「ん……う〜ん……」
いつものように朝がきて、目を覚ます。
すると、太ももの辺りに何かが当たっている感触がしたので、布団をめくってみる。そこには――
「すぅ……すぅ……」
智花がいた。しかも下着だけの状態で。
「&%#▲※%○●#〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!??」
声にならない叫び声をあげながら、俺は後ずさるように廊下へ飛び出す。
どうして智花が俺のベッドに!?
困惑しながら洗面所で顔を洗いつつそんなことを考えていると、玄関のインターフォンの音が鳴った。
玄関に向かい見に行くと、そこにはさっきまで自分のベッドにいたはずの智花の姿があった。
「おはようございますっ。昴さん!」
「…!?お、おはよう、智花……。」
困惑しながらも俺は智花に挨拶する。
そんな様子の俺に気が付いたのか、智花が心配そうに尋ねてくる。
「……?昴さん、どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ。」
きっと寝ぼけていたんだろう。でなければ智花が俺の家までやって来て俺のベッドの中に潜り込んでくるなんてありえない。
「あの……まさか、私がすでに昴さんの家に来ていた、とか……?」
予想外にも智花の推測が図星を突いた。
本当のことを言っても智花は引いてしまうだろうし、
そうでなくても智花が信じるはずがないと思っていたので、適当に流すつもりだったのだが……
心当たりでもあったのだろうか。
だが、あれはきっと俺が寝ぼけていただけだろう。
「いや……確かに今朝、俺の部屋に智花がいたような気がしたけど、俺の見間違いだったみたいだ。
ここに智花がいるって事はきっと俺が寝ぼけてただけだと思うよ。」
「……でも、一応確かめておきませんか?私も少し気になるんです……。」
智花が意外と粘るので、とりあえず俺の部屋に行き確かめることにした。
俺と智花は部屋に入り、中に誰かいるか調べてみたが、結局誰も見つからなかった。
「うん、やっぱり俺が寝ぼけてただけだったみたいだな。」
「そう、みたいですね……。」
「まあ見間違いだってわかっただけでもよかったよ。さ、今日も朝練頑張ろうか?」
「……はいっ!」
その後俺と智花はいつも通り朝練をし、みんなで朝食を食べ、それぞれ自分の学校へ通う。
昨日の智花はいろいろとおかしなところがあったが、
今日はそんな事も無く、普通に接していたのだった――
結局あの日、私にそっくりな誰かを見つけることは出来なかった。
昴さんは寝ぼけていたからと言っていたけど、昴さんが見たもう一人の私は、きっと見間違いじゃない。
でもなんでこんなことをするんだろう。目的も、正体も、何一つわかっていない。
いや、そんなことよりもこのまま放っておくわけには行かない。
そこで私は、もう一人の私を捕まえる為の作戦を練ることにした。
「へぇ……じゃあ智花は今週の土曜日は真帆たちと出かけるのか……。」
「はいっ。昴さんは、その日は家にいらっしゃるんですか?」
「ああ……。最近、俺の下着とかが減ってきてるような気がしてて……。
少し探してみたいからその日は出かけることは無いと思う。」
下着が減っているというのは少し気になるけど、どうやら昴さんは土曜日は家にいてくれるらしい。
実は真帆たちには出かける先を伝えていない。
その日の昴さんのいる場所と私の出かける場所がちがうと思わせることが私の狙いなのだから――
土曜日
「あっ。みんな、おはよう!」
待ち合わせの公園でみんなと合流し、挨拶を交わす。
「おはよーもっかん!」
「おー。ともか、おはよう。」
「おはよう。智花ちゃん。」
「おはようトモ。それで今日はどこに行くつもりなの?そろそろ教えてくれてもいいでしょ?」
紗季が行き先を尋ねてくる。うん、もう隠す必要もないかな。
「そうだね。じゃあ発表するね。今日の行き先は――」
一方――昴の家――
「昴さん、こんにちは。」
「あれっ?今日はみんなで出かけるはずなんじゃ?」
「そうだったんですけど……みんな急な用事が出来て行けなくなっちゃって。
それで、今日は昴さんと一緒にバスケのDVDを見たいなって思ったんですけど……ダメですか?」
「もちろん構わないよ。それじゃ、俺の部屋に行こうか。」
「はいっ!」
そうしてしばらく智花と二人でDVDを見ていたのだが、智花の様子がおかしいのに気付いた。
どこかもじもじした様子で、落ち着きがない。
「……智花、どうかしたのか?」
「昴さん……私、もう……我慢できませんっ!」
智花は突然俺を押し倒してきた。不意を突かれたため、簡単に押し倒されてしまう。
「と、智花……何を……?」
「えへへ……昴さん……?」
智花の顔が俺に近づいてくる。その時だった。
バタン!
部屋の扉が力強く開けられる。そして――
「見つけました!覚悟っ!」
この位置からは見えないが、智花と同じ声をした女の子らしき子が俺を押し倒している智花を突き飛ばす。
智花は突き飛ばされ、気を失ってしまった。
「大丈夫ですか、昴さん!」
突き飛ばした女の子のほうを見て、俺は言葉を失った。
その直後に、真帆たちも俺の部屋に入ってきた。
「どうした、もっかん!……え?」
真帆たちも部屋の中の光景を見て驚きを隠せないようだ。
「もっかんが……二人……?」