□視点変更 〜 湊智花  
 
 昴さんの大事な大会まで、あと二週間。  
 毎日していた朝練に加えて、部活のない日は公園で全体練習、たまにその後も昴さんの家にお邪魔して少しだけ練習することもあります。  
 
 それでも、まだまだ練習が足りない。もっと、もっと練習が必要です。  
 
 メンバーは、昴さんと万里さん、それに葵さんがフル出場することが決定。  
 1人分は、ディフェンスは愛莉に出てもらって、オフェンスは真帆と紗季とひなたで。  
 あと1人、その最後の一枠には、私が入ります。  
 
「――ッ」  
 
 私に出来ることは多くない、小さな身体と短い手足、どうやっても見劣りするパワー。  
 唯一対抗できるのは速さ、チーム状況とか味方の位置とか、細かいことは気にしなくていい。  
 使えるのはスピードだけ、だから、このたった一つの武器を、極限まで磨き上げる。  
 
「お、おいおい、すごいな」  
 
 3on3のゲーム形式の練習、今日は私と昴さんと真帆が同じチーム。  
 目線のフェイントを織り交ぜて、抜き去って、レイアップを決めた。  
 ――一緒に練習をするようになってから、はじめて勝てた。  
 万里さんに、初めて勝てた。  
 
「うおー! もっかんすげーぜ!」  
 
 真帆の声が、どこか遠くに聞こえる。  
 最近、こういう状態によくなる。  
 すべてが遠くに聞こえて、上空からコートを見下ろしているような感覚。  
   
「昴さん!」  
「っと、ナイスパス智花」  
 
 ゴール下に切れ込む動きから急ブレーキ、真後ろの昴さんにパスを通す。  
 
「よしっ」  
 
 フリーで受け取った昴さんがシュート決める。  
 スリーポイント。遠くから決められる選手が少ない私たちのチームにおいて、昴さんは唯一のロングシューター。  
 私の動きだけではゴールは何度も決められない、けれど、それで外から打つ昴さんの援護になるなら、いくらでも価値はある。  
 
「真後ろへの、ノールックパス……しかも、事前にアイコンタクトすらしなかったわね」  
「智花ちゃんと長谷川さん、凄く息が合ってるよね」  
「ええ、もう不気味なくらいね、最近のトモは怖いくらいだわ」  
 
 調子はとってもいい。  
 けれど、これでは、まだ届かない。  
 昴さんにも万里さんにも葵さんにも届かない。  
 このチームにおいて、間違いなく、私が一番のウィークポイントだから。  
 強くならなきゃいけない、すぐにでも、今すぐにでも−−。  
 
 
 □視点変更 〜 一条伊織  
 
 揺さぶり方は様々ある。  
 下の下の手段としては、直接手をかける方法だ。  
 効果としては抜群なのだが、実行側のストレスが半端ではない。  
 怪我による戦力ダウンを狙うならば、全力で勝負をして怪我をさせてしまったら仕方ない、くらいの心持が一番いい結果を生む。  
 
 もっとも、それはあくまで試合で戦う場合の話であって、練習段階にはあてはまらない。  
 
 対象は長谷川昴。彼一人が崩れればチームは崩壊する。  
 現状、部活動がなくなるかもしれない状況にもかかわらず、彼の顔は生き生きとしている。  
 
 おそらく、それは教え子の成長の影響が強いのだろう。  
 長谷川智花の成長速度は、異常を通り超えて異端のレベルだ。  
 他の4人も、期待の一歩先を常に歩んでいる。  
 
 目の前の大会に向けて、コーチとして選手としての充実している。  
 すべてがうまく循環している、これならばきっと勝てる、そう思っているだろう。  
 実際、勝てるだろう。個々の戦力では劣ったとしてもチームとしてこのメンバーは既に完成しつつある。  
 
