昨日の女バスの練習が終わった時のことだ。
ちょうど、ひなたちゃんが更衣室から一番早く出てきたので呼びかけた。
ひなたちゃんはシャンプーの芳香を振りまきながら近づいてくると、
「おにーちゃん、どうしたの?」
と、天使を具現化したような笑顔で俺の顔を見てきた。
「ひなたちゃん・・・・・・実は、とっても大切なお願いがあるんだけど、聞いてくれるかい?」
「おー?おにーちゃんのおねがいなら、ひな、なんだってきくよ?」
天使は更に俺に微笑みかけてきた・・・可愛いな、もう。
「ん、実はね・・・・・・明日、ご両親もかげつちゃんもお家に居ないって聞いたんだけど・・・よかったら、ひなたちゃんちに遊びに行きたいなって思ってさ。ほら、一人だと寂しいかなって・・・」
そう、今日偶然、真帆から聞いたのだ。両親は仕事で長期出張。かげつちゃんは友達の家に泊まりに行くらしい。
あの心配性の妹がひなたちゃんを簡単に放っていく事に、少しばかりの驚愕を感じたが、ひなたちゃん一人でも大丈夫だと判断したのだろう。
もう、ひなたちゃんは弱い、守られてばかりの存在じゃないことは、とっくに証明済みだ。
「ほんとう?おにーちゃん来てくれるの?わーい。ひな、明日のおるすばん、たのしみ」
「じゃあ、明日、昼くらいにひなたちゃんの家に行くね」
・・・・・・というわけで、今、ちょうどひなたちゃんの家の前に着いたところだ。外観をしげしげと眺める俺。
真帆の豪邸や智花の庭園を見てからだと、ちょっと分が悪いが・・・普通の家だ。そういや紗季の家もこんな感じだったかな。
ピンポーン
早速、インターフォンを押す。ベルは家の中を反響し、数秒で消え去った。
「はーい。おにいちゃん?」
「うん。ひなたちゃん、昴です。カギ、開けてくれるかな?」
「おー、いまあけるね」
ガチャ
ドアが開くと、そこには私服姿のひなたちゃんが、ちょこんと立っていた。
「ひなたちゃん、こんにちは・・・いい子でお留守番してたかい?」
「おにーちゃん、こんにちは。うん、ひな、ひとりでおるすばんしてたよ?いいこ?」
「うん。いいこ、いいこ」
俺はひなたちゃんのゆるウエーブの髪をなでなでしてさしあげた。というか、ここはせざるを得ない。こんな表情で見つめられたらね。
ちなみに、今日のひなたちゃんの髪型は、ふわふわウェーブの横髪を後ろで結んでいる。
いつもと違った雰囲気で、一層、ひなたちゃんの魅力を引き立てている。
「さっそく、おじゃまするね」
「おー、どうぞどうぞ」
俺は誰も居ないのを確認すると、玄関に入っていった。ひなたちゃんの部屋は二階にらしく、一階は静まりかえっている。
「おにーちゃん。ひなの部屋、こっち」
ひなたちゃんに連れられるまま、奥へと進んでいく。二階への階段を上った所にはかげつと書かれた部屋があった。
ひなたちゃんの部屋はその奥らしい。
「ここです。どうぞ入ってください」
「んじゃ、失礼する・・・・・・よ」
俺はドアを開いた瞬間、言葉を失った。そこにあったのは、この世とは思えない程の・・・・・・メルヘンな世界だった。
壁紙や家具はもちろん、全体的にピンクで統一された部屋は、ひなたちゃん愛用のぬいぐるみでいっぱいだ。
本当にひなたちゃんらしい・・・天使の住む部屋という表現がピッタリだ。
ああ、ここが楽園か。本当に来て良かった。
「?おにーちゃん。どうしたの?」
ドアノブに手をかけたまま、立ち尽くす俺にひなたちゃん、いや、天使が話しかけてきた。
この部屋を見た後だと、神々しさが三割増しくらいに見える。
「いや、なんでもない。ひなたちゃんの部屋、可愛いなって思っていただけだよ」
「ほんとう?わーい。おにーちゃんに褒められた」
ひなたちゃんは嬉しそうにしながら、部屋の中へと入っていった。ベッドが真ん中にあるという配置になっているので、ひなたちゃんと二人でベッドに座ることにする。
まず、目についたのが、ベッド横にある大量のぬいぐるみだ。とかげやイルカなど、いろいろな動物が所狭しと並んでいる。
「いっぱいお人形あるね。どこで買ってくるの?」
「おとーさんとおかーさんが買ってきてくれる。でも、かげが取ってきてくれたこともあた」
確か聞いたことがある。駅前のゲーセンでかげつちゃんが一生懸命、ひなたちゃんが欲しがっていたイルカのぬいぐるみを取っていたらしい。
運動神経の良いかげつちゃんの事だからすぐに取れたと思うけど、本当に姉思いの妹だな。
「おにーちゃん。何してあそぶ?」
