「らんらんらーんっ、らんらんらーんっ、らららっらんー!」  
 
お決まりのクリスマスソングを歌う女バスの子たちの元気な声が部屋中に響きわたる。  
 
今夜はクリスマスイヴ。  
俺たちはここ三沢邸に集まりささやかなパーティーを開くことになったのだった。  
 
もっともささやかと言ってもそれは人数だけの話で、会場となる真帆の部屋は  
子供部屋とは思えないほどやたら広いし、並んでいる料理の数々も超豪勢。  
そして部屋の中央にそびえ立つクリスマスツリーは吹き抜け2階の天井にとどかんばかりのでかさだ。  
 
「……なあ、真帆。いいのか本当に。俺たちだけのパーティーなのにここまで大げさにしちゃって……」  
「んー、そーお? 別にそんなおおげさじゃないと思うけどな」  
「長谷川さん、三沢家レベルだとこれは『こじんまり』とした方なんですよ」  
「…………」  
 
ほんと、いるとこにはいるもんだな、金持ちって。  
でもそれがこんな身近にいて、しかも真帆というのがいまだ信じられない。  
もちろん良い意味でだ。  
 
ちなみに真帆のご両親は本日、それこそもっと大規模なクリスマスパーティーに参加しているため不在だ。  
本来は真帆も出席するはずだったのだが  
「かたくるしいからヤダ!」と駄々をこねたんだと。  
 
まあ大人のパーティーに子供が行ってもつまらないだろうから、  
それなら子供たちで仲良くクリスマスを過ごした方が楽しいだろうということで、  
友達呼んでのパーティーになったわけだ。  
 
パーティーと言っても、ここにいるのは女バスの5人と俺の6人だけ。  
クリスマスイヴということもあり、真帆のお父さんの計らいで  
必要最低限の人たち以外、みなさん早上がりになったらしい。  
 
俺たちとしても他の人がいない方が色々と都合がいいので、料理だけ用意してもらえれば  
片づけも含めて後は自分たちでするということにしてもらっている。  
 
「んもうっ、そんな細かいことはいーからさっ、せっかくのあたしたちだけのクリスマスパーティーなんだから、  
 もっとぱぁーーーーーーって盛り上がろうよ!」  
 
いや全然細かくないんだけど……。  
でもまあ、真帆の言う通り、ここでそんなことを言っていても始まらない。  
クリスマスなんだし、楽しんだ方が断然得だ。  
 
「……それにしても、君たちのコスプレ好きもそうとうなもんだなあ」  
「ふぇっ……こ、これは真帆と紗季がどうしてもって……」  
「何言っているの。トモだって、結構気に入ってたじゃない」  
「へへーっ、どーお、すばるんっ。似合う? かわいい?」  
「おう。かわいいかわいい」  
 
俺の目の前でくるっとターンを見せた真帆は、赤と白を基調にした服に同じような三角錐の帽子をかぶった、  
クリスマスなら町のいたるところで見られるサンタクロースの格好をしていた。  
ちゃんと子供ようにあつらえたもので、しかも下はミニスカである。  
寒くないようにミニの下に白いタイツを履いているのだが、  
それがふくらはぎとか太ももの形をくっきりと浮かび上がらせていて、ちょっとエロティックである。  
 
「おー。おにーちゃん、ひなは? ひなのお洋服もかわいい?」  
 
俺の前に躍り出てぴょんぴょんと跳ねまわるかわいい天使。  
そう。なんの比喩でもなく、そこにおわすのは白いひらひらの服に身を包んで天使の格好をしたひなたちゃんであった。  
ちゃんと背中にはフワフワの毛でできた小さな羽根がついていて、手にはお星様が先についたステッキを持っている。  
 
そのあまりの可愛らしさと神々しさで、俺の目にはあるはずのない天使の輪がしっかりと見えていた。  
 
「うんっ。すっごくかわいいよ。ひなたちゃん。お洋服も、ひなたちゃん自身も、全部!」  
「わーい!」  
 
ぴょんぴょんと、全身を使って喜びを表現するひなたちゃんを、俺は我慢できずにひょいっと抱きあげてしまった。  
うん。さすが羽根が生えているだけあってまったく重さを感じない(脳内補正180%発動中)。  
 
「えへへ、おにぃーちゃん!」  
 
抱きあげられたひなたちゃんは俺の頬に自分のほっぺたをスリスリとくっつける。  
あったくてぷにぷにのほっぺの感触に頬がとろとろに緩む。  
 
「こらぁぁぁーーーっ、すばるんっ、ずっこいぞっ! またヒナばっかしヒイキして!」  
「んー、そんなことないぞ。ほら、真帆もかわいいかわいい」  
 
右腕にひなたちゃんを抱えたまま、左腕を真帆の華奢な腰にまわしてグッと力を入れて抱き上げる。  
くっ。さすがに辛いがこんなことでへこたれるようなヤワな鍛え方をしちゃいない!  
 
