「あああああ―――っ!!」
私の全身を、めまぐるしいほどの衝撃が突き抜けた。
これは―――『快感』だ。
(こんな感覚、私知らない!)
「はぁ、はぁ・・」
私が息も絶え絶えだというのに、私の股間に顔を埋めていた男は、冷静に言ってのけた。
「イッてはいけないと言ったのに、イッてしまわれたんですね、お嬢様。・・・・『お仕置き』、ですよ?」
その言葉に、頭から血の気が引く。おかげで浮遊感も何もかも吹き飛んだわよ。
「やぁっ! 待って!」
「ダメです」
そう言って、私の中に埋めていた指を動かした。
「ああっ!」
「今度は、いいと言うまでイッてはいけませんよ? 我慢出来たら、『ご褒美』を差し上げますから」
『ご褒美』・・それが何を指すのか分かり、おなかの奥の方がじゅんと熱くなり、
とろりとした何かが私の内から出た。
(『ご褒美』って何よ? なんで、こんなに切ないの?)
「おやおや、よだれが出てきましたよ? そんなに欲しいのですか? なら、頑張ってくださいね」
男は耳元で囁き、そのまま熱い舌を耳に入れる。それだけで、身悶えしてしまう。
男の髪が私の首に掛かってくるけど、その程度の刺激にさえ、感じてしまう。
その間も、指は出たり入ったり、中で曲げたり、こすったりと、常に快感を送り続けた。
「んっ・・・・ん、んんっ・・」
私は必死に喘ぎを飲み込んだ。そうする事で、快感も抑えられるような気がして。
絶対に、イッてはダメ。
男の舌は耳をさんざん弄った後、少しずつ下に辿っていく。
鎖骨の辺りで、チクリとした痛みを感じた。
ああ――『跡』が付いたわね。
「あっ・・、・・あっ・・、あっ・・・・」
いや、イキたくない。だって、これじゃ足りないもの。
何度イッても、これだけじゃイヤなのよ。ねえ、分かってるでしょ?
「・・んんぅっ・・あ、ああっ・・、や、やぁああ・・っ」
まともに言葉を発せられない口に代わりに、眼で訴えた。それだけで、あんたには通じるはず。
その証拠に、微笑んで優しいキスを額に落としてくれた。よく頑張りました、と
小さい頃にしてくれたように。
(そう、そうしてもらえると、いつも私はとても嬉しかったっけ)
「もういいですよ、お嬢様。イッて下さい。・・・・お嬢様?」
いいって言われても、これだけじゃイヤなんだってば。
また眼で訴えると、クスリと笑い、手の動きを再開した。
「や、っ・・」
この意地悪男!
怒りとじれったさを込めて睨みつけると、少し困ったような顔で笑い、言った。
「すぐに『ご褒美』は差し上げますから、取り敢えず一度イッて下さい。入れてすぐにイかれたら、
・・・・私が楽しめないでしょう?」
甘い甘い、声。他の時では聞けない『雄』の声。ああ、どうしよう。その声だけで、
イッてしまいそう。
(嘘。私、こんな声聞いたことない)
そうして、男は私の泉に口付けした。
「あああぁっ!!」
その舌は、傍若無人に泉を荒らしていった。
思わず男の頭を太股で挟み込み、ただ感じるしかない。
「も、もうっ・・!」
イく、イッてしまう!
もう駄目だ、そう思った時、男はどこかを口に咥え、引っ張った。
「――――――っ!!」
・・・・頭が、真っ白になった。何もかもが弾け飛んだ。
「・・はぁ、・・はぁ・・・・はぁ・・」
放心していると、男が自分のズボンのベルトを外している。
ああ、まだ終わっていないのだと、うまく働かない頭で思った。
ううん、むしろ、まだ始まったばかり。
前を肌蹴げさせ、男は言った。
「さあ、ご褒美を差し上げますよ。・・・・コレが、欲しかったんでしょう?」
そうよ、それが欲しかったのよ。
男が出した彼自身を見ながら、ごくりと唾を飲み込む。
でも、なぜかはっきりとは見えない。
(当たり前よ。いくらあいつのでも、その状態のは見たことないもの)
「お望みどおり、挿れて差し上げます。だから、足を広げて下さい。・・・・私に、お嬢様のかわいらしいそこがよく見えるように」
恥ずかしさはなかった。
早く、早くと――急くような気持ちで、うまく動かない足を広げた。
「ここに、私のコレを挿れて欲しいんですよね?」
ゆっくりと、私のそこを撫でる。
「ひゃあぁぁ・・」
そうよ、欲しいのよ。焦らしてないで早くちょうだいよ。
「クスクス。物欲しそうにヒクヒクしてますよ。――ねえ、お嬢様。どうすればいいのか、
分かりますね?」
私の足を抱え上げ、すぐにいれられるようにしてるくせに、まだ焦らそうとする。
もう、ダメ。これ以上焦らされたら、おかしくなっちゃう。
私は、恥も外聞もなく泣き出した。
「も、・・やぁあ。い・・じわ、る、しな・・でぇ・・・・ふぇ・・」
男は、困ったように――けれど愛しそうに笑いかけ、
「お嬢様に泣かれては、仕方ありませんね。――さんざん焦らして申し訳ありません。
お嬢様が、あまりにもお可愛かったものですから」
「・・ひくっ、コ、コンチぃ・・・・えっ、ひっく・・」
優しい、とても優しいキスが降ってきた。――私の唇に。
今の状況には不釣合いな、いやらしさの欠片もないただ触れるだけのキスだけれど、
私は天にも昇るような気持ちになった。
「――愛していますよ」
――――!!
