新星町のとある雑居ビル、その屋上に薫の姿はあった。
何も言わず、ただ目の前に広がる大阪の街を眺める顔はどこか憂いを秘めている。
ここは、彼女の秘密の場所。
この場所の存在を知っているのはただ一人を除くと彼女一人である。
―カン、カン、カンー
ふと薫の耳に音が聞こえた、階段をゆっくりと登ってくる音。
薫はドアの方を振り返ってみる。
さっき言った様に、この場所はただ一人を除くと彼女しか知らない。
という事はこの足音の主はただ一人しかいない、薫は少し動揺していた。
階段を登ってくる音はだんだん近づいてくると、屋上のドアを開けた。
「やっぱり、ここに居たな」
「一馬・・・」
久しぶりの再会。
薫の声には驚嘆がおり混ぜられていた。
「ど、どうしたん?」
薫が次に発した声はこうだった、まあ仕方ないかも知れない、つい前日に電話で話した相手が自分の前に突然現れたのだから。
「まぁ、ちょっとした用事があってな」
「あ、あぁ〜そうなんか」
何でこんなにうろたえているのか、薫にもよく分からなかった。
そんな薫を尻目に、桐生は薫の隣にやってくる。
うろたえていた薫も、気を取り直した。
「いやぁ、しかしビックリしたわぁ〜突然こんなとこに来るんやもん」
「・・・」 「遥ちゃんは元気?あ、もしかして一緒に来たん?」
「・・・」
「一緒に来たんやったら、明日どこか遊びに行こか!あたしが案内したるさかい」
「・・・・遥は来てないんだ。」
「そ、そうか・・・」
なんだか会話が続かない、もちろん桐生は怒っている訳じゃない、薫が精一杯に明るくとり繕っているのが民世に理由を聞いていた桐生には分かっていたからだ。
そんな中、明るく続けようとする薫に桐生は静かに口を開いた。
「薫」
「な、何?」
桐生の真面目な声が、さっきまでの態度と合わせて怒った様に思えたのか、薫の反応は「動揺」という言葉か良く似合う物だった。
「薫、お前今謹慎中なんだってな」
「・・・!」
薫は驚いているようだった。
民世の話によれば、薫が3ヶ月前の事件で別所の命令を無視し、捜査を続けた事や、個人的な理由で暴走した事が府警内で問題となり、謹慎処分となってしまったらしい。
本来ならクビの可能性もあったが、別所の上層部への必死の説得により、免れていた。
「・・・どうして、知ってるん?」
「『葵』のママに聞いたんだ」
「お母ちゃんか・・・もう、あんまり人には言わんでって言うとったのに」
そう言って、少し苦笑いしながら愚痴る薫に、桐生は視線はそのままで言う。
「ごめんな」
「え・・・?」
「俺があんな事件に巻き込んだせいだ、本当に済まない」
桐生の謝罪に、薫はうつむいて沈黙する。
10秒くらいの沈黙の後に、薫は静かに口を開いた。
「一馬には・・・知られとう無かったな・・・」
「どうしてだ?」
「あんた、優しいから絶対責任感じてまうと思ったもん、心配させたく無かったし・・・」
そう言う薫の顔は覇気が無い、あの電話はこんな顔で掛けていたのだろうか。
「そんな気にしないでええんよ、謹慎なんてすぐに終わるし・・・だから謝らんで?」
薫は微笑みを浮かべながら、桐生に言う。
ただ、その顔はどこか悲しげな雰囲気をたたえていた。
「もうこんな時間や、一馬・・・あたし帰るから」
薫はそう言うと、帰ろうとする。
「薫、ちょっと待て」
桐生はそんな薫を呼び止める。
階段へ向かう方向を向いたまま、さっきの位置から5・6歩の位置で薫は立ち止まった。
「お前、なんか隠してる事があるんじゃないか?」
「・・・」
薫は何も言わない。
「お前言ってたよな、辛い事や嫌な事があったりしたらここによく来るんだって」
「・・・」
