紗季:「世の中にはこんなに酷い目に遭ってる人がいるのね…」
今日の社会科の授業はある意味衝撃でした
私達と同じくらいの歳なのに、毎日生きるために必死にならざるえないということ…
そして、私達がどれだけ恵まれているのか、そんなことを痛感させられた授業でした
紗季:「私って恵まれてるわね」
こうやって毎日勉強したり、バスケットしたり…
長谷川さんがやってきて以来、いつもの日常もさらにこうやって楽しくなって
それにしても、女バス部員の長谷川さんへのデレデレ具合は本当にすごいと思う
トモは今すぐにでも婚姻届出しに行っちゃいそうなくらい。誰が見てもその好き好きは隠せてないわね
真帆は真帆で慕ってるし、恋になるのも時間の問題。愛莉はまだ自分の気持ちに気づいてないだけ
ひなは…『お兄ちゃん』なのかもしれないし、もしかしたらそれ以上…?
真帆:「サキ!練習いこーぜ。そーいえばすばるんがサキに何か言いたいことあるって。もしかして告白かも?」
紗季:「そっ、そんなことあるわけないじゃない!」
真帆:「そこまでムキになるって…あやしー」
紗季:「もう!そんなことないって!いいから行くわよ!」
真帆:「へいへい」
そう、長谷川さんが私のこと好きなんて、絶対に有り得ないわ
もうトモがメインヒロインだって決まっちゃってるようなものじゃない
そりゃ長谷川さんが私のことを好きだと言ってくれるなら、それは女として嬉しいことだけど…
でも分かってる。私は小学生、長谷川さんは高校生。そういう関係になること自体がおかしいわ
最近はそういうのも犯罪になるらしいし…トモの恋は応援してあげたいけど…
でも他の子だって長谷川さんに…私だって…
…『私』?なんで?
そんなことない。うん、きっと、そんなことないわ
今日の練習はこれで終わり
結局長谷川さんのお話は、来月の練習の日時の確認でした
真帆:「どーしたサキ?…あーそうか、うん、まぁガッカリすんなー」
紗季:「何を?」
相変わらず真帆は私をからかって…別に告白じゃないからといって、なんとも思ってないわ
真帆:「にしてももっかん、今日はすばるんと密着プレイをおたのしみで…」
智花:「ふえっ?そ、そんなことないよ!あれはただのストレッチで…」
ひなた:「おにーちゃん、ともかのにおいにむちゅう」
智花:「…っ///」
真帆:「もっかんはすばるんキラーですな」
智花:「もぅ…真帆、これ以上言ったら怒っちゃうよ…」
トモ、隠せてない隠せてない
こうしてみると本当にトモは長谷川さんに夢中なのよね
真帆:「と、とおまきにうらやましそーにそれを眺めるアイリーンとサキなのであった」
愛莉:「えっ?そんなわけないよ…うん…」
紗季:「もう…見てないし羨ましくなんてないわ!」
見てないのは嘘だけど…トモ、顔を真っ赤にして嬉しそうだったわね
昴:「みんな、きちんと体を休めておいてね」
一同:「はい!」
昴:「みんな来たな。今日は先日の試合をビデオで見なおそう」
この前は近くの○△小学校と練習試合でした
負けちゃったけど、フィードバックする必要があるし、今日はそのビデオの見直し
あの時に真帆があんな動きしなかったら勝てたかもしれないけど…
昴:「よし、ビデオはつなげたし…みんな見るぞ」
長谷川さんを中心に、右隣はトモがキープ。ほら、また好き好きビーム出てる…
ひなはいつもみたいに長谷川さんの膝の上。…お尻をこすりつけてるように見えるのは気のせいかしら?
