ベッドサイドのスタンドがほのかに赤い光で照らす薄暗い部屋の中、森の中の一軒家独特の
夜の静寂を若い女性の柔らかい嬌声がさえぎっている。先刻からずっとその状態が続いていた。
ベッドの上のミシェールはうつ伏せの姿勢で腰を後ろへ大きく突き出した恰好で、そこから肘を張って上半身を持ち上げ、波打つ草色の長い髪を乱した頭を高くもたげてその表情を誰へともなく晒していた。目を閉じにっこりと微笑み満足そうなそんないつも通りの優しげなお姉さん顔。だが腰を後ろから突かれ身体全体を前後に規則的に揺らされる動きが再開されるとその笑顔が豹変する。八の字に開かれた眉の下で開かれた瞳の色は優しげではあるのだが・・・ゆっくりと身体を揺する動きに合わせて伝わってくる感覚の愉悦に濡れたように瞳が光っていて、抑えた吐息を漏らし続ける半開きになった唇からは赤く温かく濡れた舌が覗きっ放しになってしまっている。そしてその開いた形の良い唇の端から唾液の雫が一筋顎を伝って流れているのが見える。
その表情、その瞳の色だけで充分だった。優しげな顔つきでありながら悦楽に支配されて焦点が定まらないその瞳、房になった前髪を揺らしながら左右に小さく首を振る今のこの瞬間のミシェールの瞳の色。それを誰かが見たとすれば即座に娼婦の瞳と呼んだだろう。
そしてそれはただの娼婦ではなく男との行為を自ら楽しむ事を知る、特別に淫乱な娼婦の瞳の色だった。
「・・・ミシェールさん、・・・僕、もう・・・。・・・でも、僕・・・どうしたら・・・・・・」
ミシェールはその裸体の上に鮮やかな緑色の襟の付いた短いローブの様な物を羽織っていた。
かろうじて肩と二の腕を覆う程度の長さの物で開かれた胸元にはその襟を止める大きな黒いリボンが付いている。
そして頭には同じく深い緑色をしたベレー帽のような物が載っている。ミシェールの明るい緑の髪の色とマッチしたそれは普段紙で作るミシェールの戦闘服の・・・その一部に違いなかった。
ミシェールはその二つを身に付けているだけであとは一糸まとわぬ全裸の姿だった。ベッドの上に四つんばいの恰好で肘を突いて身体を起こしていて、リボンとローブの下の豊かな乳房、背中からなだらかな曲線を描いて続く引き締まったウエスト、さほど大きくはない腰の膨らみ、そうした目を奪うように白い肌のその裸の姿がスタンドの赤くほのかな光に照らされて微かに赤く色づいて見える。その白く柔らかくしっとりと汗で湿っているように見えるミシェールの臀部は後ろから差し込まれている男性器をしっかりと掴むように咥え込んでいて、そしてそのミシェールのローブを羽織ったなだらかな背中の上には・・・背後から覆い被さるようにしてミシェールの肩に自分の顎を載せている少年の姿、ミシェールに咥え込まれた男性器の持ち主である青く透き通る銀髪をした少年、ジュニアと呼ばれる少年の姿があった。
射精が近づいた事は解ったが行為に不慣れなためにどうしたらよいのか途方に暮れている様子のジュニアに
優しげな笑顔を向けたまま、かすれ気味の甘い声音のささやき声で耳元からミシェールは指示を与える。
「ジュニア君、抜かないで、そのまま・・・そうしたら今度は身体を起こしてみて・・・
そう、膝立ちで中腰のまましっかり両手で両側からわたしのお尻をつかんで・・・できた?
