小話(Hなし)
「今日の試合は絶対に勝てる! 自信を持って!」
昴は檄を飛ばした。
そして出向いた市民体育館にいた相手チームは……。
絵に描いたようなヨボヨボの老婆たちだった。
どう見てもバスケチームに見えない。
「こ、これが相手チームですか……?」
智花がひそひそと昴に聞く。
「そう、『梅の木倶楽部』の皆さんだ。……キャプテンさん、試合開始ですよ!」
昴はキャプテンの老婆に声をかける。
「え? ちょっとあたしゃ、耳が遠くてねえ……」
「だから試合開始です!!」
「あ、そうなの」
キャプテンの老婆は、おぼつかない足取りで仲間たちのところへ向かった。
「はい、皆さん! 試合開始ですよー!」
「じゃ、始めますか。よいしょっと」
老婆たちはのろのろと立ち上がった。
「なんて卑劣な! よくあんなチームを探したもんだね」
真帆が吐き捨てる。相手には聞こえないように。
「試合になるのかな?」
ひなたもつぶやいた。
そして、試合終了後……。
「ばかっ!! 半分死んでるチームに負けるとはなんだ!!」
昴は烈火の如く怒った。ボロ負けもボロ負けだった。
「とんでもない、死んでるどころか試合が始まった途端、まるで若者のような動きですよ!」
紗季が真っ先に弁解した。
「連携プレーがすごくて、点なんか取れないよ」
真帆も弁解する。
「それにあのチーム、バスケ歴50年は軽く超える、つわ者ばかりだって。
そんな強いチームだったなんて、見かけで判断したすばるんのミスだぞ!」
真帆の声に、周りからも、そうだそうだとばかりに抗議の声が上がる。
「ウッ……」
昴はタジタジとなった。確かに相手を見くびり過ぎていた。
「ま、まあ、失敗は誰にでもある。次からは気をつければいい。さあ、めげずに練習練習!」
(自分のミスをごまかしてる……)
一同、内心呆れていた。