「んぁ……ふ……」
月明かりの射す部屋に、抑えきれなかった私の声が漏れる。
思わず見とれてしまうような満月の夜に、私は自らを慰めていた。
「ん……」
まだ成長中の胸に添えた右手を、先端の乳首の部分をクリクリと摘まむように動かす。
ゾクっとする快感が私の身体を走るあの感覚が私は好きだ。
力を強めると、痛みにも似た強烈な刺激に声を我慢することが出来なくなる。
もしあの人がそれをしてくれたなら……。
そう考えた途端、私の手は私の物では無くなり──もちろんこれは比喩表現であり、私の手は私の手なのだが──あの人の物になった。
目を瞑ると、『あの人』に無理矢理鋭い刺激を与えられる私の姿が思い浮かぶ。
「んっ!」
未成熟な胸に走る電流に思わず声を発してしまう。
『あの人』が私の乳首を摘み、弄ぶ。
少し痛いくらいの快感が私に襲いかかる。
「ぁ……」
いつもこれだ。
あの人のことを想像しながらしていると、すぐに濡れてきてしまう。
もう濡れてるの、と『あの人』が意地悪く尋ねる。
真っ赤になって言い訳をしようとする私の下着を『あの人』の手が強引にずらしてくる。
露わになった秘部に指先が伸びてきて、私の敏感なクリトリスを優しく押しつぶす。
「あっ……」
胸とは比べ物にならない甘美な刺激に私は翻弄される。
いくら敏感な部位だからといっても、普段ならここまでの快感はない。
あの人のことを想像しながらすると、いつもより感じてしまうのだ。
やっぱり私は、あの人の事が……
そこまで考えてハッとする。
私の親友があの人に好意を寄せているのを私は知っている。そして私はそれを応援するとも言っている。
あの人のことを想うことは親友を裏切ることになるのではないかという、もう何度目かも分からない葛藤が脳内でうまれる。
でも──
──手が、止まらない。
色々と考えている頭とは対照的に、手は私に快感を与えるためだけに動いている。
さっきまで優しく触られるだけだったクリトリスは、今では先程の乳首のようにクリクリと摘まれている。
そのため、先程よりも強烈な快感を受ける事になる。
「んっ……んん……ぁっ……」
鼻にかかった甘い声が私の意思に反して零れ落ちる。
くちゅり、と聴こえて来る水音が私の羞恥を煽り、その羞恥はさらに私を昂らせる。
私は長い髪を乱れさせながら、徐々に絶頂に向かって上り詰めていった。
「んっ、あっ、あっ」
いやらしく漏れる断続的な吐息が私の快楽を高めていく。
手の動きは激しくなる一方であり、それに伴い私は絶頂に押し上げられる。
そして、あの人を想いながら──
「んんんんっっ!」
私は達した。
はぁはぁと荒い息をつきながら、余韻に浸る。
快感の余韻が全身に残って気だるい身体を動かして後片付けをして、布団に入る。
頭をよぎるのは、さっきの想い。
虫の音を聴きながら、ふと思った。
自分の気持ちに素直になろう。
親友には悪いけど、私も好きだから。その気持ちは大事にしていこう。
満月の夜に、私はそう決意した。