「ん……くちゅっ、紗季、紗季っ……」  
「ふあっ、はせがわ、さんっ……!」  
 
落とされた、一滴の熱いキス。  
二つ、三つ、やがて数えきれないくらいに。  
 
じわじわと広がって、やがてこの世界を支配してゆく愛の雫だ。  
 
体育倉庫に二人きり。  
紗季に覆いかぶさった体勢のまま、彼女の紅く腫れた頬を包む。  
自分が出来る限りの、優しくてあたたかな抱擁。  
 
「……痛かったよな、やっぱり」  
 
感情に任せて打ち付けてしまったその頬。  
ぽそり、と自問自答のように繰り出す。  
 
「いいえ、全然。これっぽっちも、痛くなんてありません」  
 
そう言って返ってくるのは、全く歪みのない微笑み。  
すなわちそれは、彼女の感じている心からの真実だということだ。  
 
「だって今は幸せですから。大好きな人に、こうして愛されていることが」  
 
続けて、それを得るための手段だったんです。これくらいの覚悟はしていましたから、と返ってきた。  
 
 
 
……本当に彼女は小学六年生なのだろうか。  
自分が紗季と同じ年の頃、そのような想いを抱き、実際に行動に移せる人間が周りの同級生に一人でも居ただろうか。  
 
思いを馳せながら、その傍らで俺はこの疑問の答えを既に見出していた。  
それは、ここ数日の出来事で彼女達から一番学ばされたこと。  
 
小学生とは思えぬ行動力や、覚悟の強さ。  
 
 
───違う。  
心を突き動かすほどの強い想いが、彼女達をここまで強くさせたんだ。  
 
人は夢や願望があれば、それに向かって努力する力を元々秘めている。  
素直で実直な彼女達なら、尚更。  
 
つまり、彼女達の中にそれほどの強い想いがあったということだ。  
そしてその想いというのは………他ならぬ、俺への恋心。愛情だ。  
 
「紗季……」  
 
ぽつり、と呟いて、もう一度その細い身体を抱きしめる。  
こんなに小さな彼女達をここまで強くしたのは自分への想いがあったからだと思うと、何だか感慨に耽ってしまう。  
 
 
───でも、それとこれとは話が別だ。  
 
実際に俺はその想いを受け入れる行為を何度もしてしまっていて、もはや引き返せないところにまで来ているのだろう。  
もう他人事には出来ない。逃げも隠れも出来ないのだ。  
 
 
ならば、自分はどうすればいいのか。  
 
「───何を、考えてるんですか?」  
 
ふと、耳元から聞こえるはっきりとした疑問の声。  
 
「うん……今まで自分が何をしてきたのか、これからどうすればいいのか───」  
 
返事を待たず、肩に置かれる手。  
続いて力強く押し上げられ、またお互いに顔の見える距離へと引き離される。  
 
「そんなこと、どうでもいいです。今……長谷川さんの目の前に、他の女性は居らっしゃらないでしょう?」  
 
にや、と少し意地の悪い笑み。  
 
「なら、私だけを見てください。今までのことも、これからのことも、どうだっていーです」  
 
小悪魔の微笑でそれだけ言い残すと、再び肩を引き寄せられる。  
待っていたのはぶちゅっと音がしそうなくらいのストレートな口づけ。  
 
なりふり構わない、キスだけしかないキス。  
それはまさに彼女の幼なじみ、真帆のイメージとそっくりのキスだった。  
 
何だかんだ言っても、似てないようで似た者同士なんだなーとか思っているうちに、次々とキスの応酬を受ける。  
 
「んふっ、ぷあっ……」  
「ぬるっ、んふっ、はせぐぁわ、さん……」  
 
舌を絡めているわけでもないのに、ねっとりと絡み付いてそのまま食べられてしまいそうなキス。  
 
「ぷあ………ふふふっ、今だけは……長谷川さんは、私だけのモノなんです、から……」  
 
キスを終え、互いに見つめ合う。  
彼女の口の端からつぅっと垂れてゆく唾液。  
その雫を小さく舌を出してちろりと拭う仕草。  
 
真帆のような、豪速球の愛情表現でもない。  
智花のような、子供が背伸びしている拙いアピールでもない。  
 
そこにあったのは、二人には決してない異質の色香。  
男の喜ぶツボを知り尽くし、それを操って男を篭絡する娼婦のような淫乱さだった。  
 
「………っ!」  
 
男としての本能が否応なしに刺激される。  
もし真帆や智花のことがなければ、紗季の醸しだすこの色気だけでとっくに白旗を上げていただろう。  
色んな意味での罪悪感があるから、こうやって理性を保っていられる………の、だけど。  
 
「───わかってるよ。紗季」  
 
地獄に垂れ下がる一本の蜘蛛の糸。  
細くて見えるか見えないか程度にしかない、絹糸のように細い理性を………俺は自ら切り落とそうとしていた。  
 
この地獄に救いなど要らない。  
もとより彼女らの想いに気付けなかった自分の至らなさが招いた結末なのだから。  
 
 
今の俺に出来ることは、その地獄についてきてくれた彼女達を、愛して、愛して、愛し尽くすことだけだ。  
 
「ふふっ、ありがとうございます、長谷川さん。何なら真帆やトモにしたことと同じこと……いえ、それ以上のことをして下さっても……構わないんですよ?」  
 
相変わらず意地悪な笑みに、こちらも似たような悪魔の笑顔を返す。  
 
「……本当に? 悪いけど、もう手加減は一切しないつもりだよ……?」  
「望むところです………長谷川さん」  
 
売り言葉に買い言葉。  
だけどその中に、確かな愛を感じ合える。  
 
その証拠に、二人してぷっと吹き出すと、どちらからともなく再び唇を重ね合う。  
 
「んんっ……!」  
 
唇のやり取りを続けながら、彼女の左胸に手を置く。  
智花よりもわずかに柔らかく、より女性的な膨らみを手のひらに感じる。  
ぴくり、と跳ねる小さな身体。  
 
「ぷはっ………もう、長谷川さんってば、エッチなんですから………」  
「……もう一度聞くよ。本当に……本当にいいんだね? 紗季………」  
「決意ならとっくに済ませてきましたし、二言はありません………私は女、ですけどね」  
 
そう言って、ふふっ、と紗季らしい微笑みを見せてくれる。  
 
何故だろう。  
彼女の発する『女』という言葉に、信じられないくらいの厭らしさを感じる。  
 
危険だ。小学六年生でこれなのだから、もしこれから先、女性として成熟していけば一体どれほどの色気を放つ女性になるのだろう。  
 
「本当に綺麗だね………紗季」  
 
胸に置いていた手を彼女の頬に移動させ、ゆるやかなカーブを描く輪郭を撫でてやる。  
彼女の何年後を想像してしまったこともあり、思わずそんな言葉が口を衝いて出てしまう。  
 
「ありがとうございます………面と向かってそんな風に褒められると、ちょっと照れちゃいますけどね」  
 
冷静を装ってはいるが、実際はそれを超える恥ずかしさを堪えているのだろう。  
言葉以上に紅く彼女の頬が染まり、視線が虚ろになって僅かに目を逸らそうとしているのがわかる。  
 
