Second Virgin  
 
部屋に戻り、湯を浴びる。新しい石鹸は南国の薔薇の香り。泡立てて丁寧にその美しい身体を磨く。  
 
生まれて初めて、淡い色の口紅を引く。  
肩まで伸びた髪を束ねて、結い上げる。  
鏡の前で、とっておきの表情をつくる。  
 
もうすぐやって来る彼だけの為に。  
 
ノックもせずにドアが開く。その姿は始め見えなかったが、だんだん現れてくる。  
「あんま気分の良いもんじゃ無いな、消え去り草使ってまでお前の部屋に忍びこむのは」  
「仕方ないよ、そうでもしなきゃこんな事できないんだから・・・」  
今日はアステアの17歳の誕生日。今夜くらい一緒に過ごしたい、と言ったのはアステアの方だった。  
アランが内緒で街に出て、遠い国からやってきた行商から消え去り草を買い求めてこうして逢瀬を叶えることとなったのだ。  
あの日から二人はキスも交わせていない。きっと部屋に入るなり、アランに押し倒されてしまうのでは、  
とアステアは期待半分、不安半分で彼を迎えた。  
しかしアランは落ち着き払った様子で、ごそごそとポケットから何かを取り出す。  
「これ、やるよ。」  
小さなものを目の前に差し出す。指輪だ。ケースも無く、細工もないシンプルな銀の指輪。女物のようだ。  
古ぼけてはいるが、丁寧に磨いてあるのでキラリ、と輝きを放つ。  
「良いの・・・?」  
「こんなもんしかお前にやるものが無くてな・・・気に入らなければ捨てちまえ。」  
可愛げの無い言い方はいつもの事。アステアが手に取る。内側に、何か彫ってある。声に出して読む。  
 
「最愛の君に永遠の愛をここに誓う・・・ローラン」  
 
驚いてアランを見上げる。こんな大切なもの受け取れない。彼の、母の形見の品のはず。  
 
「リルパが・・・母から預かってたんだと。俺の、妻になる女に渡して欲しい・・・って。  
・・・って言っても、そ、その・・・今すぐってわけじゃねえぞ!ただ、今日、お前に何かやりたいけど、何にも無くて・・  
だからってその、全然そのつもり無いわけじゃ・・・ああ、その何だ、予約っていうかつまりだな・・・」  
 
「ありがとう。大切にするね・・・。すごく嬉しい・・・」  
アランのしどろもどろの言い訳などどうでも良かった。彼の自分に対する永遠の愛がこの小さな指輪にこめられている。  
そう思っただけでアステアは喜びのあまり泣きそうになる。  
先ほどまで開かれていたアステアの誕生日を祝う宴席で贈られたどんな豪奢な宝飾品や絹織物よりも、  
それは素晴らしいプレゼントだった。  
 
さっそく指に通したいが、ためらう。流石にその指に通すのは・・・。でも、どうしても身に付けたい。  
アステアが、思いつめたように彼を見つめてから言った。  
 
「ねえ、アラン・・・今夜だけ、君の・・・妻になっても良い?」  
「・・・今夜だけかよ。 フン、好きにしろ。」  
そう言ってアランは、差し出されたアステアの左手を取る。はめてやった指輪は細い薬指にぴったり合う。  
アステアはきれい、と言いながら左手をひらひらさせてその輝きにうっとりとした表情を浮かべる。  
 
天蓋付きの、王女様のベッドに二人で倒れこむ。  
そこはふんわりと甘い、女らしい香りが漂う。アランはそれを胸いっぱい吸い込む。アステアの匂いがする・・・。  
発情期真っ盛りの青年の下半身はそれだけで反応してしまう。  
 
「あなた、来て・・・」  
寝転んだアステアが甘えた声で誘う。慣れない呼び方をして恥ずかしかったのか、頬を真っ赤に染めている。  
「フン、まるでままごとだな・・・」  
呆れたように言うアランだが、図らずもアステアが仕掛けてきたプレイに興奮を隠せない。  
倒れた拍子に羽織っていた絹のローブがはだけ、乙女の白磁器のような胸元がチラリと覗く。  
その肌を包んでいるのは、純白の総レースの下着。いつも身に付けているシンプルなものではない。  
思わずアランがローブを乱暴に引き剥がす。花嫁衣裳のように幾重にも重なったレースが目に眩しい揃いのランジェリーは、ベビーブルーの糸とビーズで刺繍が施されており、股上の浅いローライズのショーツは腰の両側でリボン結びになっている。  
小さな逆三角形の布が、彼女の臍よりずっと下、ギリギリの所でかろうじて秘部を隠している。レースの隙間から見えそうで見えない薄い茂み。アランに喜んで欲しくて、これもまた内緒で信頼している侍女に街で買ってきてもらったもの。  
アステアはちょっと恥ずかしそうにそのスレンダーな体をくねらせ、どう?と視線を送る。  
 