私は…このあたりで…
真帆:「ニヤニヤ…」グイグイ
長谷川さんの左に距離をちょっと取って座ったのに、真帆が私をグイグイと長谷川さんへ押し付けてくる
紗季:「(真帆、やめなさい)」
真帆:「(サキ、もっかんに負けないように体を押し付けてアピールだ!)」
紗季:「(真帆、あんまり押さないで。そんなつもりないから)」
そして長谷川さんと密着する私の体
昴:「?」
紗季:「あっ、なんでもないです…」
真帆:「ニヤニヤ…」
体育服というのもあって、私の体に伝わってくる長谷川さんの温かさ…
どうしよう、ちょっとドキドキしちゃう…
昴:「よし、まずこのシーン。紗季がこう動きた時に真帆がこう動くと…」
紗季:「たしかにそうだけど、あれは真帆が…」
真帆:「でもその時サキが…!」
昴:「ストップストップ…一つ一つ問題を抽出していくぞ…」
長谷川さんの仲裁できちんと問題点が明らかになっていき、
その後はスムーズに見直しは終わりました
確かにあの時の真帆の動き、こういうふうに見れば私としても使いやすかったのね
昴:「それでな、愛莉のこの場面での動きなんだけど…」
愛莉はだいぶ体の使い方というか、そういうのが上手になってきてるわね
背が高いことへのコンプレックスも、だいぶなくなってきたみたいだし…
昴:「そんで智花な、…まぁ智花はいいか。あえていうならこの場面な、ここでひなたを上手く使えば…」
智花:「はっ、はいっ!///」
昴:「っと、とりあえずこんなもんだな。よし、15分休憩したら練習を始めよう!」
一同:「ハイ!」
私の課題はこのあたりかな。ちょっとそれを考えながら練習してみようかしら
ひなた:「おにーちゃん、どこいくの?」
昴:「おお、ちょっとミホ姉…美星先生に呼ばれてたのを忘れてた。もしかしたら遅れるかもしれないな
ひなた、みんなに伝えといてくれるか?」
ひなた:「おーっ」
真帆:「さてさてこのパソコンなんだけど、年頃の男がパソコンでやることってなーんだ?」
またなにか始めた…
真帆:「んーっと、じゃあもっかん。」
智花:「えっ、えーっと…?バスケ関係かな?」
真帆:「ぶっぶーっ!もっかんは年頃の男を分かってねーなー。サキは分かるだろ?」
紗季:「さぁ?」
軽く流すのが得策ね。何を狙ってるのかいまいち分からないし…
真帆:「つれねーなぁ…じゃあアイリーン!」
愛莉:「私もバスケ関係だと思ったけど…」
真帆:「はぁ…アイリーン、それじゃすばるんゲット出来ないぞ!?」
愛莉:「わ、わたしはそんなこと思ってないもん…!」
真帆:「ヒナは?」
ひなた:「おー、こづくり?このまえたけなかがそんなこと言ってた」
真帆:「そう、そうなんだよ。男がやるのはエロ!エロ!
というわけですばるんのパソコンのエロを探すぜ!」
真帆、それは学校のパソコンよ。そんなエッチなものなんて入ってるわけないじゃない
真帆:「あ、あれ?なにこれ?『この操作はなんちゃら者には出来ません』?」
昴:「よーし、練習はじめるぞー…って真帆!学校のパソコンで遊ぶなよ!」
今日の練習もこれで終わり。着替えて家に帰りましょう
ん?長谷川さん、ひなと何を話してるのかしら…
昴:「ひなたちゃん、このあと…ボソボソ」
ひなた:「…おにーちゃん、わかった。」
何か話してたみたいだけど、ここからじゃ分からないわね
必要なら私達にも話しかけるはずでしょうし、そうでないのなら無理に聞く必要なんてなさそう
そういえば昨日買った新作、まだ読んでなかったっけ…?ご飯食べたら読もうかな
愛莉:「わたし、もうちょっと練習してから帰るね」
紗季:「そう、練習頑張ってね。また明日」
真帆:「頑張れアイリーン!じゃあね!」
智花:「私ももうちょっと練習しようかな…あれ、昴さんもう帰っちゃったのかなぁ…」
紗季:「ひなに用事があるみたいで、二人してどこかに行ったわよ」
真帆:「逢引きですな。もっかん大ピンチ!」
智花:「ふえっ、えっ…そんな…」
紗季:「真帆、あんまりトモをからかうのはやめなさい。トモ、心配しなくても長谷川さんはトモに首ったけよ」
智花:「もぅ…紗季まで…」
さて、そろそろ寝ようかな…もう10時かぁ…ちょっと夢中になっちゃったわ
この作者さんのシリーズ、読んでいると時間を忘れてしまうのがダメね…ふふっ
紗季:「にしてもトモ、ますます長谷川さんに夢中ね」
長谷川さんは確かにバスケットを教えるのが上手だし、人柄もすごく良い人
歳はちょっと離れてるけど、トモが惹かれるのも分かるわ…
そして、あのぬくもり…私もいつか、あんなふうな理想の人に出会えるのかしら?