俯きがちになった顔にもう片方の手をやり、少し強引にこちらへと向き直らせてやる。  
 
「………逃げないで。俺は本当に紗季のことが素敵だと思っているし、君にその想いを伝えたいと思ってるんだから」  
 
こちらに向き直らせたことで、しばらく見つめ合う二人。  
俺が言葉を発し、沸騰しかけている彼女の頭脳がその意味を理解するまで、数秒のタイムラグ。  
 
言われた単語の意味を一生懸命噛み砕き、理解した瞬間………彼女の顔が、普段からは想像もつかないくらい、ぼっ!と一気に紅くなったのを見た。  
 
「は、はせがわさん、やめてください……………ちょっと、本当に、恥ずかしくて………」  
「恥ずかしいと言われても………これが俺の中にある真実だし、どうしようもないんだけど」  
 
それは何の嘘もない、心からの回答だった。  
取り繕う必要もない。周りの視線を気にする必要もない。  
そもそもここまで俺の心を丸裸にしてくれたのは、他でもない紗季だというのに。  
 
「だっ、だからっ、そんなぁ………うぅ〜〜っ、は、はせがわさぁん………!!」  
 
救いを求めるような彼女の瞳。  
 
「好きだよ、紗季」  
「はっ、えっ………んんーっ!」  
 
その要望に答えるように、救いのキスをしてやる。  
唇が合わさった瞬間、彼女の身体がびくりと跳ねる。  
 
「ちゅ〜……れろっ、んんっ、れおっ」  
「んんー………んんんっ、は、はしぇがわさっ、んれろっ」  
 
先程までの単発のピストルのようなキスとは違う。  
舌を絡ませて、その口内を味わう、いわゆるディープキスというやつだった。  
 
彼女の柔らかな舌をねぶり回して、最後に下唇を吸ってようやく開放してやると………そこには、この数日間で見慣れてしまった、キスの気持ち良さにとろける小学六年生の女の子の図があった。  
 
「はーーーっ、はーーーっ、はーーーっ………は、しぇがわ、さ………」  
「おっと、まだまだこれからだからね……紗季。だって『真帆や智花にした以上のことをしてほしい』んだろ?  
 だったら……」  
 
もう一度念を押しておく。  
ここは体育倉庫。  
道具なら下手をすると真帆の部屋以上の物が揃っているのだ。  
 
まず───時たまぴくぴくと痙攣し、力の入らない身体から制服を剥ぎとってやる。  
 
「えっと、確かこの辺………あ、あった」  
 
下着と靴下だけになった彼女をよそ目にガサゴソと整理された箱を漁ると、その一角にお目当ての物が沢山纏めてあるスペースがあった。  
これは本来生徒自らが持参するものであり、『慧心学園初等部』とマジックで書いてあるところをみると、恐らくは忘れてしまった生徒に貸し出すためのものなんだろうけど。  
 
『それ』を一つ持ち出して、今だ脱力中の紗季を万歳の格好にさせる。  
次に、挙げられた両手を───  
 
 
 
───先生、ごめんなさい。  
 
これから、この子に小学校では絶対に教えないような運動用具の使い方を教えちゃいます。  
 
「紗季、さーきー」  
「ふ、ふぁいっ?!何でしょう長谷川さんっ!」  
 
耳元で呼びかけてやると、ようやくトリップ状態から戻ってきたのかガバッ!と起き上がり───  
 
がこん。  
 
 
「………へっ?」  
 
───起き上がれない。  
 
それはそうだろう。  
何せ今、彼女の両手は頭の上で束ねられ………誰しもが小学生の時に使ったことがあるであろう運動用具、縄跳びで縛られているのだから。  
ちなみに縛った縄跳びは、また別の縄跳びで跳び箱の隙間───持ち手の穴の部分へと結ばれている。  
 
七段重ねの木の跳び箱だ。最高学年とはいえ、女の子の力で持ち上げられるようなものじゃない。ゆすって物音をさせるくらいが精一杯だ。  
オマケにその上には何の因果か、小さめの運動用マットが五段くらい重ねてあるのだ。きっと教師が体育倉庫の掃除か何かをする時に跳び箱の上に持ちあげて、床に下ろすのを忘れたまま放置されているのだろう。  
 
仰向けという力の入りにくい姿勢。  
そこに重い木の重箱と運動用マットの重しが乗っかってしまったら、もうそれだけでどうしようもない。男の自分でさえ、この状況から抜け出せるかどうか。  
 
「はっ、長谷川さんっ?!どういうことですかこれわっ?!?!」  
 
さっきまでの甘い余韻はどこへやら。  
仰向けで縛られたまま、血相を変えてこちらを睨んでくる紗季。  
 
「うーんと、これは真帆にやったことの真似みたいなものなんだけど……」  
「真帆に……って、真帆にこんなことされてたんですかっっ!!?」  
「あれ、知らなかった?紗季のことだから、てっきり全部二人から聞いてるものだと……」  
「なっ、な………!!!」  
 
驚愕の表情と共に口をぱくぱくさせる紗季。どうやら彼女は、俺が恐れていたほどの情報通ではないらしい。  
冷静に考えてみれば、そりゃそうか。幾ら開けっ広げで能天気な真帆だって、ここまで詳細な内容を誰かに教えてしまうほど羞恥心がないわけではないだろうし。  
 
「だいじょーぶ、大丈夫だって。優しくするから」  
「は、はい……って、これ優しくするとかそんな問題じゃないような………。  
 まさかとは思いますが、これ以上変なことするつもりはない、です……よね?」  
「いや、変なことはするけどさ」  
「そっ、そこは否定して下さいよぅ……これ、されてる方はすごく怖いんですからぁ……」  
 
おや、どこかで聞いたようなやり取りだけど……まぁいいか。  
 
動揺が収まらないうちに彼女の腰辺りにまたがり、覆いかぶさる。  
その艶やかな女性の髪の毛に指を通し、弄びながら頭を撫でてやる。  
 
「さぁ………これで、この紗季の綺麗な髪も、可愛いほっぺたも、すべすべの身体も、触り放題だ………ねぇ紗季、どこから触ってほしい?」  
「しっ、質問の意味がわかりませんっ!ってゆーか長谷川さん、なんかものすごくヘンタイっぽくなってるんですけどっ……!」  
「それこそ意味がわからないよ、紗季。男っていうのはある程度こういう欲望は誰しもが持ち合わせているものなんだよ?  
 もちろん紗季だって、それを知ってて『何をされてもいい』なんて言い出したんだろう?」  
「そ、それはっっ………!」  
 
もちろん俺だってわかっている。  
意図的にこんなシチュエーションを用意してこういう発言をしちゃう紗季は、きっと知識としてはそれなりに色々とソッチ方面のことも知ってはいるのだろう。  
 
だがそれこそが落とし穴。見て眺めているのと実際にやるのとでは何事も大違いなのだ。  
最初は幼なじみに連れられて半ば無理矢理バスケをやることになり、でもいつの間にかのめり込んでいってしまった誰かさんと同じで、ね。  
 
