最高潮に高める。  
最初はおぼつかなかった舌の動きが、驚くほど素早く順応する。舌を、唾液を、唇を、思いつく限りの動きで舐めしだく。  
ピチャピチャと、ブチュリという水音が、二人の激しさを表していた。  
 
「んぁぁッ ゼロさん!! ゼロさん!!」  
やがて口を解き、ゼロの攻めを成すがままに受け入れるレイヤー。  
ゼロの手が、舌が、眼が、指が、何もかもがレイヤーを攻める。  
そして性感帯の境界を失ったレイヤーには、その刺激を受け流す術はない。  
長い時間で蓄積した快楽も相まって、レイヤーは体も気持ちも限界だった。  
「うっ・・・ゼロさん・・・本当に だめです・・・」  
「だめ? もっとはっきり言わないとわからないな」  
「・・・よく、わかんないです・・・でも・・・!!」  
しかしレイヤーの言葉は続かなかった。  
もう、まともに喋る意識さえ続かない。  
「ゼロさん・・!! もう・・・もう・・・!!」  
振り絞って出る言葉は、ゼロの名前だけなのが彼女らしい。  
そしてゼロの手が触れるたびにその思いは膨れていく。  
もう留めるのも苦しい。  
口に出し、体に表し、そして感覚を昇らしていく。  
 
もうそれしかなかった。  
そしてそれも達した。  
「ぁ あぅああぁ ダメッ・・・ダメェ!」  
それがいつだったかは覚えていない。  
しかしいつかに、彼女は視界から頭の中まで、空虚になった気がした。  
 
 
「んぅ・・・!!」  
それは突然だった。  
頭の上、妄想の中でゼロ相手に感極まったレイヤーは、その衝撃にとっさに意識を取り戻したのだ。  
(・・ぇ・・・?)  
そのあまりに性急な現実への帰還に、レイヤーは数刻ほど、その現実を把握できなかった。  
ただ認識できるのは、彼女はいつの間にか床に横たわっていたこと、自分の手をゼロの手に重ねていたこと。  
そして自分は、極まった快感で、頭も体もまともに動かないということだった。  
 
経つ時間と共に醒める思考回路が、徐々に彼女に冷静さを取り戻させていく。  
(・・・ビショビショ・・・)  
レイヤーは意識して自身とその周囲を見てみると、その様子に軽く驚いていた。  
自身は、耳から手先、尻から脚まで、汗と涎でひどく濡れていた。特に各部位を弄った手は、一杯に体液がまみれている。  
横たわっていた床も残り香を放つほどに湿気を帯びており、強く弄った胸や尻の辺りはその跡が残りそうなほどである。  
まるで激しくスポーツをした後の様子。その場は、それほどのエネルギーを消費した事を表していた。  
 
そしてそれは、レイヤー自身にも大きく影響を残している。  
目覚めても、まともに体を起こせないほどの疲労。  
手足等は動かす気力も出ず、微かな意識をたよりに力を込めても、それに応じて返ってくるのは体の痺れだけである。  
いざ床に手をつき、体を持ち上げようとしても、時々に体中に走る快感のフラッシュバックがその力を奪い、その度に彼女は床にへたり込む。  
思考も、その状況を認識できる程度には働いているが、濡れた体を拭いたり跡を消そうという発想までには辿り着かない。  
普段は冷静な思考でテキパキと仕事をこなさせる彼女を、これほどに呆させるほどの感覚。  
人が夢の内から覚めるのは生半可ではないように、完全に感情移入していたレイヤーがその妄想から覚めるのは容易くない。  
しかし、それを覚ますほどの感覚。それを彼女は、達することで得たのだろう。  
それは快感か、一種の恐怖か。何であれレイヤーは、眼を覚まして数刻、その感覚の余韻に浸りながら、ただその場を眺めて過ごしていた。  
 
そしてその間、体の思うがままに成している中、レイヤーは唯一働く微かな思考でいろんな事を考えていた。  
妄想を回想し、体を弄った事を振り返り、そしてゼロの姿を想う。  
どれもこれも顔が真っ赤になるほどに恥ずかしいことだったが、けれども彼女は満足していた。  
憧れのゼロに、少なからず近づけたような気がしたからだ  
そしてその一方、新たに不満も抱いた。  
自分の頭の中だけじゃいけない。自分の頭の中だけで、この思いを終わらせたくないと。生真面目な彼女らしい考えだった。  
そしてそれはまた彼女らしく、新たな決意として心に刻んだ。  
 
「・・・ゼロさん・・・好きです・・」その思いを確認するかのごとく、小声でつぶやく。  
今回は自分の頭の中だけだったけれど、今度は、本物で、現実であって欲しい。レイヤーは心底からそう思っていた。  
そしてその想いが勇気に変わり、行動となり、現実となる日は、今までよりも少し近づいたかもしれない。  
 

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