読書中は何をされても気付かないため、満員電車では痴漢のいいカモにされてそうな読子さん。
外出先から愛しの神保町へ還らんと、急ぎ山手線へ駆け込む読子さん。
ドア脇のスペースは、すばやく空き席を見つけ座り込む才能に著しく欠けた読子には
つり革に掴まらず読書に没頭できるまたとない特等席だったが、同時にそこは
痴漢達が獲物を追い込む袋小路でもあった。
車内に乗り込んだ瞬間から「上玉発見!」のテロップが脳内に流れていた痴漢達は、
走り出した電車の揺れにまぎれ、じわじわと包囲網を閉じていく。
まずはベテラン痴漢が慎重に、大きな揺れに合わせて片尻を包み込むようにタッチ。
読書に興じる眼鏡巨乳の様子に変化は無い。包囲網を形成していた痴漢達は、標的が
怯えて声を出せないタイプと観て次々に手を出し、起伏に富んだ彼女の肢体を蹂躙しはじめる。
最初の内は、逆らわず感度も良好なのでいい気になって触りまくっていた痴漢達だが、
この標的は汗ばみ上気してまでいながら、全く痴漢行為に気付く様子がないことを
全員が悟った時点で、羞恥に悶える様を愛する少数の情緒派痴漢が脱落。
残ったあまり理想を重んじない現実派痴漢たちはややおさわりをエスカレートさせるが、
ここで読子の躯が快感に音を上げ、堪え切れず喘ぎ声を漏らしてしまう
「あは〜〜〜〜ん、うふ〜〜〜ん」…………棒読みで。
実利を重んじる現実派痴漢達でも、ここまでまぬけな声を出されては萎える。
車内の注目も集まり、あわてて手をひっこめ知らんぷりをする面々。
リスクを避けるベテラン達もこの時点でアタックを断念、次の機会に夢を託した。
残ったのは肉欲をたぎらせた若い痴漢と、なんと読子が自分が声を出した事にも気付かず
依然両手で抱えた文庫を爆読していることを見抜いた老練な痴漢の2人であった。
25歳の熟れた肉体を存分にまさぐる2人は、ついにベストとブラウスのボタンをくつろげ、
スカートの中に手を差し入れて直接読子の果実を貪らんとした……
次の瞬間、若い痴漢は瑞々しい弾力を脳に伝えていた腕が、急に何の感覚も伝えなくなった事を
不思議に思った。何事かと手のひらを確認しようとした腕がだらりと垂れる。
同じ瞬間、老練な痴漢は眼鏡巨乳の両手がかき消え、手に持っていた文庫が宙に浮くのを観た
瞬きする間に女の両手は元に戻り、同じく腕が力を失った。
「う、腕!「バカ!騒ぐな!「ど、どうしたんですか!?「俺の俺の、血が「何でも無いんです、
次で降りますんで「あ、あなたも怪我を「降りるぞ!」
血まみれの壮年男性に車内へ突き飛ばされ、それでも追い縋る読子の鼻先でドアが閉る。
「怖いこともあるんですねえ〜〜〜」
自分が何をされたか、何をしたかとうとう気付かなかった読子さんをよそに、
彼女には神保町最重要お得意さまに続き、山手線痴漢連盟最重要不可触対象の栄誉が与えられた。