キスをする。  
一つ一つの動作が伝わってくるような、甘い口づけだ。  
 
そのキスには確かな愛が込められていて、小さい頃に母さんがしてくれたような、何ともいえない温もりを感じる。  
こんなにも愛に満ち満ちたキスを放っているのがまさか小学生だとは、きっと誰も思うまい。  
 
 
───あぁ、穏やかな目覚めだ。  
窓の外から聞こえる、小鳥がちゅんちゅんとさえずる声。まだ蝉も鳴き出す前のこの時間。きっと清々しい気持ちでロードワークに出かけることが出来るだろう。  
 
でも、まずは朝練の前に───こんなに素敵な朝をプレゼントしてくれた『相手』にお礼をしとかないとな。  
 
「んちゅっ───おはよ、真帆」  
 
朝の日差しが眩しい。  
少しだけ目を開き、何とか対面している相手の表情を伺うことが出来た。  
 
どこか戸惑ったような、驚いたような顔。  
いきなり俺が目を覚ましてしまったことにビックリしてしまったのだろう。  
でも俺だってビックリだ。まさか真帆が、朝のこの時間にキスしてくるだなんて。  
 
───だから、少しだけ仕返し。  
 
「いきなりキスだなんて、相変わらずだな……でも俺だって、やられてばっかりじゃ気が済まないから……ちゅ、れろっ」  
「んんっ?んんんんんん!!?」  
 
俺が返したのは、彼女がしてきたのとは対照的な情熱のこもったキス。  
それだけじゃない。スキだらけで緩んだ口に舌をつっこんで、思う存分真帆の口の中を、柔らかな舌を堪能する。  
 
幸せだ。  
心から幸福感が溢れ出して、床上浸水してしまいそうなくらいに幸せだ。  
改めてキスという行為の素晴らしさを確認する。  
 
 
………………。  
 
………あれ?  
 
「れろっ、ん、んんん?」  
 
ちょっと待て。何かおかしいぞ。  
そもそも真帆は、こんな時間に俺の家に上がりこんで───まぁ俺の母さんなら真帆だって家に上げちゃうだろうけど。  
ただ昨日の今日で、このような行為に踏み切るようには───まぁ真帆ならやりかねないし、思えなくも、ないっちゃないけど。  
 
起きたばかりで朦朧となり、くわえてキスの気持ちよさに酔っている中で抱いたわずかな疑問点。  
でもそんなことは、この幸福な時間をたっぷり味わった後で本人に聞けばいいか。  
 
そう思って、昨日散々弄り回した細い身体を抱き寄せる。  
繊細でいて、色んな意味で計り知れないポテンシャルを秘めたその身体。  
 
女性特有の柔らかな感触と、抱きしめた瞬間にフワッと香る、嗅ぎ慣れた匂い。  
 
「………?」  
 
俺の鼻孔をくすぐる、ほのかな甘酸っぱい果実の香り。  
いつも嗅いでる、レモンの匂い……  
 
「………!?!?!?!?!?!?」  
 
───身体が、背筋が、ぞぞぞぞぞっ!!と冷えていくのが分かった。  
 
寝ぼけ眼がスイッチでも切り替わったかのようにバチッ!と開く。  
そこにいたのは………  
 
「ふわっ、はあっ……すぶぁる、ふぁん……」  
 
俺にバスケの情熱を取り戻してくれた張本人。  
大切な教え子であり、毎朝必ず俺の朝練に付き合ってくれる、優しくてどこか儚げな彼女。  
 
その実、バスケへの情熱と仲間への愛情は人一倍……年下でありながら、感謝と好意、そして尊敬の念を抱いている───湊智花その人だった。  
 
「はあ、はあっ……すき、すきです……すぶぁる、さん……」  
 
潤んだ瞳で俺への気持ちを述べると、顔を胸に押し付けてべったりと貼り付いてくる彼女。  
 
 
……何だこれ。  
まるで昨日の真帆をそっくりそのまま智花にして、再現しているみたいじゃないか。  
 
「………あはは」  
 
うん。まーしょうがない。  
ここ数日で、あんなにも強烈な出来事があったんだから。  
 
だから───こんな夢を見ちゃうのも、仕方のないことだ。  
 
それに正直言って、昨日の真帆の痴態を見てからというもの……健全な男子高校生としての欲求が溜まりに溜まっている。  
かといって、その場の雰囲気に流されてやってはいけないことをやってしまったのは事実であり……自責の念からか、家に帰っても彼女のことを思い出して処理する気にはなれなかったのだ。  
 
そうやってずるずると引きずった性欲が、こういった形で夢に出てきたに違いない。  
何で相手が真帆じゃなく、智花になっているのかはさて置いて。  
 
第一、今時珍しいくらいに真面目で謙虚、大和撫子そのものである彼女がこんな行為をするわけがない。  
大方『この時間にいつも来るのは智花=なら真帆より智花の方がよりリアリティがあって想像しやすい』程度に脳内が判断したのだろう。  
 
しっかしそう考えると、我ながら適当な設定だなー。  
まぁ夢なんてそんなモノだし、当たり前っちゃ当たり前か。  
 
「わたしっ、私………だめなんです。昴さんが居ないと……昴さんが居てくれるのなら、私は何もいりませんっ。バスケだって、友達だって、何もいらないんですっ。  
 だから………だからっ、私を昴さんの一番にしてくださいっ……お願いします、おねがいしますっ……!」  
 
聞いてて悲しくなるような、悲痛な声。  
俺の胸にすがりつきながら、涙混じりに愛の丈をぶつけてくる智花。  
 
うーーーわーーー、あーりーえーねーーー。ありえないって、これは。  
ってゆーか幾ら夢の中だからって、こんなセリフを言わせちゃダメだろう。本人に失礼極まりないし、俺だって次に智花と会った時、どんな顔すればいいか分からなくなりそうだ。  
 
「……俺だって、智花が居なくなっちゃ困る。毎日俺の家に来てくれて、朝練に付き合ってくれる人なんて智花以外に誰がいるんだ?」  
「でも、でも………それだけじゃ、バスケだけじゃきっと、真帆には勝てないからっ………」  
 
……真帆?なんでそこで真帆が出てくるんだ??  
 