「どーりゃっ!」  
「へっへー、なんだよすばるん。やればできるじゃんか。ごほーびにまほまほサンタがキスしてやんぞ」  
 
ちゅっと頬に感じる温かい感触。  
 
もちろんそれだけで終わるはずもなく、ちゅっちゅっとキスを繰り返しては唇へ……  
 
「ちゅーーー」  
「ちゅーーー」  
「ああっ、ヒナ! だから横取りすんなって!」  
 
たっぷりと唇を吸い合った後、ちゅぷん…と口を離してひなたちゃんが反論する。  
 
「だってひなのほーが先にだっこしてもらったんだもん」  
「なにおーっ! すばるんっ、あたしにもっ。あたしにはべろちゅーして!」  
「おーっ、ずるい。ひなもー、ひなもー」  
「ったくしょうがないなー。クリスマスの日にサンタと天使がケンカしちゃダメだろ?   
 ほらっ、ちゃんと二人ともべろちゅーしてあげるからさ」  
 
二人の顔の間に割り込むようにして、まずは真帆の唇にそっと口を寄せる。  
 
「そーこなくっちゃ。さっすがすばるんっ! ……んっ……ちゅっ……れろ……」  
「おにぃーちゃんっ。……れろっ……れろっ……ちゅ……」  
「どう考えてもあの二人が贔屓されまくってるわよね」  
「ほんとほんと」  
 
おっといけない。あとの二人の機嫌を損ねてしまう。  
 
とりあえずまほまほサンタとエンジェルひなたの唇の間をひと往復して、  
俺は二人の体を床に降ろした。  
 
「ゴメンゴメン。でも紗季と智花だってとってもかわいいぞ。  
 おっ、紗季はシスターか。うんうん、清楚な雰囲気が真面目な紗季にぴったりだ」  
「なーんか、白々しいですよ。そのセリフ。私がどういう性癖かなんて、長谷川さんが  
一番よーーーくわかっているでしょうに」  
「んー? だから言っているんじゃないか。真面目で恥ずかしがり屋さんの紗季には清楚な服装がとっても良く似合うよ」  
「な……!?」  
 
すっと紗季の耳元に顔を寄せ、かわいい耳たぶをはむっと甘噛みしながら、紗季にだけ聞こえるように囁く。  
 
「……この前の羞恥プレイであんなに感じちゃって、何度も絶頂っちゃたもんね。  
 今夜も紗季の恥ずかしい姿、たくさん見せてね」  
「し、知りませんっ、そんなこと! ……あっ、……んっ……」  
 
ムキになって声を張り上げそうになった紗季の口を、ちゅっとキスで塞ぐ。  
そのまま舌を絡ませて、たっぷりと唾液を飲ませてあげる。  
 
「……ごくっ……ごくっ……はあ……はあ……」  
 
シスター紗季は瞳をトロンとさせてすっかり大人しくなってしまった。  
俺は唇を離すと、残ったもう一人に目を向ける。  
 
「お待たせ、智花」  
「……ぶー、遅いです……」  
「ごめんごめん。智花はいい子だから、ずっと俺のことを待ってくれていると思ったからね。ちょっと安心してた」  
 
すっかりスネてしまった智花の頬を両手で包み、その薄紅色の唇に軽くキスをする。  
 
「……ちゅ……。……もう、こんなキスじゃ許してあげませんよ」  
「もちろん。これはただの挨拶。お詫びは……ていっ!」  
「ふぇっ!?」  
 
智花の腰に両腕を回して、掛け声とともに抱きあげる。  
 
「だっ、駄目ですよ。昴さん! 重いですよっ。私、この頃体重が増えてしまったんですから」  
「そんなの成長期なんだから当たり前だろ? ……ふむ、でも胸はまだちょっと……」  
 
おっぱいにスリスリと頬ずりしてみるが、あまり成長は見受けられない。  
 
「そ、そこはまだまだ今後を乞うご期待くださいっ」  
「うん。楽しみにしてるよ。……でも今のちっちゃな智花のおっぱいも好きだよ……はむ」  
「やんっ! そんな……お洋服の上から甘噛みなんかしちゃ……だめ……です……」  
 
服の上から乳首を愛撫して、智花のかわいい声と表情を堪能した後、ゆっくりと下に降ろす。  
 
「服っていえば、智花のはいったいなんのコスプレなんだ? かわいいのはわかるんだけど……」  
 
本日の智花の服装は、欧州の童話なんかで出てくるようなフリフリやらアミアミやらが  
たくさん付いたワンピースにカーデガンを羽織っている。  
そして腕には蔓でできた手提げのカゴ……。  
カゴの中身は……マッチ?  
 