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昴:「よし、今日の練習はここまで。みんなきちんと汗拭いて、風邪引かないようにね」
紗季:「さて、着替えて帰りますか。ひな、ちょっとお腹が出てきてるわよ。きちんと食生活気を付けないと」
ひなた:「おー。ひな気をつけてるよ?」
紗季:「そう。それにしては最近動きがおかしいんじゃない?」
ひなた:「うーん、さいきん体がおもい」
愛莉:「体調が悪いなら、きちんとバスケ休まないとダメだよ」
ひなた:「今のところ大丈夫」
ひなは最近大きく胸も膨らんできて、近いうちに愛莉を追い越してしまいそう
だけどお腹も出てきてて、ちょっとおかしな感じだったわね
体全体は細いのに、お腹だけ前にちょっとだけ飛び出てるって…
まぁ、ひな自身が大丈夫って言ってるんだし、ちょっとしたものなんでしょう
愛莉:「ストレッチしてから帰るから、みんな先に帰ってていいよ。」
紗季:「分かったわ。愛莉、また明日」
愛莉は最近すごく練習に気合が入ってるわね
これも長谷川さんのおかげかしら。もしかしたらトモと愛莉で長谷川さんの奪い合いになったりして…
だけど次の練習の日に、私は予想に反するものを見ることになりました
あれだけ熱心にバスケに打ち込み、長谷川さんに対する視線も段々と熱くなっていた愛莉
そんな愛莉が、まるで意図的に長谷川さんを避けるかのようにしているって…
何かあったのかしら?
紗季:「愛莉、長谷川さんと何かあったの?」
愛莉:「え、あっ、別になにもないよ…」
なにか含みがある言い方ね…
紗季:「言い難いことでもあるの?私で良ければ…」
愛莉:「ううん、紗季ちゃん、ありがとう。でも大丈夫だよ」
紗季:「そう、分かったわ。何か私に出来る事があったら手伝うから」
愛莉:「うん…ありがとう、紗季ちゃん」
それからというもの、女バスには微妙な空気が漂うようになりました
やっぱりきっかけは愛莉が長谷川さんを避けるようになったこと
でも本人はかたくなに理由を話したがらないし…
真帆:「最近のアイリーン、どうみてもおかしくないか?」
紗季:「そうね…でも愛莉自身が話したがってないし、私にもわからないわ」
ひなた:「あいり、はやく元気になってほしい」
智花:「そうだね…」
結局、愛莉が長谷川さんと仲直りすることはありませんでした
さらに、愛莉が長谷川さんを避けるようになって2ヶ月ほどでしょうか、
真帆も女バスの練習に姿を見せなくなってしまいました
授業の合間に話を聞いても、「習い事が忙しくて…片付いたらまた来るからそれまでゴメン」の1点張り
愛莉は段々と周囲に無関心になり、女バスの空気はますます悪くなっていました
ひなは周りが見ても明らかなくらい、動きが悪く、すぐに疲れて休むようになりました
長谷川さんは、そんなひなを見ると、苦虫を噛み潰したかのような顔で視線を逸らしていました
そんな状況で、私は雰囲気の悪さをすごく気にするようになりました
どうしたら元のように戻れるのか、そんなことを考えていたら…
私は誰かとぶつかってしまったようでした。
男A:「おい、そこのガキ」
紗季:「はっ、はいっ、ぶつかってしまって。すみませんでした!」
男A:「謝って済むとでも思ってんのかガキ?」
ええと、こんな時は警報ベルを鳴らさないと…
男B:「おおっと、それはやらせないぜ」
鳴らそうとした警報ベルは別の男の人に取られてしまいました
紗季:「あやまったはずです。これ以上何かするのであれば、警察を呼びますよ」
男A:「お前、この状況で警察呼べるのか?大したエスパーだな」