と、考えにふけっていると、ひなたちゃんが俺の膝に手をのせて、上目遣いで俺の目を見てきた。
「うーん。そうだな・・・・ひなたちゃんはいつも何して遊んでいるの?」
「お人形であそんでいるよ。それか、お絵かきしてる」
ベッドの横の机に置いてあったのは、ひなたちゃんが書いた、何枚かの絵だった。クレヨンで書いたらしく、カラフルな曲線がいくつも描かれていた。
ひなたちゃんはその中から一番下に置いてある紙を取り出すと、俺の前に差し出した。
「はい。これ」
「これは・・・女バスのみんな・・・?」
そこに描かれていたのは、俺を中心として、女バスのメンバーが囲っている絵だった。
俺の横には智花、愛莉、真帆。前には紗季とひなたちゃんが居る。みんなの特徴を上手く描いてあって、一目でメンバーだと分かる出来だった。
「これ、おにーちゃんがたけなかたちに勝ったときの絵だよ。みんなで勝った、はじめてのしあい・・・」
「そうか・・・ひなたちゃんは本当に絵が上手いね」
そういって本日二度目の頭ナデナデをする。なるほど、確かに初勝利だったもんな、あの試合は。
今、考えると、男バスに勝ったのは本当に奇跡としか言いようがない。その輝いている瞬間が今にも伝わってきそうだ。
「むにゅー」
おっと、いかんいかん。頭を撫ですぎて、ひなたちゃんが気持ちよさそうに横になってしまったではないか。
でも、ベッドの上だしいいか。
うん?・・・・・・ベッド、そうか。その手があった。
「ひなたちゃん、一緒にお人形遊びしようか」
「おー、じゃあお人形さん取ってくる」
人形を取りに行こうとするひなたちゃんの腕をさっと握る。
「ひなたちゃん・・・俺がしたい人形遊びはね・・・・・・ひなたちゃんがお人形になるんだ」
「おー?ひなが、お人形さん?」
「そう、ひなたちゃんがお人形さんになっていろいろと・・・遊ぶんだ」
いまいち理解していないひなたちゃんに丁寧に説明してあげる俺。というか、ひなたちゃんは既にお人形さんだし、問題ないな。
「おー、たのしそう。ひなはなにすればいい?」
「ひなたちゃんは・・・そうだな。なにもしなくていいよ。そのまま寝てるだけで」
「わかったー」
素直なひなたちゃんはそのままの格好で横になった。早速、ひなたちゃんの脇を抱えて、俺の体にもたれかけるようにする。
目の前の後頭部から、ひなたちゃんの良いにおいが漂ってくる。
「もにゅー。くすぐったいよ。おにーちゃん」
あまりにも良いにおいだったので、ひなたちゃんの髪に顔をうずめる。絹糸のような髪が、顔を撫でる。
「・・・ひなたちゃんの髪、ふわふわで気持ちいいよ」
「ほんとう?わーい。おにーちゃんにほめられた」
ああ。もう死んでもいいわ。こんな奇跡のような天使に出会えた事で俺は、きっと一生分の運を使い切ったに違いない。
でも・・・まだやるべきことが残っている。
「じゃあ今から、ひなたちゃんお人形をお着替えさせます。いい?」
「おー、どんとこい」
許可を得たので、早速俺はひなたちゃんのワンピースのボタンをゆっくりと、一つひとつ外していく。
ちなみの、今日のひなたちゃんの服装は裾にフリルが付いた花柄の膝丈ワンピースだ。白い肌と相まって、よく似合っている。
三つめのボタンを外したところで、乳房が露わになる。なんというか・・・想像していたよりも・・・・・・大きい。
絶対に智花以上の大きさだぞ・・・これ。完全な思い込みだが、ひなたちゃんは女バスメンバーの中でも一番ムネが小さいと思っていただけに・・・驚きは大きい。
というか、結構あるのにブラもつけていないとな・・・・・・かげつちゃんに付けろと言われないのだろうか。
「ひなたちゃんは、胸おっきくなりたい?」
「むねおっきくなったら。ひな、おとなのじょせい?」
「ああ、揉んでおっきくなったら、きっと立派な大人の女性になれるよ」
「おー、おにーちゃんなら・・・ひなのむね、もんでもいいよ」
んっ・・・いまの表情は反則だろ・・・常識的に考えて。よし、わかった。そんなに言うなら、とことん揉んでやる。
そう意気込んだ俺は、ゆっくりと、手のひらを両胸に密着させる。小降りで、丁度良い感じに俺の手のひらに収まる。まさに俺に揉まれる為のカタチだな。
と、ちょっと得意げになる。竹中が見たら発狂するだろうな。確実に。
「ふにゅ・・・・・・おにーちゃん。ひな、へんなかんじだよ」
「どんなかんじ?」
「なんだか、こそばいかんじ」
