真帆の部屋を後にし、俺は4人目の子が待つ部屋へと急いだ。
結局あのあと気絶してしまった真帆の髪と体を洗い直し、パジャマを着せてベッドに寝かせたりしていたので、
随分と時間をオーバーしてしまった。
まずいなあ、完全に遅刻だ。智花・紗季・真帆ときたから、残るは愛莉とひなたちゃんか。
愛莉なら遅刻しても怒らないし、ひなたちゃんは「ぶー、おにーちゃん、遅刻だよ。めっ」と
ちょーかわいく怒ってくれるから良いんだけど(いや、良くない)
待ちぼうけをさせるのは可哀想だし、コーチが遅刻ばっかりしては示しがつかない。
とにかくできるかぎり急がなければ!
駆け足でメッセージカードに書かれた部屋へと向かい、鍵を使って扉を開ける。
そこにあったのは予想通り、小屋ほどもある大きなプレゼント箱であった。
もはや驚くこともなく、俺は箱の正面に取り付けられていたドアに飛びつくと勢いよく開けて中に飛び込んだ!
「ごめんっ遅れた! …………あれ?」
本日4つ目の箱の中、そこは動物園だった。
もちろん本物ではない。キリンに象さん、シマウマ、さらにはペンギンやアザラシなど
陸のものから海のものまで様々な動物のぬいぐるみが所狭しと置いてあったのだった。
そのたくさんのぬいぐるみに埋もれるようにして、ひなたちゃんが体を丸めて横になっていた。
もちろん裸リボンで。
「ちょ、超絶にかわいい」
過去トップテンに入る可愛さだ。
もはや常軌を逸した光景であった。
真っ白の裸体にピンクのリボンをしただけのその姿に、心奪われない男など存在しない!
ぷりんっと突き出されたむき出しのお尻がとてつもなく美味しそうだっ。
さあ、レッツプレーイターーイム!
と、いきたいが、それは無理だ。
なぜなら……
「すー、すー」
ひなたちゃんは健やかな寝息をたてておねむの真っ最中であったからだ。
どうやら俺を待っている間に眠くなってしまったらしい。
しまったなあ。真帆とのプレイにちょっと夢中になりすぎたかもしれない。
「ひーなーたーちゃん。おーきーて」
「すぴー。すー、すー」
耳元で小声で囁くが、ひなたちゃんは起きてくれない……。
もっと大きな声なら起きてくれるかも知れないが、この天使の寝顔を無理やり起こしてしまうのは、あまりに躊躇われた。
今の声量で起きないのであれば、このまま寝かせてあげた方がいいだろう。
全裸にリボンを巻いただけなんて、男心をくすぐるどころか破壊する姿のひなたちゃんを目の前にして
指をくわえているなんて血涙の思いだが、寝ているひなたちゃんに襲いかかるのは断じてできないので、
俺はひなたちゃんを抱き寄せ、そっと添い寝をするだけにした。
「……んん…………おにーちゃん……くー……」
小さな肩を抱き寄せると、無意識のうちにこれまた小さなお手々できゅっと俺の服を握る。
もしかして一人で寂しかったのかもしれない。
ふわふわの長い髪がかかった頬を優しく撫でてあげると、ひなたちゃんは安心したように顔をほころばせて、すーすーと穏やかな寝息をたてた。
うーん。起きているときの元気な笑顔も良いが、このまるで天使のような端正で美しく、それでいてあどけない感じの寝顔はまた格別であった。
かわいい。
ひたすらかわいい。
ひなたちゃんの寝顔のかわいさを表すのに俺の貧相な語彙では駄目だ。
とりあえずキスしておこう。
ちゅっ……と軽くおでこにキスをする。
「んみゅう……」とくすぐったそうに身じろぎをする仕草がもーべらぼーにかわゆい。
まて、この子はやっぱり天使の生まれ変わりじゃないのか?