「これはマッチ売りの少女だそうです」  
「なるほど。……でも変な意味じゃなくて、マッチ売りの少女にしちゃ綺麗すぎない?」  
「そうですね。どっちかって言うと赤ずきんちゃんですね」  
 
たしかに。これで赤い頭巾をかぶって森の中を歩いた日には、すぐさま狼に襲われてしまうだろう。  
無論、この場合の狼とは俺のことだ。  
 
「でもなんでマッチ売りの少女なんだ?」  
「それはですね……」  
 
マッチ売りの智花が説明しようとしたところに、まほまほサンタが「それはだなぁーっ!」と勢いよく割りこんでくる。  
 
「この物語はクリスマスの夜に凍えて死にそうになっているマッチ売りの少女を  
 まほまほサンタと愉快な仲間たちが助けてあげるっていう壮大なストーリーなんだ!」  
「……ちなみに突っ込んでおくが、マッチ売りの少女はクリスマスじゃなくて  
 大みそかの話だぞ」  
「うるさいうるさいうるさーいっ! 大みそかになったら死んじゃうんだから、その前に助けるの!」  
「あーはいはい。そーですか。それは凄い。楽しみだ。で、その劇はいつ始まるんだ?」  
「んにゃ、劇なんかしないよ。そーゆー設定なだけ」  
 
あ、そ。  
 
「そんであかずきんちゃんを助け終わったまほまほサンタ一行は、みんなで楽しくパーティーをするのであった! ちゃんちゃん」  
「いやっ、赤頭巾じゃないから、いきなり配役間違ってるから!」  
 
ほんとは物語なんかどーでもよくて、ただコスプレのキャラが足りなかっただけじゃないのか?  
 
まほまほサンタと愉快な仲間たちね……。  
先ほどからそのドデカイ存在にはちゃんと気付いたのだが、たぶん『愉快』の部分に含まれるであろうその格好に、  
あえて気付かないふりをしてたんだけど……。  
 
「……で、なんで愛莉は着ぐるみなの?」  
「え、トナカイさんですよ。ほらほら」  
 
クルリと回ってその姿を披露する。  
いや、トナカイであることは言われなくても分かる。だぶん10メートル離れていたって認識できるだろう。  
 
愛莉の長躯に合わせ作られた……というよりも恐らく成人男子用のそれは、  
二つの大きなツノも含めると、ゆうに2メートルはある。  
 
うむ。思わず見上げてしまった。  
 
「長谷川さん……かわいくありません?」  
「いやっ、かわいいよ。愛くるしくってとってもかわいいんだけど、……それ、暑くないの?」  
 
室内はガンガンに暖房がたかれているので、コートを脱いだ俺には丁度いいのだが  
着ぐるみなんか着てたら結構汗かくんじゃないだろうか。  
 
「冬だからかえってこの方がいいんですよ。あったかくって、ぽかぽかして気持ちいいですよー」  
 
ほっぺたに手のひらを当てて、ニッコリと笑みをみせる。  
 
「そ、そうなんだ。良かったね」  
「はい!」  
 
トナカイ愛莉はえらく御機嫌だ。  
もしかして気に入っているのか、その格好?  
 
でもいくらみんなコスプレしているとはいえ、全長2メートルのトナカイの着ぐるみは  
さすがに浮いている気がするのだが……。  
 
まあ愛莉が上機嫌ならそれでいいか……。  
 
…………。  
いや、違うぞっ。  
別に愛莉のたわわなボディが見えなくなっちゃって残念!とか思ってないぞ!!  
 