「・・・たまんねえ・・・」  
生唾を飲むアラン。目の色が変わる。早くその身体に触れたくて、大きな手をアステアの腰のあたりに伸ばしかける。  
 
「待って!先にする事があるでしょ・・・愛してるって言ってキスして。そうしたら、私の事好きにして良いから・・・」  
おままごとの主導権はいつも女の子の物だ。たとえ戯れでも人に命令される事が大嫌いなアランだが、  
魅力的なご褒美に目がくらみ言われたとおり優しく抱き寄せ、王子様は愛の言葉を囁く。  
 
「愛してるぜ・・・俺の可愛いアステア・・・」  
本当にそうは思っているけど、口に出すと自分でもゾっとするほど似合わない台詞だと思いつつ口を塞ぐ。  
しかしそのキスは、神の前で行う高潔なものとは程遠く、卑猥にアステアの舌に絡みつく。  
 
「ぅん・・・ん・・・。」  
互いの唾液を絡めあう。アランの舌はアステアの歯列を舐め、舌をねぶり、唇を優しく吸い上げ、甘噛みする。アランはキスが上手。  
クリームのように心も体も溶けてしまいそうになる、と思いながらアステアは髪を纏めていたピンを外し、くしゃくしゃと解く。  
それはとても艶っぽい仕草だった。アランはそのおろした髪を掻き上げ、まるで吸血鬼のようにアステアの白い首にむしゃぶり付く。  
「あん・・・・そんなに強くしちゃ・・・だめ・・・」  
全身に鳥肌が立つ。普段出さない女らしい声を上げてアステアは嫌がって見せるが、本当は感じてしまっているのだ。  
 
彼女の体中に愛欲の痕を残すようにアランは強く唇を這わす。アステアのつま先を舐め、足の甲にまるで下僕のようにキスをする。  
手で、口で彼女の白く滑らかな肌を撫でると、湯上りの柔らかい身体から甘い薔薇の芳香が立ちのぼり、彼をクラクラさせる。  
キュっと締まったウエストラインにその手が達するとアステアは身をよじり、手を掴んで邪魔をする。  
「わっ・・・くすぐったい・・・ずるい、アランだけ・・・」  
ケタケタと笑い転げながらそう言ってアランの上着を脱がす。じゃれ合うようにくすぐりっこをしながら。  
ピンと張って糊の効いていたシーツはもうクチャクチャだ。  
 
アランの逞しい胸が目に飛び込んでくる。引き締まった、一回り大きい男の体。アステアはキュンと胸が締め付けられる思いがした。  
初めて愛し合った時の事が鮮明に蘇る。今夜は朝までこの胸に抱かれて眠れると思うと、体の芯からぼっと熱くなる。  
 
「好き、アラン・・・大好きよ・・・。」  
2度目だから大胆になれる。何度も好きと言いながら、アステアは彼の胸に頬を寄せ、口付ける。首に腕を巻きつけ、アランの耳元やうなじ、額に柔らかい唇を乗せる。薄く塗った口紅が剥げ落ち、代わりにアランの体に花びら模様が舞い散る。  
「ふふ。汚れちゃった・・・明日起きたら、一緒にお風呂入りましょう。お体洗ってあげますね、あなた・・・」  
囁いて、とどめに耳たぶにチュ、と音を立てる。アランは・・・返事が無い。アステアの呪文は彼の魂をすっかり奪ってしまったようだ。  
 