日々頭をよぎる疑問を検証すべく、俺は寝こけるひなたちゃんの体をじっと見つめた。
ちっちゃいなー。
手足を丸めて眠るその体はボストンバックにすっぽりと入ってしまうだろう。
このままお持ち帰りしてしまおうか。
いやいや、それに関しては前科がたんまりあるので、今日のところはやめておこう。
この後愛莉も控えていることだし。
膝を丸めているため大事なアソコは見えないが、腕の隙間からはかわいいおっぱいがチラリと覗く。
ピンクのリボンで二つの乳首はかろうじて隠れているが、ふっくらと丸みを帯びた白い肌が、俺の情欲をこれでもかと刺激しまくってくれる。
数字を聞いただけだとそんなに大きく感じないのだが、
ひなたちゃんは体がとびきり小さいので、おっぱいは数字以上に大きく感じるな。
胸に巻き付いているリボンをちょいとズラすと、乳房がぷるんっと揺れて、かわいい乳首がこんにちはした。
俺はそのおっぱいをふにふに優しく揉んであげる。
「……ぅんん……おにー……ちゃん…………」
……はっ。
いかんいかん。ついつい条件反射で揉んでしまった。
人前では決してしないよう自制しているだけに二人きりになると歯止めがきかなくなる。
ひなたちゃんのおっぱいは愛莉のように大きすぎず智花のように小さすぎず、俺の掌にジャストフィットの大きさに育っているのだ。
このすいつくような手触りと柔らかさが堪らない。
気が付くと一時間くらい揉んでいるときがあるからなあ。
お尻だってプリンップリンッで俺を魅了してやまないし、逆に腰とか手足の先は驚くほど細い。
よし。とりあえず視姦しておこう。
意識のない女の子に致してしまう趣味はないが、こんな素晴らしいひなたちゃんの姿を
俺の青春のメモリーに記憶しておかない方が罪だ。
それに、ひなたちゃんは俺に見せるためにこんな格好をしているのだから、
ちゃんと隅々までじっくりと見てあげないと失礼というものだ。
というわけで、俺はひたなちゃんの足に手を伸ばすと、そっと太ももを開いた。
「すー、すー」
おねむなひなたちゃんは余程のことがない限りまず途中で目を覚まさない。
ひなたちゃんの染みひとつない真っ白な太ももを優しく撫でて、その付け根にある
幅細いピンクのリボンに隠された秘所をじっくりと眺める。
毛なんてそれこそ一本も見えない。
上質のシルクのような光沢となめらかさを感じさせる肌をじっくりと鑑賞し、
神秘のカーブを描く幼い恥丘を舐めるように視線を這わす。
小さな一本線を隠すピンク色のリボンをくいっと引っ張ると、アソコにきゅっと食い込み、
手の動きに合わせて禁断のお肉を持ち上げる。
……はっ。また手を出してしまっている。
俺は近くに放り出されていた毛布を手にすると、ひなたちゃんの体にかけてあげた。
いくら暖房が効いているからといえ、裸で寝ていたから風邪を引いてしまうし、
これ以上見ていたら俺がよこしまな思いを我慢できそうにない。
……続きはひなたちゃんが起きてから改めてお願いしよう。
そう思って毛布に包まれたひなたちゃんに寄り添い、今は大人しく眠れる天使を見守ることにした。
「…………ふああ〜〜〜」
……それにしても朝からいきなりの三連戦、出しっぱなしの上、真帆のチョコレート風呂騒ぎとさすがに疲れた。
ひなたちゃんの健やかな寝顔を眺めながら俺もだんだんうとうととしてしまう。
俺は自分の瞼が重くなってくるのを感じつつ、少しくらい休んでも……へい……き…………。
…………。
……。
「…………」
「…………ちゅ…………ちゅ…………」
……なんだろう。
唇にすごい柔らかいものがあたっている。
重い瞼をこじ開けると、目の前に白いものが浮かび上がった。
「……ちゅっ……ちゅっ……おー、おにーちゃん、おめめさめた?」
だんだんとぼやけていた視界がはっきりしてくると、それはひなたちゃんの顔であった。
なんだ、いつものようにお目覚めのキスをしてくれていたのか。
どうやらひなたちゃんの寝顔を見ながら俺も一緒に寝てしまっていたらしい。
「うん。……おはよう、ひなたちゃん。起こしてくれてありがとうね」
「おはようございます、おにーちゃん。……おー、ごめんね、ひな、寝ちゃってた」
「ううん、俺が遅刻したのがいけなかったんだよ。お待たせしちゃってごめんね」
そう言いつつ、寝ぼけ眼で時間を確認すると……
「なっ!?」
一気に目が覚めた。
紗季がたてた今日のスケジュールでは一人二時間で間に一時間の移動・休憩時間が設けられている。
俺がここに付いたのが開始時間の約15分後。
それからさらに1時間半が過ぎている。
つまりひなたちゃんと一緒にいられる時間はあと15分しか残っていないのだ!
