都内某所にあるホテルの1201号室の浴室。そこで二人の男女が湯槽の中で抱き合い、キスをしていた。  
 
二人の男女、絹川健一と絹川蛍子は約束を果たす為にこの場所へ来た。  
健一は肩書きだけであるが結婚する、という蛍子の決断を受け入れた。  
形だけであれ蛍子が他の男の妻になることなど受け入れたくなかった。  
だけど今まで一人で苦しんで決めた蛍子の決意を無駄にはできない。これ以上蛍子を苦しませたくない。  
受け入れたのはそんな想いからだった。  
 
「んん・・・・ぷは」  
健一が唇を離すと蛍子はトロンとした表情を浮かべていた。  
「ホタル・・・・・」  
抑えが利かなくなった健一は蛍子の胸に手を伸ばして触れようとする。  
が、  
「ちょっと待て健一」  
蛍子が胸に触れようとする健一の手を掴む。  
「ここではダメだ」  
「・・・・なんで?」  
「察しろ」  
「いや察しろって言われても・・・・前にも風呂場でやったことあるだろ」  
「それはそうだが・・・ああっ!もう!!とにかくここではダメなんだ!先に出てベットで待ってろ!」  
と半ば強引に浴室を追い出される。  
健一はわけがわからなかったが、とりあえず脱衣所にあったタオルを腰に巻いてベットに向かう。  
(お預けか・・・・・)  
健一は少し悲しかった。  
§  
 
「やっぱ広いよな、この部屋」  
蛍子を待ちながらそんなことを思って部屋を見回す。もっと狭いと思っていたからこの部屋の広さには少し驚いた。  
「おい健一」  
声のした方向に顔を向けるとバスタオルを付けた蛍子がいた。  
「まったく何キョロキョロと部屋を見渡してるんだ、変だぞ。」  
「だってこんなに広いとは思わなかったからさ。」  
そうか、と言って蛍子は健一の隣に座る。  
「・・・・・・・・・・・・」  
「・・・・・・・・・・・・」  
お互いの気恥ずかしさからだろうか、それっきり会話が止まる。  
(何か話さないと・・・)  
健一がそう思い始めた時、先に蛍子が沈黙を破って話し始めた。  
「健一」  
突然の蛍子の真剣な声に健一は蛍子の顔見る。  
「こんなことになってすまない。だが私はお前を好きになったことを後悔していない。」  
もっとも、他の奴を好きなったことなどないしこれから好きになることもないが、と蛍子は続ける。  
「他の男と結婚してもお前を想う気持ちは変わらない、こんなことになってしまったから子供が欲しいと言うわけじゃない、私はお前を愛しているから・・・・だからお前との絆が欲しいんだ。たとえ・・・たとえそれが許されないことであるとしても・・・・」  
蛍子は目に涙を浮かべて想いを口にする。  
「ホタル・・・・・・」  
健一は蛍子を優しく抱き寄せる。  
「俺もホタルを愛してる。形とかじゃなくてホタルを愛したい、ホタルとの子が欲しい」  
自分の想いを蛍子に告げ、蛍子にそっとキスをする。  
「ん・・・・・」  
蛍子も目を閉じてそれを受けとめた。  
§  
 
「ん・・・んふ・・・んぅ・・・・・」  
健一の舌が蛍子の頬の内側をなぞり、唾液を絡め取る。そして舌を絡めてお互いの唾液を混ぜ合わせる。  
「ん・・・・・ん、はぁ」  
蛍子が唇を離す。互いの唇から唾液で糸が引いた。  
「ホタル・・・・」  
健一が蛍子をベットに押し倒す。押し倒した勢いで蛍子のバスタオルがはだけて蛍子の肢体が表わになった。  
「・・・あんまり見るんじゃない」  
羞恥心からか蛍子が言う。  
「綺麗だよ、ホタル」  
健一が素直な感想を述べると蛍子は顔を更に赤くした。  
健一はそんな蛍子を愛おしく思い、もう一度キスをし、そのまま首筋やうなじにも舌を這わせる。  
「ん・・・・・・ふぁ・・・・・・・はぁ」  
首筋やうなじへの愛撫をしながら健一は蛍子の胸に手を伸ばし、優しく絞り込むように揉みあげる。  
「んぁ・・・・ぅん」  
健一は蛍子が感じていることを確かめながら首筋から唇を離し、胸に顔を近付けて蛍子の乳首にしゃぶりつく。  
「あっ!ん・・・はぁん」  
健一は乳首を重点的に責め、空いている手はもう片方の乳房を愛撫する。  
「・・・はぁ、んっ・・・」  
「ホタル、気持ちいい?」乳首から口を離してそんなことを聞くと蛍子は顔を真っ赤にして健一を睨んだ。  
「さらっと恥ずかしいことを聞くな!」  
「・・・すみません」  
健一は素直に謝る。  
 