いきなりの展開に少し戸惑いを覚えたが、すぐに納得のいく仮説が立てられた。  
あーあーなるほどなー。つまりはこうだ。昨日あんだけイチャイチャしてしていた真帆に負けじと智花がやってきた、ってシチュエーションを、俺の脳内は作りたかったわけだ。  
 
いわゆる両手に花。ハーレムの一歩手前みたいな場面を演出して、俺の欲求を満たそうとしていると。  
だから今ここに来ているのが真帆じゃなくて智花だったんだな。  
 
………。  
 
………………。  
 
いや、確かに女バスのメンバーは幸か不幸か皆して可愛くて、しかもいい子ばっかりだ。  
それぞれがタイプの違う個性や可愛さを持っていて、小学生とはいえそんな子たちに好かれるのは満更じゃない。  
 
でもだからといって………彼女たち一人ひとりを蔑ろにするような、こういった夢は如何なものかと思う。  
皆決して完璧じゃないし、良いところも悪いところもあるけれど、可能性に満ち溢れていて朝の日差しのように眩しい子たちだ。  
 
その彼女たちを、単なる俺の欲望のはけ口に利用するなんて、幾ら夢の中とはいっても………いい気はしないし、許せないと思ってしまうのだ。  
 
 
………そんな大切な教え子の一人に、昨日の自分はドエライことをしでかしてしまったわけなんですが。  
 
「だから……んっ」  
 
試合中は頼れるエースとして活躍する彼女のものとは思えないくらいにしなやかな両手で、俺の左腕を掴む。  
すると、それを自分の胸部……もっと言うなら、右胸のあたりに持っていき───  
 
 
───ふにん。  
 
幽(かす)かながら感じる、柔らかな女性の象徴。  
思わず手のひらを、彼女の胸を包みこむような形に変えて、少しでもその感触を味わおうと努力してしまう。  
 
「私………昴さんのためなら、何だってします。そ、その───昴さんが望むのなら、えっちなことだって……。  
 こっ、こんな小さな胸でよければ、いくらでも触ってくださってかまいませんっ」  
 
必死。  
今の智花を言い表すなら、この言葉以上に適切なものはないだろう。  
 
でもある意味智花らしいな。彼女なら、手に入れたいと思ったものはどんな努力をしてでも勝ちとってしまうに違いない。  
それほど彼女の芯は強く、儚げに見えてもしっかりとした意思表示が出来る子なのだ。  
 
「………………」  
 
それに、今の智花───いつものTシャツにスパッツという姿に加え、陶酔しきったような、とろけた表情。  
ほのかに紅く染まった頬に、今にも流れ出てきそうなくらいにたっぷりと涙を溜めた、その瞳。  
 
昨日の……昨日の真帆と、おんなじだ。  
完璧に俺を誘惑し、篭絡しにかかってるとしか思えないその姿。  
 
それにこれは夢なのだ。  
先述した通り、あれだけのことがあって欲望をたぎらせない男なんていないだろう。  
いわばこの夢は、当たり前の現象。走ったら息が切れるのと同じくらい、当然のものなのだ。  
 
 
───ならば、今くらいは全てを忘れ……その欲求に素直になってみるのもいいかもしれない。  
みなぎる欲望を吐き出しきってしまえば、きっとこんな不埒な夢を見ることだってなくなるんじゃないか。  
 
いつまでもムラムラして、現実にあの子たちに手を出すようなことは、決してあってはならないのだからっ。  
 
 
 
………ゴメンナサイもうしませんので許してください。  
 
「……小さくたって関係ない。智花の胸だって、智花自身のことだって、俺はこれ以上ないくらいに大好きだよ」  
「ふあぁあ……す、昴さん、それ……ほんとうに、本当ですかっ……?」  
「ああ。俺は本当に智花のことが大切で、かけがえのない存在だと思ってる。だから安心して……ね?」  
 
そう言って彼女の頬に手をやり、徐々に唇を近づけてゆく。  
とろけきったその表情が、俺にキスを要求している。  
 
「あぁ……すばる、さん………んっ」  
 
共に少しずつ顔を近づけていって………自然と重なる、唇と唇。  
うーん、現実でもこれくらい気の利いた言葉が言えたらいいんだけど。どうして俺ってやつは、余計な時に余計な一言や空気の読めない発言をしてしまうのだろう。  
 
「んっ、ん……ふにゅんっ!」  
 
胸に置いたままの手を軽く揉むように動かすと、ぴくり……と跳ねて小さく声を上げる智花。  
きっと智花が好きな人と結ばれて、こういうことをしたとしたら、こんな感じの反応が返ってくるんだろうなー……なんてことを、ふと考えてしまう。  
一途で、控えめで、優しくて、可愛くて………将来、こんなにいい子と付き合うことの出来る男は、最高に幸せな男だろう。羨ましいぞ、こんにゃろう。  
 
「ふあっ、ちゅるっ、んむんっ……」  
「れろ、んぷっ、んっ……ぷは!」  
「ぷはあっ、はあっ、はあっ……」  
「はあっ、はあ………」  
「……………」  
「……………」  
 
一通りキスを終え、お互いに見つめ合う。  
昨日も同じような展開はあった。だが決定的に違うのは───ここから先、全く次の段階へと移行してくれないこと。  
 
見つめ合ったままで………でも沈黙に違和感はなく、居心地は悪くない。  
疑問と安堵が交差する、不思議な時間だった。  
 
「………あの、昴さん」  
「………なんだい、智花」  
「私……これくらいしか、その、こういうことは……分からないんです。もっともっと、昴さんを喜ばせてあげたいのに……。  
 その………真帆には、私が知らないようなことも……色々したんですよね……?」  
「………………そりゃ、まぁ」  
 
色々した。  
したにはしたが、それは決して胸を張って言えるようなことではなく、むしろ出来るならば墓場にまで持っていきたい秘密の部類だ。  
とはいえ事実は事実なので、複雑な思いながら頷くと───目の前の少女は再び泣きそうな顔をして、叫ぶような声で俺につがりついてきた。  
 
