(ああっ!わたしの技が全然通用しない……)  
日ノ本零子は、思わぬ大苦戦に動揺していた。  
ここは、最も強く最も美しい女を決めるランブルローズのリング上だ。  
 
 零子の相手は、米国のカウガール出身のデキシー・クレメッツであった。  
実は半年前に、零子はテキサスのマットでデキシーを敗っていた。  
地元のファンの前で大恥を掻かされたデキシーは、雪辱を果たすべく  
持ち前のパワーを更にアップさせるべき猛特訓に明け暮れた。  
そして、零子への復讐のためにランブルローズへと現れたのだ。  
 
 試合開始から、デキシーは猛然とラッシュした。圧倒的なパワーで  
激しく攻め込んでいく。  
 零子の仕掛ける技はすべて弾き返されたのだ。  
 
(ククク、レイコめ思い知るがいいわ。わたしがどんなに悔しい思いをしたかを……  
地元のファンの前で辱めてやるから)  
それまでアメリカの女子プロレスファンの間では絶大な人気を誇り、お嫁にしたい  
候補ナンバーワンとすら言われていたデキシーだった。  
 
それが、こともあろうに地元のファンの前で零子に完敗を喫したのだ。  
(この屈辱は必ず晴らす)  
その思いだけで、この半年の猛特訓に耐えてきたのだ。  
 
 デキシーはリング中央で、零子をボディスラムで激しく叩きつけた。  
そして彼女の右脚を掴んですばやく畳みこむと、あっという間に  
足四の字固めを極めた。  
「ああっ!」  
 副業としてレースクイーンをしている零子の美貌が苦痛に歪んだ。  
デキシーは太い両脚で、零子の脚をグイグイ締め上げた。  
 
 体を回転してロープブレークに逃れたい零子。  
だが、圧倒的な体格差のあるデキシーは微動だにしない。  
「う、ううっ! く、苦しい!」  
場内に零子の悲痛な悲鳴が響き渡る。  
 
 両手でリングをバンバン叩いて苦しがる零子。だが四の字地獄  
から逃れることはできない。  
さんざん痛めつけられ、体力を奪われていった。  
 
 だが、もはやギブアップしかないと思われた瞬間、なぜかデキシーは  
両脚の力を緩めたのだ。  
(えっ、ど、どうして?)  
零子は訝ったが、なんとか四の字から逃れることができた。  
 
 しかし、もとよりデキシーには零子を助ける気などない。  
(フフフ、このくらいでギブアップなんかされちゃ面白くないわ。  
 あんたには、大観衆の前で大恥を掻いてもらわなきゃね)  
零子を陥れるデキシーの悪魔的な復讐心であった。  
 
 零子は脱出には成功したが、脚を徹底的に痛めつけられ  
更にスタミナも奪われ、動きは鈍い。  
 デキシーは彼女に再び彼女に掴みかかると、今度は逆  
エビ固めに捕らえた。  
   
 四の字と同様、見た目は地味だが、相手に確実にダメージ  
を与える技だ。  
「くうっ!」  
 またも零子の顔が苦痛に歪む。そして次の瞬間だった。  
 
「きゃああっ!」  
 プロレスラーとしてではなく、一人の女としての零子の悲鳴だった。  
なんとデキシーが、零子の赤のリングパンツに手を掛け、力まかせに  
引きずり降ろし始めたのだ。  
 
「や、やめてっ! なにをするの!」  
だが、怪力のデキシーは零子の抗議など耳をかさず、一気に脱がして  
しまった。  
リングパンツの下の純白のパンティが露わになってしまった。  
 
「おおっ! 零子のパンモロだ!」  
 男性客の多い観客席は、いきなりの零子のパンティ丸出しに大興奮  
に陥った。デキシーがリングサイドに投げ込んだリングパンツを、醜く  
奪い合う。  
 
「い、いやっ! 見ないで!」  
 恥じらいに全身を真っ赤に染める零子。彼女の穿いているパンティは  
試合用のスポーツサポーターだった。生地は陰毛が透けて見えそうな  
ほど薄い純白、フロントはハイレグ、バックはケツ丸出しになるTバック。  
零子の豊かな下半身を更にセクシーに見せる悩ましい下着だ。  
 
 観客に見られるのを避けるためにしゃがみこんでコーナーに逃れた  
零子に近づき追い詰めるデキシー。  
「フフフ、お客さんにサービスしないとね」  
 零子の髪を掴み、リング中央に引きずり出した。これからゆっくりと  
いたぶるつもりだ。  
 
