第2幕(前編)  
 
…ピチャ…ピチャ…ピチャ…  
 
ジュク… チュ… クチュ…  
 
薄暗い地下牢に水音が響く。  
 
…ピチャ…ピチャ…ピチャッ…  
 
「…………ぅぐ…ぅ…」  
何かを啜る水音と、ときおり漏れる微かな息遣い。  
 
チュク…チュッ…チュクッ…  
 
もう一つは何か水たまりを弄くっているかのような、そんな水音。  
二つの水音と一つの息遣いが、  
薄暗い地下室に奇妙な音楽となって木霊していく。  
 
奇妙な、それでいて一定のリズムを保つかの様に音が重なり、  
妖しい三重奏となって地下室に漂っていく。  
 
…ピチャ…チャ…ピチャッ…  
 
「……ぐ……ぅ…ぅぅ…」  
 
チュ…チュ…ク…チュクッ…  
 
途切れそうで途切れない三重奏が永遠に続くかに思われた時、  
新たな音が地下室に響いた。  
 
ドピュッ! ドピュッ! ドピュッ!  
 
「ぐっ!」  
それまでの水音とは明らかに違う水をぶちまけた様な音が響く。  
同時に息遣いが止まり押し殺したくぐもった声、  
いや息が代わりに洩れる。  
「…全て、飲み込め…」  
「……… …ん…ぅ…ん…」  
くぐもった息が新たな音を生み出す前に、  
新しい音が、否、声が低く静かに発せられる。  
その声を受けた息が、吐き出す筈だった次の息を吐かずに、  
何かを飲み込む吐息が漏れる。  
「…ぅ……ん……んぅ…」  
地下室に先程まで聞こえていた水音は消え去り、  
代わりに、息遣いだけが木霊していった。  
 
「…ぅん……」  
やがて、その息遣いも終わると、  
何かが蠢き、薄暗かった地下室に光が溢れた。  
「…ふん、生娘よりは上手いが、まだまだだな…」  
そこには、二人の人物がいた。  
一人は灰色のローブをすっぽりと着込み、椅子と思しき物に座っている。  
もう一人の女性と思しき人物が、裸のままローブの人物の足の間に顔を埋めている。  
「思い切りが足りないようだ。まだ羞恥心が残っているとみえる。  
そのような邪魔な心はいらないという事を、また体に教えてやるとするか。」  
ローブに身を包んだ、いや黒翼鳥は静かにそう言うと、  
自身の股に顔を埋めている人物の頭に右手を置くと、  
誰にも聞こえない程の小さな呟きを、その口から発した。  
 
「! っんああぁぁぁっぁぁっぁあああ…」  
 
それまで息遣いしか漏らさなかった人物が、  
甲高い声を上げながらその身を仰け反らせる。  
乱れた髪を顔に張り付かせ、焦点の合っていない目を見開き、  
喉も裂けよとばかりに声を張り上げる女性。  
リアストラ・へイル  
誠実なサリカ神官であり、清楚な一児の母であった筈の彼女は、  
今、そのどのイメージからも程遠い姿をあられもなく晒し、  
体から巻き起こる強烈な感覚に身を委ねていた。  
 
「ふん、中々いいよがりっぷりではないか。  
ほれ、指が休んでいるぞ、遠慮なく慰めるがいい。」  
 
チュ…チュクッ…チュグッ…  
 
「ぁう… ぅ… んっ! あぁっ!」  
先程の薄暗い地下室で響いていた水音と同じ、  
否、それよりも若干重く湿った音が新たに響く。  
それと共に、リアラの口からはその水音と競うように、  
快感に侵されたあられもない嬌声が紡ぎだされていく。  
「くっくっく… 良い声だ。  
やはりお前はそういう声が似合うよ、リアラよ…」  
右手で秘所を掻き回し、左手で自身の胸を揉みしだくリアラを嬲るように、  
責めたてるような言葉を投げかける黒翼鳥。  
その言葉に反応するかの如く、リアラの声と動きが加速していく。  
 
ジュッ…グジュッ…ジュッ!  
 
「んあっ! んん… んむぅ…」  
リアラの秘所から聞こえる水音が、次第に重く、大きくなっていく。  
それに呼応するかのように、リアラの嬌声も熱を、大きさを増していく。  
「くくっ、我に奉仕していた時よりも激しいではないか。  
そうか、お前は露出狂だったのか。  
暗い所で奉仕するよりも、明るい所で見られながら  
自慰をする方がお前の好みだったのはなぁ。」  
「あぁん! ち… ちが…んあっ!」  
黒翼鳥の言葉に、否定の言葉を口にしようとするリアラ。  
だが、快感に侵され淫らに反応してしまう体が、勝手に嬌声を上げてしまう。  
「何が違う。別に我は強制はしていない。  
否定したいのなら、そのあさましく動かしている自分の指を止めればいいだけの事。  
お前の今の姿そのものが、我の言葉を肯定しているのだよ。」  
 
ジュッ! ジュブッ! ジュクッ!  
 