そう言われると、こっちも本気を出さざるを得ない。ひなたちゃんを横に寝かせると、途中まで外したワンピースのボタンを最後まで外す・・・・・・・と、俺は非常に重大な事に気がつく。
「ひなたちゃん・・・・・・今日は、その、ぱ、パンツ・・・はいてない。のかな?」
「おー?ひな、おうちにいるあいだは、ぱんつはいてないよ?」
・・・なんだか凄いことを聞いてしまったぞ。つまり、いつもひなたちゃんは、の、のーぱんで過ごしているのか・・・ヤバイ、ヤバイぞこれは。
「その・・・なんで・・・・・・はいていないのかな?」
一応、理由を聞いてみる。ここは保護者として聞かねば。教育のために。
「はいてないときもちいいよ?おにーちゃんもどう?」
らしいです。はい。本当にひなたちゃんらしいといえばそうだけど。ちなみに俺は遠慮しておきます。
男がそんなことしても・・・ねぇ。それに練習の時タイヘンそうだし。
練習と言えば、朝練してきたからちょっと汗臭いかな。俺。と、自分の体を見て思う。
このまま脱いだらちょっとアレだな・・・・・・そうだ。
「ひなたちゃん。俺、実は朝練してきてさ・・・・・・シャワー浴びたいんだけど、いいかい?」
「いいよー。ひなもおにーちゃんと一緒に浴びたい」
「・・・・・・・えっ」
いや、ちょっと予想外だった。今のは。教え子と一緒にシャワーとか・・・・・・俺がこんな事してるっていうのバレたら・・・コーチ失格どころじゃないな。きっと。
それでも、ひなたちゃんのお願いを無下に断る事も出来ず・・・
「わかった。じゃあ一緒に入ろうか」
「わーい。おにーちゃんとお風呂、たのしみ」
・・・・・・本人も喜んでいるみたいだし・・・ヨシとするか。
袴田家のお風呂は家の割には・・・といっては失礼だが、大きい風呂場だ。間違いなくウチよりも広い。これなら小学生5人が入浴しても問題ないな。
「じゃあひなたちゃん、ここに座って」
「おー?おにーちゃんがひなを洗うの?」
「うん、まずはひなたちゃんをキレイにしてからね」
といって納得させるが、本音は俺がひなたちゃんの体を洗うという目標を達成するためだ。自分の体など後回しでいい。
俺はシャンプーっぽい容れ物から2プッシュほど液体を手に取ると、ひなたちゃんの髪を撫でるようにして染みこませていった。
しばらく、頭をこすっていると泡立ってきた。髪が長いだけあって、ものすごい量の泡だ。
「ひなたちゃん。かゆいところはない?」
「おー、だいじょうぶー」
美容室で定番のやりとりを交わすと、俺の手が毛根から毛先までを丁寧に泡で満たしていく。
これだけ髪が長いと本当に洗うの大変だな。毎日洗っているのだと思うと関心する。
十分に泡立たせ、シャワーで髪を流す。いつもよりも強いシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。
「つぎは、ひながおにーちゃんのからだあらうね?」
「おっ、たのんだ」
無邪気に笑い、俺の体を洗おうとするひなたちゃん。タオルを両手に持って、ごしごしと、一生懸命こする様子が本当に可愛い。
「おにーちゃん、ひなのごほうし、きもちいい?」
「ひなたちゃんは体洗うの上手だね。うん。とっても気持ちいいです」
全く・・・ひなたちゃんに「ご奉仕」なんて言葉教えたのは何処のどいつだ。多分、紗季だな。そのルートしか考えられん。又は真帆。
洗い合いを終えると、俺たちは風呂を出た。
とりあえず頭を乾かすと、ひなたちゃんをパジャマに着替えさせた。昼過ぎにパジャマというのもおかしい話だが・・・
「ひなたちゃん・・・・・・あれ!?」
俺が髪を乾かしひなたちゃんを見ると、すやすやと、ベッドで横になり寝息をたてていた。
どうやらお風呂に入った事で睡眠モードになったらしい。
「ふふ、ひなたちゃん。風邪、ひかないようにね」
眠りに入った天使を無理に起こすわけにもいかず、そっとタオルケットを上に掛けると、カバンを手に取り、帰宅の準備をした。
お人形遊びの続きは・・・・・・また次回にお預けのようだ。
起こさないように静かに玄関まで下り、袴田家を後にする。
情報によると、かげつちゃんが帰ってくるのはもう少し後だし、鉢合わせになることはないだろう。
次来るときは・・・そうだな、俺たちが出会った時に着ていた・・・メイド服でも持ってくるように言ってみるか。
そんなことを考えながら、俺は帰路についた。
まったく、ひなたちゃんは最高だぜ。