男C:「いいねぇ、こういう気が強そうな子。高値で売れそうだ」
周囲を見渡すと、私に絡んできている男の人3人以外、誰もいませんでした
この男の人達は、この状況を狙っていたようでした
完全にやられた…私はどうなってしまうのか、生きて帰れるのか…
男A:「おとなしく俺達の相手しろよな」グイッ
紗季:「い、いやです!…いや…です…グスッ…」
男C:「泣いたって許さないぜゴルァ!」
紗季:「や、やめて…やめてください…」
男B:「いくら泣いても助けは来ないぜ。まぁ小学生なのには変わりないしな。
ええと、この制服は慧心だよな。そういえばこの前ヤッた慧心のガキ、気持ちよかったな!」
男A:「ああ、マホとかいう女だっけ?あいつはいい肉便器だったな」
紗季:「マ…マホ…?」
男C:「なんだ知ってるのか?なら話は早い。お前も俺たちに従順な肉便器にしてやんよ」
にくべんき?なによそれ…?それにマホってもしかして…?
ううん、そんなことはないわ。真帆はこんな人達のこと、嫌いなはず!
それよりも、何とかして逃げないと…
そうして、私は男2人に連れられて路地裏へ…生きて帰れるのかしら…
みんな、ごめんね…もうちょっと親孝行したかったなぁ…
男A:「グエッ!」
男B:「おい男Aどうした?…これは…バスケットボール?」バシーン!ガタリッ…
バスケットボール…?それよりもこれはチャンス!
男C:「くそ、誰だ!?ってクソ、逃げるなガキ!」
昴:「おおっと、おとなしくお縄についてもらおうか」
美星:「昴!こっち2人は確保した!他にはいないか?」
昴:「いないみたいだ」
長谷川さんに、みーたん…た、助かったぁ…
昴:「よし、これで逃げられないだろう。…紗季、大丈夫か?怪我はないか?」
紗季:「はい、…長谷川…さん…ありがとう……ございます…うわああああああああああああああああああん…」
昴:「紗季、もう大丈夫だから」
そうやって泣きじゃくる私は長谷川さんの胸の中で抱きしめられました
私は自分の腕を、長谷川さんの背中に回しました…
この人が、私の白馬の王子様なのかも…ううん、きっとそう
私のためにここまでしてくれる人。トモや他の子には…渡したくない…!
しばらくたってから、私は事件の一端を教えてもらえました
捕まったのは元暴力団関係者の3人で、警察の取り調べに全く答えず、
なぜ私を襲ったのかは分からないようです
ただ警察の人がいうには、予め人が来ない場所で犯行を行うなど、
悪質な点が多々見られ、なにかしら裏にありそうなのだとか…
長谷川さんやみーたんがその場にいたのは、たまたまその近所のスポーツ用品店に用事があった際、
私が男達に絡まれてるのを遠巻きに目撃したからみたいでした
あとを追ってみると、やはり私に対して暴力を振るっていることを確認し、
警察を呼んだ後に取り押さえてくれたようでした
それからというもの、私は長谷川さん奪還計画をスタートさせました
最大のライバルはもちろんトモ。どうやってトモよりも私のことをもっと見てもらおうか、
そういうことを考えていると、胸がポカポカしてきて、股間がムズムズして…
練習では常に長谷川さんのそばをキープし、事あるごとに身体を押し付けました
私の貧相な体でも、男の人はそういうのに弱いって本で読んだしね
それを見るとトモも同じように体を押し付け、長谷川さんにアピールしてきます
それを困惑してるのか、苦笑いする長谷川さん…
それを遠巻きに怪訝な表情で見ている愛莉
壁によりかかって辛そうに休んでいるひな…真帆は相変わらず姿すら見せません
女バスはいつのまにか、以前に増して分裂してしまったようでした…
それでも、私は長谷川さんのパートナーになりたい!
