あの日からだった。  
 
その日僕は、いつものように夕食を済ませ、いつものように風呂をあがった。そして火照った体を冷ましがてら、自室で本を読んでどうとない時間を過ごしていた。本当に、いつもと変わらない、毎日の一面。  
そしてふと思い出した。彼女に、どうとない用件を伝えなければいけないことを。  
それは言うとおり、大して重要な話でもない。ただ、彼女と話したい気持ちも相まって、僕は思い立つ。部屋を出、すぐ隣の赤味の扉に向かう。彼女の部屋は目前だ。  
「ロールちゃん、入るよ」  
建前の挨拶を済ませ、僕は彼女の応え無しに、ノブを手に部屋のドアを引き開けた。  
今までこのマイペースな行動は彼女に咎められる事はなかった。僕自身も悪気など微塵もなかった。  
いつもと変わらない行動。そしてその先には、いつもの彼女の姿がある。そう思っていた。  
だが、その日は違った。  
開けたドアの先のその場には、いつには無い奇妙な沈黙が瞬く間経った。  
 
「キャッ!!」  
「ワァッ!!」  
僕は彼女の驚きの声に発起されたようにその状況を理解し、そして驚き、咄嗟にドアを閉めた。バタンッと鈍い音が響き、そしてまた流れるのは沈黙。  
僕は声など出せる心理状況じゃなかったし、彼女もきっとそうなのだろう。  
だがそれでもしばらくすると、戸惑った様子を伺えながらも、彼女の声が扉越しに聞こえ始める。  
「もぅ、ロック!! ドアを開けるときは私の返事を待ってよね!!」  
「ごご、ごめん・・・」  
「んもう・・・えっと、なにか話があるの?」  
「い、いや、大したことじゃないから・・・今日はいいや・・・」  
「そう。じゃあ、次からは気をつけてよね」  
「うん・・・本当にごめん。お休み・・・」  
「はい、お休み」  
よそよそしく落ち着かない気持ちに耐えられなくて、僕は早々に会話を区切り、彼女の部屋の前を去った。そしてそそくさと自室に帰り、逃げ込むようにベッドの上に倒れこんだ。  
多少の間はそのままで過ごした。  
だがやがて、明かりを消し、身を屈め、眼を瞑り、頭だけを働かせることに集中する。  
働かせ、脳裏に浮かべるのは先の光景。僕は心持ちの割にひどく冷静に、それを悶々と映し出すことができた。  
 
先の、開いたドアの向こうの光景。  
そこで彼女は、下半身に下着一着を纏っているだけという、裸同然のあられもない姿でいたのだった。  
厳密には、掲げた手にタオルを持ち、その髪に残った水分を念入りに拭き取っていたようであった。その様子から、彼女は僕の後に風呂からあがり、これから服を着ようと準備をしていたのだろう。  
そんなこの上無く油断した絶妙な機会に、僕は偶然扉を開けてしまったのであった。  
 
(・・ロールちゃん・・・キレイだったな・・・・)  
あの時、僕が裸同然の彼女を見ていた時間は、瞬く沈黙の間という本当に短いものだ。  
けれども、普段決して目にできず、目にしようとも思わなかった彼女の裸は、印象強さが極まり、異常なまでに鮮明に脳裏に焼きついた。  
驚いた顔。  
掲げ上げた腕の下の真っ白い脇。  
スレンダーなお腹。  
柔らかさを見て取れる脚。  
片手のひらにちょうど収まりそうな、小さくもかわいく発達した健康な肌色の乳房。  
その頂の桃色。  
多少湿り気を帯びた下着からうっすらと浮かんでいた、無毛の陰部。  
殆ど全身が、完全なビジョンとなって、僕の記憶に刻まれている。  
僕は、生まれたての無垢な姿の彼女を、頭の中で手に入れた。  
 
その夜、僕は自分のモノを弄った。  
彼女の姿を思い返しているうちに気持ちが高ぶり、ソレもまた興奮して止まなかったのだ。収めるためにと仕方なく、モノを擦る。Hな本から得た知識だ。  
そしてその間、僕の頭に浮かぶのは、やはり彼女の裸。  
彼女の顔を、脇を、脚を、胸を、股間を、一箇所一箇舐め回すように浮かべる。  
(・・ハァ・・ハァ・・・・ロールちゃん・・・!!)  
荒れる息遣い。帯びる熱。ギシギシとゆがむ体。徐々に迫る痺れ。そして、多少の背徳。  
しかし僕は、その行為を中断する気にはなれなかった。  
僕の頭にはそれしかなかった。無我無心に、行為に没頭する。  
(・・ウゥッ・・・!!)  
そしてやがて、絶頂が訪れた。ビクビクと体が震え、残る余韻が気を蝕む。  
モノから、溢れるように白い液体が出てくる。自分でも驚くほどの量で、手では押さえ切れなかった。そしてこれは僕が快楽に達した証だということは、Hな本を見て知っている。  
結局、冷静さを取り戻して周りを目にやれば、服から布団にまでベタベタとソレが染みてしまっていた。  
(・・・・・・・)  
僕は言葉無く、それをできる限りちり紙で拭き取り、事後処理は洗濯機に放ることで済ませた。  
そして軽くシャワーを浴び、眠った。その日は、死んだように睡魔に溺れた。  
 
その後日、また後日と、僕はあの日の行為を飽きなく繰り返していた。  
浮かべるものは同じ。幾日経っても劣化しない、彼女の姿の記憶。  
浮かべるたびにモノは膨れ、それを弄るたびに変わらず快感を得られる。  
当分は、それだけで満足だった。いや、これ以上は踏み込んではならないと、無意識の理性が働いていたのだろう。  
だが、その行為の後の空虚感を味わうたび、その心理もやがて解けてしまった。  
(・・ロールちゃんの裸・・・もう一度見たい・・・)  
そう思い立った時点から、僕はこの思いを引き下げる事が出来なくなってしまった。  
 
あの日から僕は、幼馴染であり、一番の友達であり、家族同然の彼女に、この上ない欲情を抱くようになっていたのだ。  
 
 

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