「ただの推測だが、お前なんか辛い物を抱えてるんじゃ無いか?」
「・・・」
「俺に昨日電話をかけてきたのも、俺に話を聞いてほしいからとかじゃないのか?」
「・・・」
答えの帰ってこない問答を桐生は繰り返す。
何分それが続いたろうか、今までドアの方を向いていた薫がこちらをゆっくり振り返る。
泣いている訳でも怒っている訳でも無い。
意思を読み取りづらい表情を浮かべて。
「なんか、何でもお見通しみたいやね」
ふふっ、と笑って薫はさっきまで自分がいた手すりまで戻る。
「一馬・・・あたしな、こうやって謹慎になってからず〜っと考えてる事が一つあるんや」
桐生は黙って耳を傾ける。
「なんであたし刑事になったんかなって事なんやけど、それを処分が決まった日の晩くらいから考えてんねん」
「だって、よく考えたら危険な仕事やし、事件が全部一件落着で解決する訳や無いし」
「マル暴なんかしょっちゅうヤクザとやりあって、危ない目にもしょっちゅう会ったりするし」
「休みはホンマ少ないし、刑事やって言うだけで引く奴とかおるんやで!」
悩みを吐露するというよりは、なんだか刑事という職業に対する愚痴みたいで桐生は少し笑ってしまいそうになった、だがそれもその一瞬だけであった。
「それに・・・」
その声のトーンが突然下がる。
「それに・・・あんな悲しい目にも会わなあかんかったし・・・」
きっと薫はあの事件の事を言っているのだろう、生き別れの父と兄を目の前で亡くした、悲しい事件の事を。
「あたしな・・・ホンマの事言うと、まだあの事件の事ふっきれてないねん」
「あたしは刑事やのに、結局お父ちゃんもお兄ちゃんも助けてあげられへんくて・・・ただ見てるしか無くて・・・」
「今でも思うねん・・・なんでっ・・・もうちょっと早く気付かなかったんやろって・・・」
「親子や・・・兄妹やってもっと・・・もっと早く気付いてればっ・・・命張ってでもお父ちゃんやお兄ちゃんの事守ったのにってぇっ・・・」
薫の目からは大粒の涙が溢れていた。
「そやからな・・・?あたしっ、刑事・・・辞めなあかんかも知れへんって言われた時な・・・辞めたいって思った」
「こないな悲しい思いするくらいやったら刑事なんてもう嫌や・・・って」
薫は桐生の方へ涙で濡れた視線を向ける。
「なぁっ・・・一馬、なんでっあたし刑事になんてなってしもたんやろなぁっ・・・」
「刑事になんてならへんかったらっ・・・、こないな辛い思いせんで済んだのに・・・」
「お父ちゃんの事も、お兄ちゃんの事も、悲しい事・・・・みんな知らんで暮らしていけたのに・・・・」
「刑事になんてっ・・・ならへんかったら良かったぁっ・・・」
薫は泣き崩れた、実の父と兄の死は、彼女をここまで追いつめていたのか。
―バサッ―
「・・・えっ」
その時、薫は涙で潤む目の前の景色が突然変わったのを感じる。
それはあの事件の最後、爆弾のタイムリミットが迫る中で感じた、暖かさと安らぎに酷似していた。
不思議に思って、顔を上げればそこには黙って自分を抱きしめる桐生の顔があった。
2人はそのまま数秒ほど静止していた。
「あたしな・・・ホンマの事言うと、まだあの事件の事ふっきれてないねん」
「あたしは刑事やのに、結局お父ちゃんもお兄ちゃんも助けてあげられへんくて・・・ただ見てるしか無くて・・・」
「今でも思うねん・・・なんでっ・・・もうちょっと早く気付かなかったんやろって・・・」
「親子や・・・兄妹やってもっと・・・もっと早く気付いてればっ・・・命張ってでもお父ちゃんやお兄ちゃんの事守ったのにってぇっ・・・」
薫の目からは大粒の涙が溢れていた。
「そやからな・・・?あたしっ、刑事・・・辞めなあかんかも知れへんって言われた時な・・・辞めたいって思った」