その1か月後でしょうか、昼休みに愛莉が突然、給食を全部吐き戻してしまいました
愛莉:「うっ…ああっ…おえええええええええっ…」
紗季:「ど、どうしたの愛莉?!そうだ、保健の先生!先生呼んでくるから!」
愛莉:「おええ…ありが…おえええええっ…」
そうしてすぐに保健の先生を呼びに行き、愛莉はすぐに病院へ行きました
その翌日の練習に、長谷川さんは姿を見せず、代わりにみーたんがやってきて、
衝撃の事実を私達に話したのでした
美星:「あんまり言いたくないんだが、昴は警察に捕まった。理由は…話せない
高校も、一身上の理由ってことで退学になってる…
みんなに迷惑かけて、本当にごめんなさい…
バスケの指導は当分はわたしがするけど、みんなそんな気分じゃ…ないよね」
智花:「そんな…どうして…?」
紗季:「理由を言わないと納得出来ません!」
美星:「ごめん、これ以上は『みんなの名誉』のために言えない。本当に、ごめんなさい…」
なんで?どうして?あんなに勇敢な長谷川さんが警察に捕まった?
そんなのおかしい!ありえないわ!
智花:「なんで…昴さんのおかげでここまで頑張ってこれたのに…」
紗季:「…」
なんどみーたんに迫っても、何も教えてくれませんでした
私の好きな長谷川さんは、もう戻ってこないの?
紗季:「愛莉、ひなも何か言ってよ!」
愛莉:「…」
ひなた:「…」
そうでした、女バスはもう、あってないような部…
結局そのまま私たちは家へ帰されました
亜季:「長谷川昴さん、だったかしら。あの人に何か嫌なことはされなかった?」
紗季:「ううん、何も。むしろ長谷川さんは素晴らしい人だったのに…」
亜季:「そう、…なら、いいのよ。」
紗季:「ねえ、長谷川さんがなんで捕まったのか、知ってるの?」
亜季:「…ごめんね、あなたにはまだ早いわ」
私は何も教えられず、まるで蚊帳の外
学校の授業も、好きだった読書も、まるで気が入らず…
思い出すのは長谷川さんの勇姿。それを思い出すたび、私の体は熱くなっていき…
その頃他のクラスの子が持っていた漫画に載っていた「オナニー」を試すようになり、
それが気持ちいいと分かると、毎日オナニーをして気を紛らわせていました
だって、長谷川さんがいない学校なんて、長谷川さんに会えない読書なんて…意味ないわ…
その1週間後、ひなが急に転校することになりました
行き先は海外…ひなの顔を見るに、私たちは再びは会えないようでした
女バスは事実上の廃部。バスケが特に上手だったトモでさえもバスケットを辞めてしまったようでした
真帆は真帆で、放課後になると遊び回っているようで、もう私達のことなどどうにも思っていないようでした
あれだけ大好きなバスケットも、「あんなつまんねー運動もうやらねー」と…
その直後、愛莉が入院すること、退院は早くて卒業日前数日になるということを教えられました
でも、もう私にとって、愛莉がどうであろうとあまり興味は出ず…
愛莉:「ごめんね…明日から病気で学校を休みます…」
智花:「…そう」
紗季:「…」
真帆:「あー、そう?卒業式までには戻ってこいよ!」
学校に残ったのは、私とトモ、真帆の3人だけ。仲良くみんなでバスケットをやっていたのが嘘のように、
お互い話をすることもなく、毎日気だるそうに生きていました
そんなある日、真帆が学校に来なくなりました
それと同じくして、学校に沢山の警察官がやってきて、学校の隅々を調査しはじめました