「下も脱いで・・・今畳みますからね・・・」  
おままごとはまだ続いているようだ。突然起き上がり正座してアステアがアランの上着をかいがいしく畳もうとする。  
だんな様の身の回りの整理は、妻の仕事。しかしその腕を正気を取り戻した彼がグイと引っ張る。  
「・・・そんなもん放っとけ。それより全部脱がしてくれないか?可愛い俺のアステア。」  
最後の台詞はほとんど棒読みのアランが、あの日と同じ意地悪な笑いを浮かべる。  
「え・・・・」  
なるべく見ないように、素早くアランのズボンを脱がす。けれど彼の履いている黒い下着は既にくっきりと  
その形を浮かび上がらせている。もう半立ち状態で、アステアは耳まで真っ赤になってしまう。  
「いや・・・もう・・・恥ずかしいよ、アラン。」  
新婚さんごっこをしている場合では無くなった。アステアはまともに彼の下半身を見たことが無かったのだ。  
 
「フン、何恥ずかしがってんだよ。俺たち夫婦なんだろ?」  
チラリとアステアを見て鼻で笑う。形成逆転だ。アランはさっさと自ら下着を脱ぎ、全裸になる。  
うつむいたまま固まるアステアを尻目にベッドに腰掛けおままごとの続きを始める。  
 
「このあいだ俺がお前にやってやったようにしてくれよ。お前の、ここでさ・・・」  
アステアの顎をくいと持ち上げ、親指でつやつやした彼女の下唇に触れる。  
 
アランが、アステアにしてくれたこと。唇で・・・アステアは思い当たる節があるようで動転し、激しく首を横に振る。  
 
「そ・・そんなのできないよ!そんな・・・口で・・・!?」  
「・・・ご主人様の言うことが聞けないのか?」  
アランの本領発揮である。サディスティックな言葉と視線はお手の物で、クッと笑い、色気すら漂わせながら言い放つ。  
”ご主人様”の言葉の意味を少し誤解しているようでもあるが・・・  
楽しそうな表情のアランとは対照的にアステアの顔がひきつる。彼の目が、拒むことは許さないと強く言っている。  
 
のろのろとベッドから降り、脚を広げて座るアランの前にアステアが跪く。  
恐る恐る顔を上げる。ちらり、と視線の先にいきり立つアランの分身がいる。  
硬そうで、大きくて、赤黒い・・・別の生き物の様に見えるその先端は透明なアランの体液を滴らせている。  
 
「早くしてくれよ。お前だって、俺に口でしてもらってあんなに気持ちいいって言ってたじゃねえか・・・ん?」  
 
そうだ。アランがしてくれたとても淫らなあの行為は・・・とっても気持ちよくて。夫婦だもの。旦那様を気持ちよくしてあげなきゃ。  
意を決したアステアが震える両手でアランの根元を軽く包む。熱くて、太い・・・。薬指の指輪がほの暗い寝室に小さく輝く。  
 
ちゅぷ。  
 
可憐な唇が、そそり立った先端に触れる。そのまま少しだけ口に入れる。しょっぱい。男の汗の味。アランの匂い。  
「もっと・・・奥まで口に入れてみろ・・・舌使えよ・・・・」  
頭の上で、穏やかだが容赦ない旦那様の声が聞こえる。  
アステアは目を閉じてその小さな口に入るだけほお張る。アランのペニスを半分近く咥えたが、まだ口にあまる。  
「んぐ・・・んん。」  
苦しそうな鼻声を出す。口いっぱいにアランのものがあるのでなかなか上手く舌が動かない。  
懸命に彼を満足させようとアステアは顎を動かす。ねっとりと自分の唾液を絡め、優しく舌で彼の分身をくるんであげる。  
そっと瞼を開き、一度口から出して先端から根元にキスをする。舌先で転がすように舐め、そのまま夢中で陰嚢をプク、と含んでしまう。  
自分にしてくれたように、恥ずかしいほどピチャピチャ大きく音を立ててアランの陰部をその美しい口全体を使って舐め上げる。  
 
アランが両手を後ろにつき、天を仰ぐ。予想以上の気持ちよさについ情けない声を上げてしまう。  
「おうっ!ぁ・・・・ふぁ・・・。」  
頭の上でアランの悶絶する声がする・・・気持ち良いんだ。男の人もこんな声を出すなんてなんだかかわいい、とアステアは思う。  
「気持ち良い?アラン・・・もう、良い?」アステアが口を離し、尋ねる。アランと目が合う。  
 