「こないな悲しい思いするくらいやったら刑事なんてもう嫌や・・・って」
薫は桐生の方へ涙で濡れた視線を向ける。
「なぁっ・・・一馬、なんでっあたし刑事になんてなってしもたんやろなぁっ・・・」
「刑事になんてならへんかったらっ・・・、こないな辛い思いせんで済んだのに・・・」
「お父ちゃんの事も、お兄ちゃんの事も、悲しい事・・・・みんな知らんで暮らしていけたのに・・・・」
「刑事になんてっ・・・ならへんかったら良かったぁっ・・・」
薫は泣き崩れた、実の父と兄の死は、彼女をここまで追いつめていたのか。
―バサッ―
「・・・えっ」
その時、薫は涙で潤む目の前の景
「それは違うぞ、薫」
今まで黙って聞いていた桐生が口を開く。
「自分の親や兄弟の事を知らねぇ方が良かったなんて、言うもんじゃ無ぇ」
そう言って薫を諭す、薫は少し顔を上げたまま黙っていた。
「俺は、物心ついた時から親父もおふくろも死んで居なくてな、確かにいたんだろうが、顔もどんな人かも知らないんだ」
「だから良く分かるんだ、家族の顔を知らねぇって事がどれだけ悲しくて、辛い事か」
「けれどお前は違う、親父さんとも兄貴ともちゃんと出会えた」
「少しの間だけだったが、親として、兄弟として向き会えたじゃねぇか」
「薫…お前は俺と違って1人じゃ無かったんだ…」
「だから、そんな事を言うんじゃ無ぇ…」
静かで、優しく、少し感情的な言葉。
これが、桐生なりの精一杯の慰め。
その言葉に薫は、ゆっくりとうなずくと桐生の胸に顔を埋める。
これで少し落ち着いたのか、薫の涙声は聞こえなくなった。
「それとな、薫」
「…ん…?」
「俺はな、お前が刑事で良かったと思ってるんだ」
「…な、んで?」
「お前が刑事じゃ無かったら、お前と出会えなかったからな」
桐生はそう言うと、少しだけ抱きしめる力を強める。
「薫、お前に言っておきたい事がある」
「…何…?」
「俺は、お前の事が好きなのかも知れない」
「えっ…」
突然の告白、薫は顔を上げた。
当然ながら、その顔は驚いている様だ。
「お前が好きだから、お前が辛いなら慰めてやりたいし、力になってやりたい」
「だから、お前も辛いなら1人で抱えこまないで、少しで良いから俺を頼ってほしい」
「俺が、守ってやるから…助けてやるから」
拒まれたらどうするのかという考えは、どこかに消えてしまっていた。
伝えたい言葉が口をついて溢れ出た。
「…ぁたしもっ…」
薫の口が開く。
「…あたしも、あんたの事が好きや、大好きやっ…」
薫の顔からは、また涙が溢れる。
ただ、それはさっきまで流していた涙とは違う物だろう。
「…あたしも、あんたの事思い出して頭の中がこんがらがってしもて…」
「…辛い事とかっ…悲しい事とか考えてる時にっ…あんたが一緒にいてくれたらどんなにええやろって思ってて…」
「…んで、気いついたらっ、あんたの携帯に電話しとった…」
「…もしかしたらっ、来てくれるかもしれへんって思って…そんな事ある訳無いわって思ったけど…」
「だけど、あんたはっ…来てくれてっ…あかんもうよう分からへんっ…」
「あんたの事が好きやっ…好きで、好きでたまらんねん!」
感情を吐露すると、薫は顔を隠すように再び顔をうずめた。
抱きあったまま、再びの静止。
桐生のシャツの胸部は薫の涙でその部分だけが濡れている。
視線を下ろすとそこには顔をうずめたままの薫がいた。
桐生がそれをただ眺めていた時、ふと薫が顔を上げる。
涙で潤んだ瞳と恥ずかしさからか赤く上気した頬。
その表情に、桐生は心を鷲掴みにされた様な気がした。
視線はぶつかったまま動かない、互いに見つめ合ったまま。