「なら私にも、真帆と同じことを───いえっ、真帆以上のことをしてくださいっ!」  
「なっ……!何言ってるんだ、智花っ!!」  
 
普段の彼女からは想像もつかないような、想定外のリクエスト。  
 
ふと……真帆にした行為を、智花にもしている自分を想像する。  
───確かに、俺の溜まりきった欲望を発散させるにはふさわしい、というよりも凄まじい光景の数々だ。  
 
ただ、夢の中とはいえ……俺にとっても忘れ去ってしまいたい行為の数々を、しかも普段からお世話になってるもう一人の教え子にしてしまう、というのは……。  
 
何となく分かったのは………どうやらこの智花は、昨日の真帆と同じくらいに俺のことが大好きで、そのことで真帆に物凄い闘争心を燃やしているらしい、ということ。  
同時に、こんなムチャクチャな夢を生み出している俺の脳内は、かつてないほど強欲になり、激しい欲求不満に陥っているんだろうな……とも。  
 
「………っく、ひっく」  
 
どうしたものかと思い悩んでいると、目の前の少女が微かに肩を震わせていることに気づく。  
やがて………ぽたり、ぽたりと俺の上着に落ちていく、清らかな雫。  
 
両目から涙を溢れさせて、ひっくひっくとしゃくりあげながら、  
 
「いやだ……ひっく、いやだぁ……。真帆に、まけたくない………すばるさんを、ひっく、すばるさんを、とられたくないよぅ………」  
 
自分の心の奥底にある感情を、苦しそうに顔を歪め、涙を流しながら吐露する。  
 
───違う。闘争心なんて立派なモノじゃない。  
嫉妬、後悔、絶望………今の彼女が抱いているのは、もっとドロドロとして汚い感情だ。  
 
俯きがちに、いっそう強く俺の右手を自分の胸に押し付ける智花。  
それはもはや誘惑というよりも、必死に何かを繋ぎとめようとしているような───悲壮感に満ちた、今の彼女が出来る精一杯の意思表示だった。  
 
「すばるさん、すばるさん、すばるさんっ………!」  
 
守るようにして俺の手を胸元に抱えながら、ぽたぽたと俺の服に涙を落とす智花。  
こんなにも健気な少女を、こんなにも純粋に、自分のことを想ってくれる少女を───無視なんか、出来ない。  
 
「……分かったよ、智花。じゃあ智花に言われたとおり……えっちなこと、しちゃうよ」  
 
普通ならば、発言した瞬間に凄まじい嫌悪感を抱かれ、全速力でその場から立ち去られて当たり前の言葉。  
なのに───  
 
「あ………ありがとうございます!ありがとうございますっ!すばるさんっ!」  
 
先程まで流していた涙を今度は嬉し涙にかえて、心からの感謝を述べる智花。  
こんなことで泣いて喜んでくれる彼女が可愛くて、いとしくて───  
 
「ふ、ふああ!すばる、さんっ……」  
 
俺は智花をぎゅっと、力強く抱きしめていた。  
そのままキスへと移行する。ちゅ、ちゅ、ちゅ……と啄むような、リズムの早いキスだ。  
ちこちない動作で一生懸命俺に合わせてくれようとする健気な姿が、いっそう俺の欲情をかきたててゆく。  
 
「ちゅ……ん、あっ…!」  
 
智花の背中に回していた両手をするすると降ろしていき───小さくて、でも瑞々しくハリのある二つの丘……臀部へと移動させる。  
 
「ふえっ、昴さん……な、なに……を?」  
 
戸惑い不思議そうな顔を見せる智花をよそに、その可愛いお尻をロックするようにして掴むと……もっと柔らかさと弾力を味わうべく、五指を食い込ませるようにしてぐにぐにと揉み始めた。  
 
「智花のお尻……すごく可愛い。小さくて、すべすべで、引き締まっていて……こうやって触ってるだけなのに、すごく興奮するよ」  
「ふ、ふぇええぇ……!そ、そんなっ、そんなこと、言わないでくださいっ!は、恥ずかしいよおぉ……」  
「あはは、恥ずかしいって……いきなり俺の寝起きにキスしてきた子の言うセリフじゃないよね?」  
「そ、そ、それは………!はうううう、はううううっ………!」  
 
自分のした行為を思い出したのか、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに顔を伏せる智花。  
そんな彼女の目尻───具体的にいうなら、ちょうど彼女の泣きボクロのあたりに残っていた、一滴の涙。  
その雫を吸い取るかのようにキスをすると、『ふあっ!』と驚いてますます俺に顔を見せまいと俯いてしまう。  
 
……可愛い。可愛すぎる。  
夢の中とはいえ、彼女も真帆に負けず劣らずのハイスペック仕様のようだ。  
 
「………さて」  
 
こうなると、男としては当然無視出来ない懸念事項が一つ。  
性的な刺激を受けた時、その興奮している度合を示してくれるもの。そこは今、衣服の下から顔を出そうと一生懸命いきり立っているのだ。  
 
「あ、あの……昴さんっ」  
「ん?どうしたの、智花?」  
 
どうしたものかと考え込んでいた俺に、恥ずかしそうに俯いていた智花がおずおずと話しかけてくる。  
潤んだ瞳と紅く染めた頬で上目遣い。俺としては、これだけでもかなりぐっとくるものがあるのだが。  
 
「そっ、その、私のお尻なんかでそこまで喜んでくださるのなら……そのっ……」  
 
話しながら、仰向けで寝そべっている俺の上を移動して───  
 
「ど、どうぞっ。いくらでも好きなだけ、触ってくださいっ……!」  
 
俺の顔の少し下。ちょうど俺の鎖骨のあたりにまたがって、こちらにその可愛いお尻を向けてくる智花。  
 
………………。  
いやいや、その体勢はマズいだろう。  
 
ただ単に、彼女の魅力的なお尻が目の前にある───というだけじゃない。  
もっと言えば、目線を少し下にずらすと……そこには未発達ながらひっそりと息づく、乙女のクレバスが───  
 
「………? すばる、さん………?」  
 
硬直状態に陥っている俺に対して不思議そうな顔を向ける智花。  
 
 
………大丈夫、だよな?  
夢の中なんだし……少しくらい、いや、大いにリミットブレイクしてしまっても……構わないよね?  
 