 ならば、さらにその先を見てもらおう。  
 たとえ、勝ったとしても、その先にある未来を。  
 5年後、10年後の未来を。  
 決して、明るくない未来を。  
 
 
 □視点変更 〜 長谷川昴  
 
 日曜の昼下がり。  
 今日は疲労も考えて少し軽いメニューをこなしていた。  
 その分、メンタル面を中心にミーティングを行うことにする。  
 講師には、競技は違えど元プロ選手の一条さんにお願いすることにした。  
 幸い、今日はミホ姉もいない。  
 どうも一条さんとミホ姉が2人で話しているところには声が掛けにくい、独特のオーラというか……なんだろうあれは。  
 
「ところで、昴君は好きな人はいますか?」  
「は、はい?」  
「「「「「「―――!!!」」」」」」  
 
 そんな中、聞き捨てできない一言を一条さんが発した。  
 
「い、いやいや、ちょっと待ってください、それとこれとは関係ないでしょう」  
 
 俺たちは、試合に臨むメンタル面について一条さんから教わっていたはずなのに。  
 どうしていきなり、そんな話に。  
 
「いいえ、大有りです。手っ取り早く強くなるには、恋が一番効果があります」  
 
 真面目な顔してそんなことを言われた。  
 
「恋の感情は恐ろしいことに、その場で成長させていくんですよ、1分前とは別人になっていたりします」  
 
 戸惑う俺をよそに、一条さんは講釈を続ける。  
 
「高校野球でもよく試合中に成長が見受けられることがありますが、あんな感じですね」  
 
 それは、やはり恋ではないのでは?  
 
「現に、昴君はいま恋をしているでしょう?」  
 
 ……え? はい?  
 
「ふぇ、ふぇえええ!?」  
「す、すばるん!?」  
「は、長谷川さんが、いま恋に!?」  
「おー、ひなもおにいちゃん好きー」  
「はぅ、あ、あの、その」  
「ま、まさか!?いつ!?誰に!?」  
 
 一斉に色めき立つ女性陣。  
 みんな、ほんとにこういう話好きなんだなぁ。  
 でも、あいにくまったく身に覚えがない。  
 
「待ってください、俺にそんな相手はいませんよ」  
「なにも人だけが対象ではありません、バスケットボールという競技と、このチーム自体、2つは確定だと思っていましたが」  
 
 ああ、なんだ、そういう意味か。  
 
「そうですね、確かにそういう意味では、恋をしているかもしれませんね」  
 
 またしても女性陣から、今度は「ほぉぉ」というか「ふぅぅ」というか、あいまいなため息が聞こえて来た。  
 
「そ、そうですよね、バスケになら、わ、私も恋、しちゃってるかもしれませんね!?」  
「おう、そうそう、みんな恋しちゃってるよな!?」  
「え、ええ、まぁ、そうね」  
「おー、ひなも、バスケ好きー」  
「はぅぅ、すいません、変な想像しちゃって」  
「あ、あはは、わ、私もバスケは好きだもんね、うん」  
「昴、俺は今だけ、異常な集団に紛れ込んでしまった気がする」  
「まぁ、女の子はこういう話が好きなものなんだよ」  
 
 困惑顔の万里に対して、一般説を説いてみる。  
 とりあえず、まぁ、一条さんの言いたいことはわかった。  
 
「さて、しかし現実問題として、そんな簡単に恋がポンポンできるわけではありません」  
 
 訂正、まだ終ってなかった。  
 
「これは一般的に勘違いされていることも多いですが、恋は何度も落ちておくべきものだと、私は思います」  
「は、はぁ」  
「「「「「「……(ジー)」」」」」」  
 
 また女性陣の眼が怖くなった、真剣なのはいいことだけど……。  
 
 
「同じ相手に恋をしなさい、何度も何度も恋をしなさい、その人やその物の新しい面や、自分が変わったことによって違って見えてくる相手に、何度も恋をしなさい」  
 
   
 一条さんは、そこで俺から視線を外して、智花、真帆、紗季、ひなたちゃん、愛莉、葵、万里と、全員の眼を見て、再び口を開いた。  
 
「本当に大事な物、本当に大切な人、そういうものの前でありえたい最高の自分を想像しなさい」  
 
 最後に、まっすぐ俺を見た。  
 
「おそらく、あなた達なら、届くはずです……思い描いてみてください」  
「……、わかりました」  
 
 聞いたこともないようなメンタルトレーニングだ。  
 もしかしたら、これは一条さん自身の経験に基づくものなのかもしれない。  
 眼を閉じてみる。  
 そして、思い描いてみる。  
 