そうしたら・・・お尻をしっかりつかんだまま腰を使って後ろから思いっきりわたしの大事なところを突き上げるの・・・
わたしの中に入ってるジュニア君のものだけに感覚を集中して・・・思いきり激しく何度も何度もよ・・・
ジュニア君、そうしたらいっぱい出せるから・・・」
「でも・・・そんなことしたらミシェールさんが・・・」
「あら、つらくなんかないわ。大丈夫、大丈夫よ(笑)。
それにそれがね、それが女の人を犯すってことなの。ジュニア君はわたしを後ろから犯して
自分のをわたしの中に一杯出すの。 大丈夫、あなたなら出来るわ・・・さあ・・・・・・
・・・そう(笑)
・・・もっと激しく・・・もっと・・・もっとよ・・・もっと・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二人が、というよりジュニアがようやく落ち着いたのはそれからしばらくたってからの事だった。
ジュニアはそのほっそりとしてしなやかな少年らしい体つきでありながらおそらくは普通の人間とは異なるのだろうその異常な運動能力を支えるなめらかな皮膚の下の特殊な筋力と持続力とを総動員してミシェールの身体を背後から貪り続けた。
だが幾度も幾度も繰り返される行為そのものはミシェールの負担にはならなかった。そのそれぞれがジュニアの年齢相応な幼く拙い行為に過ぎなかったからである。
ミシェールは背後から行為されながら少しずつ身体を前に倒して身体を寄せてくるジュニアの首に片手を回し、そうやって後ろ手にジュニアの頭を抱くようにして自分の顔に近づけるだけでジュニアをコントロールする事が出来た。そうやってミシェールの顔が自分の顔の間近にせまり、そうして自分の性器を出し入れされながらにっこりと微笑むミシェールの顔を目の前にするだけでジュニアは必要以上にどぎまぎした様子を見せて、そのままその吐息を顔にかけられ微笑みかけられたままそこからミシェールが腰の動きにほんの少し力をかけただけで呆気ないほど簡単にミシェールの性器に掴まれた自分の性器を脈打たせ精液の放出を開始してしまっていたからである。
ミシェールにしてみればたったそれだけの事で簡単に自分への射精を開始してしまい、そのたびに長いまつげを震わせて自己嫌悪の瞳でこちらを伏し目がちに見つめながら、その下半身では自分に精液を送り続ける動きを抑制できないジュニアを制御するのは簡単な仕事だった。面白いほど簡単に誘いに乗って瞳を震わせ射精して・・・面白いほど即座に自分の中で回復する。
問いただしてこれが普通だと返事が返ってきたジュニアの射精回数は・・・確かにそれは常人とは別物なのには間違いなかったが・・・
あるいはそれもジュニアが彼の父親だという偉人から引き継いだ特殊な遺伝形質なのかもしれなかった。
ミシェールはジュニアのそんな様子を面白がっていて夢中になってさえいる自分を意識していた。
「ミシェールさん・・・そんなに顔を近づけると・・・
それに女の人の匂いが・・・僕・・・・・・」
「まあ(笑)」
ミシェールは長い髪をベッドの上に散らすようにしてジュニアの顔を舐めていた口を離して微笑みかける。
後ろからの行為が一段落した後、ミシェールは今度はジュニアをベッドの上に仰向けに寝かせ、自分はそのジュニアの頭を横抱きにするようにして相手の口の辺りを自分の舌と唇で丹念に舐める様にして愛撫していたところだった。
身体はジュニアの剥き出しの身体に上からぴったりと肌を寄せたままで、ジュニアの片手に自分の胸を好きに弄ばさせていた。
勃起したままのジュニアの性器を使って身体の中央は結合させたままである。
つながったままで・・・動かさなくてもこんなに幸せでしょう?ゆっくり動かしていてあげるから少しだけお話をしましょうか・・・
出したくなったらいつでも・・・何度でもわたしに出していいから・・・
ミシェールはそう言って会話を始めようとしたがジュニアはそれどころではない様子だった。
ジュニアの顔の斜め下から唇と舌だけを使って舐める様に相手の口を愛撫する。そうするとジュニアからは
唇を開き舌を露出して下から小首を傾げるような形でこちらを見上げるミシェールの顔と瞳が眼前に迫る事になる。
ミシェールはその優しいとも悪戯っぽいともどちらともつかない半々の瞳でジュニアをじっと見つめたままで相手の顔への舌を使った愛撫を続ける。そうするとジュニアは必ず耐えきれなくなって顔を背けてしまう様子を見せた。
駄目。ジュニア君、ちゃんとこっちを見て。と無理にこちらを向けさせて愛撫を続けるとまず何かにむせたかのような様子を見せてミシェールの胸を弄る手を止めてそのままこちらの瞳を見つめたまま身震いして射精を開始して、その間も柔らかい動きを続けているミシェールの性器の中に精液を放ち始めてしまう。柔らかい自分の胸元に相手の顔を半分埋めさせて、その感触と射精の快感とミシェール自身の肌の匂いの感覚に瞳を震わせたまま自分のなかへ精液を放ち続けているジュニアをその間ずっと抱き続けているのはミシェールにとっても新鮮な感覚ではあったのだが・・・結局落ち着くまでに2度それを繰り返さなければならなかった。
好きな年上の女の人にこうして抱かれて愛撫されながら・・・しかも性器を相手に入れた相手に顔を寄せ合わせて間近に見るのってこの年頃の男の子にとってどんな気持ちがするものなのかしら・・・ミシェールはぼんやりと考えていた。
ジュニアには岐阜の遺跡と読仙社ビルでの計2回、命を救われている。理由は・・・萎縮させてしまいそうで聞けなかった。
でもその合間に中学校で顔を合わせたときにはもうジュニアの視線が自分の胸をずっと追っていたのが解っている。
それが解っていたから挑発するつもりでその場で抱き締めたのだけれど・・・
顔を近づけられて愛撫されていると女の人の匂いでむせるのだと本人は言っていたから、嗅覚も常人のそれとは違うのかもしれない。
それにしても女の人の匂いって・・・ミシェールは考え込みながら薄く笑った。
綺麗なお姉さんの匂いとか言ってくれるのだったら良いのだけれど(笑)
こういうときの匂いだからちょっとそれとはちがうのかも。
「ジュニア君、いつもはこういうこと・・・どうしてたの?