「脱がすよ」  
「へっ?」  
 
素っ頓狂な声を上げるのにも構わず、彼女のスパッツを掴むと───腰のあたりから太ももまで、ずるーーーーーっと一気に引きずり下ろした。  
 
「ふぇ、ふぇえええええええええええええええええっっっ!?!?!?」  
 
混乱に乗じて彼女の右足を持ち上げ、そちらの方だけ完全に脱がしてやる。  
もはや彼女のスパッツは、左足の太ももに引っかかるだけの黒い布と化していた。  
 
目の前に現れる、眩しいくらいの肌色。  
シミひとつない綺麗なお尻と、中心部に小さくすぼんでいる穴。  
最後に……まだ何も生えていないつるつるのあそこが、そこにはあった。  
 
「どうしたんだ、智花。俺のためなら、えっちなことだって何でもしてくれるって言われたからさ………もしかして、ダメだった?」  
「そそそっ、そういうわけではないんですが、でもでもあの、その、い、いきなりというのは………!!」  
 
絶対に彼女が断れないような質問を繰り出すと、案の定わたわたと慌てふためく智花。  
うーん。焦りきった彼女の表情をこの目で見れないのは実に残念だが……今の俺の目に映っている光景だって、それ以上に価値のある絶景に違いない。  
 
もちろん、せっかく智花が用意してくれたこの僥倖を無駄にするわけにはいかない。  
さっきと同じようにその小さなお尻を掴み、指を食い込ませてぐにゅぐにゅと揉んでやる。  
 
それにしても、綺麗だな……すべすべで、弾力があって……それにこうやって近くにいると、智花の匂いがする。  
 
「それにしても、綺麗だな……すべすべで、弾力があって……それにこうやって近くにいると、智花の匂いがする」  
「ふえぇっ、ふえええぇっ!す、すばるさんっっっっ………!!!」  
 
あ、声に出ちゃってたみたいだ。  
まーでも本当のことだし、彼女の心遣いは決して間違ってはいなかったという証明にもなっただろう。  
 
さぁ、こうなるといよいよ苦しくなってくるのが、俺の下腹部で今か今かと出番を待ちわびてるあの部分だ。  
何せ性的な刺激という面でいうと、先程よりも強烈なものになっている。  
それに比例して俺の男の象徴たる部分も、ズボンとパンツを突き破らんとばかりに上を向いているのだ。  
 
……ていうかぶっちゃけもう痛いくらいだ。早く何とかしないと───  
 
「………………」  
 
ちょっと待てよ。  
今の位置関係を、再び確認してみよう。  
 
俺の目の前には、智花の下半身が……逆に言うなら、智花の目の前には俺の下腹部があるはずだ。  
 
「……智花、ちょっとお願いがあるんだ」  
「ふあ、ふあっ!は、はいっ!」  
 
すっぽりと手に収まるサイズのお尻をむにむにと揉みほぐしながら、声をかける。  
首だけでこちらを向き、締りのない横顔を見せながら返事をしてくる智花。  
 
「………さっき智花にしたみたいに、俺のズボンとパンツを膝まで下ろしてくれないか?」  
「ふぇ、ええっ!?!?す、昴さんの……ズボンと、パ、パンツを………ですか?」  
「うん。頼む、智花。もう我慢出来そうにないんだ」  
「は………はいっ。わかりましたっ!」  
 
相手が何を言っているのかさっぱり分からない……という風でもなく、少し心当たりがあるような面持ちで、俺のズボンとパンツのすそを同時に掴んだのが分かった。  
それからすぐに、寝ている子供を起こさないよう配慮する母親の手つきで、下半身に着用している衣服が少しずつ下げられてゆく。  
 
「ふああ………っ!」  
 
抑えるものがなくなって、解放される感覚。  
同時に彼女の口から驚きの声があがる。  
きっと智花の目前には、限界近くまでそそり立っている俺のイチモツが姿を現しているに違いない。  
 
「あっ……私、知ってます……。その、ここから……出てくるんです、よね……?すばるさんの、あかちゃんの、たねが……」  
「………えっ?」  
 
今度はこっちが驚きの声を上げる方だった。  
何だかんだ言っても、智花だって小学六年生。保健か道徳の授業で、赤ちゃんの出来る仕組みくらい知っていてもおかしくはないだろう。  
 
ただ、俺が驚いたのはそこじゃない。むしろ彼女が赤ちゃんの作り方を知っていることくらいは想定範囲内だ。  
 
問題は………普通、見たこともないようなグロテスクな物体をいきなり目の前に晒されたら、拒絶されるか恐怖を覚えてしまうはず。  
なのに、今の智花が発した言葉のニュアンスは、拒絶や恐怖とは違う。  
むしろ全く逆の、親愛や愛情を含むようなものだったということ。  
 
膨張した部分に感じる、彼女の暖かな呼吸。  
たまに聞こえてくる「ふぁ、ふあぁ…」という、感嘆するようなため息。  
 
 
───嫌な予感がする。  
それも、とてつもなく嫌な部類の。  
 
「───ちょっ」  
 
第六感が発動したほんの数秒後に、それは起こった。  
彼女の息が更に近くに感じられるようになる。と共に、おもむろに握られる……俺の下半身。  
 
それは智花らしい、優しく包みこむような、母性に溢れた握り方だった。  
そのはずなのに───まるで搾り取られるような、急速に高まってゆく射精感。  
 
「ひゃうっ……すごく、あついです……あは。……わたしが、こうしてにぎっているだけで、ぴくぴく、って───」  
 
呟きながら、最初はゆるゆると肉棒を弄り、同時に俺の反応を見る。  
こねてみたり、つついてみたり。俺の顔色を伺いながら精一杯工夫する姿が何とも健気でいやらしく、俺の劣情を燃え上がらせる。  
 
背徳感と、小学生が醸し出しているとは思えない淫靡で妖艶な雰囲気。  
おまけに昨日から溜めに溜め込んだ欲望がぐるぐると俺の下腹部を渦巻いていて、もはや一触即発、今なら幼なじみである葵のパンチラですら暴発してしまいかねない状態だというのに。  
 
「……えいっ!」  
「───ぅあっ!!」  
 
その姿を見ているだけでも達してしまいそうなのに……まさか彼女が、正しいしごき方をしてくるとは夢にも思わなかった。  
掛け声と同時に上から下へと竿を扱かれて、俺は思わずため息を漏らしてしまう。  
 