(ああっ! は、恥ずかしいわ……でも、負けない……)  
 既にデキシーの猛攻でスタミナを奪われた上に、下半身  
をパンティ一枚にされた羞恥心で、零子の戦闘力は半減してしまっていた。  
しかし、持ち前の負けん気が零子に試合を続けさせた。  
 
 嫌がる零子を引っ張り出したデキシーは、強烈な膝打ちを彼女の  
みぞおちに入れた。  
「ううっ!」  
 もんどり打って倒れこむ零子。  
すかさずデキシーは、零子の右足首を掴むと、自分の足で彼女の左脚を  
押さえつけて、股裂きを仕掛けた。  
 
「あああっ!!」  
 ランブルローズのアイドルの悲鳴が響き渡る。パンティ姿で股を裂かれる  
屈辱と苦痛に、零子は苛まされた。  
(ううっ! こんなのいやああっ!)  
 だが、負けたくなければ、ギブアップは許されないのだ。  
 
 リングの中央での股裂き拷問にに零子が苦しんでいる時、それを見  
つめる観客たちは彼女を応援するどころか、彼女の下半身に卑猥な  
視線を注ぎ、股間を硬くして興奮するのだった。  
   
「いいぞ、デキシー! もっとやれ!」  
 デキシーの意図が、零子を辱めようとしているということは、彼らも  
薄々気づいていたのだった。そして、この際、デキシーに味方して零子  
の羞恥シーンを楽しもうという雰囲気になっていたのだ。  
 
(なんですって、悔しい……)  
 観客たちが、自分を応援せず、敵であるはずのデキシーに声援を送り  
始めたことは、零子にショックを与えた。  
   
 股裂き責めで、散々零子を痛めつけたデキシーは、更なる屈辱を与える  
べく、彼女を立たせた。  
 そして、自分の腹で零子の頭を押さえつけ、太い両腕を彼女の両脇に通して  
リバースフルネルソンの体勢に捉えたのだ。  
   
 今から、自らがかけられる技を悟った零子は凍りついた。  
(や、やめて! あ、あの技だけはいやっ!)  
 だが、デキシーは腰をリングに落とした。そして……  
 
「いやあああっ!」  
 零子の絶叫とともに、彼女の体は頭を下に反転させられる。  
そして、デキシーは彼女の両足首に内側から自分の足首を  
掛けて、大きく左右に開いたのだ。  
   
 女性格闘家にとって、もっとも屈辱的な技の一つであるラフ  
レシア(恥ずかし固め)だった。  
 いわゆる、まんぐり返しの格好にされた上に、大股開きを強  
いられるのだ。これだけでも恥ずかしいのだが、今零子は下  
半身はパンツ一枚なのである。羞恥、恥辱は倍増、三倍増に  
なっていく。  
 
「うおっ、恥ずかし固めだ!」  
「撮れ、撮れ!」  
 場内は異様な興奮に包まれ、フラッシュの嵐が、開帳された  
零子の股間に浴びせられた。  
 
 Tバックパンティで恥ずかし固め。しかもかけられているのは  
ランプルローズNo.1の美人選手だ。  
 場内のスケベな男性客たちは、このエロティックなシーンの目  
撃者となった幸運を感謝した。  
 
「ああっ! あああっ!」  
 恥辱の泥沼に沈められた零子の悲痛かつセクシーな呻き声が、  
彼らの興奮を倍加させていた。  
 
 零子は無理やり両脚を180度に開かれていた。パンティのTバック  
部分が、モロ出しのケツの割れ目に激しく食い込み、彼女の豊かな  
尻肉に埋もれて、まるでノーパン状態に見える。  
 
 そして、フロントの方も股間に食い込んで、女の最も恥ずかしい部分  
の割れ目がクッキリと浮かんでいた。更に、パンティの形がハイレグ  
タイプなので、両横から陰毛まではみ出ていたのだ。  
 
(こんな恥ずかしい格好、絶対に嫌っ! 写真なんか撮らないでっ!)  
 情け容赦なく浴びせられるフラッシュの砲火の中で、零子に今できる  
ことは、恥じらいに必死に耐えることだけである。  
 
 零子の両腕は、デキシーのリバースフルネルソンでガッチリとロック  
されているので、まったく抵抗できない。  
 ただ、頭を上下に振ることのみが許されていたが、たいしたダメージ  
を与えることはできない。  
   
(うううっ、デキシーの奴、わたしに恥を掻かせるために、わざわざこんな  
まねを・・・・・・)  
 零子は、ようやく敵の邪悪な意図に気がついたが、もはや手遅れであっ  
た。羞恥の蟻地獄のなかでもがくことしかできない。  
 