 自分が好きなバスケ、そのバスケが絶たれる様子、既に一度経験した、二度と味わいたくない苦い記憶、それを打ち破るイメージ。  
 そして、一番大切な―――  
 
「!? うっわぁ……」  
 
 そこに至った瞬間、思わず声が漏れた。  
 
「どうしましたか?」  
「い、いえ、大丈夫です」  
 
 言えない。  
 一番大切な存在を思い描いた時、真っ先にでてきたのが智花のジャンプシュートの映像だったなんて。  
 
「ただ、その、なんていうか、俺はやっぱりバスケを頑張ってる人は好きなんだなぁ、なんて、あ、あははは」  
「そうですか……では、もしその人がバスケを出来なくなったとしたらどうですか? それでも、一番好きな人でしょうか」  
「え? それは……」  
 
 智花がバスケを出来なくなる、可能性としては無いわけではない。  
 現に四月頃は廃部の危機だったし、今後怪我などのアクシデントがないとも限らない。  
 
 そうなると、俺ももう智花のコーチではなくなってしまう。  
 パートナーではない、ただの友人? いや、小学生の友人ってありえるのか?  
 年齢差だけが問題? 別に気にすることないんじゃないか?  
 いや、でも、そうなると智花も朝練に来ることもなく部活に来ることもなく――  
 
「はい、そこまでです昴君、あまりに深刻になりすぎないように」  
「あ、すいません」  
「けれど、そのイメージは決して逃がさないように、むしろ重要なのはその先にあります」  
「その、先?」  
 
 またしても、全員を見回す一条さん。  
 
「皆さんは、いつまでバスケを続けるつもりですか?」  
「えっ?」  
 
 一瞬、言葉が詰まった。  
 
「大学? さらにその先のバスケの選手? はっきり言います、そこまで行けず……いえ、行けたとしてもそれはごく一握りにすぎません」  
 
 プロ選手は夢だ、難しいと思いつつもどこかで憧れる。  
 でも、夢にたどり着けないこともあるし、夢の先でつまづくこともある。  
 まさに今、一条さん自身がそうであるように。  
 
「最後の手段は、失恋です。その未練も想いも断ち切る時、最後の力を与えてくれるでしょう」  
 
 ただし、と付け加える。  
 
「そのやり方を間違うと、私のように路頭に迷ってしまいます、気をつけてください」  
 
 にこりと、まるで内容にそぐわぬ笑みで言い切った。  
 代わりに、全員の顔に笑顔はない。  
 
 つまり、最後と思って戦え、想いも何もかもすべて捨てるつもりで戦え、と。  
 
「言いにくい話ですが、どうせプロに進めない、ならば、この先の可能性すべてを燃やし尽くして戦え、ということです」  
 
 確かに、それは究極のメンタルコントロールなのかもしれない。  
 そして同時に、プレイヤーとして最悪の精神状態だ。  
 
「判断は各自に任せます、ですが、ただ一戦のみに賭けるのであれば、何よりも有効です」  
 
 
 □視点変更 〜 篁美星  
 
 篁美星は長谷川昴の味方である。  
 ただし、それは手助け出来る範囲のことであり、直接昴の行動に介入するようなことはない。  
 今回も、バスケ部を取り戻すのはあくまで昴自身の努力によるものだ。  
 美星が行なうのは、あくまで理不尽な外敵への対応だけ、のはずだった。  
 
「さって、やっぱここには来ておいて正解だったな、いや、ある意味失敗だったけど」  
 
 七芝高校の正門を出る。  
 幸いにして、私は見た目の恩恵もあって誰に見咎められることもなくすんなりと目的は達成できた。  
 日曜の夕方、昨日今日と散々歩き回った成果はあった。  
 