それが俺の、今日一番の反応だった。  
 
「ふぁうっ……すばるさん、いま、すばるさんのココ……すっごくびくってしました……。こうすると……キモチイイんですか?」  
 
少しずつ、竿を握った手を上下に動かしてゆく。  
 
今の体勢から、彼女の表情を窺い知ることは出来ないが………何となく想像出来てしまうのだ。  
俺のイチモツを扱きながら、まるで子供に接する母のような笑顔で、亀頭部分に話しかけている智花の姿が───  
 
「っっっっっ!!!」  
 
びくびくびくっ!と痙攣する俺の身体。  
危ない。リアルに想像すればするほど、射精感なんてもんじゃなく実際に出てしまいそうになる。  
 
……いや、むしろ出してしまっていいのか。  
こんな過激な夢を見て、射精してしまわない方がおかしいんだし。  
 
起きたら間違いなくパンツの中がエライことになっていそうだが、それくらいは大目に見るとしよう。  
 
「すーばるさんっ……うふふっ……すばるさんのが、わたしのてに、はんのうしてくださってる……」  
 
………何やら智花の方にも変なスイッチが入ってしまったようだ。  
 
片方の手は竿の部分を握って上下運動をさせたまま、空いている手の人差し指で俺の亀頭をいーこいーこをするみたいに撫でている。  
それ以上に……彼女の言葉から感じる、百戦錬磨の淫魔のような、甘やかでねっとりとした空気。  
 
これは非常にマズい。このまま続けられたら………  
 
「すばるさんも、すばるさんのココも……………だいすきです」  
 
うっとりとした声で俺の亀頭に話しかけながら、竿を自分の顔の方へと持っていき───  
 
 
───ちゅっ。  
 
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」  
 
小さく、柔らかな唇で亀頭のてっぺんを軽く吸う。  
それがトドメだった。  
 
身体中を支配する、電流のような鋭い快感。  
同時に堰を切ったように溢れ出す、白く粘っこい液体。  
 
そして、唇で覆われているソコから射出された粘液は………一滴も溢れることなく彼女の口の中へと収まっていく。  
 
「んんんんんっ───!!!」  
「とっ、智花っっっ!!」  
 
射精からもう数十秒が経過しているのにもかかわらず、未だに俺の亀頭にキスしたままの智花。  
きっとどうすればいいか分からず、戸惑っているに違いない。  
俺だってこんな場面に遭遇したことなどあるはずがない。が………まずは彼女の口の中を一刻も早く開放してやることだろう。  
 
ティッシュはどこだ。どこへやったっけ。  
手だけで目的のものを探し求めながら、上半身を起こして彼女の様子を伺うと───智花の方も俺と同じように起き上がって、くるりと回れ右。  
俺の方に向き直って、ちょこんと俺の太ももの上に腰を下ろしてから………顔を上げ、俺の方にも見えるようにして、ぱかりと口を開いたのだ。  
 
もちろんそこにあるのは………生まれたてホヤホヤの、これでもかというほどに性欲の練りこまれた、白い液体。  
 
「……ひへふらはい、ふはるはん。ほれは……ふはるはんの、あはひゃんおはえへふ」  
(……みてください、すばるさん。これが……すばるさんの、あかちゃんのたねです)  
 
淫らだ。  
とろとろにとろけきった瞳。限りなく淫らな表情で俺の方を見る。  
 
「あは、ふはるはんの、あはひゃんのはえは……ほんはひ、ははひほふひほははひ……」  
(あは、すばるさんの、あかちゃんのたねが……こんなに、わたしのくちのなかに……)  
 
口の中に欲望の粘液を留めたまま、愛情たっぷりにそう呟く。  
そして俺がその風景を認識し、堪能したことを確認すると、ゆっくりとその口を閉じて───  
 
「───ごくんっ」  
 
………飲んだ。  
 
「───んくっ、んくっ、んくっ………ごくんっ」  
 
………飲み干して、しまった。  
 
「───うふ、すばるさんの、あかちゃんのたね………とっても、おいしかったです」  
 
………美味しいとまで、言われてしまった。  
 
「………………………………」  
 
どういうことだ。俺の知ってる小学生と違う。  
 
もう淫らだなんて言葉じゃ済まされない。  
どんな男をも誘惑し、堕落させてしまうエロス。  
そう……今の智花はさしずめ“エロス智花”といったところか。  
 
それにしても………さすがは夢の中だ。現実じゃあり得ないことを平然とやってのける。そこにシビれるあこがれるゥ!  
ならば俺も、小学六年生ごときに負けてはいられない。欲求を満たされたなら、欲求を満たしてやればいいッ!!  
 
 
……意味分かんないですね、ハイ。  
 
「じゃあ智花、ちょっとさっきの姿勢に戻ってもらっても……いい?」  
「ふぁ……あ、はいっ」  
 
再び、お互いの下腹部が見える姿勢……俺が下になり仰向けに、智花が上になってうつぶせに、先程と全く同じ姿勢をとる。  
数分ぶりのご対面となる、智花の隠された部分。  
 
もう遊びはおしまいだ。  
自分と彼女の性欲を満たすために、俺は今から全力を尽くす!  
 
───くちゅり。  
 
「ひゃあんっ!」  
 
恐ろしく可愛い声を上げる智花。  
だが彼女の驚きようも納得がいく。先程まではお尻の部分を好き勝手するだけだったのが、今度は割れ目そのものに指を押し当てられてしまったのだから。  
 
いきなりイチモツを握りしごかれ、最後にはそこにキスまでされた俺と同じに、不意打ちで敏感なソコを攻撃されて小さく腰を震わせる智花。  
 
「あっ……あ!すばる、さんっ……!」  
「どう、智花。気持ちいい?」  
「は、いぃ………いい、ですっ、あはっ………!」  
 
先日の真帆よりも柔らかくて、ほぐれているような感触。  
人差し指をほんの少しうずめたまま、淫らな潤いを潤滑油代わりにして割れ目にそってくちゅくちゅとスライドさせてやると……心ここにあらずといった感じの返答が返ってきた。  
 
おまけに少しずつ………俺が指をスライドさせてやるのに合わせて、自らも腰を上下に動かしてくる。  
何でこの子の行動はこう、いちいちエロいのだろうか。俺を誘っているとしか……いや、実際に誘っているからこその行いなのか。  
 