ただ彼女の律儀な性格上、一度あそこまで断言したことを撤回することは難しいのだろう。  
それもまた紗季の可愛い一面であり、一つの落とし穴なんだよなぁ……。  
 
 
さぁ………今からそれを、大人と子供を併せ持った目の前の少女に嫌というほど教えてあげよう。  
 
「大丈夫、紗季は何もしなくていいんだ。後は俺が全部教えてあげるから、紗季は何も考えず気持ち良くなっちゃえばいいんだよ」  
 
一応補足しておくと、俺だって経験豊富だった訳じゃない。  
むしろ異性との人間づきあいというのは自分の苦手な分野だったはず。  
ただ俺のコッチ方面での経験値は、ここ数日でどエライことになっている。彼女の幼なじみでいうところの『一晩でレベル10くらい上がった』というやつだろう。  
 
「───ひゃっ」  
 
紗季が息を吸い込みそこねたような悲鳴を上げる。  
 
「紗季が触られて嬉しい場所は………どこ?」  
 
そう言いながら、うなじの毛の生え際の辺りをゆるゆると撫でてやる。  
その感触を思う存分楽しんでから、ゆっくりとその手を下降させてゆく。  
 
「ほっぺた、首筋、胸───」  
「あっ、あぁ………───」  
 
よく見ると、ブラはつけていないらしい。  
小学六年生なんだし、胸も膨らみかけているんだし、そろそろスポーツブラくらいはつけてあげてもいいんじゃないだろうか、と母親のようなことを思ってしまう。  
 
「それとも……やっぱり下の方?」  
「そ、そんなっ、はせがわさん───!」  
 
自分がまたがっている腰の辺り……おへそのやや下の方をくすぐるように撫でると、彼女の眉があからさまに歪んでいく。  
その顔は嫌悪しているというよりも、まるで恐怖に怯えている子猫のようだった。  
 
彼女ならこういった行為の最終地点を知っているはず。そこに辿り着くには、ある程度の痛みを伴うということも。  
 
「………大丈夫、『中に入れる』ようなことはしないから」  
「………っ」  
 
安心させるために、少し顔を近づけて耳元でそうささやく。  
具体的な単語は出さず、それでも意味を理解したらしく、ぴく……と跳ねて脱力する小さな身体。あぁ、もうたまらない。  
 
「───でも、『中に入れられる』よりもビックリするようなことが沢山あると思うよ」  
「や、やめてください………そうやって上げてから落とすのっ………」  
 
もはや焦りの表情を取り繕えなくなった彼女の胸元に顔を寄せる。  
まだ夏休み中で、体育館のむせかえるような暑さに耐えながら練習をした後ということもあって、紗季の身体からは少女特有の匂いと共に、少し酸っぱい汗の匂いが漂ってくる。  
 
「例えば……紗季。紗季は自分で自分の胸を弄ったことってある?」  
「あ、あるわけな──────ひいっっっ!!」  
 
再び右の手を彼女の胸へと移動させ、その頂点を人差し指でグリグリと抑えてやる。  
 
「───嘘でしょ。普段弄ったことがない子が、こんな風に敏感に反応するわけないんだから」  
「ど、どうしてそんなことが───あひっ!あうっ!!」  
「分かるよ。だって……智花と真帆はこんな反応しなかったし」  
「だ、だっ、だからって、わたしは───あっ!あっ!!あっっ!!!」  
 
もう片方の手も胸の方へと移し、先程よりも強めに両方の乳首をぐりぐりぐりぐりっと押しほぐしてやる。  
そのたびにどんどん硬さを増していく薄紅色の小さな突起。  
 
「ほらほらほら、正直に言わないと───」  
「あん!あっ!やああ!!嘘です!ウソですっ!!自分で弄ったことありますっ!いっぱい弄ってますうっ!!」  
 
許容範囲以上の快楽を押し付けられ、がくがくと身体を震わせながら真実を暴露する紗季。  
ようやく観念したことを確認し、彼女の胸から手を離す。  
 
「……最初から正直に話してりゃよかったのに。ちなみに今『いっぱい弄ってます』って言ってたけど、大体週に何回くらいのペースでこういうことしてるの?」  
「あうぅ、それは、それは………」  
 
さすがに恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてもじもじと固定された身体を身じろぎさせる。  
 
「言いにくい?」  
「あっ、当たりまっ──────スイマセン言います言います言いますっっ!!!」  
 
言いかけて……俺が両方の人差し指を彼女の右と左の乳首に近づけていくのを目撃し、首をブンブン振りながらそう訴える紗季。  
全く、最初から素直に全部話してしまえばそれで済む話なのにね。  
 
「た、たまにムズ痒いような、じんじんするような時があって………そういう時に触るのは少し痛いんですけど、でもそれが、その………」  
「気持ち良かったりするの?」  
 
言葉に詰まっていた部分を補足してあげると、顔一面をかあぁーっと羞恥の色に染めて、小さくこくんと頷く。  
 
「分かった……ありがとう。正直に話してくれて」  
「うぅ………だって、長谷川さんがぁ………」  
「え?何か言った?」  
 
もう一度、人差し指で例の場所をクリック。  
 
「ひゃんっ!!!いえなんでもないれすうっっ!!!う、うぅ〜〜〜……!!」  
 
裏返った声で自分の言い出した言葉を寸止めし、悔しそうな唸り声と共に泣きそうな目でこちらを睨んでくる。  
 
ともあれ紗季は、素直に話してくれたのだ。  
ならこっちだって、ちゃんと正直に話してやらないといけないよな。  
 
「あとね、紗季。さっきの嘘だから」  
「え?」  
 
そう。  
智花の場合はともかくとして、真帆は最初にソコをいじめた時からしっかり反応してくれていた。  
 
「だから、普段から弄ってる子は胸が敏感だって話。真帆なんか紗季よりよっぽど敏感だったよ?  
 あ、でも真帆だって自分で普段から弄ってる可能性もあるし、一概にはそう言い切れないか」  
「………っ! ということは、わたしは……………っ!!!」  
「うん。ごめんな、カマかけちゃって」  
 
これ以上ないショックと羞恥心で、紗季の表情がみるみる豹変していく。  
 
やばい。  
薄く笑ってるだけのつもりなのに、今の自分は傍から見ればこれ以上ないくらいのどや顔をしているだろう、というのが容易に想像出来る。  
 
「うーっ!うぅーーーっ!!!はっ、長谷川さんの意地悪っっ!!!なんでそんな意地悪するんですかっ!!?長谷川さんは私のことがキライなんですかっ?!?!」  
 
涙目になりながら、叫ぶような声で必死に訴えかけてくる紗季。  
 
「嫌いな訳ないだろ。何度も言ってるとおり、俺は紗季のことが大好きだよ」  
「なっ、なら何でこんな人をいたぶるようなこと───!!」  
「大好きだからこそ……普段はクールでしっかり者の紗季が、どんな一面を見せてくれるのか楽しみだし……知りたいと思うんだ」  
「知りません!知りませんっそんなこと!うぅ〜、長谷川さんのバカあっ!!」  
 