「ねーねー、すばるんっ。それよりもさ、こっち来てこっち!」  
「おー、おにーちゃん、こっちこっちー」  
「こらー、ふたりとも。そんなに急いじゃ危ないぞー」  
 
真帆とひなたちゃんにそれぞれ腕を引っ張られて、俺は料理が並べられたテーブルの前に連れてこられ、  
智花が引いてくれた椅子に座らされる。  
 
そのテーブルの上にあったのは、色とりどりの豪勢な料理の数々と、5つのケーキであった。  
 
「はいっ、これ! すばるんのためにみんなで作ったケーキだよ!」  
「おおっ! それは嬉しいな。……でも5つって……?」  
「うん。みんなひとりひとりすばるんへの想いをこめて作ったんだっ!」  
「まあ、作ったと言っても、実際にはデコレーションをしただけですけどね。  
 スポンジとか下地の部分はパティシエの方に作ってもらいました」  
「ああ、それなら安心だ」  
「にゃにおーっ! あたしが作ったんじゃ食べらんないのかよっ!」  
「こしょう、タバスコ、唐辛子入れるの禁止なら食べてあげるよ」  
「ええーっ、いれたほーがおいしーのに……」  
 
嫌な予感がした。  
 
「……真帆、おまえ入れたな……」  
「………………えへへ」  
「あんたっ、あれだけ私たちが見張っていたのにいつの間に……」  
「……真帆、とりあえず最後な」  
「えええーーーっ、なんでだよう!」  
「うるさいっ。そんな激辛ケーキ食べちゃったら、みんなのケーキの味がわかんなくなっちゃうだろっ。  
 ちゃんと最後に食べてあげるから待ってなさい!」  
「はぁーい。……へへっ、でもなんだかんだ言ってちゃんと食べてくれるから、すばるん、好き」  
 
ちゅっ。  
 
首に抱きついて、右頬に熱いキスをひとつくれる。  
 
……まったく調子の良いやつだ。  
 
さて。そうとなれば、どの子のから食べようか。  
やはり最初は安全パイからいきたい。  
 
「……これは、誰が作ったの?」  
「はいっ! 私です!」  
 
しゅたっと手を上げるのは智花だ。  
 
よしっ、当たり!  
この精緻な作りのイチゴのショートケーキは絶対智花だと思ったんだ。  
 
「では、いま切って差し上げますね」  
 
そう言って智花は自分が作ったイチゴのたっぷりのったケーキを切り分け、小皿に乗せて俺の前まで持ってくる。  
そしてイチゴの乗った部分を一口分フォークで切り分けると、それを俺の口へと運ぶ。  
 
「はい、昴さん。あーん」  
「あーん」  
 
俺はごく自然に口を開け、智花が作ってくれたケーキを美味しく頂いた。  
 
「……うん。イチゴが甘酸っぱくてとっても美味しいよ。智花」  
「うふ。ありがとうございます。……でも甘酸っぱかったですか?  
 私が味見したときにはとても甘くて美味しかったんですけど……」  
「いや、それは言葉の綾というもので……」  
 
智花はフォークでケーキの上のイチゴをひょいっと自分の口へ入れる。  
真っ赤なイチゴが智花の薄紅色の唇に咥えられ、そこから覗く真っ白な歯にシャクリ…と噛み切られ、  
小さな口の中へと消えていく……。  
 
「………………」  
「……しゃくしゃく……うん。やっぱり甘……」  
 
がばっ!  
 
「ふぇ!?」  
 
俺は智花を抱き寄せ、唇をくっつけ、その口内にあった咀嚼されたイチゴを智花の舌ごとむさぼるように味わった。  
 
「……ちゅぱっ……ぐちゅっ……ちゅばっ……」  
「ふううんっ、……ちゅぱっ……ちゅぱっ……」  
 
智花の唾液とミックスされたイチゴは甘露な味がした。  
 
「うん。ごめん、訂正するよ。とっても甘いよ、このイチゴ……」  
「……ふぁい。……ほんとうに、あまい……です」  
 
ぼぉーーとした智花が俺の言葉にコクンと肯いた。  
 
「じゃ次は……これ!」  
 
俺が選んだのは一面たっぷりこげ茶色でデコレートされたチョコレートケーキだった。  
チョコレートでできた平原にこれまたチョコレートのお家があって、  
その横に飴細工のサンタとトナカイが仲良く並んでいるのが愛らしい。  
 
「おー。それ、ひなのだよ」  
「そっか。ひなたちゃんのか。上手にできたね、えらいぞー」  
「えへへー、ありがとう、おにーちゃん」  
 
俺にいーこいーこされて、目を細めて喜ぶひなたちゃん。  
ふふ。もうその笑顔だけで最高のクリスマスプレゼントだ!  
 