頬を赤らめ、勃起した自分の性器を握る下着姿の幼な妻。彼女の唾液と自分の体液の混ざったものが彼の  
先端と愛くるしい唇を糸を引いてつなぎ、もちろん上目遣いになっている、絶好のアングルだった。  
「まだだ・・・もっとしゃぶって、しごいてみろ・・・」  
アランが強がり、腰を突き出す。アステアが命令通り、また口に含む。  
「こっち向けよ。目、離すな。」  
新妻の大きな、涼しげな目元が一度ゆっくりと瞬きをして、ご主人様を見つめる。  
アランはニヤリと笑って見せ、これ以上ない征服感を味わう。が、アステアの健気な奉仕に限界寸前だ。  
目を合わせたままアステアの頭を掴み、ゆっくり立ち上がる。彼女は驚いた顔をするが、口を自由にしてもらえない。  
そのままアランが腰を振る。喉の奥まで大きなペニスを押し込まれ、アステアは息ができなくなる。  
 
「ぐ・・・っ!んぐ・・・・っ!!!」アステアの目にジワリと涙が溢れる。感情的なものでなく、肉体的苦痛によるもの。  
「う、あ・・・ほら、出すぞ・・・っ!」腰の動きが早まる。アステアがグ、と目を固く閉じる。  
 
ドクッ!  
生温かいものが口に広がる。トロリとして苦く、しょっぱい。  
げほっ、げほっ、げほっ・・・!  
やっと口が離れる。ぺたんと床に座り込んだアステアは涙を流し大きくむせ、ゼイゼイと肩で呼吸をする。  
「大丈夫か?吐き出せ・・・」  
初めてにしちゃ上出来だ、と思いアステアの口元に手のひらを差し出す。唇にもアランの白い精液がへばりついている。  
「う、う・・・」アステアはうめき声を出し、口に入っていたものをゴクンと飲み込む。それから赤い舌を出して唇に付いたものを舐める。  
「はぁ、はぁ・・・ビックリした・・・」子供のような顔をしてアランに感想を漏らす。  
 
嘘だろ・・・飲んじまった・・・教えてもいないのに。  
初めてのフェラチオでそこまでさせるつもりが無かったアランが、一人苦笑いする。今度は・・・顔か胸、だよな。なんていけない妄想をめぐらし、ちょっと罪悪感を感じる。こいつの兄貴が生きてたら、俺きっと殺されてるな。  
「口ん中気持ち悪いだろ・・・」  
ナイトテーブルに用意されていた水差しからコップに水を注ぎ、差し出す。受け取ったアステアは一気に飲み干し、ふう、と一息つく。  
「・・・すげえ、良かった・・・」 アランが背中を抱き、誉めてやる。  
「あなた、アステアも、気持ち良くして・・・」彼の体にもたれ、なんとも色っぽい声でアステアがけだるく囁く。  
 
そのままアステアを抱えてベッドに再び戻る。アステアをうつ伏せに寝かせたまま、ブラジャーを脱がそうとアランが何かを探す。  
「前で止まってるの・・・ここ。」  
肘をついて上体を少し浮かす。フロントホックに手をかけるようアランを導く。  
ぎこちない手つきでホックをずらすと、小さなアステアのバストがぷるん、とこぼれる。  
みずみずしく、まだ熟れ切らない果実のようなその膨らみに下から両手をそっとあてがう。  
 
「ん、あ・・・・おっぱい、小さいから恥ずかしい・・・男の人は大きいほうが好きなんでしょ・・・?」  
「・・・・気にしてんのか?お前の・・・俺は好きだぞ。」  
人の誉め方など知らないアランが、そんな風に優しく言ってくれるなんて。  
「そう・・・?うれしい・・・。」うつ伏せにしているからどんな顔をしているか分からないが、アステアがとても可愛い声を出す。  
 
「大きくしてやろうか・・・・?」この間より力を入れてぐいぐいと揉む。そそり立ったピンクの乳首を引っ張る。  
「あん!痛い!いやっ・・・引っ張っちゃだめ・・・」  
いやいや、と尻を持ち上げる。アランはそれを見逃さず白桃のようなアステアの尻に手を滑らす。ショーツの上から、小さなヒップを撫で回しキスをする。割れ目にそって布ごしにそれを続け、ほんのり湿り気を帯びたアステアの花園に近づく。  
 