紗季が普段決して見せない、少しエッチで感情的な一面。  
これが見れただけでも今日はぐっすりと眠れそうだった。  
 
 
………えっと、ほんの数十分前まで胸の奥底に沈んでいた漬物石はどこ行ったんだろうなー。  
 
「───っと、話が逸れちゃったな。  
 あのね、紗季。紗季は色々物知りで勉強家だから、こういうこともそれなりに知ってると思うんだけど………想像と実際にされるのとでは違ってることが結構多いんだ」  
「はあっ、はあっ……え?」  
 
頬を赤らめ、泣きそうな顔で息も絶え絶えになっている彼女の貴重な表情を目に焼き付けてから、その場所へと顔を近づけていく。  
 
「例えば───……ぺろっ」  
「あううっ!!!」  
 
びくり、と跳ねて喉を反らせる。  
白くて透き通ったその首筋。しゃぶり尽くして真っ赤っかにしてやりたい。  
 
「乳首を指でこねくり回されるのと、舌で舐められるのとじゃ───また違った感覚だよね?」  
「あう、あうう………はしぇがわ、さぁん……!」  
 
眉をハの字にして目の縁に涙を溜めながら、必死に訴えてくる。  
その表情もまた愛らしく、そして淫靡なものだった。  
全く、どこもかしこもエロい娘である。年齢詐称疑惑が発生しそうなくらいに。  
 
「れろ、れろっ。どう、紗季。キモチイイ?」  
「やっ、あぅ!やめっ───ひいぃ!」  
 
舌を絡ませ、最後に唇でその突起物に優しく口付けをしてやる。  
不自由な体勢で一生懸命跳ねまわるその様は、まさしく数日前の真帆そのものだった。  
 
「でもここまでは真帆にもやったことだし、それ以上のこととなると………どうすればいいかな、紗季?」  
「ひ、ひぃ………か、勘弁してくださいっ、長谷川さんっ………!」  
 
予想を遥かに超えた快楽の大波にもまれ、許しを乞いながら小さな身体を震わせている姿───なんか、ヘンな癖がついてしまいそうです。  
 
 
まぁそれはそれとして。  
紗季に頼まれたことは、『真帆や智花にした以上のことをしてほしい』だったはず。  
 
今までは真帆にやったこと。なら今度は………智花を超えていく番か。  
それを思った瞬間、一つの疑問と同時に次のやるべきことが見えてきた。  
 
身体を起こして、膝立ちになる位置を少し下にずらし───彼女のふくらはぎ辺りにまで移動する。  
 
「じゃあ、今度は下の方に行ってみようか」  
「ひっ───?!」  
 
その言葉と同時に、彼女の膝を折り曲げて、身体の中心にある小さな衣服………すなわち紗季の下着を取り剥がしにかかる。  
 
「やっ、やめ!やめてください長谷川さんっ!!!そこは、そこだけはっっ!!!」  
「ちょ、こら紗季!いきなり暴れちゃ、ぶわっ!」  
 
泣きそうな声で叫びながら、息を吹き返した魚のように跳ねまわり、足をじたばたさせる紗季。  
その足が俺の顔面すれすれを通り過ぎたのを見て、こちらも実力行使に出ることにした。  
 
一本ずつその足を封じ込め、片手で抱えこんでから空いた手でゆっくりと下着をずらし、足から外していく。  
 
「いや、いやああっ!!本当に、そこだけはぁっ!見ないで、見ないでくださいぃっ!!!」  
 
そこからは簡単だ。  
内ももをギュッと閉めたままの体勢なんてそう力の込められるものじゃないし、女子小学生と男子高校生の力の差というものもある。  
もう一度足だけ三角座りをさせてから、ゆっくりと、でも確実に、観音開きの扉を開けるようにして、彼女の閉じられた足を開いていく。  
 
「………そっか、なるほど」  
 
そこにあった光景を見て、確かに自分もそうだったなぁ………というのを思い出す。  
 
「いやあああああっっ!!!」  
 
普段の、大人のような素振りと落ち着いた受けごたえ。  
その実、紗季はまだ小学六年生。身体つきはどちらかというと子供の部類に入る。  
 
だけど、彼女がしきりに隠していた………いわゆる、女性の割れ目の上部分。  
ほんの僅かとはいえ、数えられそうなくらいの若い茂みがそこには存在したのだ。  
 
 
数年前。  
誰かと一緒にお風呂に入ることにとてつもない嫌悪感を覚えていて、同性に見られるのも恥ずかしく、見られるくらいなら死んでやる……くらいに思っていた時期があった。  
 
数年後もそれが違った形でトラウマの一つになっていようとは、全く想像していなかったが。  
 
 
彼女だって肩書きは小学生だが、少しずつ………階段を一段一段登るように、着実に大人の女性へと近づいているのだ。  
 
「ひくっ、ぐすっ……みないでっ、みないでくださいっ………!」  
 
見られた本人はと言うと、とうとう顔を伏せて泣き出してしまった。。  
あれだけ力が込められていた足から、いつの間にか力が抜けている。  
理由は違えど、自分と同じ部分で心を痛めているその姿を見て、チクリと心が痛むのを感じた。  
 
「……………大丈夫だよ、紗季」  
 
ならばせめて、目の前で泣いている彼女くらいは、そのトラウマから救ってやりたい。  
 
 
 
………え、お前の場合はともかく、紗季がいま心を痛めて泣いてるのは誰のせいだと思ってるんだこんにゃろーって?  
そんなの知らないです。見ざる言わざる聞かざるです。ネタが古過ぎるっちゅーねん。  
 
「誰にだってあることなんだから、そんなに気にしなくていいんだ………紗季のココ、凄く綺麗だし、可愛いんだから」  
「ひぐっ、きっ……綺麗だし、可愛い、って、っく、おかしく、ないですかっ……?」  
 
肩を震わせながら、必死に顔をうつむかせて自分の鎖骨付近に涙を落とす紗季。  
 
「おかしい……と言われても。素直にそう思って言ってるんだし、紗季を喜ばせてあげたいって気持ちに変わりはないんだけど」  
「っく、ひっく………ほんとう、ですか………?」  
 
ようやくこちらを向いて、涙に濡れた瞳を見せてくれる。  
こんなことを本人に言うと怒られるだろうけど……涙で顔をしとどに濡らしている紗季も中々美しく、見応えのあるものだった。  
 
「当たり前だろ。さっきみたいな冗談ならともかく、今みたいな状況で嘘なんかつけないって」  
「ひっく、さっきのも、相当ひどかった、と、っく、思いますけどっ……」  
「ごめん、ごめんって。紗季は頭がいいし、色々知ってそうだったから、まさかあんな嘘に引っかかるなんて思わなくって……」  
 
半分本当で、半分は嘘。  
紗季が本当は歳相応の女の子だということは分かっていた。ただ、その歳相応な部分をはっきりと引き出された場面を見てみたい……という、自分の欲望を満たそうとする思いも確かにあったわけで。  
 