「おー。それでは、ひながおにーちゃんに、きりわけてあげます」  
 
そう言って、背の届かないひなたちゃんは、俺の膝の上にうんしょと跨る。  
俺は、ケーキへと体ごと手を伸ばすひなたちゃんが落っこちないように、  
彼女の腰に手を回し、しっかりと固定してあげる。  
 
「うんしょ……よいしょ……はい、おにーちゃん、とれたよ。あーん」  
 
ケーキをフォークで突き刺して、フラフラと危ない手取りながら、  
ひなたちゃんは俺の胸にぽすんと頭の後ろをつけて、真上にある俺の口へと見上げるように手を伸ばす。  
 
「……あーん」  
 
ケーキよりもそのキラキラ光るおめめに釘付けです。  
 
「……むしゃむしゃ……うん。とっても美味しいよ。ひなたちゃん」  
「わーい。おにーちゃんにほめられちったー」  
 
よし。毒見完了。  
変な物が混ざってないかちょっと心配だったけど大丈夫だ。  
 
俺は自分のフォークを取ってチョコレートケーキに手を伸ばすと、小さく切り分けて  
無邪気にはしゃぐひなたちゃんの口へ持ってくる。  
 
「はい。ひなたちゃんも、あーんして」  
「あーん」  
 
差し出されたケーキを素直にほおばり、嬉しそうな表情を見せるエンジェルひなた。  
 
「ほいひー」  
「うん。おいしーね」  
「じゃー次は、ひなの番だよ。……はい、あー――あっ」  
 
もともと膝の上に乗りながら背面に手を伸ばすという体勢に無理があったのか、それとも挿しが甘かったのか、  
俺の口に持っていく途中でひなたちゃんのフォークからチョコレートケーキが落っこちてしまった。  
 
「おっと……」  
 
俺は咄嗟に手をだして、ケーキがひなたちゃんの白いお洋服に着地する前に受け止めた。  
 
危ない危ない。あやうく天使の羽衣をチョコレートまみれにしまうところだった。  
 
「うー。ごめんなさい」  
「はは、気にしない気にしない。ケーキはまだまだたくさん残っているんだからね」  
 
手の中のケーキを別の小皿に移し換えながらひなたちゃんを慰める。  
 
「でも、おにーちゃんのおてて、チョコレートだらけだよ」  
「あ、そうだね。……ええと、ナプキンはどこかな……」  
 
これでは下手に触ってひなたちゃんを汚してしまう。  
かといってひなたちゃんを膝から降ろして手を洗いに行くという愚行は即時却下したので、  
テーブルの上にあるはずのナプキンを探していると……。  
 
「ふむ。おにーちゃんのおててが汚れちゃったのは、ひなのせーだから、  
 ひながおにーちゃんのおててをきれーきれーしてあげます」  
「え、ひなたちゃん?」  
 
そう宣言すると、エンジェルひなたは俺の手首をはしっと両手で掴んで、  
手に付いたチョコレートをペロペロと舐め始めたのだ!  
 
「だっ、ダメだよひなたちゃん!? そんなっ、汚いよ!」  
「ぺろぺろ……おー、おにーちゃんのおてて、チョコレート味でおいしーよ」  
 
ちゅぱちゅぱとまるで赤ちゃんのように、指の一本一本、指の間まで  
ひなたちゃんは丁寧にチョコレートをしゃぶって、舐めとってくれる。  
 
「……………………」  
「ちゅぱちゅぱ……ぺろぺろ……。おー、おにーちゃん。きれーになったよー」  
「ううん。まだ残ってるよ」  
「ふぇ? どこ? どこ?」  
 
舐め残しを見つけようと俺の手をまじまじと見るひなたちゃんの口元にすっと顔を寄せ、  
その唇の端についたチョコレートをぺロリと舐めとってあげる。  
 
「ここ……」  
「……ふぁ」  
 
そのままひなたちゃんの可愛らしい唇に吸いつき、舌を絡めて口の中にあるチョコレートも全部舐めとってあげる。  
 
「じゅるるるるるる!!!」  
「んんんっーーーー!!!」  
 
最後にひなたちゃんの唾液と一緒に全てのチョコレートを啜りとって、ようやく俺は唇を離した。  
 
「はい。これで綺麗になったよ」  
「ふぁ……おひぃーひゃん……」  
 
脱力してしまったひなたちゃんの体を優しく抱きとめる。  
 
うーん。いくら食事の前に手を洗ってあるとはいえ、やっぱり衛生上よくないから、  
ひなたちゃんのお口をすすいだ方がいいな。  
 
俺はお姫様だっこでひなちゃんを抱え直すと、そのまま水道へと急いだ。  
 

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