「ふう……」  
 目の前に浮かぶ、島が2つ。その周りから出る気泡が、ぷくぷくと水面に膨らみを生み出している。  
「んん……、ぷはっ……!」  
 先に俺に顔を見せる結果となったのはかげつちゃん。濡れて額に張り付いた前髪を、手でかき上げている。その仕草が、なんとなく艶っぽく見えてしまうのは贔屓目に見すぎだろうか。  
「おー。ひなの勝ち。おにーちゃん、ほめて?」  
 それから間もなく、ひなたちゃんが湯船から顔を出した。彼女は動物みたいに頭を振るわせて水を飛ばしている。  
「あはは、よく頑張りました」  
 ぴったりと背中を密着させてくる彼女にドキドキしながらも、俺は水中我慢比べの勝者を称えた。いまはまだ理性を保てているけど、この体勢はかなりまずいんじゃないか。  
 少し目を向ければ、愛しい少女2人の裸体がすぐそこにある。さらに俺はタオルを巻いているとはいえ、ひなたちゃんのやわらかいお尻が時折刺激を与えるように動いてくるため、股間が反応しないようにするのはもはや苦行の如しだ。  
 そもそもなぜこんな四面楚歌のような状態に陥っているのかというと、本日彼女たちの両親はどちらも急な出張で家を空けているらしい。そういう訳もあって、あの時以来のお泊り会が開催されたのである。  
 俺にとっては、少しでも長く2人と同じ時間を過ごせるというのはありがたいことだ。といっても、この状況は刺激があまりにも強すぎるのだが。  
「……おにーちゃん。ひな、ごほうびにちゅーしてほしい」  
「あっ……」  
 ひなたちゃんは本当に、俺を誘惑する天才なのだと思える。デートの帰りにはぐらかして以来、しばしばキスをねだられてはいるのだが、まだ行為にいたったことはない。  
 本心では、俺だってしてみたいと思うことはある。それでも踏みとどまっているのは、それを最後の境界線と位置づけているからだ。  
 それを飛び越えてしまえば、俺は自分の欲望を叶えるために彼女たちを傷つけてしまうのではないか。情けない話しだけど、そんな風な恐れさえ生まれてしまっていた。  
 でも、俺が煮え切らない態度をとるたびに、ひなたちゃんとかげつちゃんは寂しそうにしていた。もうそろそろ、踏ん切りをつけなくてはいけない時期にさしかかっているのかもしれない。  
 
「ひなたちゃん、かげつちゃん。俺のすることで嫌だと思うことがあったら、ちゃんと言ってくれる?」  
「おー? ひな、おにーちゃんとならだいじょうぶだよ」  
「は、長谷川コーチとなら、エ、エッチなことでも少しくらいなら頑張れますから……」  
 ふ、2人してなんてことを言うのか、この小学生姉妹は……。信頼してくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと心配になってしまうレベルの素直さだ。  
「ほんとに言ってくれなきゃだめだよ? 俺だって一応男なんだから」  
「ひな、おおかみさんのおにーちゃんにたべられちゃう?」  
 そんなに可愛く迫られたら、俺が逆にひなたちゃんに骨抜きにされてしまうだろう。彼女の方はもう、準備万端みたいで。  
「そ、それじゃ、ひなたちゃん」  
 生唾を嚥下し、期待にきらめくひなたちゃんの頬に手を当てて顔を寄せていく。こんな緊張、バスケの試合でもなかなか味わうことができないだろう。  
「おにーちゃん……」  
 俺の動きに合わせるように、自然とひなたちゃんの目が閉じられた。顔が近づいていくにつれて、微妙な息遣いさえ感じるようになる。  
「いくよ……。んん……」  
「あむ……、ちゅう……」  
 なんていうかひなたちゃんの唇が、すごく甘く感じられる。ついばむ動きを繰り返していると、脳がとろけてしまいそうなくらい気持ちいい。正直、ここまでのものとは考えてもみなかった。  
「ちゅっ…………。はあ……、ひなたちゃ……ん……」  
「もっと、おにーちゃん……」  
 ひなたちゃんも同じことを思っているのだろうか。積極的なキスは、止まることを知らなかった。いままでしてあげられなかった分を取り戻すように、俺は彼女の唇をむさぼり続けた。  
「姉様、長谷川コーチ、すごいです……」  
「ちゅ……、ひなたちゃん、1回ストップ」  
「おー。かげに、こうたい?」  
「うん、かげつちゃん、おいで」  
 ひなたちゃんに代わって、かげつちゃんと対面する格好になる。あんまり裸をじろじろ見るのは失礼だけど、かげつちゃんはひなたちゃんに比べてスレンダーな美しさがある。  
 その今後の成長が楽しみな身体を抱き寄せ、肩に手を置く。  
 