「はい、そこまで」  
「───っふええ?!」  
 
───そんな今の智花だからこそ、苛めたくなってしまうのは男の性だろう。  
かくかくと上下する彼女の臀部をガシッと掴んで動きを制限すると共に、また尻肉に指を食い込ませて緩やかに揉んでやる。  
 
「はあ、はあっ……あぁあっ、すばるさん、すばるさんんんっ………」  
 
ちょっと前の智花になら、それだけでも十分な刺激だっただろう。  
だが更なる刺激を知ってしまった今……この現状は、じれったくてたまらないはずだ。  
 
「ふあっ、ふぁうっ……すばるさん、もっとぉ……もっと、いじってくださいっ……!」  
「え?弄ってくださいって、もう弄ってるだろ……智花の可愛いお尻を」  
「ふええっ、そ、そうじゃなくってっ……そのっ、あのっ……」  
「もしかして、他のところを弄ってほしいの?どこ?」  
「それはっ、それは……ううっ、うううう〜〜〜っ!」  
 
こらえるようなうめき声を上げながら、必死に懇願してくる智花。  
その間にも彼女のお尻を揉み、時にはさわさわと撫でるようなタッチでなぞってゆく。  
 
「わ、わたしの………」  
「ん?わたしの?」  
 
いやらしく、ねちっこい声で聞き返してやる。  
 
「わ、わたしのっ……!きもちよくってとろとろになってる、そのワレメをいじってくださいっっ!!!」  
 
───言った。  
それも、ほぼパーフェクトな回答で。  
 
でもまだ足りない。  
回答としては二重丸だが、溜まりに溜まった俺の欲求を満たすには───まだ足りないのだ。  
 
「んーと……こう?」  
 
中心部に割れ目のある神秘の丘を覆うようにして、親指以外の四本の指をあてがう。  
それから敏感な丘の部分を、まるで猫の喉でもくすぐってやるかのような動作で、こしょこしょこしょーっと撫で始めた。  
 
「あ、あああああっ!あはあああぁぁぁっ……!す、すばるさん……そんな、そんなあぁ……!!」  
 
時には羽で撫でるような軽やかなタッチで、時には爪だけで軽く引っ掻いてやるような動きで。  
足の付け根あたりと思わせておいて、急に割れ目のあたりを集中攻撃してみたり。  
 
びく、びく、びく!と上下左右に忙しく腰を跳ね回しながら、たまらないというような声を上げる智花。  
 
「どうだ、智花、きもちいい?」  
「あはっ!だめ、だめですぅ……!あっ、ああっ!わたひ、おかひくなっちゃうぅぅ……!」  
 
くすぐったさと淡い快感に苛まれ、くねくねと身体をよじ曲げる。  
男を誘惑せんとばかりの腰使い。あぁいやらしい。本当にいやらしい。  
 
「いったいどうしたんだ、智花。せっかく言われたとおり、『きもちよくってとろとろになってるワレメ』を弄ってやってるのに」  
「っっっ!!!!!」  
 
尋ねながら、人差し指を使い、触れるか触れないか程度の距離を保ったまま縦スジをなぞってゆく。  
数分前の自分の発言を改めて聞かされた恥ずかしさもあり、ひときわ大きく身体を跳ねさせる智花。  
 
位置関係上、彼女の表情は伺うことが出来ないが……虚ろな目ではーはーと荒い息を吐いているに違いない。  
 
「……でも驚いたよ、普段あんなに大人しくておしとやかな智花が、まさかこんな一面を隠し持ってたなんて……」  
「ふ、ふあああっ!ち、ちがいますっ……!すばるさんが、あっ、すばるさんがっ、こんなことするからぁ……!」  
 
こんな状態になってまで、何を取り繕うことがあるのだろう。  
俺の行いに一因があったとしても、今の智花があり得ないほどに乱れているということは、紛れも無い事実だというのに。  
 
普段はとっても素直な彼女なのだが、時たま頑固で譲れない一面が顔を出すんだよなー。バスケの時然り、遠慮合戦を繰り広げている時然り、今回のような場面然り……まぁそんな頑固になってる智花もとっても可愛いんだけどね。  
 
だからこそ、彼女の強固な心の城壁を………自分を守るための、ある意味での自尊心を、粉々に打ち砕く一言を打ち付けてやる。  
 
つめたく、冷え切った声色で、  
 
「智花のえっち」  
「───っっっっっ!!!!!!!」  
 
氷で作った槍を突き刺すかのような、冷徹な一言。  
 
どうしようもない。  
男の肉棒を自ら咥えたり、相手の指に自分の下腹部を押し付けたり───こんなに淫らな姿の数々を見せつけていて、今更この言葉を否定できるわけがない。  
だが………今の智花の姿こそ、俺が見たかった部分なのだ。  
 
普段は優しくてどこか儚げな彼女が、たまに見せる頑固な一面。  
一度こうなったら、彼女は中々折れてくれない。それこそテコでも動かないと言って差し支えないくらいに。  
 
だからこそ───その頑固な部分を完膚なきまでに粉砕して、一種の心の壁となるものを取り除かれた彼女を見てみたいと思ったのだ。  
そのための焦らしであり、彼女がしてきた淫らな行為を自覚させる言葉だったのだ。  
 
「………らいに」  
「ん?」  
 
ぼそり、と虫の鳴くような声で、こちらに話しかけてくる智花。  
ハの字に眉をくしゃっと歪め、見上げてくるその瞳には………先程まで悦楽に浸っていた彼女のものとは思えないくらいの、怯えや悲しみといった感情が込められていた。  
 
「きらいに、ならないで、くださいっ……!わたしのこと、っく、きらいに………きらいに、ならっ………!」  
 
俺の発言は───受け取りようによっては、俺が智花を拒絶してしまったようにも取れるものだった。  
智花がこんなえっちな子だとは思わなかった。がっかりだ。見損なった。  
 
『貴方さえいれば他には何も要らない』とまで想っている相手から、こんな言葉を言われた彼女の精神的ダメージは………いったいどれほどのものだろう。  
 
「───ぅうぅっ!いやあっ……っく、ひっく、すばるさん、ひっく……ぅあ、ひっく、きらいに、きらいにならないでえっ……あぁあああっ……!」  
 
その言葉を皮切りに、次から次へと溢れてくる涙。  
いやいやをするように首を振りながら、俺の身体に顔をうずめて泣きじゃくる。  
下腹のあたりに広がる、絶え間なく雫が落とされていく感触。  
 
