2巻お姫様だっこの後  
 
……さて。  
シュート練習が終わって寝てしまった真帆と智花を必死の思いで運んできた俺は、  
宿泊小屋に戻ると一旦入口で真帆を横たえ、布団の敷かれた女の子たちの部屋に入り、  
智花を布団に寝かせてあげた。  
 
(よしっ、次は……)  
 
自由な身になった俺は、他の子たちを起こさないように、抜き足差し足で入口に戻ると、  
今度は真帆を布団まで連れて行こうとした。  
……しかし、そこで気付く。  
 
(……うわっ、しまった。この子、汗だくじゃないか)  
 
こんな汗に濡れたまま寝たせてしまったら、布団に寝かせたって風邪を引いてしまう。  
 
どうしよう。紗季を起こして着替えさせてもらうか?  
でも寝ている彼女を起こすのはかわいそうだしなあ。  
しかし、せっかく大変な思いをして運んできたというのに、  
真帆をこのままにしておくわけにはいかない。  
 
(……仕方あるまい)  
 
俺は自分の部屋からタオルを持って、さらに布団の上に脱ぎ散らかされていた黒のネグリジェを拾うと、  
真帆の元へと戻った。  
 
(……ごく。ええいっ、これは緊急処置なんだ! いかがわしい気持なんかこれっぽっちもないんだからな!)  
 
すぴーすぴーと寝息を立てる真帆の体を、後ろから抱きしめるような感じで起こすと、  
俺は汗でびしょ濡れになった服の裾を掴み、ゆっくりとバンザイさせるように脱がしていった。  
 
(見えない見えない。真っ暗だから何にも見えないぞーーー)  
 
しかし実際には窓からの月明かりで真帆の幼い肌がうっすらと白く浮かび上がっていた。  
それは昼間の元気いっぱいな姿とは違い、どこか幻想的な美しさであった。  
 
(えーいっ。心頭滅却心頭滅却!)  
 
上着を脱がせた俺は、真帆の体に玉のように浮かぶ汗をタオルで拭っていく。  
 
(……真帆、やっぱりブラつけてないんだな)  
 
タオルの布ごしに感じる胸の感触はぺったんこで、ブラシャーをついているような感じはなかった。  
 
(そうだ。相手はまだ子供なんだ。子供が風邪を引かないように体を拭いてあげいるだけなんだ!)  
 
俺は胸やお腹や脇の下など、上半身を拭き終わり、そして……。  
 
(つ、次は、下だな)  
 
真帆が履いていたのは紺のスパッツで、こちらも汗に濡れて健康な白い太ももに貼り付いていた。  
 
(くっ、脱がしづらい……)  
 
どうにかこうにかスパッツを脱がすと、そこにはパンツ一丁の真帆の姿があるだけだった。  
 
(うぅ……だめっ、だめ。……はやく拭かないと……)  
 
極力体を見ないようにしながら、太ももやふくらはぎを拭いていく。  
 
(……さすがに、パンツは無理だろ?)  
 
今日の真帆のパンツは青と白の縞パンだった。  
……なぜだろう。嫌な思い出が脳裏をよぎる。  
 
念のため、あくまで確認のために、ちょっとだけ腰のあたりを触ってみると……。  
 
(冷たっ……ダメだ。パンツまでぐしょ濡れじゃないか……)  
 
どうする? 別にパンツくらい濡れていてもいいと思いつつも、  
女の子が腰を冷やしてはいけないという思いもある。  
 
(ええいっ! 毒を食らわば皿までだ!)  
 
俺は真帆の濡れ濡れの縞パンを両手で持ってずり下ろしていく。  
 
(見るな! みるな! 絶対見るんじゃないぞ!)  
 
ノーガードの真帆のシークレットゾーンを決して目をくれないようにしながら  
パンツを脱がしていく。  
縞パンは足首でくるくると小さく丸まってしまってしまい、それを抜き取ると  
俺の掌にぽすんと収まった。  
 
(こ、これが真帆のパンツ……)  
 
そ、それよりも、ついに俺の眼前には、すっぽんぽんになってしまった真帆が横たわっている。  
さあ、どうする!?  
 
……いや、拭く以外ありえないだろ。  
 
俺はおっかなびっくり、震える手をどうにか押しとどめ、真帆の股間へとタオルと伸ばした。  
 
……ふきふき……ふきふき……。  
 
「……んあっ」  
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」  
 
「…………」  
「…………すー、すー」  
 
……あ、危なかった……。  
 
俺は慎重に、真帆の股間やお尻を拭くと、ようやく一息をついた。  
 
(……さあ、後は服を着せるだけだ)  
 
とっとと着せてしまおうと寝巻を手に取ったが……。  
 
(……パンツ……どうしよう?)  
 
