多忙なお母さんにお料理を教えてもらうのは気が引けるからなんて断ってしまったけれど、実は嘘だった。
昴さんの好みを聞いて、それを基に栄養バランスを考えられるようにレパートリーを殖やしたかったからなんて、
必要だからこそお願いしているお義母様に聞くのも恥ずかしいのに、お母さんに言える筈がない。
でも……とうに気づかれていたのかもしれない。
御稽古のこと、忍さんと話し合った方が良いかしらなんて言われてしまっていたのだから。
「もう1組は七夕さんにお預けしようと思ってるの」と
あまりに決定的な中身の封筒を渡されてしまっていたのだから。
<<智花の通い妻日記 11月22日 〜お母様が見てた?〜>>
それは、はじめて昴さんの家までロードワークした記念の日。
そして――良い夫婦の日。
「おはようございます。」
「おはよう。そしていらっしゃい。今日は早いのね。」
母さんから渡された封筒の中身にすっかりパニックになっていた私は
早起きしていたこともあり、いつもより40分ほど早く昴さんの家についていたのでした。
お母さん、流石に実印と婚姻届は飛躍し過ぎだよ……嬉しいけど、昴さんはきっと困っちゃうよなんて
子どもは何人欲しいのとか聞かれても、バスケは続けたいのに。……でも、昴さんと……なんて思いながら。