「ごっ、ごめん! ひなたちゃんっ。俺が寝ちゃったばっかりに、せっかくのひなたちゃんとの時間が!」
「ううん。ひなも今おきたところだから。おにーちゃんは悪くないよ」
いやいやいや。悪いのは一方的に俺だ。
部屋に来たときにひなたちゃんを起こせばよかったのに、まさか一緒になって1時間半も寝てしまうだなんて……痛恨の極みだ!
ひなたちゃんだって前の三人と同じくバレンタインの今日を楽しみにしていろいろと準備してくれていたに違いない。
その大切な時間を寝過ごしてしまうだなんて俺はなんてバカなんだ!
「ひなたちゃんっ、本当に申し訳ない! 俺が寝ちゃったばっかりに、せっかくのひなたちゃんとの時間がなくなっちゃって!」
何度も謝罪を繰り返す俺にひなたちゃんはぷるぷると首を横に振ると、澄んだ瞳で見つめてきた。
「あのね、ひな、ゆうべはおにーちゃんにあげるちょこれーとを作ってたからあんまり寝てないの。
だから今日はおねむで……おにーちゃんがくるずっと前から寝ちゃってたんだ。
おにーちゃんがきてくれたときに寝ちゃってたひなのせい。ごめんね、おにーちゃん」
そう言ってひなたちゃんは、傍らに置いてあったカバンからゴソゴソと何かを取り出した。
「はい。おにーちゃん、ひなが作ったばれんたいんちょこです。もらってくれますか?」
「……ひなたちゃん」
じぃーーーんと胸が熱くなる。
こんないい子にチョコレートをもらえるだなんて……それだけで俺はもう十分過ぎるほど幸せだ。
俺の中で『袴田ひなた=天使の生まれ変わり』であることが確定されました。
「もちろんっ、喜んで受け取らせてもらうよ。ありがとう、ひなたちゃん。俺、とっても嬉しいよ!」
「えへへー」
世にも嬉しそうな笑顔見せるひなたちゃん。
ああ、感激のあまり涙がでてきた。
「ねー、おにーちゃん。食べてみてくれる?」
「うん。じゃあ、ひとつ頂くね」
梱包を丁寧に解き、中から出てきたチョコレートをひとつ、口に運ぶ。
甘いカカオの香りが口の中にふんわりと広がった。
「……うん。とっても美味しいよ、ひなたちゃん」
「ほんとー? えへへ、嬉しいな」
チョコレートからはひなたちゃんのたっぷり詰まった愛情の味がした。
……本当はチョコ風呂の後遺症で、チョコの匂いを嗅いだだけでうえっとなる状態だったのだが、
それもひなたちゃんの笑顔を見ればまったく気にならない。
にこにこと笑みを浮かべながら、目を細めるひなたちゃん。
俺はさらにもうひとつチョコを手に取ると、愛らしいひなたちゃんのお口へと持っていった。
「はい。ひなたちゃんも。あーん……」
「おー。それはだめです」
「え……」
予想外の返事に、俺は愕然とする。
ひなたちゃんが俺のあーんを拒否するなんて!
……いや違う。ひなたちゃんが大好物のチョコレートを拒否するなんて信じられない。
「ど、ど、どうしたの、ひなたちゃん! お腹でも痛いの? やっぱり裸で寝てたからお腹冷やしちゃったのかも!?」
「おー、違うよ、おにーちゃん。そのちょこはひながおにーちゃんのために作ったちょこだから、
おにーちゃんが全部たべないとだめなの」
そう珍しく真剣な表情でひなたちゃんは言う。
でもその瞳は……真剣に……じっと一直線に、俺が手に持ったチョコレートを見つめている。
……やっぱり食べたいんだよね。ひなたちゃん?