行き着く先は、互いに分かっていた。
ゆっくりと顔が近づく、その差が詰まるのにさして時間はかからなかった。
2人は唇を重ねた、重ねるだけのキス。
すぐにそのキスは、角度を変えながら重ねる深い物に変わった。
「…ん…んは…」
薫の艶っぽい息つぎの声が、桐生の意識を加速させる。
「…ん…んっ」
唇と唇のわずかな隙間から桐生の舌が入れられ、薫もそれにゆっくりと舌を絡める。
まるでデジャヴのように神室町ヒルズの屋上で交わしたキスと全く一緒だった。
「…んあ…はぁ…んっ…ふあっ」
煽情的に吐き出される吐息、頭の中がボーッと熱くなる感覚、3ヶ月前にしたキスと何ら変わらない感覚が2人を支配していた。
ただ、変わった点が一つだけある。
それは、この場所が2人しか知らない秘密の場所だという事。
つまり、邪魔は入らないという事。
つまりは、その先に行ってしまっても止まる事はないという事。
2人は、黙っていてもその状況を理解していた。
「…んっ…はぁ」
桐生と薫の唇が離れる、唇の間を透明な糸が伝う。
桐生は、そこから額・耳・首筋へと舌を這わす。
少し擽ったそうに、薫は身をよじらせる。
首筋から離れると、桐生は薫のジャケットを脱がす。
そしてその手をシャツのボタンへと移動させる。
一つずつ、シャツのボタンが外されて、白い胸元が露にされていく、薫は制止しない。
ボタンが最後の2つ程を残して外された。
白い双丘が水色のブラで包まれている。
桐生は、鎖骨へと舌を這わせた。
「…あっ…やっ、ちょっ…そこっ」
薫が声を上げる、ここが弱いらしい。
桐生は鎖骨から首筋へ向かって、つうっと舌を滑らせる。
「あっ…ちょっ…あかんてっ…」
薫は身をよじらせながら桐生に抗議の声を上げた。
少しだけ嗜虐心が湧いてきた桐生だったが、これ以上、そこを責めはしなかった。
桐生は、薫の肩に掛かっていた両手を双丘へと置くと、弱く、ゆっくりとブラの上から動かす。
「…あっ…ああっ…ふうっ、あっ」
薫の口から、小さな声が漏れる。
だんだんと強くなる桐生の手の動きに比例するようにその声も大きくなってゆく。
「…ちょっ…つよっ…もっとゆっくりっ、あっ、ふぁっ!」
薫の声が、この屋上のフロアに響き渡る。
桐生は、一旦その手を止めると薫の双丘を覆う水色のブラのホックを外すと、下へとずり下ろす。
型の良い、2つの双丘とその中心の赤い実が露になった。
「…一馬、ちょっと恥ずかし…」
薫が真っ赤な顔で、桐生に弱い抗議の声を上げる。
「大丈夫だ、誰も見てない」
「大丈夫て、そういう問題や…あぁっ!」
薫が最後まで言い切るより先に、桐生は片方の実を口に含み、もう片方の乳房を強めに揉む。
「あぁっ!、ちょっ…まってっ、あっ、こんな…のっ、やった…こと、あっ、無いからぁっ…」
薫のそんな言葉に、桐生は反応する。
「まさかお前、初めてなのか?」
女性にとっては、デリカシーの無い聞き方かも知れない。
「いや、初めてとか、そういう訳や…無いんやけど…あの…その…なんて言えばええんやろ…」
桐生は、なんとなく理解して苦笑いした、口には出さないが。
すると、薫は拗ねた様な顔をしてこっちを見ている。
「…仕方ないやんっ、あたし、そんなモテへんかったもんっ」
「あんたみたいに、経験豊富や無いもんっ、仕方ないやんっ!」 真っ赤な顔をして薫は拗ねてしまった。
桐生は、そんな薫の顔を引き寄せて口付ける、10秒くらいだったろうか。
唇を離すと、薫は熱く目を潤ませる。
「別にそんな事言ってねぇだろうが、俺は別にそんなのどうでも良いんだ」
「でも…あんた、ちょっと笑ったし…」
「全く、あんまりグズグズ言ってると黙らせるぞ、こうやって」
