『お誕生日、おめでとう!』  
3月3日。慧心学園女子バスケ部の中で最後に誕生日を迎えたひなたちゃん。  
今日は、真帆の家でそのひなたちゃんのお誕生会。  
「おー、ありがとー」  
ひなたちゃんは心から嬉しそうな笑顔。  
「ひなたちゃん、それ、とっても可愛いよ」  
ちなみに、主賓であるひなたちゃんの出で立ちは、まるっきりおひな様のような十二単。  
……さすがに動きにくいのかな?  
みんなから一斉に渡されたプレゼントを受け取るのに、ときどきぎこちない動きを見せてるけど。  
「最後はあたしだなっ! ヒナの希望通りのもの用意したぜ!」  
自信満々に言う真帆。でも、真帆は手ぶらみたいだけど……。  
「おーい、やんばるっ!」  
「はい、お嬢様」  
真帆に呼ばれた久井奈さんが持ってきたのは……和服?  
「すばるん様。こちらの服へ着替えをお願いいたします。着付けは私がお手伝いしますので」  
「……え?」  
俺? 何で俺が和服を着るの?   
訳もわからずぽかんとしていた俺に、  
「ひなったら、長谷川さんと一緒に、お内裏様とおひな様の格好で写真を撮りたいって言ったんですよ」  
紗季が説明してくれる。  
「おー、ひな、おにーちゃんとおひな様したい」  
なるほど。その写真が真帆からのプレゼントってわけか。  
「そういうことなら、喜んで協力するよ」  
 
……結局、全員とおひな様撮影会をすることになりました。  
 
「ねーすばるん、あれやって! 帯引っ張ってくるくる回るやつ!」  
「あれ……って、そんなのダメだよ!」  
「おー、ひなもやってほしい」  
ひなたちゃんまで!  
「だだだって、そんなことしたら……」  
「ふふ、長谷川さん、大丈夫ですよ。その辺はちゃんとしてます。着物を脱いだら下着、なんてことないですから」  
紗季がフォローしてくれた。ま、まあそういうことならやってあげてもいいかな?  
「よし、じゃあいくよ!」  
ひなたちゃんの帯に手をかけ、少しずつ引っ張っていく。  
「おー。ぐるぐるー」  
「違うぞヒナ! そこは『あーれー』っていうんだ!」  
どこで覚えるんだろうその知識。  
「おー。あーれーーーー」  
そして程なく。  
帯がほどけ、着物がはらりと落ちて。ひなたちゃんは全裸になった。  
「あ、あれ?」  
「だから言ったじゃないですか長谷川さん。ちゃんとしてるって」  
そうですね着物の場合下着を着けるのは邪道らしいですからねって……  
「ななななななあああああああああごごごごごごごめんひなちゃん!」  
「おー? おにーちゃんどうした?」  
 
「は、早く服を着て! お願いだから!」  
大慌てで回れ右。ひなたちゃんに背を向け、強行退去を試みるが、  
「コラ待てすばるん! ヒナ、すばるんを捕まえろ!」  
「おー!」  
慣れない着物でうまく走れない俺の前にひなたちゃんが回り込む。  
「よし! よくやったヒナ! そのままコアラアタックで押さえとけ!」  
真帆から容赦ない指示が飛ぶ。  
「おー。ふらいんぐこあらあたーっく!」  
日頃のトレーニングの賜物か、ものすごい跳躍力を見せた全裸のひなたちゃんが俺の顔に抱きつき、  
「うわああああああああっ!」  
「おー?」  
その勢いを受け止められなかった俺は、そのまま後ろに倒れ、そこで意識を失った。  
 

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