誰かのお世話になってた?」
「・・・ウェンディさんが・・・でもウェンディさんはいつも手でしかしてくれなかったから・・・」
「・・・ウェンディさんが?どんなふうに?」
「ウェンディさんは・・・毎日僕が寝る前の決まった時間に・・・僕の部屋に来ることになってて・・・
ウェンディさんはいつもブラウスのボタンを外して下着を外していて・・・
僕をベッドに座らせて・・・後ろから抱き締めて・・・僕の首筋を後ろから舐めながら・・・
指を僕のパジャマの上着の間に入れて身体を撫で回して・・・なるべく長い間がまんしてねって言いながら・・・
それでもう片方の手の指で出してくれてました・・・」
「・・・いつも?毎日?」
「そうです・・・ウエンディさんは僕のを出し終わると・・・指で僕のを撫でるようにして出たものをすくい取って・・・
少し指の間で延びたのを舐めて・・・残りをサンプルの瓶に入れてました・・・
僕が特別だから遺伝子に損傷が発生してないかどうか調べてもらうんだって・・・病気にならないようにって言って・・・
それで全部です。」
「ということは・・・ウェンディさんは身体には触らせてくれなかったのね?
ジュニア君は興味があったと思うけど・・・」
ミシェールは聞き終わると少しだけ考えて言った。
「わかったわ・・・こうしましょう!」
「どんなですか?」
「この次からはジュニア君にわたしの身体を好きなだけ舐めさせてあげる。これからでも良いけど。
指先からつま先まで全部。どこでも好きなだけ何時間でも。途中で出したくなったらすぐにわたしに入れて
それで気持ち良くなったら何回でも出してくれていいんだし。
そうすればジュニア君も女の人がどんなものか良く分かるでしょう?
今日から毎日いっしょに寝るのよ!もうあなたはわたしの弟と同じ。ジュニア君は良く知らないかもしれないけどお姉さんは弟の面倒を見るものなの。お姉さんには何度でも出していいのよ。
それにジュニア君のお母さんも・・・ずっと離れていたんだしジュニア君の成長ぶりを自分の身体で確かめてみたくなると思うの。
お母さんは身体はちゃんと大人の女の人の身体だし・・・ジュニア君の成長ぶりを確かめたりお世話したくなったときにジュニア君がちゃんとお母さんと出来なかったら困るでしょう?
そうよ、マギーちゃんもアニタちゃんも・・・一人では無理だけど二人なら・・・マギーちゃんがジュニア君のを舐めてるあいだにわたしはジュニア君を後ろから抱いてお尻や何かを弄ってあげられる。
アニタちゃんは嫌がるかもしれないけど、アニタちゃんだってこういうことを覚えていいお年頃だし・・・
マギーちゃんならわたしの言うことを聞くから・・・とにかく3人居れば楽勝よ!