「・・・まあいい。さっきから私ばっかりして貰っているから次は私がする」  
「えっ!」  
健一は蛍子からの予想外の言葉に驚く。体を重ねることは何度もあったがこういったことはまだしたことはなかったからだ。  
「なにか文句あるのか?」  
「いえ・・・ないです」  
健一は素直に行為を受けることにした。  
健一が腰に掛けていたタオルを外すと、蛍子の姿によって興奮して既に十分な硬さを持った男のモノが姿を表した。  
蛍子は怖ず怖ずとモノに触れた。男根の胴の辺りを指で掴み、そっと撫でる。そして上下に動かす愛撫を始める。  
「うっ・・・・」  
健一はそれだけでイッてしまいそうになったがそれをなんとか堪える。  
「気持ち良いか健一?」  
「うん、気持ち良いよ。でももうちょっと強くしてくれないかな?」  
蛍子は健一の言われた通りに愛撫を強くする。  
「んっ・・・気持ちいいよ、ホタル。そう、カリの段差の所を重点的に撫でて・・・」  
初めての行為で動きはぎこちないが、蛍子から自分を気持ち良くさせたいと言う気持ちが伝わってきて健一を更に興奮させた。  
 
「ホタル・・・次は口でしてくれないかな?」  
健一の言葉に蛍子は少し驚いた顔をしたが、恐る恐る健一のモノに口付けた。  
“ちゅ・・・”  
未知の刺激に、健一の男根がビクっと痙攣したが、蛍子は怯まずに陰茎に舌を這わせ、根元からカリの部分まで一気に舐めあげた。  
「うっ・・・・」  
そのままモノ全体を丹念舐める。カリの段差を舐め上げ、亀頭の割れ目なホタルの舌が這う。  
「ホタル上手だよ・・・・」  
そう健一が言うと蛍子はまた健一を睨んだ。  
「だから恥ずかしいことを言うなって言っただろうが!」  
「すいません・・・」  
健一はまた謝る。  
「まったく・・・・」  
そう言ってまた行為に戻ろうとする。しかし健一がそれを止めた。  
 
健一は蛍子をベットに押し倒す。  
「もう濡れてるね、俺のをしながら感じてたの?」  
「ばっ・・・んっ!」  
反論しようとする蛍子の口をキスで塞ぐ。  
「んー!んん・・・ん、んぅ・・・」  
しばらく蛍子の唇を味わい健一が口を離す。  
「馬鹿・・・」  
蛍子が少し拗ねたように言った。  
「じゃあ入れるよ」  
健一は自分のモノを蛍子へとあてがい、ゆっくりと蛍子の中へと沈めていった。  
“ずぷ・・・ずちゅ”  
「あっ!・・・くふぅ・・・はぁん・・・・・」  
「ホタルの中、温かくて気持ち良いよ」  
「そうか・・・。健一、動いてもいいぞ・・・」  
「わかった。じゃあ動かすよ・・・」  
健一はゆっくりと腰を動かし始める。  
“ぐちゅ・・・・ぴちゅ・・・ぐしゅ・・・くちゅ”  
健一が腰を動かす度に淫らな音が部屋に響く。  
「んぁ・・・あん・・・・ふぁあ・・・けんい・・・ち・・・んん・・・もっと・・・」  
蛍子の嬌声に興奮し、健一が腰の動きを激しくする。  
“ずっ・・・ずちゅ・・・くちゅ・・・ずっ・・・ずちゅ・・・”  
「あん!・・・・ふあぁ・・・けん・・・い・・・ちぃ・・・・私・・・・もう・・・」  
「俺ももう・・・・」  
「来てくれ健一・・・・私に子供を・・・お前との絆をくれ・・・・」  
「ホタル!ホタル!!」  
最後に蛍子の名を叫び健一は蛍子の中で果てた。  
ドクドクと精液が蛍子の中に注がれる。全てを出し終えてから健一はモノを引き抜いた。  
「健一・・・・」  
「ホタル・・・・」  
そして二人はもう一度長いキスをした。  
§  
 
それから二人は後始末をして、衣服を整えてから部屋を出た。  
「・・・・・・・・・・・・」  
「・・・・・・・・・・・・」  
二人共会話は無い。  
行為の後、健一は蛍子から  
「会っても平気だと思えるまでは、もう会わないようにしよう」  
と言われた。そしてそれがもう二度と会わないという意味なのだと言うこともわかっていた。  
エレベーターを待っている間、不意に蛍子が健一の手を握って来た。  
「・・・・・・・」  
健一は黙って蛍子の手を握り返す。  
(温かいな)  
お互いの気持ちが通じ合っているんだとわかる。そしてきっと蛍子もそうなのだろうと思う。  
そう思っている間にエレベーターが到着した。  
手を繋いだまま二人で乗り込む。  
扉が閉まると同時に健一は蛍子を抱き寄せ、キスをした。  
エレベーターが一階に着くまでの間の最後のキスを・・・。  
 

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