甲子園出場の夢を叶えた大騒ぎから、ようやく落ち着いた日々が戻ってきたある日。  
彼は、もう一つのささやかな夢に挑戦しようとしていた。  
 
阪神の川藤似で酒屋の店主をやっている親父は、この時間帯なら配達でいない。  
酒屋の二階の自分の部屋に、安仁屋は幼馴染の八木塔子を呼びつけた。  
 
「で、なに? 恵ちゃん?」  
「あー。あ、まあ、アレだ。アレ」  
「え? アレ?」  
小首を傾げて振り返ると、少し、離れた場所でそっぽを向いていたはずの安仁屋が、彼女のすぐ近くにいた。  
あまりの近さに思わず壁際に追い詰められる。  
 
「…ずっと。オメーに、おあずけくってた約束、守って貰おうと思ってよ」  
 
拗ねたように斜に塔子を見下ろして、その肩を引き寄せた。  
小さな幼馴染の体がすっぽりと胸に収まった。  
「やらせろよ」  
 
『やらせろよ』  
野球部の練習の帰り道。  
いつもの冗談のように安仁屋は塔子に、そう声をかけた。  
『甲子園に連れてってくれたら、ね』  
条件つきとはいえ、それははじめてのOKの返事だった。  
そして、あれからもう半年以上が過ぎ。  
彼女を甲子園に連れてゆくという難しい約束を守った。  
 
 
「……け、恵ちゃん…」  
 
ずっと、好きだった幼馴染が頬を染め、上目使いで見上げてくる。  
それだけで余裕なんて、吹っ飛んでなくなった。  
自分のモノにしたくて、出来なくて。簡単に自分のモノにしたくなくて、意地を張り続けて。  
でも『自分へのご褒美』と、あえて手に入れるチャンスを突き放して遠ざけた。  
互いの気持ちを、なんとなく知りながら。  
 
両手で顔をとり、貪るように唇を重ねた。  
「…んっ…ふっ…んんっ…」  
 
幼馴染の柔らかい赤い唇を味わう。  
ピチャピチャと音をたてて、歯を割り、少女の舌を探り当てて、口内をゆっくりと犯してゆく。  
普段の憎まれ口とはまったく逆の、その優しい愛撫は、少女の理性と身体を溶かしてしまった。  
安仁屋は塔子の制服の襟元に手をかけ、片手で制服の上着を脱がせてゆく。  
小さなレースのついたブラの紐が頼りなく揺れる、裸の肩が露出して、  
安仁屋の思考がその肌色に染められ、獣欲に火がついた。  
首筋から胸元に雨のようなキスを降らせて、そのいつの間にかオンナの匂いを立ち上らせるようになった幼馴染の肌の匂いを堪能する。  
ブラの下に手を潜らせて、直にその膨らみのしっとりした感触を確かめ、揉みしだいた。  
 
(恵ちゃん。や…ダメ…。)  
 
流されてしまう。  
懸命に理性を呼び戻そうとして安仁屋の体を押し戻そうとずがる手が、不意に力をなくした。  
逞しい腕に抱かれて囁かれた。  
 
――好きだ。  
 
キスを続けながら、小さく。  
小さく。聞こえた低い声が、体から抵抗する気力を削いだ。  
思考が焼き切れたように麻痺する。  
 
恵ちゃんが、わたしを?  
他の誰でもなく、本当に、わたしを?  
甲子園のスターとして、たくさんの女の子に囲まれてた幼馴染。  
不良だった時には何人もの女の子と同時に付き合っていたことも。  
だからこそ塔子は期待をしなかった。諦めていた。  
口先だけのナンパなセリフを、冗談でしょと、あえて突き放した。  
それでこそ、安仁屋と健全な距離を保つことができた。  
 
野球ダコのある長い指が体を弄り、乳首を抓み、衣服の下に潜り込む。  
スカートの下に潜り込んでショーツをひっかけ、瞬く間に落とす。  
くびれた腰から、太腿への淫らで女らしい曲線が露わになる。  
 
「きゃっ…?! ちょっと…っ」  
 
包み隠そうとする手を取って留めた。  
中央に綺麗に手入れのされた繁み。女の匂い。何度もヤり、慣れてしまった女の匂い。  
それでも、惹かれるように。  
 
「だ…ダメ…っ……そんなことっ……や、やだ、恵ちゃんっ」  
壁に体を預けさせ、跪いた安仁屋の端正な顔が、塔子の股間に沈む。  
甘酸っぱい匂いをさせる繁みの奥に、安仁屋の長い指と生温かい舌が割り込んだ。  
ヌプッ。  
温い淫水が音をたてて零れる。  
 
(あぁ、恵ちゃんに、あたしの、舐められてる…。…恵ちゃんの、舌、熱い…。)  
ピチャピチャと、音を立てて敏感な箇所が舐められ、  
自分が濡れていること、感じているを自覚する。  
 