「いやぁん・・・お尻は・・・・・・・しないで・・・」上ずった声で、アステアが嫌がる。  
するするとリボン結びの紐をほどく。ハラリと小さな布が落ち、蕩けるような素肌があらわになる。  
「足開けよ。ほら、もっとケツあげてみろ・・・」ご主人様には逆らえない・・・従順なアステアは犬のように四つんばいになる。  
 
「どうして欲しいって?アステア?」背中越しにアランが尋ねる。  
「この前みたいに・・・して・・・」恥ずかしそうにおねだりする。  
「それじゃ分かんねえだろ・・・」困ったような声を出すが口元は笑っている。アステアはもう、快楽の味を知った女になっている・・・。  
 
アランが焦らす。プリンと自分に向けられたアステアの白い臀部をツン、と指で押し、そのままくるくると円を描くようにくすぐる。  
「ちゃんと言ってみろよ。この前みたいに、どうすれば良いんだ?」  
「はぅ・・・あ・・・あなたの・・・お口で・・・アステアの・・・・ぉ・・・ぉま・・・ん」アステアがもじもじと言いかける。  
「おい!言わなくて良いそんな事!」アランが慌てて止めさせる。  
「馬鹿正直なんだよお前は。そんな言葉・・・一体どこで覚えたんだよ…。」アステアの意外な知識に焦りまくる。  
「だって言わなきゃ分からないんでしょう・・・?」キョトンとする純真なアステア。  
「あのなあ・・・男は言えないで困ってる女のカオが好きなんだよ。」ため息をついて、つい本音を言ってしまう。  
 
「・・・変なの・・・」アステアにはさっぱり分からない。ああそうだ。変だ俺は。お前を愛しすぎて、変になりそうだ・・・  
アランがアステアの桃尻をつかみ、顔を近づける。彼女は腰を高く上げ、その部分を彼がよく見えるようにして、目を閉じる。  
 
つぅ。  
 
「いやっっっ!!!!!!」  
ビクン、と体に電流が走ったようにアステアが跳ねる。何をされたか一瞬、分からない。  
この前とは違う所を舐められてる・・・!ジタバタとするアステアのは尻をつかんだままアランはその行為を続けた。  
 
伸ばした舌は、アステアの性器の下にある、排泄口のすぼまりを撫でていたのだ。その筋をレロレロと舐め、恥ずかしい穴をこじ開けようとしている。  
 
「いやいやいやいやいやああああああ!!!!」  
城中に轟きそうな大声を上げ、暴れる。思わずアランが手を離すと、跳ね起きる。  
「いや!アランの馬鹿!!ここは・・・お尻は・・・・・!」  
心も、体も彼に捧げたのは事実。でも、そこだけはルール違反だとアステアは思った。  
涙目で睨みつける。ロマンチックな夜がぶち壊しだ。激昂したアステアが右手を振り上げる。  
 
バシッ!!!!!  
 
力一杯アランの頬に平手打ちをかます。まさか殴られるとは思わなかった無防備な勇者はそれをまともに食らってしまい、口の中を切る。  
「いっってぇ・・・・・!」  
広がる鉄くさい血の味。ダラリと口の端から赤くこぼれる。自分の手もジンジンする位の力で殴っておきながら、血を見たアステアの顔がみるみる青ざめる。やりすぎた・・・。  
「あ・・・大変・・・」その血を拭おうと、慌てて手を伸ばす。が、寸前で止まる。声も出ない。動けない。  
 
頬を赤く腫らしたアランが、凍りつくような目でニヤリと笑っているから・・・・  
 
「フッ。気の強い女だな・・・さすがラダトームの第一王子を名乗って竜王にケンカ売っただけの事はある」  
拳で口を拭い、獲物を見据えるアラン。震える子羊が後ずさる。ベッドの天蓋の柱にコツンと頭をぶつけて、それ以上逃げられない。  
お願い、来ないで・・・。 声にならない声でアステアが小さく首を振って懇願する。  
 