「いやだ、いやだぁあ………!いやだよぅぅ……!きらいになっちゃ、いやああぁ……!!すばるさんっ!すばるさんっ……!ああっ、あぁあああああ……!!」  
 
俺の腰に手を回し、自分のもとから離れていかないよう必死になってすがりつく。  
普段の物静かな彼女はどこへやら。  
小さな子供のように泣きわめく智花が、そこにいた。  
 
………一つ、言い訳をさせてもらえるのならば、彼女が持っていたソッチ方面のポテンシャルは、誰も予測出来ないくらいの、まさに想像を絶するものだったということ。  
こんな淫らなシーンを見せつけられて理性を失わない男なんて、きっといないんじゃないかと思うくらいに。  
 
「………嫌いに、なるわけないだろ。俺のために、そこまでしてくれる女の子が、他にどこにいるっていうんだ。  
 きっと地球上探したって、俺にここまでしてくれる子はいない」  
「っく、ひっく……」  
 
結局、彼女の心の奥にあったのは『相手のためなら何だってしてやりたい』という、最初に彼女が述べた言葉そのままの、これ以上ない愛の結晶だった。  
たとえ夢の中だとしても、その愛はとてもあたたかく……そして、幸せに感じるものだった。  
 
「……………ごめんな。俺が悪かった。少し意地悪しすぎた」  
 
ならば、夢の中の───幻想の世界とはいえ、その気持ちに応えてやりたいと思うのが男というものだ。  
 
「今度は………俺が、智花のために一生懸命尽くすから」  
 
そう宣言して、目の前の、今の彼女と同じように泣いているもう一つの部分へと口づけた。  
 
「っっっ!ひゃううっ!!!」  
 
散々焦らされ、弄ばれ、ひたすら敏感になったアソコに突然降ってきたキス。  
それもただのキスじゃない。俺なりに、極限まで愛情を詰め込んだキスだ。  
 
「ちゅるっ、ちゅぱっ……智花のココ、とても綺麗で、いやらしくて……何というか、すっごく可愛いよ」  
「ふああ、あぁあっ!そんな、ひっく、すばる、さんっ、……ひゃあぁっ!」  
 
溜め込んだ涙を散らしながら、襲い来る快感に身を委ねる智花。  
もう焦らすような真似はしない。  
彼女が少しでも気持ちよくなれるよう、ただそれだけを考えて全力を尽くす。  
 
刺激を加える度にぴくぴくと震えるお尻を抱え、少しでも反応が大きいところを探し求める。  
 
「ちゅ、じゅるるっ、ぷは、ちゅうっ!」  
「ふぇっ、ふああああああっ!!!すばるさん、すばるさんっ!私、もう───」  
 
舌で割れ目の入り口を開き、縦横無尽に動かしてやる。  
がくがくと痙攣する身体を抱えこんで、より敏感なところへと狙いを定めてゆく。  
その都度大きく反応し、女としての快楽を享受する智花。  
 
「………ぷはっ!」  
 
一瞬だけ口を離して、今の状況を把握すべく、彼女の乱れきった女性器全体を見渡す。  
すると………今まではなかった、割れ目の丘の上にちょこんと顔を出す、小さな豆のような突起を発見した。  
 
「───ちゅっ」  
 
吸い寄せられるようにして、その部分にキスをする。  
唇で柔らかく挟みながら、軽く吸いついてやると───智花の身体は雷に打たれたかのように跳ね上がった。  
 
「ひっ、やあああああああああああああああああああああああぁぁぁっっっっっ!!!!!!!」」  
 
背中から喉にかけてを限界まで仰け反らせ、今日一番の甲高い声を上げる智花。  
それに伴って、がくんがくんと跳ねる腰を、懸命に抱え込んでやる。  
 
彼女が少しでも安心できるように。  
どこか遠い世界に行ってしまわぬように。  
 
「あっ、はっ、ふあっ………」  
 
痙攣のリズムに合わせて聞こえてくる、余韻の喘ぎ声。  
ひとしきり喘ぎ終わると、くたぁ〜っと俺の身体に体重を預けてくる。  
 
熱く火照っているお尻をいたわるようにして撫でる俺と、ひたすら荒い息を吐いて絶頂の余波と戦っている智花。  
 
そんな状態から、数分が経った頃。  
少し落ち着いたのを見計らって、今だに力が入らない智花の身体を抱き起こし……俺の隣に寝かせてやった。  
 
「ふぁ……昴、さん……」  
「大丈夫か、智花……。ごめんな、俺のために、こんな無理させちゃって……」  
 
冷静になって考えてみると……一心不乱に尽くしてくれていた彼女に対して、調子に乗ってかなり酷いことを言った気がする。  
それなのに、彼女はにこりと慈愛に満ちた微笑みを俺に向けながら、  
 
「いいんです。昴さん。私、幸せです。昴さんがこうして、私の気持ちを受け止めてくれたこと。私のことを、好きだって言ってくれたこと………きっと一生、忘れません」  
 
愛の言葉を囁きながら、そそくさと俺の胸元に額を寄せてくる。  
そんないじらしい智花を抱き寄せて、俺も同じくらいに愛を込めた言葉を返してやる。  
 
「……ありがとう。俺もすごく嬉しい。智花がこんなにも、俺のことを思ってくれていたなんて」  
「ふあぁ……昴、さん……」  
 
ふと、時計を見る。  
朝練を始めるには完璧に寝坊の時間だが、今日の練習までにはまだ少し時間があった。  
ベッドの端へと追いやられていた布団をたぐり寄せて、二人に均等に掛かるようにして敷いてやる。  
 
「さぁ、まだ少し時間があるし、ちょっとだけ寝ておこう。今日の練習に差し支えてもいけないしね」  
「は───はいっ!」  
 
いつもの素直な返事が返ってくる。  
これだけの出来事があって疲れてしまったのか、それとも気持ちが伝わったという安堵のせいか、五分も経たないうちに智花はすーすーと規則正しい寝息を立てていた。  
 