そう言うと、桐生はさっきの責めで屹立した果実を指先でコリコリといじった。
「えっ…、ちょ…はぁぁっ、あぁぁん!」
薫は、軽く達してしまった様だった。
「こういう風にな」
「…はぁ…はぁ…ん、イジワル…」
「何とでも言え」
桐生はそういうと、左手を下へと降ろしてゆく。
そこはもう、スラックスの上からでも分かるほどに濡れている。
恐らくは、このまま最後まで…お互いの頭の中にそれは浮かぶ。
邪魔は入らない…、その事実が桐生をその先まで突き動かす。
桐生は、薫に目で了解を取る。
薫は黙って、ゆっくりとうなずいた。
ベルトを緩め、スラックスを下ろすとブラと同じ水色のショーツがそこに現れる。
蜜で濡れてシミになってしまっているそこを、桐生は指で擦る。
「はぁっ…あっ…んんっ…」
擦る度に蜜の量は増え、ジュッと音をさせる様になる。
「ん…んっ…あっ…はあっ…」
薫の声も大きくなってきた。
その時だった。
―ポツッ―
薫の頬に何かが当たった、水だろうか。
「えっ…」
と薫が言った直後だった。
―ザァァァァァ―
何と間が悪いのか、大雨が降ってきた。
予期せぬ邪魔者の登場に2人の興奮は少しだけ冷めてしまった。
桐生は今まで触れていた場所から指を放すと、薫の服を元通りに直す。
「行くぞ、いつまでもここに居たら、濡れちまう」
「あ…うん」
薫がそう言うと、桐生は薫の手を引いてドアからそのフロアを出て行った。
階段を降りると、小さな通りに出る。
2人は閉まった商店の軒先でその場凌ぎの雨宿りをしていた。
桐生は赤くなって黙っている薫に聞く。
「薫、俺は今から今日泊まる所を探す」
「うん…」
「お前はどうする?」
「えっ…?」
「嫌なら、帰っても良いんだぞ?」
勿論、桐生はそんな事を望んでいる訳では無い、ただ無理強いはしたくは無かった。
「イジワル…」
「ん?」
「今さら、そんな事聞かんといて…」
そう言うと、桐生の腕にすがり付き。
「まだ…帰りとうない、あんたとまだ一緒に居たいねん…」
と赤い顔をさらに赤くして言った。
「分かった…」
桐生は薫と腕を絡ませたまま、タクシーを拾う為に大通りに出て行った。
―サァァァァァ―
「…ん…ぷは…んふ」
ここは、蒼天堀にあるラブホテルの一室。
バスルームには、一糸纏わぬ姿で抱き合い、少し熱いシャワーを浴びながら、キスをする2人の姿があった。
「…ん…はぁ、はぁ」
唇を離すと、薫は熱いため息を吐き出す。
桐生はさっきやりかけになってしまった愛撫を再開する。
胸の愛撫を簡単に済ませると、さっきとは違い露になった秘部へと手を伸ばす。
薄い茂みを指で掻き分け、その中心へ。
シャワーの水とは違う何かでそこはもう溢れていた。
その秘部に、桐生は自分の指を一本差し込むと、その指を曲げてクチュクチュといじってみる。
「…ぁっんあっ!はぁん…」
薫は切なげに声を上げる、それと同時に秘部は桐生の指を緩く締め付ける。
薫の反応を見ながら、桐生の指は3本まで秘部へと入れられた。
そしてその3本の指を、緩急を付けながら桐生は動かす。
「あっ、んぁっ!…あかん…そんなっ…こんなんもっ、あたし…初めてっ!やの…あぁっ…そんなっ…はよ…したらあたしっ…あぁ…何かっ…きてっ…あぁぁぁぁぁっ!―」
桐生の指の動きで、薫は果ててしまった。
果てた薫は、力が抜けたせいなのか倒れそうになる。
「っと、大丈夫か?」
桐生は、薫の体を抱き止め、問いかける。
「…はぁ、はぁ…ん、大丈夫や、けど…はぁ…」
「まさか、指だけでイっちまうとはな」
桐生は笑みを浮かべながら言う。
「そろそろ上がるぞ」
桐生は薫を抱える様にしながらバスルームを出る、桐生の力が成せる技だ。