ノーパンのまま寝かせるのはどうかと思うが、だからと言って真帆の荷物から  
パンツを漁るわけにもいかないし……。  
 
少し悩んだ後、起きた時にノーパンだったら不味いだろうと思い、真帆の荷物からパンツを漁る俺がいた。  
 
(……えーと、これでもない。……これでも…………おっ、これだ)  
 
色とりどりの下着の中から同じようなスプライトの柄のパンツを発見すると、  
俺はそれを持って真帆の元へと走る。  
 
そして、新しい縞パンを広げ、真帆の足に通すと……。  
 
(……ごくり)  
 
すいません! パンツ履かせるときに、ちょっとだけ線が見えてしまったのは不可抗力なんです!  
 
とにかく俺は、誰にも気づかれることなく、無事にパンツを履かせることができた。  
 
――その時。  
 
暗い室内で、むくり……と誰かが起き上った。  
 
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」  
 
その人影は布団から立ち上がると、パンツ一丁の真帆を抱える俺の方へとゆっくりと歩み寄ってきた。  
 
「…………」  
「…………おー、おにーちゃん。……ひな、おしっこ……」  
 
…………ひなたちゃんは寝ぼけていた。  
 
もはや迷いはなかった。  
俺は持っていたネグリジェの中に真帆を頭から突っ込むと、抱えて走り、布団の中へと押しやった。  
 
「……はははは、うん。わかった。ひなたちゃん、一緒におトイレに行こうね」  
「…………うん……」  
 
寝ぼけなまこで頷くひなたちゃんの手を引いて、俺はトイレへと駆けだしたのだった。  
 
(ふぇぇぇぇぇぇぇッ!!!??? 紗季っ昴さんが、昴さんがっ!?)  
(落ち着きなさい、トモ。あれはどっちかっていうと異性とみていない証拠だから)  
(そ、そうだよ、智花ちゃん。わたしもびっくりしちゃったけど、  
 あれは真帆ちゃんが風邪を引かないように、長谷川さんが汗を拭いてくれていただけだと思うよ)  
(……ふぇ? ……そ、そうだよね。昴さん、お優しいから、真帆の面倒をみてくれただけだよね)  
(そ、そうよ。そうに決まっているわ)  
(う、うん)  
(…………)  
(…………)  
(…………)  
 
 
 
俺はひなたちゃんの手をひいてトイレの前までやってきた。  
宿泊小屋にはトイレはないので、一番近くの校舎のトイレを  
使えるようにしてもらっているのだ。  
 
「はい。ひなたちゃん、トイレについたよ。後はひとりでできるよね」  
 
俺は微笑みかけたが、ひなたちゃんは俺の体にもたれたまま  
すやすやとかわいい寝息を立てていた。  
 
「ええと、ひなたちゃん? ちゃんとおトイレしてから寝ようね」  
「…………うーん? ……おー……わかった。……よいしょ……」  
「ええっ!?」  
 
寝ぼけているひなたちゃんはスカートに両手を入れると、なんとその場で  
パンツをずり下ろし、用を足そうとしてしまった。  
 
「わあーっ!? 止めてひなたちゃん! ここでしちゃ駄目!」  
「……おー、ムリ」  
 
ひなたちゃんの体がプルプル震える。  
いかん、マジだ!  
 
「くっ!」  
 
俺はとっさにひなたちゃんを抱え上げると、トイレへと駆け込んだ。  
そして考える間もなく、長い長いスカートを捲り上げて、足首に引っかかった白いパンツを抜き取り、  
大きく足を広げさせて、彼女のお尻を便器へと向けた。  
 
「しまった!!!」  
 
向けた先にあるのは小便器。  
俺はいつもの習性で男子トイレに駆け込んでしまったのだ!  
しかもおしっこと聞いて反射的に小便器に向かってしまうとはなんたることだ。  
 
しかし女子トイレに向かう時間などなかった。  
 
「……ん」  
「あっ」  
 
ちょろちょろちょろと小さな音を立てて、ひなたちゃんのお股から、  
おしっこが小便器に向かって、出されていった。  
 
「ふう。間一髪だったか」  
 
俺は安堵の息を吐き、手にした白い布で顔を伝わる汗を拭いた。  
そして、――愕然とした。  
 
……俺、いったい何やってんの?  
 
俺はひなたちゃんの両足を抱え、まるで赤ちゃんにさせるようにおしっこをさせていたのだ。  
膝の裏に手を回して、足を左右に大きくおっぴろげて……  
もちろん下半身丸出し。――つか、おしっこ? おしっこだと!?  
 
……ちょろちょろちょろ……。  
 
「んー」  
 
俺の腕の中で気持ちよさそうに体を震わせるひなたちゃん。  
即座に目を瞑り、聴覚と嗅覚をシャットダウン!  
ミザル、キカザル、カガザルだ!!!  
 
無理と言われてもやる!!!  
ひなたちゃんの放尿シーンだなんて、何があろうと記憶から抹消しなければ!!!!!  
 
……ちょろちょろ……ちょろ…………ちょろ……。  
 
「……ふー」  
 
…………終わったらしい。  
やはりタンクが小さいのか、放出時間はかなり短かった。  
しかし俺にとっては永劫ともいえる長い時間だった。  
 
「……ひなたちゃん……ごめん。俺はなんてことを……」  
「……すー……すー……」  
「……え? ひ、ひなたちゃん?」  
 
どうやら全部だしてスッキリしたらしく、ひなたちゃんは再び夢の世界へと旅立ってしまった。  
しかし残された俺はいったいどうすれば……。  
 
「……えーと、たしか女の子の場合、おしっこした後は……拭かないとダメなんだよな?」  
 
男みたいに振ってすますことはできないから。  
 
拭くの?  
どこを?  
ひなたちゃんのアソコを?  
 