 ラフレシアは、肉体的なダメージはたいしたことはない技である。柔軟な  
身体の持ち主である零子にとっては、股関節をどれだけ広げられてもあま  
り苦痛は感じないのだ。  
 
 だが、精神的な痛みはまた別である。優れた精神力を持つ零子であって  
も、やはり一人の女である。  
 大観衆の見ている中で下半身パンティ一枚の姿で大股開きを晒すという  
ことが、どれだけの精神的苦痛を受ける行為であるかは、想像に難くない。  
 
(こんな大恥を掻かされて、ギブアップなんかできないわ!)  
 最も強く、最も美しい女を目指す零子のプライドだけが、この羞恥地獄を  
耐え抜く力となった。普通の女子レスラーならとっくに投げ出している状況  
である。    
 
 惨めな敗北は断固拒否した零子だが、股を開かれ続けている  
恥ずかしい状況に変わりはなかった。  
(ああ……なんとか脚を閉じたいわ……)  
 自分でこの恥ずかし固めから逃れる術はないのである。  
 
 ところが、突然デキシーが、零子の両足首を引っ掛けている自  
分の両脚を閉じたのだ。当然、広げられている零子の太腿も、閉  
じられることになった。  
 
(えっ? ど、どうして?)  
 戸惑った零子だったが、ようやく、恥じらいの開脚拷問から逃れ  
られたと思い、ホッとした。  
   
 だが、それは余りにも甘い認識だった。デキシーは閉じたばかり  
の己の両脚を再び、思い切って開いたのだ。  
 またしても、零子は大開脚を強いられた。  
「い、いやっ! もうやめて!」  
 再び、屈辱の悲鳴を上げる。  
 
 デキシーは、抵抗できない零子を挑発して、羞恥心を煽るかのよ  
うに、何回も開閉を繰り返した。  
 場内からはヤンヤの歓声が上がった。  
 
(ううっ…… ひ、卑怯だわ……)  
 零子は歯を食いしばって、この恥辱に必死に耐えるのであった。  
そして、デキシーのこの連続開閉が、思わぬエッチな副産物を生ん  
だのだ。  
 
 デキシーは、何回も零子の両脚を開いたり、閉じたりした  
後、再び股を大きく開いたところでピタッと止まった。  
 零子は、自分の股間に違和感を感じた。  
(い、いやああん! パンツが食い込んじゃう!)  
 心の中で絶叫した。  
 
 場内のそこここがざわめき始める。もともと食い込みのきつ  
かった零子のハイレグパンティだ  
 脚の開閉が繰り返されたために、股間の布が細くこよれてし  
まい、秘肉の割れ目に、めりこむように食い込んでしまってい  
たのだった。  
   
 当然、陰毛ばかりか大陰唇の肉の一部までが、パンティの  
外にはみ出ていた。  
 戦う熱血セクシー美女・零子のモノだけに、なまじの性器丸  
出しなどより、はるかに男どものスケベ心を刺激する眺めだった。  
   
 場内の誰もが、息を呑んでいたが、誰かが  
「具だ、具がはみ出てる」  
 と叫ぶと、一斉にどよめきに包まれた。  
 
 零子の股間側の観客は、歓声を上げ、尻側の客は地団駄を踏  
んで、悔しがったが、なんとデキシーは、零子を恥ずかし固めに  
捕らえたまま、背中を軸にゆっくり回りだしたのだ。  
 
 観客全員に、この最高のサービスシーンをプレゼントしようとい  
うのである。  
 先ほどより激しいフラッシュの嵐が零子の恥ずかしい部分に浴  
びせかけられた。  
 
 恥ずかし固めは、いわゆるまんぐり返しの体位を取らされる技で  
ある。そのため、この技をかけられる者にとっては、自分の開かれた  
股が自然と目に入ってくるのだ。  
   
 というより、自らの股間しか見えない状態に置かれる、と言った方が  
正確であろう。  
 つまり、今の零子は自分のパンティが、恥ずかしい割れ目にどんど  
ん食い込んできているのを目の前にしながら、何も抵抗できない状況  
なのである。  
   
(う、うう……いやああっ!)  
(は、恥ずかしい! みんな見ないでっ!)  
 現在、彼女にできることはただ一つ、懸命に耐えることだけなのであ  
った。負けず嫌いでプライドの高い零子にとって、こんな屈辱はない。  
零子の羞恥拷問は、まだ終わらない。  
 
 なんとかして、この大きく開き切られた両脚を閉じたいのだが  
どうすることもできない。  
 逃れるには、ギブアップするしかないのだが、零子には自ら  
負けを認めることなどできなかった。  
 