風のうわさで、『学校中で児童売春が流行していて、首謀者が捕まって芋づる式に問題が明るみになった』
と言うことを知り、一度は否定したマホ=真帆という事実を否応無しに叩きつけられました
毎日の登下校、常に週刊誌の記者が校門に立っていて、帰る子みんなにインタビューをしていました
その記者の顔、私たちのことよりもお金しか目がないのかな、というくらい嫌な顔だったのを、
今でも覚えています
そして残ったのは私とトモ。でももうお互い赤の他人
私もトモも、クラスメイトと話すこともなくなり、浮いた存在、
それを通り越して触ってはいけない存在になっていました
それでも私は気にせず、長谷川さんのいない寂しさをオナニーで紛らわし…
一度母親にオナニーがバレましたが、可哀想な目で私を見て、
「ほどほどにしなさい」と一言。それ以降、家でもお互いに気まずくなりました
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今日は卒業式。私は慧心をやめて、他県の中学校に行くことにしました
今日はこの学校最後の日。だけどもう、そんなことでさえもどうでもよく思えて…
私の人生がおかしくなったのはなんでなんだろう
バスケットを始めたこと?長谷川さんと出会ったこと?それとも…?
ああ、なんだかどうでも良くなってきちゃった…
そんなふうに思って過ごしていた春休み、ある記者が私の新しい家を訪ねてきました
記者:「あなたは、永塚紗季さんですね。私は◯△新聞のこれこれと言う者です」
紗季:「私に何か用ですか?お話することは、もうありませんけど」
記者:「いいえ、私はあなたに『事実』を教えに来たんです」
紗季:「事実…?」
記者:「はい」
その記者は児童売春廃絶を訴える記事を書くため、私のことを裏で調べていたようでした
そして、長谷川さんに関する衝撃的な事実を教えられることになったのです
記者:「君は、長谷川昴という人間を知っているね
彼は簡単に言うと性犯罪を犯した。更にいうと、児童ポルノ禁止法だ」
紗季:「児童ポルノ…?」
記者:「彼は君以外の女バス部員、全員とセックスをしてる
小学生とのセックスは法律で厳しく罰せられるんだが、彼は4人と関係を持った
そして、そのうちの2人が妊娠した」
妊娠…?もしかして…?
記者:「察しが付いたかな?袴田ひなた、香椎愛莉。この2人は彼の子供を身ごもってしまった。
袴田さんはアメリカで女の子を出産、香椎さんは国内の病院で男の子を出産した。
袴田さんは元気なんだが、香椎さんは出産時のトラブルで昏睡状態が続いている」
紗季:「…」
記者:「おそらく君はこの情報を誰にも教えてもらえなかったはずだ。
だが君には知る権利がある。だからこうやって教えた。
…おっと、三沢真帆、彼女は今少年院に入っている。児童売春で中心的な役割を担っていたようだ。
あと湊智花。彼女は…」
紗季:「もう、もう…いいです…。」
記者:「そうか…」
紗季:「…それで、それをなぜ私に?何か考えが他にもあるんでしょう?」
記者:「流石に賢いな。君は。君は悔しくないのかい?
君に対してあれだけ見かけだけ良くしていた男が、裏では少女を貪る罪人だったんだよ。」
紗季:「…」
記者:「私は君の力を借りたい。君にはそれに見合うだけの能力がある。
…1週間後にまた来るから、それまでに考えていて欲しい。
君のお陰で、世の中の犯罪が減るかもしれない。」
紗季:「…考えさせてください」
紗季編end