えーとそれっはどんな極刑ですか?  
 
とはいえ、このままおしっこの雫がついたままにしておくことなんかできない。  
 
俺はひなたちゃんをしーしーポーズのまま個室に連れていくと、握っていた白い手拭いをポケットにねじ込み、  
トイレットペーパーを何重にもして手に取った。  
 
それをひなたちゃんの真っ白なアソコへと押し当て、残った尿を紙に染み込ませていく。  
 
タオルとは比べ物にならないほど直接的な感触がトイレットペーパー越しに伝わってきて、  
頭の中でたくさんのひなたちゃんがしーしーダンスを踊っていた。  
 
考えるな。何も考えるな! 俺はおしっこの後始末をしているだけなんだ。  
それ以外は何も考えるな!  
 
俺は無心で、ひなたちゃんの大事な部分を押さえて、丹念におしっこを拭い去っていった。  
 
「……よ、よし。もういいだろう……」  
 
お股のてっぺんからお尻の方まで拭いたので、おしっこはすべて綺麗に取れたはずだ。  
……俺はひなたちゃんのおしっこの沁み込んだトイレットペーターをじっと見つめた。  
 
「……んんぅ……おにーちゃん」  
「!!!!!!!!!!!!!」  
 
俺は思わず手を滑らせて、ひなたちゃんを落っことしそうになってしまった。  
慌てて腕全体でひなたちゃんの小さな体を抱きしめ、ふわっとスカートに覆われた足を  
床に軟着陸させる。  
 
「…………」  
「……むにゃむにゃ……すー……すー……」  
「……ふう。……危なかった」  
 
ダラダラと流れた冷や汗を、ポケットから出した白いハンカチで拭った。  
 
とりあえず洗面所までひなたちゃんを連れて行って手を洗わせる。  
ハンカチを口に咥えて、ひなたちゃんの手を後ろから握って、一緒に洗ってあげる。  
 
「……すぴー……すぴー」  
 
本人は眠ったまんまだけど。  
 
ん? このハンカチ、ずいぶんいい匂いっていうか女の子の匂いがすると思ったら  
ひなたちゃんのじゃないのか?  
入る時に電気を付けなかったから暗くてよくわからなかったけど、目を凝らせば、  
白い布地にうさぎ柄が入っているのがうっすらと見えた。  
 
ひなたちゃんの放尿&アソコを拭くなんて天変地異に遭遇したせいで、気が動転して間違ってしまったらしい。  
 
俺はポケットから改めて自分のハンカチを取り出すと、自分とひなたちゃんの手を拭いて、  
ひなたちゃんの白いハンカチを彼女のポケットにちゃんと戻してあげた。  
くわえちゃったっから、洗って返した方がいいかとも思ったが、それが原因でこのことを  
思いだしてしまったらマズいので、このままにしておこう。  
 
世の中には、知らない方が幸せと言うことが多々あるのだ。  
 
 
 
さてと、いろいろあったけど、一応ミッションクリア。……帰るか。  
 
俺は真っ暗な学校の廊下を、ひなたちゃんをおんぶして、歩いて行った。  
一人だったらさすがに不安に感じるだろうが、今はこの背中に感じる小さくて温かな  
体温の持ち主を守らなければと、勇気が沸いてくる。  
 
そのとき、ぽんっと肩に手が乗せられた。  
 
「……ん? どうしたの、ひなたちゃ……」  
 
しかし俺は気づく。  
ひなたちゃんの両腕は俺の首に回されており、肩に置くことなどできないということを。  
 
なら、この手は誰?  
 
深夜の真っ暗な校舎。  
後ろから置かれた手。  
幽霊ならばまだ良かった。  
 
「すーばーるー。さすがだなあ、おまえは。いきなり聖水プレイなんて、予想の斜め上をいくことをやってくれるぜ」  
 
そこにいたのは、一匹の化物だった。  
俺はすぐさま、ひなたちゃんを前に抱え直し、逃げ出す。  
しかし悪魔は一足飛びに距離を詰めると、俺のこめかみに凄まじい蹴りを喰らわせた。  
 
「ひなたを守ったことを評価して、今日は記憶を無くすだけにしてやるぜ。  
 ……だが、次は手加減なしだぞ? あばよっ、マイ・ネフュー」  
 
俺は意識を失った。  
 
…………  
……  
 
翌朝。起きると何故か激しい頭痛に襲われた。  
しかし昨日は真帆と智花を送り届けてからの記憶がないから  
きっと寝違えただけだろう。  
ちょっと現役から離れたくらいでこの体たらくとは、  
もっと自主トレをしっかりしなければっ。  
俺は気持ちを新たに、布団から飛び起きた。  
 
〜2巻150Pへ続く〜  
 
 

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