弁解の言葉を述べると、紗季はずっとしかめっ放しだった眉をふにゃっと脱力させ、急に弱々しい表情を見せた。  
 
「っく、私だって、まだ小学生なんですっ。長谷川さんみたいに、そんなえっちなこと、っく、何でも知ってるわけじゃないんですっ!」  
「………そうだよな。ごめん、紗季」  
 
俺はポケットの中に入れていたハンカチを取り出すと、彼女のくしゃくしゃになった顔を拭いてやる。  
 
 
さっきまで大人だと思ったのに、ふとしたきっかけで子供に戻る。  
この落差を感じる瞬間に、凄まじい愛しさを感じてしまう。  
 
大人なようで、実は子供。  
しっかりしているようで、少し抜けている所があったり。  
 
紗季の持つこのギャップは、何だかんだで彼女の大きな魅力の一つに違いない。  
 
「じゃあ………お詫びの意味も込めて、っと」  
「ひゃっ?!」  
 
改めて紗季の足を膝立ちの体勢から広げてやると、次に責めるべき場所へと顔を近づけていく。  
 
「は、長谷川さんっ………う、嘘ですよね? ま、まさか……」  
 
うん、彼女も『こういうことをする』というのは、知識としては知っているらしい。  
 
目の前には紗季の綺麗な割れ目部分がある。距離にして二十センチも離れていないだろう。  
むしろこの体勢から他にどんなことをするというのか。  
 
「───これは、智花にやったことのマネ………なんだけど」  
 
そう言い残してから、他の誰にも触れられたことのない乙女のクレバスに唇を落とした。  
 
「───ひゃああんっ!!?」  
 
それは驚きによる悲鳴なのか、それとも快楽からくる喘ぎ声なのか。  
一体本人がどういう風に感じているのか定かではないが……ともかく俺に課せられた使命は、この行為を続けることだ。  
 
「やっ!ちょっ!はせがわさっ───んあっ!?」  
 
次々と硬い地面をほぐすように、その割れ目にキスを落としていく。  
うーーーん、驚き半分、でも快楽も半分、という感じに見えなくもないんだけど………。  
 
そんなことを考えながら、俺は舌を少し尖らせて───彼女の割れ目の中の方に探りを入れてみることにした。  
 
「ちゅ……れろれろっ、れろぉーっ」  
「あっ!そんな!ナカは、やああぁっ!」  
 
再び身体をくねらせて悶え始める紗季の身体。  
 
「───ぷあっ。なぁ紗季、これはどう?気持ち良かった?」  
「あひっ……そ、そんなっ、私だって、知らな───」  
 
顔を上げて彼女に尋ねてみれば、返ってきたのはいつも通りの強がりの言葉。  
彼女の持つアイデンティティというか、他人には知られたくない領域というのは相当のものらしく、今だに条件反射のように否定の言葉が返ってくる。  
 
「ふーん………『本当に?』」  
「う、うぅ〜っ………!」  
 
ただ、俺はそれに対する解決策を既に打ち出している。  
先程まで半分脅しのように彼女を責めていたのがここにきて効果を発揮したようで、意味ありげに疑問形で言葉を投げかけると、胸をいじめられた記憶が彼女を苛みだす。  
頭の良い彼女のことだ。きっと『素直に話さなければ、余計にいじめられてしまう』という風にインプットされてしまっているのだろう。  
 
………まぁ実際、それは正解なんだけどね。  
 
「そーかそーか、本当に何も感じないのか。じゃあ今度は───」  
 
仕方ないので次のカードを切ろうとした、その時。  
 
「きっ………きっ、気持ち良いですっっっ!!」  
 
狭い体育倉庫内に、紗季のヤケクソ気味な声が響き渡った。  
 
「………よかった。紗季の本音が聞けて嬉しいよ」  
「うーーーっ!!!長谷川さんのバカぁ………!」  
 
何だか自分がものすごくイヤラシイ人間になっている気がするけど、まぁ気にしない。  
涙目になっている紗季さんも中々可愛いもんだぜ?  
 
「じゃあもっと可愛がってあげるからね」  
「………はっ?」  
 
そう言い残すと、ポジションを紗季の股下に戻す。  
彼女の足は既にほとんど脱力していて、今となっては防御の役目をほとんど果たしていない。  
 
ということで、今度こそ紗季のソコに全力を注ぐことが出来る。  
股を割り、顔をソコにひっついてしまいそうなくらいに近づけて、舌を割れ目の下のあたりに配置。  
その位置から割れ目に舌を突っ込んで、一気に上へとすくい上げる!  
 
「ひゃあああああああっっっ!!!!!」  
 
びくびくーっと二度痙攣し、がくんと崩れ落ちる。  
もちろんこんな経験はしたことがないのだろう。強いていうならば、これは勉強家であり、色んな意味で好奇心旺盛な紗季にまだ見ぬ経験を教え込んでやるという、一つの授業みたいなものだ。  
 
 
………ゴメンナサイ。この理由付けはさすがに無理がありすぎでした。  
 
紗季の顔を一瞥すると、はーはーと荒い息を吐きながら虚ろな目をしている。  
きっと意識の方も、虚ろなままに違いない。  
 
───うん、聞くなら今かもしれないな。  
 
「大丈夫、紗季……そんなに気持ち良かったの?」  
「はぁ、はぁ………ふぁ、はい………」  
「そうか、よかった。自分でするよりも気持ち良かった?」  
「はぁ、はいぃ……きもちよかった、れす……」  
 
致命的な発言をしてしまったことにも気付かず、紗季は今だ夢現の中。  
 
「───ふぅん、紗季は『自分でもこういうことする』んだね」  
 
はー、はー、はー。  
はー、はー。  
 
 
………はぁーっ。  
 
「………あ」  
 
息が整い終わってから、ゆっくりと俺の発した言葉の意味を理解する。  
 
またしても秋の紅葉のごとく色づき、変わりゆく紗季の表情。  
またしてもしたり顔でニヤニヤと気持ち悪い笑みを見せる俺。  
 
「そーか、自分で弄ってるのは胸だけじゃなかったってことだよな。紗季って見かけによらず、結構エッチなんだなー」  
「くうぅーっ、それは、それはあぁ……!あぅう………っ!!」  
 
また泣きそうな顔で唸る紗季さん。まじ可愛いです。  
ともあれ、二回目のカマかけ成功。そして、抱いていた疑問も解消できた。  
 
 
胸を責めていた時に感じた疑問。  
それは、胸だけじゃなく下腹部の方だって自分で慰めていることがあるんじゃないか……ということだった。  
 
彼女は真帆や智花に比べてこういう知識が豊富な一方で、それだけ性に対して強い興味があるのではないか。  
どこぞの保健室の先生ではないが、それが紗季を見ていて思った素直な疑問であり、感想だったのだ。  
 