「七芝の野球部は強豪っていうからどんなもんかと思えば……」  
 
 強豪といえば強豪だろう。  
 ただし、常に全国に名を連ねる常連というわけでもない。  
 テレビで、しかもプロ野球しか見ない美星にとって、あまりレベルが高いチームには見えなかった。  
 
「その中でも特に小粒集団と言われたのが、大体10年から8年くらい前……ちょうど、あいつがいた年代か」  
 
 歩きながらメモ帳をめくっていく。  
 はじめのページにはプロ野球球団に直接訪問してみた項目、以外にもほとんどの人が素直に応えてくれた。  
 続いて大学野球部、元々野球に消極的らしく、故にプロ入りした一条の情報は多かった。  
 さらに出身地周辺、ここでは逆に口が重い人が多かった。  
 最後に七芝高校野球部、これまでの情報が、すべて結びついた。  
 
「……、まいったな、これは」  
 
 一条伊織が怪しい人物だということはわかっていた。  
 ほぼ、確証に近い材料も今日揃った。  
 その内容が、逆に躊躇させる原因にもなっていた。  
 
 まずプロ野球関係。  
『知っている人多数』  
『悪い話特になし、いい話も特になし』  
『単純な力不足に怪我が重なったことが自由契約の原因』  
 
 大学関係。  
『珍しく熱心な学生で、周囲との温度差がかなりあった』  
『敵チームの研究に人一倍時間を割いていた』  
『実質、エース件監督、しかし投手として特筆すべき点なし』  
『教員免許取得済み』  
 
 出身地周辺。  
『一条家についていい話はなし』  
『明らかな悪態も多々』  
『家そのものへの悪感情に一条伊織のプロでの失敗も恥じと見なされている模様』  
 
 高校関係。  
『当時のチームメートからのいい噂なし』  
『3年時エースでキャプテン』  
『勝つための手段として強権を用いる』  
『最弱と言われたチームを地区準優勝まで押し上げる』  
『投手として取り立てて優秀な人物ではなかった』  
『野球部に新たなコーチを雇う計画があるらしい』  
 
 まとめたメモ帳を見ながら、とぼとぼと家路につく。  
   
 
「……、まいったな、ちくしょう」  
 
 一条伊織は悪人ではないし独裁者でもない。  
 それは美星自身が肌で感じた印象だ。  
 
「あんた、どれだけ味方に恵まれないのさ……」  
 
 仕事でもあるプロは、まぁ仕方がないだろうとは思っていた。  
 だが、人間的な評価がそのプロで一番高かったことがなんとも皮肉だ。  
 
「一条さんの目的は、どうやってか七芝のコーチになること、か……バスケ部をどうにかすれば、なれるのかね……?」  
 
 証拠はないが、おそらく間違いはないだろう。  
 ほぼ確信に近いものは得られた。  
 
 けれど、その過程で、あまりに一条伊織に触れすぎた。  
 
 どれだけの努力をしたのか――  
 勝つために、負けないために、高校大学と弱いチームを鼓舞し、改造し続け――  
 結果的にそれで仲間からの恨みを買うことになってしまっても――  
 少ない才能と、持たざる天性を補うために、すべてにおいてどれだけの努力をしたのか――  
 
 ネットからの情報ではない、生の情報がよりその印象を鮮烈にしていた。  
 
「敵には、なれないな……私は、なれない」  
 
 教師という職業柄もあるのかもしれない、このまま野球から退くのであれば、頑張り続けた人間の末路にしては、あまりに惨めだと感じてしまう。  
 そして、おそらく今も努力をしている、たとえそれが昴の道に立ちふさがるようなやり方でも。  
 篁美星は長谷川昴の味方であって、一条伊織の敵ではない。  
 