「ひぃっ! んはぁっ! ぅあっ!」  
止めなければ… 頭の何処かでそう考えながら、  
しかし、リアラは黒翼鳥の言葉で体が熱くなってしまうのを感じていた。  
無論、本来のリアラの体であればここまで乱れる事もなかっただろう。  
だが、捕らわれの身になってから、  
知らず知らずの内に快感を引き出す霊薬や、精神を不安定にさせる呪文をかけさせられ、  
連日に渡る調教をされてきたリアラの体は、与えられる刺激全てが快感になってしまう程、  
改造と言って差し支えない程に、変質させられていた。  
リアラ自身も、冷静なままの彼女ならばおかしいと感じられる自分の体の反応にも、  
もはや、これが薬のせいなのか、それとも元々自分は淫乱だったのか、  
判断がつかない程に調教されていた。  
「よほどの売女でもここまで淫乱にはならんぞ。  
なぁ、リアラよ。」  
 
ジュッ! ジュッ! ジュプッ!  
 
「ひゃぁっ! ああっ! あぅっ!」  
既にリアラの股の下には、愛液による水溜りができる程に溢れさせている。  
左手で乱暴に揉みしだかれている胸は、赤く腫れ上がり  
乳首は痛々しい程に硬く尖っていた。  
しかも、硬く尖った乳首からは、白い液体が滴り落ちいく。  
「くっくっく、とうとう母乳まで漏らし始めたか。  
そんな淫乱なお前にぴったりの物をくれてやろう。」  
激しく自慰を続けるリアラの様子を、薄ら笑いを浮べて見つめていた黒翼鳥が、  
懐から何か棒状の物を取り出す。  
取り出したそれを弄びながらリアラの開いた足の間に座ると、  
秘所を弄くるリアラの右手をどけると、一気に突き刺した。  
 
グズッ!  
 
「…っぃひいいいいいいいいぃぃぃ!!!」  
 
「ふん… あっさりと咥えこんだか、この淫乱神官め。  
豊穣と慈母の神サリカの神官が聞いてあきれるわ。」  
 
…ズッ…ズズズズ…  
 
「ああぁ…ぁ…あああ……んはあ…ぁぁぁ…」  
少しずつ、確かめるように中に押し込んでいく黒翼鳥。  
本来なら膣内部との摩擦により抵抗がある筈の挿入、  
だが、高められた快感と自身の刺激により、止め処なく溢れ出てくる愛液によって、  
さしたる抵抗もなく飲み込んでいく。  
やがて、棒のほとんどの部分が膣内に収まったところで、それ以上中に進まなくなった。  
「ひっ… …ふぅ…ひぃ…ん…」  
「くくっ、奥まですんなりと入ってしまったようだ。  
娼婦顔負けの淫乱さだな、リアラよ。」  
「…あああ…はぁぁ…」  
「どうした? 物足りないか? 入れられるだけでは満足できないみたいだな。  
あさましい女だ。ふふ、お前の欲しがっていたものをくれてやろう。」  
「…はぁ…ぁぁ…はぁぁ… ほ、欲しが…」  
 
ズビュッ!  
 
「あひぃっ!」  
リアラの膣奥深くまで入っていた物をいきなり引き抜く黒翼鳥。  
引き抜かれ膣穴から出そうになった寸前、  
今度は先程の抽送など児戯かと思うほど、激しく奥まで突き入れる。  
引き抜き、突き入れる。その前後の動きを、リアラの膣が壊れんばかりに繰り返す。  
 
ズッ!ズッ!ズッ!ズッ!  
 
「ひぃっ! ひゃうっ! んはぁっ! くぅっ!」  
黒翼鳥に動かされた物が容赦なくリアラの膣壁を擦りあげる。  
普通なら、摩擦によって傷つき出血してもおかしくないのだが、  
先程までの自慰によって熱く濡らされた膣内とそこに溜まった愛液。  
そして、今まさに繰り返される激しく熱い膣への前後運動。  
その刺激に反応し、悶えるリアラ自身の体が生み出す新たな愛液が  
黒翼鳥の責めを、より激しく、より淫らに加速させていく。  
 
ズビュッ! ズブッ! ブプッ!  
 