「で、どんな風にしているの?まずは胸?それともコッチが先?」  
 
そう言って、少し潤いを帯び始めたソコをちょんっとつつく。  
 
「ひうっ!そんな恥ずかしいこと、言えませんっ!!」  
 
うーん………強情だ。追い詰められて頭が回らなくなってきてる、というのもあるかもしれないけれど。  
というよりも、これは紗季の一つのクセみたいなものかもしれない。  
 
「───……そうなんだ」  
 
ならこちらも、ひたすら荒療治で立ち向かってやろうじゃないか。  
 
「さっさと全部さらけ出しちゃえば、話は早いんだけどなぁ」  
 
俺の発言と共に、空気が急激に冷えていく。  
それを紗季はいち早く察知したらしく、  
 
「だっ!!! だってこんなこと話したって、何の意味も───!!!」  
 
必死に話術での抵抗を試みるが、  
 
「───えいっ」  
 
彼女の割れ目の上部分に、右手の親指をかざす。  
 
 
───捉えた。  
女性でもっとも敏感だと言われている、割れ目の上部分にある小さな突起物。  
 
「───あっっっ!! ああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっ!!!」  
 
甲高い悲鳴と同時に、数滴ではあるが透明な液体がぴゅっと出てくる。  
 
ここ数日で積み重ねられた経験は嘘をつかない。  
いつの間にか包皮の上からでも、その敏感な部分をダイレクトに捉えることが出来るようになったらしい。何このムダなテクニシャン。  
 
「あっ、あっ、は、せがわさぁっっ………!!」  
「……どうする?次は………じゃあココを、ずーっと舐めといてあげる。紗季が気持ち良さで頭がヘンになっちゃいそうなくらいに。  
 乳首を舐められた時、指で触られた時の何倍も気持ち良かったの……覚えてるよね?紗季がおかしくなって、ヘンになっちゃっても、ずーっとずーっと舐め続けてあげるから」  
 
自分の選択次第では味わうことになるかもしれない快楽を想像したのか、一度がくんっ!と大きく跳ねる紗季の身体。  
 
「それでも話してくれないんだったら、今度はこのお豆さんにキスをして、優しく吸ったり舐めたりしながら割れ目を指でずーっと撫でてあげる。  
 そして………最後に紗季は、どうなっちゃうんだろうね?」  
「───あっ!ひゃあっ!はきゅっ!?」  
 
衝撃を隠せない、愕然とした紗季の瞳。  
そんな紗季のクリトリスに置かれた親指を、再びぐりぐりと押し付ける。  
びくんびくんと身体を何かで撃ち抜かれているかのように跳ね回る少女の身体。  
 
「やっ!あぁあ!!ほんとうに、やめへっ……かんべんしてくりゃさいぃっ、はしぇがわさっ………!!」  
「え?ごめん、聞こえないよ紗季」  
 
いつもとは違う、力のない目で懇願してくる紗季。  
普段は決して見せない……逆に言えばこういう時にだけ見せてくれる、弱々しくて頼りない姿。  
 
………うーん、なんか楽しくなってきちゃったな。  
 
もう一度、彼女の様子を窺う。  
あと一押しもすれば、簡単に絶頂してしまいそうなくらいにとろけきっている。  
 
 
───でも、ここからだ。  
智花にしたことの再現。それは彼女のソコを舐めることではない。  
 
……ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりっ!  
 
「あっ!やああぁ!ひゃう!らめ!いく!いっちゃう!いっひゃいまひゅううぅっ!!!」  
 
クリトリスに押し付けていた指を、一際早く動かしてやる。  
淫靡な言葉と共に、一際大きく身体を震わせる。  
彼女の中の快楽が、弾けて全てを支配しようとした、その一歩手前。  
 
「───はいっ。これでいい、紗季?」  
「あっ!あぁ……………えっ?」  
 
自分の中で高まっていたものが急に姿を消してしまい、何が何だかわからないといった表情をする紗季。  
 
「だから、やめてほしいって言ってたよね。………どう?やめてあげたんだけど、少し楽になった?」  
「そ、それは───」  
 
思った通り、少し複雑そうな顔になる。  
それはそうだろう。あそこまで高まった快楽ならいっそ弾けさせてほしいと誰もが思うはずだ。  
 
「うーん、やっぱりやめてほしくなかった?」  
 
そう言って、再び彼女の敏感な豆に右手親指をセット。  
 
「ああああっ!!はっ!あっ!はしぇがわさん、ああっー!い、イク───」  
 
彼女が身を震わせ、絶頂へと至るまたしても一歩手前。  
 
「───それとも、やっぱりやめてほしい?」  
 
パッと手を離して、彼女の身体から快楽を奪っていってしまう。  
 
「う………うぅ、うぅううー!は、はせがわさぁん………!!」  
 
ここにきてようやく紗季も俺の行為の意図に気付いたらしく、恨めしそうな目でこちらを見てくる。  
快楽を与えられ、焦らされ続けて、決して登りつめることは出来ないもどかしさ。オマケに腕は拘束され、自分で慰めることも出来ない。  
 
「ダメだよ紗季。智花はもう少し我慢してくれてたんだから、せめてあと五分、いや十分くらいは───」  
「じ、じゅっぷん……!?無理ぃ、ムリですっ………!!おねがいですから、はやく、イカしてくりゃさっ………!!」  
 
ついには泣きそうな顔で懇願を始める紗季。  
びくびくと止まらない身体の痙攣。登りつめる時の女性というものは、大体おんなじような反応をするらしい。  
 
ただ、紗季の場合は他の二人と少し違う。  
 
「うん、それはいいけどさ───」  
 
今度はその点について、本人に聞いてみることにしよう。  
 
「───『イク』なんて言葉、紗季はどこで覚えたの?」  
 
彼女の顔が凍りつく。  
 
そう、真帆だって智花だって、こんな知識持ってるわけない。  
身内の色気づいた中学生や高校生がいわゆるエロビデオ的なものを見ていて、それの知識を小耳に挟んだりとか。  
そんなことでもない限り───彼女の年齢でこんな言葉を知っていて、しかもちゃんと意味を正しく理解し、正しく使うことが出来るなんてあり得ないのだ。  
 
「それを教えてくれるまで………絶対にイカせてはあげないよ?」  
 
ということは………彼女の好奇心は、一体どこからその情報を仕入れているのか。  
紗季の有り余るコッチ方面への才能に思いを馳せながら、先程よりも固く勃起してきたその秘豆を刺激し始めた。  
 
「や、やあっ!!そんな、ひょんなこと、言えうわけなっ───」  
「じゃあいいよ。二時間だって三時間だって付き合ってあげるからね………紗季」  
「いっ!ああっ!ひゃああっ!!!もぉいやあぁあーーーっ!!!」  
 
また手を離す。  
 
「しょうがないなー。じゃあ今度は……」  
「あっ、あっ、あ………」  
 
三度絶頂の手前まで押しやられたことにより、がく、がく、がく、と痙攣しているその身体。  
今度は割れ目のある丘のあたりに顔を近づけ、舌をぬるーりぬるーりとゆったりとした速度で動かしてゆく。  
 