「ふふっ……」  
 
思わず彼女の額に、手を置いてにやついてしまう。  
天使のような寝顔とは、まさしくこのことか……時間が経つのも忘れて、その安らかな表情に見入ってしまう。  
 
「………………」  
 
───多分きっと、ここで俺も寝てしまえば………この夢は覚めて、現実の世界へと引き戻されてしまうのだろう。  
 
でもそれも仕方のないことだ。  
幻とは、いつか消えてしまうものなのだから。  
 
夢の世界とはいえ、智花がこんなにも俺を愛してくれたこと。  
幸せすぎるくらいの幸せを、味わわせてくれたこと。  
これ以上ないくらいの幸福感に包まれて、俺もゆっくりとまどろみへと落ちてゆく───  
 
 
 
 
───こんこん、がちゃり。  
 
「昴くん、すばるくーん」  
 
妙にリアルに聞こえてくる、母さんの声。  
 
「え、母さ、ん………?」  
 
寝ぼけた目をこすりながら、返事をする。  
 
「まぁまぁ、どうしたの?狐につままれたような顔をして………あら」  
 
いつも通りのぽわぽわとした受け答え。  
だが俺の左隣を見た瞬間、にこりと微笑ましい何かを見つめるような表情になる。  
 
「うふふ、智花ちゃん……昴くんがあんまり気持ち良さそうに寝ているもんだから、ついつい一緒に寝ちゃったのね」  
 
左隣を見てみると……そこには、俺のTシャツを掴んだまま、ぐっすり眠ってしまっている智花がいた。  
 
「でもそろそろ朝ご飯だから、起こしてあげなくちゃダメよ〜」  
 
───ばたん。  
 
オムレツに使うバターの芳しい匂いを残して、軽やかに去ってゆく母さん。  
 
 
 
………。  
 
………………えっと。  
 
まだもしかして、夢の続きなのか?  
でもこのリアルな感じ。五感からはっきりと感じ取れる感触。さすがに夢ってことはないだろう。  
 
ってことは、智花がこうして布団の中に入ってきたことも、あんな夢を見てしまった一因だったり………?  
 
「───ひゃんっ」  
 
教え子相手になんて夢を……とおぞましいほどの自己嫌悪に陥る直前、横で寝ている智花がくすぐられたような悲鳴をあげる。  
同時に左の人差し指をかすめた、ぬるりとした感触。  
 
恐る恐る、布団を開いてみると───そこにあったのは、スパッツを左膝に引っ掛けたまま下半身丸出しで寝ている智花の姿。  
よく見ると、彼女の綺麗な割れ目を微かに潤わせている粘液のようなものが、朝の光を受けてキラキラと反射している。  
 
次に左の人差し指の先端をよーく見る。  
……紛れもなく、何らかの湿り気を感じる。親指とこすりあわせて離すと……一筋の、細い糸を引いているのが見えた。  
 
「……………………………………はっ?」  
「ふ、ぁ………おはよう、ございます………昴、さん」  
 
怠け声で朝の挨拶をするのは、いきなり布団のぬくもりがなくなったせいか、目を覚ましてしまった智花。  
対して彼女の秘所から出た聖なる液を指に絡ませながら、固まっている自分。  
 
そして、俺の視線の先にあるのは………丸出しになったままの、智花の下腹部。  
 
「………」  
「………」  
「………………」  
「………………」  
「ふぇ、ふぇええぇええええええええぇぇーーーっっっ!!!!!」  
「うっ、うわぁあああああぁあああぁああーーーっっっ!!!!!」  
「わわわわわわっ、私、なんっ、なんてはしたない格好でっ……はう、はううううっっ………!!!」  
「きっきききっ、気にしなくていい───じゃなくって!そっその、ゴメン!!!っていうか早くスパッツを履いてくれっ!お願いだから!!!」  
「ああああああああああああっっっ!!!!!スイマセン、スイマセン、スイマセンーーーーーっっっ!!!!!」  
 
二人してどたばたと慌てふためく。  
慌てふためくのに夢中で中々スパッツを履き直してくれない彼女を指摘すると、泣きそうな顔でわたわたとスパッツに右足を通して引き上げる。  
やがていつもの謝罪合戦が五分近くも続いた。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ……」  
「はあっ、はあっ、ふ、ふえぇ……」  
 
何とかして落ち着いたものの、智花は未だに顔を完熟トマトのように紅く染めたままだ。  
 
 
 
………ふと、思う。  
 
夢と現実の境界は、一体どこからだったのかと。  
 
どのへんまでが夢で、どのへんまでが現実だったのかと………。  
 
 
「な、なぁ……智花」  
「ふぇっはははっ、はいっ!!」  
「その……………智花は、覚えてる?」  
「なななっ、何をですかっ??!」  
 
あぁ……さすがにそれはないか。  
よかった………そうだよなー、あんなこと実際に起こり得るわけないもんな。  
 
「あはは……あーゴメン、そうだよな……まさか智花が、その……俺にキスしてきたり、えっちなことしてくれーなんてお願いしてきたり、そんなことあるわけが……」  
 
次の瞬間、予測どおりの『ふ、ふぇええぇーーーっ!!』という驚きの悲鳴が………………聞こえてこなかった。  
ギギギギギ、と首を動かして、彼女の顔を見る。  
 
「………」  
「………」  
「………」  
「………きゅう」  
 
ぽすん。  
互いに見つめ合って約五秒後。そこには気を失い、再び布団の上へと倒れ込む智花の姿が。  
 
 
………。  
 
えーっと、智花さん。  
そのリアクションは、間違ってますよね?  
 
その反応だと、まるで、まるで………自分がやった行為を五秒間たっぷりと思い出し、羞恥に耐え切れなくなって気絶してしまったような………  
 
 
 
………………えっ。  
 
 
「……………うそ、だろ? まさか………」  
 
もう一度、彼女のいやらしい液がついた人差し指を見る。  
 
智花が俺に施してきた、現実離れした行為の数々。  
そして自分が幻想の世界だと決めつけて智花にしてしまった、口にするのもはばかられる行為の数々。  
 
それら全てが夢の中の出来事ではなく、実際に………リアルワールドで行われた、ことだと、で、も………?  
 
「………きゅう」  
 
ぼすんっ。  
再び智花と並ぶようにして、布団に倒れ込む俺。  
 
 
 
誰か………誰か、助けてください。  
 
夢が、幻が、いつまで経っても覚めてくれないんです。  
 
 
 
 

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