「くひぃっ! ひ、ひゃうっ! ふひぃっ!」  
「くくっ、いいのか? 感じるのか? リアラよ。  
清楚である筈のサリカ神官が、貞淑である筈の母親が、  
赤の他人に弄ばれて感じてしまうのか。  
はしたなく腰を振って、自分自身で突き入れて、淫らな液を垂れ流して、  
神官でもなく、母としてでもなく、一人の…いや一匹の牝として  
イッてしまうのか、リアラよ。」  
愉悦の表情を浮かべながら、嬌声を上げ続けるリアラを見下ろす黒翼鳥。  
その手にリアラを責めたてていた棒と思しき物はなかった。  
既にそれは黒翼鳥の手から離れ、リアラ自身の両手によって己の膣に入れられていた。  
 
「ひぃっ! いい! いいのぉっ! 気持ちいいのぉっ! これぇ、いいのぉ!!!」  
 
ジュッ! ジュプッ! グリュッ! ズプッ!!!  
 
涙を流し、涎を垂らし、全身を赤く染めながら、一心不乱に両手を動かし続けるリアラ。  
その手が前後に揺れ動くたび、溢れ出た愛液が地下室の床に淫らな泉を形作っていく。  
「ふっ…ふふふ…ふはははははっ、喘げ! 悶えろ! 泣き叫べ!  
淫らに、もっと淫らに快感を貪るのだ、リアラよ。」  
 
ジュッ! ジュッ! ジュッ!  
 
「あっ! あっ! あっ!」  
黒翼鳥の声に反応し、手のスピードを速めるリアラ。  
翡翠色の瞳は妖しく光り、異物を呑みこむ自らの秘所をその目に映す。  
不意に、妖しい輝きを灯していた瞳が、その輝きを無くしていく。  
絶え間なく異物を生き物の様に呑みこみ続ける秘所を、リアラ本来の翡翠色の世界に映し出…  
 
パチン  
 
グボッ!!!  
 
「ぎひいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!」  
 
地下室に今まで以上のリアラの嬌声が響き渡る。  
黒翼鳥が指を鳴らした瞬間、リアラの両手がその音に反応するように  
手に持っていたそれを、深く深く自身の中に突き刺したのだ。  
 
グブッ! グボッ! グビュッ!  
 
「がひぃっ! ぐひぃっ! ひぎぃ!」  
嬌声、いやもはや悲鳴と言っても良い声を上げながら、  
己の体を貫き通さんばかりの勢いで両手を動かすリアラ。  
地下室の床の上で髪を振り乱し妖しく蠢くそのさまは、  
まるで舞っているかの如く、妖しく淫らな舞を地下室の壁に映し出していく。  
そして舞が一段と激しく、速くなっていく。  
 
グプッ! ズボッ! グブッ!!!  
 
「ぎぃっ! イイ…のぉっ! て… か…って…に う…ご…イイィッ!  
わた…イ…ちゃ…うのぉ! イ… イ… イ…っちゃう…」  
「そうだ、イケ! イクのだ、リアラ! 淫乱な牝豚らしく、はしたなくイってしまえ!  
神官でもなく、母でもなく、ヨガリ狂う牝豚として、イクのだ、リアラーーー!」  
「イっちゃうのぉっ! イっちゃうのぉ! わたし、イクのぉーーー!」  
 
グボッ!!!  
 
「イクーーーーーーーーー!!!!!!!!!」  
 
地下室の壁に映し出された影の舞が動きを止める。  
黒翼鳥の声に応えるかのように限界まで体に突き刺した瞬間、  
あらん限りの絶叫を喉から搾り出し、限界以上に身体を反り返して  
地下室の踊り子は舞台を終えた。  
「……メ………ノ…………ァ…」  
妖しく輝いていた瞳は、何も映さない白の輝きを灯して天井  
狂わんばかりの絶頂を迎えた身体は、時折洩れる快感の余韻にその身を震わせる。  
そして、快感に侵された嬌声と絶頂を告げた絶叫を吐き出した口から、  
娘の名が儚げに地下室に木霊した。  
 
グボッ…  
 
娘メノアの名と共に、身体の奥深くまで自身の手により埋め込まれていた物が  
背徳の水と共に吐き出される。  
床に転がったそれを手に取った黒翼鳥は、  
空いた手で何かの印を切り、冷たい声で言葉を紡ぐ。  
黒翼鳥の言葉が終わると同時に、手にあった物がまるで元からそこに存在しなかったかのように、  
黒翼鳥の手から消える。  
その手を愉しそうに見つめた黒翼鳥は、床に仰向けで倒れているリアラに目を向けると、  
再び何かの言葉をその朱い唇で紡いだ。  
 
「…がはっ、…はぁ…はぁ…はぁ…」  
 
すると、それまで絶頂のあまり気を失っていたリアラの口から空気が吐き出され、  
息を吹き返したかのように弱弱しいながらも呼吸をし始めた。  
リアラの胸の上下運動が規則正しくなっていくのを観察していた黒翼鳥は、  
その様子に満足げに笑うと、  
壁に立てかけてあった鈴を鳴らしながら奥の闇に消えていった。  
 

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