「あ、あうっ……くすぐった、やんっ!」  
 
割れ目の周りをくすぐっていたかと思うと、たまに割れ目の中に舌が入ってくる。  
先程に比べれば弱い刺激。ただ、焦らされているという感覚はより強くなっているのかもしれない。  
 
酸っぱいような匂いと味を堪能しながら、彼女の中に鬱憤をどんどん詰め込んでゆく。  
 
「やあ、あう!ひゃんっ!い、いく………」  
 
四回。  
 
「あ、あああっ!いぁうっ!イっ………!!」  
 
五回。  
 
「おねが、イカせっ、あ、あぁあーーー!いっ、あぁあ……!!!」  
 
六回。  
 
「あぁっ!あぁあっ!イク!だめ!へんになっひゃう!イっ……あぁ、あぁあ……!」  
 
絶頂の手前まで追いやられること、これで七回目。  
 
「………なぁ紗季。さすがにもう、限界なんじゃないか?イキたくてイキたくてたまらないだろ?」  
 
彼女の割れ目の上部にある、少しだけ生えている陰毛の部分を舌でくすぐってやりながら問いかける。  
 
「う、うぅう……あっ、あ……!」  
 
ふと紗季の顔を見ると、目の両端から快楽の涙を流しながら、おぼろげな視点を虚空に向けている。  
 
「紗季?さーきー?」  
 
言いながら、少しだけ包皮から顔を出した豆の部分をちゅっと吸ってやる。  
 
「───っひゃあああんっ!!!」  
 
がくがくと震え、しかし絶頂には至れない。  
そんな彼女にまたがって、その虚ろな顔をしている頬に手をやる。  
 
「教えてよ、紗季。紗季の良いところも恥ずかしいところも全部、知りたいんだ。  
 大丈夫………紗季がどんなことをしてたって、全て受け止めてあげるから」  
 
そう言い残して、彼女の唇に想いを重ねる。  
 
「んっ、ん………はぁ、さきっ」  
「んっ、ぷあっ、はしぇがわ、さっ……」  
 
唇を離す。  
二人を繋ぐ唾液の糸が唇同士を繋いで、やがてぷつりと切れた。  
 
「い………いえの、ぱひょこんれっ、インターネットれっ……その、動画とかを、見へはらっ……」  
「うん、うん」  
 
おぼろげな目で必死になって語りかけてくる紗季にあわせて、ゆっくりと相槌を打ってやる。  
 
「たまたま、そういう動画を、見つけっ……それはらっ、それを見ながら、じぶんでひてたりとかっ……」  
「うん……そうなんだ」  
 
動けない彼女の顔の後ろに手をやり、そのまま引き寄せる。  
そして、紗季の綺麗なおデコに自分の額をコツンと重ねる。  
 
「………ありがとう。ゴメンな、意地悪しちゃって」  
「はっ、はひぇがわ、はんっ……!」  
 
彼女の目尻から、はらり、と一筋の涙。  
 
「んっ───れろ、れるっ、れろっ」  
「あっ───ふあ、あっ、あぁんっ」  
 
キス。  
舌を絡め、想いを重ね合いながら、おもむろに彼女の胸に手をやる。  
さっき触った時とは違う。痛いくらいにビンビンに立ち上がった乳首を、くりくりと揉みながら。  
 
「あぁ、あああっ!はひぇがわふぁんっ、そこ、ああっ!」  
 
更にもう片方の手を、先程まで散々焦らしていたソコへとやる。  
 
「あ───ああぁあっ!!!もぉ、もおっ………!!!」  
 
親指を尖りきった豆の部分に、  
とろけきったその割れ目へ、中指と薬指を突っ込んでかき回してやる。  
 
「やぁあああっ!!!イク、イク、イク───!!!」  
 
そしてトドメの言葉。  
 
「───うん。イッちゃえ、紗季」  
 
くりくりくりっ!  
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ!  
 
「あ!あっ!ああっ!!ひやあぁああーーーーーーーーーーーーーーっっっっっ!!!!!!!!」  
 
紗季の背中が限界まで反り上がる。  
 
絶頂。  
中に入れた指が、痛いくらいに締め付けられる。  
 
「あはっ、ああっ、ああ!ああっ!」  
 
がく!がく!がく!がく!と震え、締め付けてくるのに負けないように、必死に指を動かす。  
 
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ!  
 
「あっ、あっ、あぁ………」  
 
三十秒はそうしていただろうか。  
やっと紗季の身体が地面に落ちたのを確認すると、涙とよだれでぐちゃぐちゃになったその顔に向き合い、  
 
「───大好きだよ、紗季」  
 
ちゅっとキスを落として、それを最後に彼女は意識を失った。  
 
 
 
 
※  
 
 
 
 
「………長谷川さんのバカ。えっち。変態。すけべ。最低」  
「あはは……………ごめんなさい」  
 
耳元から聞こえてくる、罵言雑言の数々。  
 
暑さも少し和らぎ、夕焼け空と爽やかな夏風が今日の疲れを少しだけ癒してくれる。  
俺はというと、紗季を背中におぶさって彼女の自宅であるお好み焼き屋『なが塚』への帰路を辿っているところだった。  
 
 
あれから………紗季が気を失って、気付けば下校時刻ギリギリになっていた。  
急いで体育倉庫を立ち去ろうとしたが、紗季が一向に目を覚まさない。  
あまりに無反応なので死んでしまったかとヒヤヒヤしたが、規則正しい寝息を立てていてとりあえず一安心。  
 
彼女の腕を拘束していた縄跳び二本を外し、結び直して元の場所へと戻す。  
まさか全裸のまま帰らせるわけにはいかないので、俺が服を着せてあげたんだけど……小さい女の子がよくやっている、着せ替え人形で遊んでいるような気分だった。  
 
ましてやそのモデルとなっているのは、端正な顔立ちと長くて綺麗な川のせせらぎのような髪を持つ彼女だ。  
その美しいモデルに服を着せているワクワク感と達成感といったら………  
 
 
……いや、さすがにソッチ方面には目覚めてないと思うんだけど。  
 
準備万端でさぁ立ち去ろう、と思いきや、よく見れば床には行為によって出来てしまった色んな液体が散乱していて、急いで倉庫内にかけてあった雑巾で拭き、また洗って干し直しておいた。  
行為が終わって数十分が経過しようとしていたが、紗季の方は依然としてすーすーとこちらまで眠くなりそうな寝息を立て続けている。  
 
もちろん無理やり起こすことも出来たんだろうけど………これだけ気持ちの良い寝方をしてしまっている相手を起こすのも悪い気がしたので、結局家までおぶってやることにしたのだ。  
幸い今日は諸事情で(というか、智花の突然の襲撃により)朝練はサボってしまい、練習の方もほとんどコーチせずにいたため体力的には十分残っている。  
 
「………なぁ紗季、そろそろ立てそうか?」  
「えっと……はい、多分大丈夫かと思います」  
 
紗季が目を覚ましたのは、学校から出て五分ほど歩いた頃だった。  
 
最初は羞恥心からか慌てて俺の背中から降りようとし、地面に足を着けたのだが………そのままかくんと膝から崩れ落ち、また座り込んでしまった。  
何度も立ち上がろうとするのだけれど、どうしても起き上がれない。いわゆる『腰が抜けてしまった』というやつだろう。  
 