 
 □視点変更 〜 一条伊織  
 
 目的を遂げると同時に、私は野球を愛せなくなる。  
 少なくとも、少年や少女を騙して蹴落として、その上に立つということは受け入れなければならない。  
 
「いおりんいおりん、あたしらってプロ選手になれるかな?」  
「ま、真帆! もうなんてことを」  
 
 練習後、三沢真帆が問うて来たのは、まさにメンタルトレーニング(という名の追い込み)に、さらに踏み込んで来たものだった。  
 
「でもでも、気になるじゃんか、どうせやるなら目指すしかないんだし!元プロのいおりんから見て、わたしらってどう? かなりいけてる?」  
 
 聞きに来たのは小学生の5人。  
 なるほど、確かに子どもならあの手の揺さぶりは効果が薄いか。  
 ちょうどいい、まだまだ内側から揺さぶる必要がある。  
 
「そうですね……畑違い、そしてかなり期待値込みでよければ私見を述べましょう、ただし、キツイ結果かもしれませんよ?」  
「おう、どんとこーい」  
 
 目には、好奇心と少しの不安を浮かべている。  
 まず、その不安を解消して、その上でさらに大きな不安を被せる。  
 
「ではまず……、一番手は香椎万里君と愛莉さんの兄妹、でしょうね」  
「おおー」  
「理由は、まぁ詳しく話すと長くなりますが、体格と骨格です、これは努力ではどうしようもない天性ですから」  
「え、えへへ、でも、私なんかまだまだです」  
「むー、流石はアイリーン」  
「次は……長谷川智花さん、でしょうね」  
「トモが、愛莉の下なんですか」  
「あくまで、期待値を込みで言えば、ですから、あまり本気にはしないでください」  
「いえ、そうですよね、私は、紗季や真帆よりも身体が細いですから……」  
「んでんで、次は?」  
「……、三沢真帆さん、萩山葵さん、袴田ひなたさん、永塚紗季さん、の順でしょうね」  
「おー、ひな、紗季に勝った?」  
「え、ええぇ、どうしてですか」  
「まず、この四名に甲乙はつけがたい、現状の能力ではなくどれだけ成長できるかによるので、予想が立てにくいんです」  
「えっと、じゃあ、どこで判断したんですか?」  
「性格です。言いにくい話ですが、プロの世界に入り込むような人間は絶対的エースでなければいけない、他人を立てるのではなく自身で強烈に切り開く力がまず前提に必要なんです」  
「うぅ、つまり、私はプロ向きの性格ではないということですか?」  
「あくまで傾向にすぎません、気にしすぎないでください」  
「ま、いおりん予想じゃ紗季が最下位であたしの勝ちってことだな」  
「う、うぬぬぬ、って、あれ?」  
 
 各々、予想通りであったり予想外であったりしたが、概ね結果を受け入れている。  
 さて、そろそろ気づくか。  
 
「へっへーん、あたしなんてあおいっちよりも……、……あれ? そういえば、すばるんは?」  
「……あ」  
 
 5人の視線が集まる。  
 
「最下位は、長谷川昴君です」  
 
 一同、目を見張った。  
 
「骨格の細さ、身長の伸びに期待が低い、身体能力も傑出しているわけではない、加えて一年の実戦からのブランク」  
 
 上げられるだけのマイナス要素を挙げていく。  
 
「ただし、コーチとしては、あの年にしてすでに有能ですね」  
 
 最後に、選手としてはない方向で評価を加える。  
 
「こ、こらー、いおりん! すばるんがなんでそんなにダメなんだ!」  
「言ったままです、これからの伸びに期待しにくい、そして現在の環境がそもそも選手ではありません」  
 先ほどまでの雰囲気は消し飛んでいた。  
 あるのは不満、ただ自分たちのコーチに対する低評価が気に入らない、子どもの感情。  
 
「あくまで、私の予想に過ぎません……出来れば、彼にはこの評価を覆してもらいたいです」  
 
 暗に込める、今度の大会で負ければ、それを覆しようがないということを。  
   
 この子達は頑張るだろう、長谷川昴の評価を、私に見返すために。  
 そのために、この子たちは、一体どこまで――魂をすり減らしてくれるだろう。  
 
 
 

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