「ああ……ああっ! いやああっ!」  
 苦しむ零子の上げる色っぽい悲鳴が、この羞恥拷問ショーの  
絶好のスパイスになる。彼女の全身は、恥ずかしさのあまり、最  
高に紅潮していた。  
 
 スケベな男どもは、総勃ち状態で零子の大股開きを堪能した。  
デキシーは、零子に脚を開かせたまま、ゆっくりと一回転し、場内  
中のカメラに、この悩ましいシーンが収められたのである。  
 
(うう……も、もうダメ……)  
 ここまで必死に耐えてきた零子だったが、さすがの彼女も脱出不  
可能な状況に、闘争心が萎えてきてしまった。もはや、ギブアップ  
しかない、と思った次の瞬間。  
   
 なぜか、デキシーは零子の体を放したのである。零子は慌てて脚  
を閉じ、しゃがみこんだ。  
 どうして、デキシーは零子を助けたのか?理由はただ一つ、更なる  
辱めを加えるためだった。  
 
(な、なぜ、恥ずかし固めを解いたの?)  
 突然解放された零子はいぶかったが、直ぐにその意味を悟ら  
される事になる。しゃがみこんだ彼女の胸にデキシーが強烈な  
蹴りを入れてきた。  
 
「あうっ!」  
 もんどり打って、零子はリングに仰向けに倒れた。すかさずデ  
キシーが彼女をリング中央でうつぶせにひっくり返し、背中に馬  
乗りになった。キャメルクラッチで攻めるのか?  
   
 だが、デキシーは予想もつかない攻撃に出たのだ。零子のリン  
コスのスポーツブラの背中の紐に手を掛けると、いきなり力任せ  
にブチッと引きちぎったのだ。怪力のデキシーは、ブラジャーの二  
本の肩紐も引きちぎってしまった。  
 
「きゃあああっ!」  
 零子の再びの絶叫である。ようやくデキシーの意図に気づいたのだ。  
(さっき、わたしを助けたのは、もっと辱めるためだったのね……)  
 ブラジャーを剥ぎ取られるなんて、冗談ではない。  
 
「は、反則よ! 止めさせて!」  
 懸命にレフェリーにアピールするが、なぜか知らんふりをされる。実  
は今日のレフェリーには、デキシー陣営から金が渡っていたのだ。  
 泣く泣く、試合を続けるしかない。  
 
 このデキシーのブラ剥ぎ攻撃に、場内は大喜びである。  
「おい、零子のブラジャーを脱がす気だぞ」  
「嘘だろ、零子の生オッパイが見れるなんて」  
「早く脱がせ!」  
 敵であるはずのデキシーを応援する男性客たち。  
 
 レースクイーンもやっている零子の張りのある巨乳はファン  
の間では有名である。写真集は出していたもののヌードはま  
だであった。こともあろうにランブルローズのリング上で、伝説  
の零子の乳房が拝めるのか。観客は異様な熱気に覆われて  
いった。  
 
(こ、こんなの嘘でしょ! 胸を見せるなんていやっ、絶対いやっ!)  
 さきほどの恥ずかし固めも、大変な恥ずかしさだったが、まだ  
股間はパンティが守っていた。しかし、こんどはブラを奪われて  
は、生オッパイが露出してしまうのだ。うつ伏せの零子は必死に  
自分のブラジャーを手で押さえた。  
 
 デキシーに背中を向けてうつ伏せ、両手は胸のブラジャーを押さえ  
ざるを得ない。無防備になった零子に、デキシーは情け無用の攻撃  
を加えていく。  
   
 零子のガラ空きの両脇に、両手で強烈な手刀を入れた。  
「うっ!」  
 零子の息が一瞬止まり、力が抜けてしまう。そのチャンスを逃さず  
デキシーは、一気に零子のブラジャーを抜き取ったのだ。  
 
 さきほどのリングパンツと同じく、デキシーは奪い取ったブラをリン  
グサイドの観客席に投げ込んだ。  
「うおっ!」  
 醜い奪い合いで、零子のスポーツブラはボロ布と化した。  
 
 遂に、アイドルレスラーである零子が、リングの上でパンティ一枚  
しか身に着けていない姿にされたのである。  
(い、いやっ! こんな姿見られたくない!)  
 零子の全身は、恥じらいで凍りついた。  
 
 パンツ一枚の零子は、うつ伏せの姿勢になったままで己の胸を隠す  
ために懸命である。  
(ダ、ダメッ! 見せたくない!)  
 