「ご主人様に逆らうとどうなるか教えてやる・・・」  
血の味がそうさせるのだろうか?アランはアステアの細い足首を乱暴に掴み、引っぱる。そのままアステアはずるずる引きづられる。  
力では到底かなわない彼女をまたうつ伏せにし、グイと腰だけ持ち上げ、二本の指で強引にアステアの割れ目を広げ一気に貫く。  
グリッ!!  
「い・・・・!!!!!」  
痛い、まで言えない。まだほんの少ししか潤っていなかったアステアの膣に無理矢理ペニスを突き刺す。  
構わずアランは腰をグラインドさせる。滑りの悪い狭い膣内で、強引に大きく抜き差しを繰り返す。  
ズチャ、ズチャ、と悲痛な音がその度打ち鳴らされる。異物を大切な場所に押し込まれ、ただただ苦痛しか感じないアステア。  
「・・・ぃ・・・ぃ・・・・ひぃ・・・・」  
彼女は枕にしがみつき顔を埋め、爪を立てて耐える。呼吸がうまくできない。パニックになる。  
まだ1度しか経験していないのに。その時は、あんなに優しくしてくれたのに。今、アステアは愛する人に後ろから犯されている。  
こんなの愛し合うなんて言わない、ただの交尾だ。アランの腰の動きが激しくなる。王女の白いベッドがギシギシきしむ。  
「おらおら、声出せよ・・・!」  
ピストン運動を繰り返しながらぴしゃり、と尻を叩く。アステアの白く、きめの細かい肌に赤い手の平の跡ができてしまう。  
「あ・・・っあ・・・っぁ・・・っ!」  
アステアの半開きになった口から切ない喘ぎが漏れる。流れ出す涙が、涎が枕に水たまりをつくる。  
「ゆ、許して、ゆるしてぇ・・・・アラン・・・・」  
アステアが哀願する。でもその声はアランの興奮をより掻き立てる事しかできない。いたいけな少女は更にいたぶられる。  
ぐっ、ぐっ、ぐっ!!!  
打ち付けるように3度、アステアを突き上げる。彼女の全身が激しく揺さぶられ、熱いものがたっぷりと子宮に注ぎ込まれる。  
自分勝手な射精が終わり、アランが尻を掴んでいた手を離すと、彼女は支えの無い人形のように崩れ落ち、へなへなとうずくまる。  
 
「まだまだだ・・・・」  
アステアの身体を転がす。仰向けにして、片足を持ち上げる。大切な部分から、血が少し出てしまっている。無理に擦られて膣壁が傷ついてしまったのだろう。その血ごと、クチャクチャと獣のように舐め取る。ぽってりと充血したひだに激しく舌を這わせ、  
その形をなぞり上げる。口を大きく開けて、性器全体を含む。  
「ああん・・・食べられちゃう・・・!」朦朧とした意識の中アステアが吐息混じりにそう言ったのを確かにアランは聞いた。  
「ひゃ・・・・あん、あ、あ・・・!」  
気が付けば感じてしまっているアステア。身をよじり、シーツを引っ張っり襲ってくる快感に溺れ始める。  
「ああ・・・・そうなの・・・・こうして・・・欲しかったの・・・・」  
息も絶え絶え、アランに話し掛ける。さっきまでひどい仕打ちを受けていたのに、自分を陵辱する男の頭を慈しむように撫でる。  
痛めつけられ踏みにじられていた彼女の花園から、愛液がどんどん溢れ、潤される。体が、もう一度彼を求め始めている。  
「ふしだらな女だな・・・・こんなに濡れてやがる・・・」人差し指を彼女の泉の中に入れ、ピチュピチュピチュ、と淫猥な音を聞かせる。  
「だってぇ・・・きもちいぃ・・・・ふしだらな私は、きらい・・・?」涙声でアステアが尋ねる。  
「・・・そんなわけ無いだろ・・・・」心が、酷く痛んだ。こんな目に遭っているのに、俺に嫌われるのを恐れているなんて。  
 
大の字に寝転んだ自分の体の上に跨るようアステアに促す。  
アステアは細い指でクチュ、と花びらを自分で押し開き、腰を沈める。びしょ濡れのその部分にアランの亀頭がチュルンと吸い込まれる。  
「あ・・・あぁ・・・アラン・・・やっぱり、いたぃ・・・!」  
半泣きのアステアがぐずる。まだその中はズキズキと先ほどの痛みが残ってる。もう自分でできない、と首を振る。  
アランが彼女のしなやかな腰に手をあてがい、挿入を手伝ってやる。温かく、締りの良い彼女の膣を味わうようにゆっくりと。  
 