「わ、わたしも姉様のようになってしまうんでしょうか……?」  
 かげつちゃんの瞳が揺れている。ひなたちゃんのように、キスをすることに没頭してしまうのを心配しているみたいだ。  
「ふふ。夢中になったかげつちゃんも、見てみたいかも」  
「いじわるです……、長谷川コーチ。んんっ……!?」  
 予告なしのキスに驚きを表しながらもかげつちゃんは受け入れてくれる。小学生の柔らかな唇の感触が、俺にいっそうの興奮を与えてくれる。  
「ちゅ……、ちゅ……っ」  
「はあっ……、かげつちゃん……」  
 立て続けに小学生2人のファーストキスを奪ったことによる背徳感は凄まじいものがある。あと少しでも理性のタガを外してしまえば、どこまでも情欲の虜となってしまいそうだ。  
 タオルの中でパンパンに隆起したモノが、こすれて痛いくらいになっている。そんな感触が、辛うじて俺を繋ぎとめてくれている。  
「ちゅう…………、れろ……」  
「ふうっ……!?」  
 頭の中に知識としてだけある、舌と舌を絡み合わせてするキスを俺は思い出した。かげつちゃんの唇を恐る恐るしたでなぞり、彼女の反応を確かめる。  
 かげつちゃんがわずかに開けてくれた口に、したの先端を潜り込ませる。彼女の見開かれた両目が、どうしたらいいのかわからない、そう語っていた。もっと深くかげつちゃんと絡み合いたい。そう思った時だった――。  
「すばるくーん」  
「っ! な、なに、母さん?」  
 風呂場の外から聞こえてくる母さんの声に、俺ははっとした。慌ててかげつちゃんを離し、返事をする。  
「お母さん、いまからご近所さんのところへ行ってくるから、お留守番お願いね?」  
「わ、わかったよ」  
 どうやら、一部始終を気づかれたわけではないらしい。まったく、心臓に悪いとはこのことだ。母さんはそれだけ言うと、すぐに出かけてしまった。  
「ほぇ…………」  
 なぜだか、かげつちゃんの様子が少し変だ。のぼせたように身体は上気し、視線が虚ろになっている。  
「すごかったです……、長谷川コーチ……」  
「おー。かげ、おにーちゃんに、むちゅう?」  
 ひなたちゃんがかげつちゃんの顔の前で手を振ると、ようやく彼女は我に返ったようだった。  
 
「ね、姉様!? は、長谷川コーチ、わたしおかしくありませんでしたか?」  
 冷静になったことで恥ずかしくなってしまったのか、かげつちゃんは自分の顔を両手で覆った。  
「全然。むしろ俺が、がっつきすぎちゃったくらいで」  
 さて、どうしようか。さっきは勢いに乗ってディープキスまでしようとしたけど、続けるべきか否か。タオルの中のあれもいまだにガチガチで、のっぴきならない状況ではあるのだけど。  
 現在俺の頭の中は、2人のことで満たされつつある。それも、危険水域ギリギリな感じで。  
「あ、あの。さっきの続き、してください」  
「いいの、かげつちゃん?」  
 彼女の表情はとても真剣そのもので、俺に訴えかけてくるようだ。了承してもらえるなら、俺にはもうためらう気などなくなっている。  
「ぶー。ひなもしたい」  
 ひなたちゃんはどうやら我慢の限界に達したらしい。となれば、2人同時にするしかない。  
「わかった。なら、ひなたちゃんもおいで」  
「わーい。かげといっしょ」  
 俺がそう言うと、ひなたちゃんは嬉しそうにかげつちゃんの隣に入り込んだ。ひなたちゃんの発展途上なふくらみが、俺の身体にプレッシャーをかけてくる。  
「よ、よし。それじゃあ続き、しよっか?」  
 沸々と湧いてくる別の欲望には一旦蓋をし、いまはキスをすることに集中しよう。  
 まずは、さっき途中で終えてしまったかげつちゃんから。  
「き、緊張しちゃいます」  
「さっきみたいにすれば大丈夫だよ。んっ……ぺろ」  
 先ほどのことを再現するように、かげつちゃんの唇を一舐めする。そしてついに、その中へと舌先を侵入させた。  
 
「ふうっ!? んん……、ちゅう……っ」  
 俺の舌が、かげつちゃんの暖かな口内に入り込む。さらに奥に引っ込んでいた彼女の舌を探し当て、絡み取った。  
「ちゅる、ちゅう……、ぺちゃ」  
 かげつちゃんもその意味を理解してくれたのか、ゆっくりと舌を動かしてくれる。  
 粘膜同士の確かな接触に、身体が熱くなっていく。キスだけでここまで興奮するなんて、その先に進んだらどうなってしまうんだろうな。  
「おー。ぺろぺろ」  
「んんっ……!? ぷはあっ……」  
 頬へのやわらかな感覚は、ひなたちゃんの可愛らしい舌だった。仔犬がじゃれつくように、俺の頬を懸命に舐めている。  
「くすぐったいよ、ひなたちゃん」  
「おにーちゃん。ひなも、いっしょにする」  
 言葉と同時に、ひなたちゃんは俺とかげつちゃんに抱きついた。一緒にというのは、どうやらそういうことらしい。  
「姉様……。ちゅう……」  
 ひなたちゃんが迷いなく、かげつちゃんと唇を合わせた。かげつちゃんは少し困惑しつつも、どこか嬉しそうにそれを受け入れている。  
「俺も負けてられないかな?」  
 妙な競争心を働かせた俺は、かげつちゃんとのキスを楽しむひなたちゃんの唇を奪いにいく。  
「はむっ……、ちゅる」  
 強引に唇の端から舌を割り込ませ、歯列を数えるように動かしていく。  
「ぴちゃ……、ほにーちゃ……ちゅ」  
 ひなたちゃんの甘い唾液が、俺の脳髄をこれでもかというくらいに刺激する。かげつちゃんも気分が乗ってきたようで、積極的にキスをしてくれる。  
 やがて少女たちと過ごす甘い時間が俺の最後の理性を切断してしまったのだろう。気づけば肩においていたはずの手が、2人の幼い胸をしっかりととらえていた。  
 

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