何も、言葉にならない。今まで感じたことのないほどの、幸福感だった。
幸せで涙が出るって、本当だったんだ。
コンチ、コンチ、コンチ――
私の心のすべてがコンチで満たされたような気がした。
そして、体も何もかも満たすべく、コンチが内に入ってくるのを感じた――
ぱち。
「・・・・・・・・え?」
目が覚めた。何が起きたのか、頭が働かない。
――夢?
嘘。嘘、嘘、嘘!
夢なのは分かってるわよ、あんなことなかったもの!
でも、なんで私があんな夢を見るのよ! それも、あんなにも詳細に!
私、まだ小6よ!?
しかも、なんで優駿じゃないのよ!?
そう、相手はあいつ――コンチだった。
ふと唐突に、夢でのコンチを思い出し、顔が熱くなった。
初めて見た、あんな顔。あんなに――『男』だったなんて。
ぶるっ
体が震えた。
なんだか、まだ夢の続きみたい。だって、体の奥の方がおかしい。
熱くて、むずむずして、疼いてる。
なに、コレ。おかしい。なんか、ヘンになる。
やだ、たすけて、コン――
「おや、お嬢様、今朝はもう起きてるんですね」
!!
声に驚いて振り向くと、そこには思った通りの――そして今は一番見たくなかった顔があった。
「? お嬢様、どうかしましたか?」
〜〜〜っ!
なんだか、無性に腹が立ってきた。私があんな夢を見て、どんな顔したらいいのか
わからないっていうのに、こいつは平然と、いかにも何も知りません、って顔して。
どがっ!!
「ぐはっ! ・・お、お嬢様!? 朝から何をなさるんです。私はこんなお嬢様にお育てした
覚えは・・・・ごはぁっ!!」
ごちゃごちゃうるさいから、止めを刺してやったわ。
あれは悪夢よ、なんであんなの見たのかわからないけど、これ以上はないって位の悪夢だわ。
「けれど、夢というのはその人の願望が表れるといういいますしね」
「そっ、そんなことあるわけないでしょ、って、まくまく!?」
一瞬コンチかと思ったけど、ここにいるはずにないまくまくだった。
なんであんたがここにいるのよ!?
人の思考読まないでよ!!
「いやぁ、たまにはコンチ君の手料理をお相伴しようと思いまして。それと、菊花さん。
あなた、夢がどうとかおっしゃっていましたから、とりあえず一般論と言ってみただけですよ」
「やだ、私ったら口に出してた!?」
過保護のコンチが騒ぎ出すかと思ったけど、まだ回復してなかったからほっとしたわ。
「で、どういった夢を見られたんですか?」
「なんでもないわよ! それより、ご飯食べに来たんでしょ? もう出来てるはずよ!」
「ええ、それでコンチ君が菊花さんを起こしに来たんですよ。菊花さんが起きたのだから、
朝食にしましょう(倒れているコンチは無視)」
なんとかうやむやにして、この場はしのげたわ。
このまま、この悪夢のことは忘れよう。
けれど、思い出させる出来事があった。
その日の5時間目は体育だった。
更衣室で着替えていると、いつものように皐月が人の胸をチラチラと見てきた。
この年で胸がなくったって気にすることでもないし、むしろ大人になったら垂れるんじゃないかと
不安になるとべきだと思うんだけど、それでこの子が安心するわけでもないし、それであからさまに
安心して、あまつさえ人を哀れみの目で見たりするから、そんなこと言ってあげないけど。
「あれぇ?」
いきなり、皐月が素っ頓狂な声を出してきた。
「なによ、いきなり」
「菊花ちゃん、ここ、虫に刺されたの?」
「はぁ? こんな季節に虫に刺されるわけないじゃない」
「でも、赤くなってるよ?」
そう言って、私の鎖骨の辺りを指してきた。
「別にかゆくなんかないけど・・・・」
って、ちょっと待って?
そこって確か、あの夢でコンチに・・・・
「なんかぁ、キスマークみたいだねぇ〜」
呑気な皐月の声が、遠くの方で聞こえてくる。
みたい、じゃないくてそのものよ!
じゃあ、あの夢は・・・・?