「うぐ・・・あああん!!」  
ジュブ、と文字通りはめ込まれたアランのペニス。2回も果てたというのに、それはまだ満足していないとばかりに硬くなっている。  
「はぁ、はぁ・・・奥まで入ったな・・・。妻の務めはちゃんと果たせよ・・・馬に乗るときみたいに、腰動かしてみろ・・・」  
下からアランが少し体を揺らしてやる。痛い。腰なんて、動かせない・・・でも、私はアランの妻だから・・・お務めを果たさないと・・・。  
眉間に皺を寄せ、痛そうにぎこちなく腰を振る。それを見て下手くそ、とつぶやいたアランだが、堪らなく彼女がいとおしい。  
意地悪するように繋がっている部分に片手を伸ばす。性器の割れ目に指を差し入れ、小さく敏感なアステアのピンク色の蕾をつまむ。  
 
「あっ、あっ!」ビクンと震える。アステアが一番気持ちよくなる所を刺激され、腰の動きを止めてしまう。  
「止めんな、もっと腰振れよ・・・・」アランに叱られ、また不器用に腰を動かす。  
 
ふと顔をベッドの横に向けると、ドレッサーの大きな鏡が股をひろげた自分を映し出してしまっている事に気付く。  
夜だというのに月明かりに照らし出されハッキリとその姿がよく見える。さっきまで綺麗に髪を結い、薄化粧していたのに・・・。  
アランの上に馬乗りになって、腰を振るアステア。自分の性器はいやらしく彼のものを咥え、花弁をその付け根にこすりつけている。  
白い肌は桜色にほんのり染まり、ブラジャーのストラップは肩に引っ掛かっているが前はすでに開いているので乳房は剥き出しだ。  
小さなさくらんぼのような乳首が揺れている。淫乱、という言葉がふさわしい。まるで娼婦のようだ、とアステアは思う。  
でも目が離せない。もっと・・・・鏡の中の自分を見ながらアステアが悩ましく腰をくねらすと、ベッドがまたきしみ出す。  
 
アステアはもどかしそうにブラジャーを自ら脱ぎ捨て、生まれたままの姿になる。自分の腰にあたる彼の左手を上から握りしめる。  
玉のような汗を浮かべて、激しく腰を振るたびジュ、ジュ、と彼女の膣がアランのペニスを吸い上げる。  
 
「う…イキそうだ…アステア、一緒にイこうな・・・。」同じように汗だくのアランが下からうめく。  
「ア・・・・ア・・・ラン・・・い、いく・・・って・・・?」髪を振り乱し、荒い呼吸をしながらアステアが初めて聞く言葉の意味を問う。  
「・・・・こういう事だ。」溢れ出しているアステアの蜜をたっぷり指に塗り、グリグリとクリトリスをこねる。  
 
「ああああ!!!あ!あん!いやぁぁぁぁ・・・!」  
アステアが悲鳴を上げる。その声がアラン以外の誰かに聞かれる事は無い。王女の寝室の向こうには広い次の間があり、またその向こうに廊下に出るための通路がある。3枚の重たいドアで隔たれているのだ。  
「あん、あっ、ああっっ・・・」  
恍惚の表情を浮かべたアステアの背中が仰け反り、膣がキュウキュウとアランをきつく絞り上げる。アランもまたその瞬間を迎える。  
「ううっ、アステア・・・オレも・・・」  
ビュル、ビュッ!  
同時に、アランが勢いよく精液を彼女の体内に放出する。それを全部受け入れるとアステアは力尽きたように前に倒れ、彼に覆い被さる。二人ともそのまま暫く動けない。呼吸が乱れ、大きく上下する胸が重なり合う。  
湯気が出そうなほど火照ったアステアの身体は、小さくまだ震えている。その背中を無意識のうちに両腕で包み込むアラン。  
 
 
「・・・・・最低だ、俺。」 我に返ったアランが天井を見つめ、独り言のようにポツリと呟く。  
「痛かったろ・・・・怖かったろ・・・・謝る・・・本当に、悪かった・・・」強気な彼がとてもしおらしく、心配そうに動かない彼女に謝罪する。  
 
「・・・大丈夫、だよ。」 胸の上に乗った、緋色の頭が動く。疲れきった表情だが、微笑む愛しい妻。そのままくい、と汗で濡れた  
体を上に滑らせ、顔を同じ位置に持ってきて彼の腫れ上がった頬にキスし、囁く。  
「痛かったでしょ、アランも・・・ごめんね、許して。」  
 