「………うふふっ」  
 
『大丈夫』という言葉とは裏腹にしっかり足を絡め、俺の背中に体重を預けてくる紗季。  
 
「あの……紗季?」  
「ダメです。絶対に降りませんからねっ」  
 
宣言して、ニコッと半分いたずらっ子のような笑みを返してくる。  
 
「前にひなが言ってたんです………長谷川さんの背中は、あったかくて落ち着くんだって。それを聞いてからずーっと思ってたんです。私も長谷川さんにおんぶされてみたいなーって」  
 
耳元で聞こえてくる彼女のややトーンの低い声。  
何だかそれがくすぐったい。  
 
「……長谷川さんの背中、すごく気に入っちゃいました。家に着くまで、何があっても降りません」  
 
ふふっと微笑みながら、どこかで聞いたようなセリフを言ってますますキツく抱きついてくる。  
 
「………はぁ、分かったよ。そもそもこうなったのも俺が色々ムチャしすぎたせいだしな」  
「全くです。長谷川さんがまさかこんなヘンタイだったなんて、思ってもいませんでした」  
「うっ………紗季、シラフの時に真面目な声で言われると、さすがにダメージがキツいんだけど……」  
「真面目も真面目、おー真面目、です。長谷川さんの方こそ、もう少し自重して下さいねっ」  
「うぅ……はい、スイマセンでした……」  
 
言われて、あの時の自分の取った行動を思い出す。  
 
………我ながら、スゴイことしちゃったよなぁ………。  
 
 
思い返しただけでも冷や汗モノだ。よく誰も体育倉庫に入って来なかったなぁと思う。  
もし誰かに見つかっていたら、それだけで間違いなく警察沙汰だったに違いない。  
 
───同時に、浮かび上がるもう一つの情景。  
 
「……でも紗季だって、すっごく可愛かったよな」  
 
誰しもが紗季のあんなにも乱れた姿を見れるわけではない。  
そんな紗季の姿を知っているというだけでも、よく分からない優越感に浸ってしまう。  
 
「───それに、すごくエッチだった」  
 
小さな身体に秘められていた、想像を遥かに超える紗季の女性としてのポテンシャル。  
改めて彼女の多方面に渡る才能を実感してしまった。  
 
その言葉は、優越感と満足感によって吐き出された正直な感想だ。  
 
「───ぐあっ!!!」  
 
途端、首と腰に絡みついている腕が凄い力で締め付けられる。  
 
「だっ、だって長谷川さんがあんなことするからっ!あぁあ……!!もう、私ったら長谷川さんになんてはしたない姿をぉお……!!!」  
「ぐえ!ぎぶ、ギブだって!紗季!お願いだから落ち着いてっ!!」  
 
ほんの数十分前のことを思い出したのか、抱き枕に顔を寄せてぐりぐりするみたいにして錯乱を始める紗季。  
腰の方はまだしも、頸動脈までロックされたんじゃ溜まったもんじゃない。このままの体勢を数分もキープされれば間違いなく俺はあの世行きだ。  
 
「あぁ、私ったら、私ったら……あ、あぁあっ!!?」  
「───ぷはあっ!はあっ、はあっ……!!」  
「す、スイマセン長谷川さんっ!大丈夫ですかっ!?」  
 
意識を失って紗季をおんぶしたまま倒れそうになる寸前、何とか正気を取り戻してくれたみたいだ。  
 
むしろこのままあの世に行ってしまっても良かったのかもしれない。  
あれだけのことをして、オマケにその相手に首を締められながら死ねるなんて、ある意味誰も文句のつけようがない、恵まれた死に様だろう。  
 
………あぁ、どんどん俺の思考回路がおかしくなってる気がする。  
 
「……でも長谷川さんは、これから大変ですね」  
 
夕闇を見つめながら、感慨深げにそう呟く紗季。  
 
「───何の話?」  
 
言ってる意味が分からない、ということじゃない。  
心当たりが多すぎて、一体どれを指しての言葉なのかが分からないという意味だ。  
 
世間体。立場。小学生相手に三股をかけてしまったという訳の分からない状況。教え子の部屋で、自分の家で、果ては学校の体育倉庫で行為に及んでしまったという事実。  
これからのバスケ部をどうしていくか。どうやってこの件に決着を付けるのか。  
 
………ははは。もう頭痛を通り越して笑いしか出てこねー。  
 
 
だが、紗季が教えてくれた答えは、そのどれとも違う………遙か斜め上を行った回答だった。  
 
「だって、長谷川さんにはまだ、想いを受け止めてあげないといけない相手が二人いるじゃないですか」  
 
……。  
 
…………。  
 
意味が分からない。  
 
「………えーっと、真帆と智花のこと?それならもう───」  
「違いますよ。私と真帆とトモの他にもいるじゃないですか」  
 
え………?  
 
ま………さ、か……。  
 
「───あっ、今のは忘れて下さい。一応本人が伝えなくちゃいけないというのが、私たちの中での決まりなので」  
 
は、は、は。  
ということは、もしかしなくても、愛莉や、ひなたちゃん、も………。  
 
てゆーか紗季さん。今のを、忘れろってか。  
無理難題にも程があるぜ………。  
 
 
 
その後、紗季をおぶったままでお好み焼き屋『なが塚』まで紗季を送り届け、練習で疲れて動けなくなった紗季をここまで運んできた旨をご両親に伝えると、なんとお好み焼きをご馳走になってしまった。  
 
その日は珍しいことにお客さんが少なめで、紗季の両親は今がチャンスとばかりに食事中の俺に向かって質問の嵐を向けてくる。  
すっかり盛り上がってしまって、店の門に『閉店』の看板をかけようとする紗季のお母さんを、たまたま一階に降りてきていた紗季が必死で食い止めていたり。  
普段はあの子はどんな風なのか、昔はこんなことがあったとかそんな風に話し込んでしまい、気がつけばとっぷり夜が更けていた。  
 
早く帰る筈だったのに、こんな時間になってしまったのは完璧に俺の誤算だった。  
紗季と両親が心配してくれる一方、お好み焼きをご馳走になって、車で送ってもらうわけにもいかない。  
『大丈夫だから』と念を押して、颯爽と立ち去ったまではよかった。  
 
そこではた、と何かが俺の手荷物から抜けていることに気づく。  
決して小さくない、喪失感にも似た違和感。  
 
「………俺、学校に自転車置きっぱなしじゃん」  
 
結局ミホ姉を召喚し、車で送り届けてもらうことになったのでした。  
 
ミホ姉に、教え子の家にこんな時間まで………と、いつものように些細なことでロリコン疑惑をかけられ、それを必死に否定するというお馴染みの車内の会話。  
その否定の言葉に少し自信が無くなってきたのは、気のせいだと思う。きっとそうに違いない。  
 
 
 
……………そう思わせて下さい。後生ですから。  
 
 

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