「おー、おにーちゃんが帰ってきたぁ」
学校から帰ると、自宅の前でひなたちゃんが待ち構えていた。
何故だろう、いつもの「おー」も元気がない。
とりあえず部屋に上がってもらい、事情を聞く。
「おー、こないんだよー」
「こないって、何が?」
「おー、月のもの…」
月のものって、ひなたちゃんってもう来てたの!?
来てないと思ったから、あんなことやこんなことをしちゃったんだが。
まずい、非常にまずい。
このままではロリコン疑惑(というより、単なる事実なんだが)の二の舞だ。
そんな思考が頭の中を駆け巡る。
一人で混乱していると、ふとひなたちゃんが下を向いて落ち込んでいるのが目に入る。
そうだよな、一番辛いのはこの子なんだよな。
「うん、ひなたちゃんにお願いがある」
「おー、なに?」
「ひなたちゃんのお父さんとお母さんに会わせて欲しい」
「おー、そうしたいけど…。二人とも外国だよ?」
「え? 外国?」
「そう、お父さんもお母さんも外国にいる。それで毎月お小遣いが送られてくるんだけど、
今月だけこないんだ。困ってたらせんせーが『昴に毎月のものがこないと
相談してみなさい』と言ってくれたから…」
月のものって、そういう意味かぁ!!
そうだよなぁ、おんぶをしたり、手を握ったりで子供はできないよな。
これもミホ姉の嫌がらせか。それとも「手を出すなよ」という警告か…。