「俺が悪いんだ・・・もう、あんなこと・・・絶対、しない。約束する・・・」謝るのは得意では無い。でも、彼女に嫌われるのだけは御免だ。  
 
「うん、分かった・・・・すごくすごく愛してるから、信じてるから。・・・・ね、仲直りのキス、しよう。初めての夫婦喧嘩だね。」  
天使のような笑顔。可愛い妻の提案に、思わず彼も微笑んでうなずきアステアをギュっと抱きしめる。  
これで何度目だろう、アランが彼女を惚れ直したのは。本当にごめんな。もう一度謝ってそっとキスを交わす。  
 
裸のままで、毛布を被る。アランが右腕を伸ばす。ころん、と頭を乗せ腕枕をしてもらう。左手が髪を、肩を、そっと撫でている。  
セックスも気持ち良いけど、本当はこうしているのが一番心地良い時間なのだと二人は思う。  
普段絶対に見せない穏やかで、優しい顔をしたアランと鼻先が触れ合う程の距離。目が合うたびに嬉しくて小鳥のようにキスを繰り返す。  
 
「ねえ・・・アラン・・・・」突然アステアが神妙な顔になる。  
「何だ・・・」若いとはいえ3度も果て、クタクタのアランが眠そうに答える。  
「ね・・・・もし、もし・・・・赤ちゃん、できたら…アランはどうする・・・?」  
「・・・・どうもこうも、俺の妻が俺の子を身ごもって何が悪い。産んでくれねぇのか?」愛しそうに遺伝子を残した彼女の下腹部をさする。  
「真面目に答えて・・・今更だけど、大変な事しちゃったんだよ。夫婦なのは、取りあえず今夜だけなんだから・・・」  
「俺は本気で言ってるんだ・・・なあ、今夜だけなんて言うなよ、このまま俺の・・・・」アランが言いかけた事をアステアが遮る。  
「お願い、もう少し待って・・・・そうしたら僕たち・・・」素に戻るアステア。  
「・・・・俺に抱かれてる時ぐらい「僕」はやめろよ・・・」腕の中の少女を自分にもっと引き寄せ、ピタリと体を密着させる。  
「・・・・・ごめん。あ、御免なさい、あなた。」言い直して、甘えるように擦り寄る。  
「フッ。明日の朝まで、だったな。」  
他愛の無い会話だが、この上なく幸せな時間。こうして毎夜同じベッドで眠れたら、どんなに良いだろう。きっと毎日寝不足で、赤ん坊なんてポコポコできちまうんじゃないか。ケンカもするんだろうな。こいつ強情だから。出て行け、って俺が言われるのか?  
アステアの赤い髪を指でいじり、その清楚な香りを嗅ぎながらぼんやりそんな風に考えていたアランが、大事なことを思い出す。  
 
「そうだ、言い忘れてた。なあアステア・・・誕生日、おめでとう。」  
「・・・・」  
「・・・・寝たのかよ・・・フン。」  
幸せそうに腕の中で寝息を立てる彼女の瞼に、おやすみのキスをしてアランも目を閉じる。  
俺もすごく愛してるよ。眠りに落ちる寸前、彼が寝言か定かでないがつぶやいたのを、アステアは夢の中で聞いた。  
 
 
朝、目覚めるとベッドに愛する夫の姿は無かった。ハラリと残った黒い髪。アランは早朝、アステアを起こさぬよう出て行ったのだろう。  
彼らしいな、とアステアは理解したものの、アランのぬくもりがほんの少し残った寝床にもう一度うつぶせて寂しそうにあなた、とつぶやき一人さめざめと泣いてしまう。  
 
放り投げられたローブを拾い上げ、羽織り、ドレッサーの前に立つ。乱れた髪も、疲れた表情もなんだかとても色っぽい。  
男に抱かれると、女は変わるって本当なんだ。そう実感するアステアにはあの頃の少年のような面影は無い。  
薬指の指輪を外して、宝石箱からネックレスのチェーンを出して通す。いつか本当に彼の妻になる日まで、こうして首からかけておこう。  
 
それからやっと、ある事に気付く。ベッドの上も、部屋の中も捜したが、どこにも無い。昨夜脱がされた下着。もしかして・・・  
「・・・・・アランのエッチ・・・!」  
 
おわり。  
 

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