とはいえ、ひなたちゃんも意外と頑固だからなあ。
そこで俺は一計を案じた。
「そっか。じゃあ、これは俺が食べちゃうね」
そう言ってひょいっとチョコを口の中に放り込む。
「あっ……」
ひなたちゃんがとても悲しそうな顔をするが、すぐにぐぐぐっとほっぺたを引き締めて我慢する。
俺は食べやすいように軽く噛み砕いた後、んっ……とひなたちゃんの体を抱きよせ、口を顔に持っていった。
「? おにーちゃん……」
「ひなたちゃん。このチョコはもう俺が口の中に入れちゃったから、俺が食べたことになるよね。
そして俺はひなたちゃんとキスしたいからキスするの。だから俺の口の中のチョコをひなたちゃんが
食べちゃっても、それはもういいんだよ。さ、二人で食べっこしよ?」
「おにーちゃん……うんっ!」
顔を輝かせて俺に抱きついてくるひなたちゃん。
俺はそのリボンを巻いただけの小さな体をしっかりと抱き締めると唇を重ね、
口の中で溶けたチョコレートを少しずつひなたちゃんの中へ流し込んでいった。
俺とひなたちゃんの口の中で、チョコと二人の唾液が混ざり合い、さらなる甘味を増していく。
俺たちは貪るようにお互いの口の中のチョコレートを舐め合った。
「……じゅるっ、じゅるっ、はあ、はあ、……ひなたちゃんっ」
「ちゅうーっ、ちゅるっ、……えへへ、おにーちゃん、おいしかったね」
やがて口の中からチョコレートがなくなり俺達は唇を離した。
ひなたちゃんの口の周りが唾液と混ざったチョコレートで汚れていたので、
舌で舐めて綺麗にしてあげると、同じようにひなたちゃんも俺の口の周りを舐めてきた。
どうやら俺も汚れていたらしい。
「……ぺろぺろ……はい。おにーちゃん、おくちのまわり、きれーになったよ」
「ありがとう。あっ、でもひなたちゃんの舌、チョコレートで茶色くなってるよ」
「おー、おにーちゃんだってべーってしてみて。ひなとおんなじだから」
「そうだね。じゃあ二人で舌も舐めっこして綺麗にしよう」
「はーい」
元気なひなたちゃんとベロとベロだけをくっつけ合うというエロいちゅーをする。
ひなたちゃんのザラザラした舌がこすれるたんびに脳が痺れて、あーもーすんごい気持ちいい。
俺は本能的にひなたちゃんのプリンプリンのお尻を握り締め、ピンクのリボンの隠されたおまたにそっと手を添えた。
「ちゅぱっ……おー、おにーちゃん、ひなとエッチなこと……するの?」
「うん……今日のバレンタインチョコはひなたちゃんでしょ」
綺麗にリボンで飾り付けられた等身大のチョコレートに、俺はキスをする。
「……でも、時間ないよ?」
「…………」
…………そうだったあああ!!!
時計を確認すると丁度予定の2時間を終えたところだった。
移動・休憩で1時間の余裕があるが、たかが1時間でひなたちゃんとのエッチが終わるわけが無い。
しかも今日のひなたちゃんは裸リボンだぞ!
こんなちょーどきゅーにエロかわいいひなたちゃんとエッチになだれ込んだら
1時間どころか1日あったって足りゃしない。
……どうしよう。いっそ別の日にあらためてしてもらおうか。
そうすれば思う存分裸リボンのひなたちゃんを堪能できる。
しかし、バレンタインという今日この日にわざわざ裸リボンで待っていてくれたひなたちゃんの気持ちを無下にすることもできない。
なんせ『わたしをた・べ・て(はーと)』は今日とクリスマスくらいにしかできないのだから。
かといってコトに及んだ場合、最低でも2時間はかかるだろうし……。
もう最後は愛莉とわかっているから、電話をすれば優しい愛莉は快く自分の時間を遅らせてくれるだろう。
だが一番最後で待っている愛莉をさらに1時間以上待たせていいものか……。
「おー、おにーちゃん、大丈夫?」
俺がうんうん唸っていると、ひなたちゃんが心配そうに顔をのぞき込んできた。
はっ、いけない。移動するにしてもまだ30分くらいはギリギリ延長できるのだから、いま目の前にいるひなたちゃんのことを優先させよう。
「はは、大丈夫。ところでひなたちゃん、この部屋はすごいいっぱいぬいぐるみがあるけど、これは全部ひなたちゃんのなのかな?」
箱の中の部屋に所狭しと、それこそプレゼント箱の中のようにたくさんのぬいぐるみで溢れかえっていた。
掌サイズのものから、ひなたちゃんの倍以上の大きさのものまで、そのすべてが動物のぬいぐるみで、
いかにもひなたちゃんが好きそうなものばかりだった。
「ううん。違うよ。この子たちはまほのお友達だよ」