「あっ…あぁ…け、恵ちゃんっ…恵…ちゃん…」  
「力、抜いてろよ…。最初は、ちっと痛いかも…」  
 
しとどに濡れた塔子の秘所は処女だけに堅く、それでも安仁屋の指の抽出をスムーズに助ける。  
ズボンの後ポケットから、用意していたコンドームの袋を抓み出して、  
安仁屋は自分のモノをズボンから引きずり出した。  
塔子のクリストスを弄くり攻め、喘がせながら、慣れた様子で、そそくさとモノに装着した。  
極めて冷静さを装いながら、彼女の女性器、そこに期待に脈打つ自分の男性器を宛てがう。  
宛てがわれた熱く堅い異物感に、彼女は恐怖に襲われ、身を固くした。  
 
「…もっと、力抜けよ。喰おうってんじゃねぇんだからよ…」  
「……どこが。恵ちゃんの、嘘つき…」  
真っ赤な顔で、涙目になり拗ねられて、焦ってしまう。  
 
「う、うるせー…。ま、散々、お預けくってきたんだしな……。もう一回、ちゃんと言うとだな。……『やらせろ』」  
優しく低い声音に、力が抜ける。求めに、抗がえない。  
素直に頷いた。  
 
「うん……いいよ。きて、恵ちゃん…」  
「……おぅ…」  
ちょっと照れたように、安仁屋は長い前髪に顔を隠した。  
女の細い腰に片手を添えて、安仁屋は少女のナカに腰を深く突き入れた。  
 
「…う、うぅん…っ!?」  
 
秘裂を割って、膣に痛みと快感と幸福を感じ、感じてしまう己自身に戸惑った。  
彼女の身体が揺すられて、粘膜と体液が擦れあう。  
その度にズチュズチュッと、淫らな妖しい水音がする。  
ゆっくりと安仁屋が、彼女のヴァギナにペニスを抽出する。  
内側の粘膜がこすれあい、なにか突起が当たる度に痛いのか快感なのか、わからない  
ムズ痒い快感が脳内で広がって、感じてはいけない感覚が、次第に全身へを支配してゆく。  
 
「あぁ…んッ!? …け、恵ちゃん…ッ」  
 
甘く、切迫した声が安仁屋の耳朶を打つ。  
 
「や……ダメ…こんなの…っ。おっきいよぉ…恵ちゃんっ…抜いてぇ…っ」  
「バーカ……もう、焦らしなんか、きかねぇぞ…っ」  
 
そんな強がりを零す安仁屋にも、余裕が無くなって、荒くなる呼吸と、  
ともすれば零れでそうになる小さな喘ぎ声を懸命に押し殺していた。  
繋がったまま彼女の体を抱えて持ち上げ、自分のベッドの上に下ろして、乱れた衣服の塔子にのしかかる。  
 
「オメー…は、俺の、オンナ…だ…。」  
 
余裕のあるフリをしながら、不敵に笑いかけた。  
靴下をはいたままの彼女の両足を開き、肩にかけて、足先からショーツを外して投げ出した。  
それは鍵を掛けた扉の前に、音もなく落ち  
 
そして、安仁屋は意外なくらいに激しいセックスをした。  
 
嵐のような官能の大波に流されて、流されて、戻れない高みにたどりついてしまう。  
目尻に大粒の涙を溜め、はじめて絶頂の予感に恐怖を覚えた。  
 
「あんっ…アンッ……けい…恵ちゃんっ……こ、壊れちゃ…ぅ…あ、あたしっ……んッ…んんッ…」  
 
汗にまみれながら、貪るようなキスをして。  
互いの体に翻弄されながらも、陶然と身を委ねていた。  
 
頭がクラクラする。きつく強く抱きしめられて、息ができない。  
安仁屋の腰の一突き一振りごとに、高みへ、より高みへと性の快感の荒波に突き上げられて……  
 
「あっ…ぅっ!ぁああぁぁー……っ」  
 
かたく瞑った目の奥で、快感の火花が散り、そして真っ白になった……。  
 
気がつけば、安仁屋の体にきつくしがみついていた。  
互いに、体の震えが止まらないコトを感じる。  
性行為の余韻に、体がじんじんと快感に酔っているようだ。  
ふわふわと頼りなく、身体の感覚が高みから降りてゆけない。  
 
「…おい」  
 
耳元で囁かれる吐息、気遣われるように  
髪を撫でられる。  
それだけでビクビクと反応し、どうしようもなく感じてしまう。  
 
「…恵…ちゃん…」  
 
耳朶を甘くはまれ、痺れたような快感が足の付け根から全身に続く。  
その余韻が、終わらない。  
 
「…大丈夫か?」  
 
心配気に、安仁屋が射精の終わったモノを塔子の胎内から引き抜くと、それだけでまたゾクゾクとした快感が身体を走った。  
「…うっ…んんっ…」  
名残惜し気な恍惚とした声が、自分の唇から漏れだして驚く。  
(……あたし、終わっちゃうの、残念だと思ってる…?)  
 
安仁屋が処理済みの避妊具をゴミ箱に放り込む姿を、ぼんやりと涙の溢れる横目で追っていた。  
 
(…恵…ちゃん…)  
 
その声が聞こえたのかどうか。  
安仁屋が振り返り、再び塔子の上に乗った。  
 
「おい…もう一発……いいか?」  
 
安仁屋は照れたように言って、隠すように置いてあったコンドームの包みに手を伸ばした。  
 
 
(終)  
 

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