 すぐにでも、このまま逃げ出したかったが、デキシーに背中に乗られ  
身動きできない。それに、敵前逃亡など零子には許されないのだ。  
 最も強い女を目指す零子にとっては、どんな形であっても負けること  
はできない。試合を続けるしか選択肢はない。  
 
「早く、零子を立たせろ!」  
「オッパイだ、零子の乳首が見たい!」  
 など、場内から身勝手なヤジが飛ぶ。みな零子を応援しにきている  
はずだったが、零子が脱がされていく予想外の展開に興奮し、我を忘  
れていた。  
 
 そして、デキシーがムクッと立ち上がった。彼女が繰り出した次の技  
は、零子にとっては最悪の、零子の恥態を期待する観客たちにとって  
は最高の技だった。  
 半裸にされた零子に、最大の危機が迫る。    
 
 立ち上がったデキシーは、少し後ろに下がった。そして、零子の両膝を  
折り曲げて、自分の両脚にフックしたのである。これも女子レスラーにと  
っての羞恥技の一つ、ロメロスペシャル(吊り天井固め)への体勢に入っ  
たのだった。  
   
(つ、吊り天井! い、いやよっ!)  
 零子は震え上がった。上半身裸で、パンツ一枚しか身に着けていない  
今の状況で、吊り天井を受けるということは、零子にとっては乳房を晒さ  
れ、再度の大股開きにされることだ。絶対に嫌である。  
 だが、もう逃れる術はない。  
 
 ニヤリと、残忍な目つきで零子を見下ろしたデキシーは、勝利を誇示す  
るかのように、両脚をロックしたまま右手を高々と上げた。  
 場内は息を呑み、静まり返った。これから見てはならないものを、見て  
しまうかのような、微妙な空気が流れていた。  
 
 両腕を取られるまいと抵抗した零子であったが、またもデキシーは彼女  
の両脇に、思い切り手刀でチョップを加え、遂に両手首を掴んだ。後は、  
体を持ち上げるだけである。  
 
「いやっ! いやっ!」  
 これから訪れようとする破滅を目の前にして零子は、絶望的な状況に美  
貌を歪めて首を振った。  
 反動をつけて、デキシーは零子の体を持ち上げる。  
 
「ああああっ!!」  
 この試合、何度目かの絶叫と共に、零子の半裸体はデキシーの  
ロメロで吊り上げられてしまったのだ。  
 
「おおおっ……」  
 初めて人前に公開された、零子の見事な美乳に場内の観客たちは  
感嘆のどよめきを上げる。  
   
 単に大きいだけでない。なんともいえない張りと艶を持つ、芸術品の  
ように美しい二つの乳房である。  
 吊り天井で体がエビ反りにされたことで、その双丘が、上に向かって  
突き出され、形が強調されていた。  
 
 そして先ほどの恥ずかし固めに続き、またしても大股開きの体位にされ  
たのである。  
 アイドルである零子の豊満な肉体が、パンティ一枚しか身につけないで、  
高々と吊り上げられ、股を開かれる……例えようもなくエロティックかつ美  
しい光景であった。  
   
 しかし、衆人環視の中でセミヌードの姿を晒された零子にとっては  
それどころではなかった。  
「ああ……いやあっ! やめてっ!」  
 乳房を見せ、股を開かれたまま、悶絶し続ける事しかできないの  
である。  
 
 相変わらず、大変な数のフラッシュが焚かれ続けていた。すでに  
零子のこの惨めな姿は、インターネットを通して全世界に流されて  
いた。  
    
 こんな恥ずかしい姿が公開されてしまっては、二度とリングに戻る  
ことはできない。零子は自分のレスラー人生が断たれつつあることを  
悟った。  
(母さん、不甲斐ないわたしを許して……)  
 零子の大きく、美しい瞳から涙が溢れ出た。  
 
 ロメロスペシャルは、恥ずかし固めとは違い、全身の関節を痛めつける  
拷問技でもある。デキシーは、零子を激しく締め上げた。  
「ううっ、苦しい……」  
 屈辱に加え、強烈な苦痛に零子の美貌が歪んだ。メインスタンドの観客  
は、パンティの食い込んだ股間、美しい乳房、苦悶する表情を同時に見る  
幸運に恵まれた。  
 
 最後に残された格闘家としてのプライドだけが、ギブアップを拒ませてい  
たのだ。だが、それも長続きしなかった。襲い掛かる激しい痛みに耐えられ  
なくなり、しだいに意識が遠くなっていく  
 失神した零子の体をデキシーは放り出した。そして、敗北を告げる非情の  
テンカウントが告げられたのであった。  
 
終  
 

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