そうよ!そうに決定・・・」
(ガタッ)
ミシェールがそう言い切りかけたところで何かがコケるような音がして、それに続いて部屋のふすまが大きく開かれたかと思うと
「はい!そこまでっ!」
というねねねの大音声が辺りを一喝した。ふすまを勢い良く開いて立ったねねねの背後には顔を真っ赤に紅潮させて身体を震わせながら何も言えないでいるアニタと、複雑な表情をしたマギーが控えている。
この部屋は元々和室で部屋を隔てるドアはなくふすまで仕切られた縁側が出入り口になっていたのだった。
「悪いけど、話は全部そこのふすまの陰で聞かせてもらったわ・・・
ミシェールさん、あんたはそのままそこに座って。
ジュニア君はとっとと服を着る。着終わったらその場に座って。」
ねねねはそのまま圧倒的な威圧感でその場を仕切りまくる。
ミシェールは、ハハハィッといった感じでその場に正座する。一年間ねねねと暮らした結果のある種の条件反射のようなものかもしれなかった。ミシェールは裸に例のローブを付けたままで剥き出しの胸を露出させたままである。
かしこまって正座したまま、せめてもというつもりか手にしたベレー帽をかぶり直している。
その横に和風の作務着をいそいで着込んだジュニアが座るとねねねは二人をねめ回すように眺めて切り出した。
「黙って聞いていればまた随分変わった家族観をジュニア君に植え付けてたみたいだけど・・・」
「はあ?」
「お姉さんやお母さんが弟のその・・・面倒を見てくれるとか・・・」
「それは・・・先生、あるんですよ!本当に。アフリカの原住民が記した記録の本によれば・・・」
そう言い募るミシェールをねねねがさえぎった。
「黙らっしゃい!
そりゃあまあ・・・手を出してしまったものは手を出してしまったもので・・・とやかくとは言わないけど・・・」
とジュニアを一瞥してから言葉を続ける。
「で、肝心の説得はどうなったの?」
「はあ?誰の説得ですか?」
「ジュニア君が大英図書館に戻らずにあたしたちと行動を共にするかどうかの説得よ!
って、ミシェールさんあんた・・・わたしが説得しますから二人っきりにさせてくれって
自分で言ったの忘れたの!?」
「あららぁ?あ、はいはい、もちろん覚えてます。冗談ですよ。ほんの軽い冗談ですってば
もちろん、ちゃんと話して解ってもらいました。ね、そうよね、ジュニア君。」
ねねねはジュニアを再び一瞥し、相手がうなづくのを確認すると身体から力を抜いて
気が抜けたように話を続ける。
「じゃあとにかくそれは解決済みね。やれやれ・・・
ったくここセンセの御両親の寝室だったんじゃないかと思うけど・・・勝手に使っちゃって・・・
センセに聞こえてなければ良いけどね。ここらへんとにかく静かだし4時間筒抜けだったんだから」
「え!そうだったんですかあ?」
「そうよ!それにまあ知ってはいたけど大きな胸よね。そうして剥き出しになってると。
センセやあたしも負けるかもしれない。
それにしても・・・なんで裸にその肩掛けやベレー帽や大っきなリボンなの?」
「はい、それはですね・・・
全裸よりも少しでも服を着て半脱ぎの方がジュニア君が萌えやすいと思って・・・」
その言葉にジュニアを含めた一同が一斉にミシェールを黙って見つめた。
当のミシェールは何が嬉しいのかその裸の正座姿でいつも通り何も変わったことなどないかのように
にっこりと微笑んでいる。ねねねは眼鏡の上の眉根を思いっきり寄せながら立ち上がった。
頭が痛い。こめかみを揉みながら辺りを見回すとキョトンとした表情のジュニア、座ったままブツブツと
「姉さん・・・卑猥だ・・・」といったセリフを呟いているマギー、紅潮して怒り心頭に達し口も利けない様子でいるアニタの姿が見える。ねねねはそのアニタの肩をポンと叩くと「やってよし!」の言葉を残して部屋を去り縁側へと出た。
即座に曇る眼鏡をそのままに縁側から外の埼玉の山林にかかる丸い月を眺める。
あたし・・・このままこいつらと行動を共にしていて大丈夫なんだろうか・・・
閉じたふすまの向こうからは遂に口が動くようになったアニタの
「この・・・色ボケ姉キがっ!」 といういつも通りの叫びとミシェールの顔に蹴りを入れる音、それと同時に
「あひぃんっ!」というこれまたいつも通りの悲しそうなミシェールの悲鳴が聞こえる。
森を渡る夜風に乗って暗闇のどこかから読子や3姉妹と付き合うようになって以来密かに聞こえるようになったオーケストラの響きが微かに聞こえるような気がした。このトボケた音楽は・・・本屋か何かのテーマだっけ?
それはともかく・・・白く曇った黒縁眼鏡をずり上げながらねねねは最後に考えていた。
まあいざとなれば・・・。・・・・いざとなればどうなるんだろ?
全く見当もつかなかった。誰かの顔が浮かんだ気もするのだが・・・
とにかくまあ明日一杯くらいは平和に暮らせるだろう。
そう思い直すとねねねは居間への廊下を歩きだした。いつもの自分達の日常生活に戻る為に・・・
(終わり)