それは、しばらく試合も親善試合の予定もないからと、
各自メニューに基づく自主練のみということになったとある連休のこと。
すっかり日課となった朝練の為、少し早く昴さんの家にやってきた日のことでした。
〜〜ある朝の回想 智花編その1〜〜
「おはようございます。」
返事がないなと思っていると、幸せそうに眠る昴さんの姿が。
早く来過ぎたかなと思いつつも、今は2人きりということの幸福感を覚えてしまいます。
私たちを真摯に指導してくれる、優しく頼れる兄のようなコーチとしての側面がなりを潜めた
まだ高校1年生ということを――私達より4学年上の学生さんであることを――実感できる、優しくてどこか可愛らしい寝顔。
静かに流れる時間を、昴さんが目覚めるまでの時間を、過ごせれば良いなと思っていたのに。
「ぅうんっ!?」
「ふぇっ!?」
そんなつもりはなかったのに、どうやら敏感でデリケートなところに触れてしまったようで、
昴さんの反応とその熱さや硬さにびっくりしてしまい、声をあげてしまう私。
起こしてしまったかと思い恐る恐る顔の方に視線を戻すと、穏やかな吐息。
……恐らく、眠っていても反応してしまうとかなのかなと、思うことにしました。
「本当に、不思議です……」
おずおずと手を伸ばし、そっと包み込むように改めて触れているうちに
男性特有の朝の生理現象を目の当たりにしているうちに、いつの間にか知的好奇心が完全に上回っていたのでしょうか。
「性的興奮等で血液が集中し、海綿体が充血して硬くなる」ってこういうことなのか、なんて思ってしまって。
昴さんが目を覚ましてしまったら何て言われるだろうとか、
いやらしい子だなんて思われないだろうかとか思いつつも、止められませんでした。
当初の目的を思い出した筈なのに、起こしてしまうかもしれないと恐れていた筈なのに。
教科書の内容を思い出したり昴さんの反応を見たりしながら、夢中になって触れていた私は
どの位経ったのかなんて意識していませんでした。
持ってきていたポケットティッシュを何枚か用意して、
手の中で震える昴さんの熱い男性の象徴の、1番敏感だろう部分にあてがい
昴さんの身体を以て知った、人体の神秘になんとなく想いを馳せながら、
射精が収まるまで、そっとティッシュ越しに包み込むことしかできませんでした。
――閑話休題
お手洗いをお借りして戻る途中、どこか打ちひしがれた様子の昴さんに
朝の挨拶と七夕さんからの伝言をして、お台所に向かう途中のこと。
まだ残っていたらしい白くて熱い迸りが、昴さんの下着を汚してしまっていたことに気づかなかった私は、
入れ違いでお手洗いに向かう昴さんが、洗濯板のような機構のついた洗面器を手にしていることと、
久しぶりに夢精してしまったのかなとぼやいていることに気づいてしまい、
申し訳なく思いながらも、なんだか可愛らしいななんて思ってしまうのでした。
昴さんが、私が"そういうこと"をしていたからだと思い至らなかった様子であることに、安堵したような、切ないような複雑な思いに駆られながら。