「真帆の?」
「そう。まほは『おじょーさま』だから、いろんな人からプレゼントしてもらうんだって。
でもまほはこの子たちとあんまり遊ばないから、ひなが一緒に遊んでもらってるの」
「へぇー、そうなんだ」
……たしかに真帆はぬいぐるみよりもゲームや体を動かす遊びの方が好きだからなあ。
要は趣味が男の子なんです。エッチの時はあんなに女の子なのに……。
……ゴホン。
「そっか、良かったね、ひなたちゃん。この子たちもひなたちゃんと遊べてきっと喜んでるよ」
俺が頭に手を当てて撫でてあげると、ひなたちゃんは目を細めて嬉しそうに笑った。
「ほにょーっ。えへへ、今日はね、みんなと一緒におにーちゃんをお出迎えなの。
みてみて、この子がね、今ひなと一番の仲良しさんなんだよ」
そう言ってひなたちゃんがぎゅうーーっと抱き締めたのは……
……例のひなたちゃんの倍以上はあろうかというドデカイぬいぐるみであった。
「……ひなたちゃん、それは……ワニさんかな?」
「ちがうよ、おにーちゃん。こどもおおとかげさんだよ」
「……子供の大トカゲ?」
「おー、ひなまちがえた。えーと、こも……こど……」
「……もしかして、コモドオオトカゲのこと?」
「おー、それ。こももおおとかげさん」
コモドオオトカゲ。インドネシア・コモド島に棲息する全長3メートル世界最大のトカゲのことだ。
恐竜の生き残りとも言われ、肉食で時速20キロで走り、イノシシだって捕まえて食べてしまい、果ては人間だって襲ってしまうのだ
しかも牙には毒まであるらしい。
前にテレビでみたことがあるけど、とても小学生の女の子が好んで持つようなぬいぐるみではない。
別名コモドドラゴン。
舌足らずなひなたちゃんでは、ちょっと発音が難しいかもしれない。
……それにしたって、原寸大のコモドオオトカゲのぬいぐるみなんてどこのメーカーが作ったんだろうか。
……もしかして真帆へのプレゼントというのは口実で、これはひなたちゃんへのプレゼントなのかもしれない。
「どう? おにーちゃん、かわいいでしょ。こももおおとかげさん」
「あははは……そうだね、かわいいよ。ひなたちゃん。
……ちなみにコモドオオトカゲはコモドドラゴンとも言うんだよ」
「おー、こも……どらごんさん……」
「コモドドラゴンさん」
「こももどらごんさん」
「コモドドラゴンさん」
「こどももらごんさん」
「コモドオオトカゲさん」
「こもももももらげさん」
いかん、かわいいのでつい遊んでしまった。
「ぶー、おにーちゃんのいじわる」
「ごめんごめん、ひなたちゃんがあんまりもかわいいからついね」
ぷくぅと膨らんだほっぺをつんつんしてあげると、ひなたちゃんは「うーっ」とコモドドラゴンに顔を埋めて恥じらった。
一見シュールな感じだが、細い布切れを巻いただけの小さな裸体に、ふわふわの長い髪を絡ませ動物に寄り添う姿は、
まるで森から迷い出た妖精のようにすら見える。
……やっぱりお持ち帰りか……。
裸リボンのひなたちゃんの姿をじぃっと見つめ、俺は意を決して携帯電話を手に取った。
ぷるるるる……。
「はい、もしもし。長谷川さんですか?」
「あ、愛莉。ごめん! 実は……」
俺は事情を説明し愛莉に詫びるとともに、時間を遅らせてもらえないかと頼んだ。
「ええ、いいですよ。さっき紗季ちゃんからも連絡があったんです。
自分の時間が1時間くらい延びちゃったから、私の時間も遅れるかもしれないって」
予想通り怒ることなく愛莉は時間が遅れることを承諾してくれる。
そうか、紗季が事前に連絡をしてくれていたのか。
「そうか。すまない、本当に……」
「いえいえ、わたしのことは気にしないで、ちゃんとひなちゃんのお相手をしてあげてくださいね」
「ありがとう、愛莉。お詫びに今日はいつもの2倍愛してあげるからね!」
「ひゃうっ! そっ、そんなにさたら、……わたし、壊れちゃいます……」
「ふふ、風邪をひかないよう温かくして待っているんだよ」
電話を切ろうとしたら、ちょいちょいとひなたちゃんが俺の腕を引っ張ったので電話を代わってあげた。
「もしもし、あいり? おー、ひなだよ。ごめんね、ひなが寝ちゃったから。おにーちゃんは悪くないんだよ」
わざわざ御自ら俺を庇って愛莉に謝ってくれるひなた姫。
「……うん、わかった。またね、あいり」
両手で持ってた携帯をぴっと切って、小さな裸体にピンクのリボンを巻き付けた女の子が笑顔で言った。
「じゃーおにーちゃん、ひなと、えっちなことしよっ♪」