そして薫の体をしっかりと拭いた、ここで風邪を引いては本末転倒と言うものである。
そして薫をベッドへと仰向けに寝かせる。
今だ絶頂の余韻から覚めない薫は、心ここにあらずといった感じだった。
桐生は少し真面目な顔で薫に問いかける。
「薫」
「…ん」
「そろそろ挿れるが、良いか?」
なんともぶっきらぼうに桐生は薫に同意を求める。
薫は少し、安らいだ顔で静かに答えた。
「…うん、ええ…よ、やけど、ゆっくり来てな…」
同意を得ると、桐生は腰に巻いていたタオルを取る。
屹立した肉棒が露になる、それは桐生の逞しい肉体に見合う豪快な代物だった。
これが、あたしの中に…薫は少しだけ怯んでしまう。
桐生は、ゴムを付けると、薫の目の前に立った。
「足、開いてくれ」
桐生の申し出に、薫はゆっくりと足を開く、秘部の全貌が明らかになる。
恥ずかしそうに顔を伏せる薫、それを尻目に桐生は開かれた足の間へと侵入する。
そして、慎重に自分の肉棒の位置を合わせると薫の希望通りゆっくりと挿入して行く。
「あっ…うっ、くっ」
薫は少し辛そうな声を上げる。
数十秒程時間をかけて桐生の肉棒は薫の中へ全部入れられた。
そして、薫に負担を掛けないよう少し休んだ後、桐生はゆっくりと動き出した。
「あっ…あぁっ…んあっ…はぁ…っ」
指とは比べ物にならない程の太い物体が、自分の中で暴れる感覚は速さはゆっくりでも薫に絶大な快感をもたらす。
「か…一馬…」
「ん、何だ?」
「もっとっ、強おしてっ、も、ええよ…大丈夫やからっ」
その言葉を聞くと、桐生は今までの速い動きを止める。
そして、おもむろに肉棒を先端違くまで引き抜き、そこから勢い良く腰を叩きつける。
「あぁぁっ!!」
快感が薫の体を突き抜ける。
その動作を5〜6回繰り返す、薫は身をよじらせながら喘ぐ、すでに結合部からはジュプッ・ジュプッと淫猥な音がして来ていた。
さらに桐生は、薫の腰を持ち上げると対面座位の状態にした。
そしてその状態から薫の腰をそそり立つ肉棒に落とす。
「あ…あぁあっ!」
さっきまでよりも奥深く肉棒が届く。
桐生は腹筋を使い、勢い良く突き上げる、薫の体が少し浮き上がった。
「あぁっ!、ちょっ、ふかっ…あぁ!ちょ…あた、まっ、おかしくなりそ…あぁぁっ!おくっ…あたるっ…か、ずまの、がっ…あぁんっ!おく…あたってぇ…もっ…へん…なりそ…あぁぁん!」
突き上げによる快感の波に、薫は飲まれてしまったようだった。
ただひたすらに喘ぐ薫の姿は、桐生の興奮をただ悪戯に掻き立て、動きを加速させる。
「か…かずまっ!…あたしっ…もうっ!」
薫の切迫詰まった声が限界を知らせた。
「あぁ分かったっ、先にイッていいぞ」
「あぁっ!かずまっ、かずまぁぁっ!―」
薫は背中を弓なりに反らせて桐生の腕の中で果てた。
しかし、桐生の動きはまだ止まらない。
「えっ…ちょっ…まっ…あぁぁっ!」
「すまん、もう少しなんだ」
「あぁぁっ!…やぁっ!…あかんてっ、今っ…あたしっ…イッたばかりやのにっ…あぁ!…」
感じ過ぎてしまうのか、薫はビクビクと体を痙攣させる。
行き場の無い快感にさらされた体が、今日3度目の絶頂を迎えるのにさして時間は掛からなかった。
「もう…俺も限界だ」
そんな中、漸く桐生にも限界が訪れたのは、薫が4度目の絶頂に近づいた時だった。
「ふあぁっん!…ひあっ、あぁん!あぁぁぁっ!―」
「くっ…」
薫の絶頂による締めつけにより、桐生も漸く絶頂を迎えた。
薫は、気を失ってしまった様だった。
桐生は自分のモノを引き抜くと、薫の顔に目線をやる。
「無理、させちまったな」
桐生は一人呟くと、薫の体をちゃんと寝かせてシーツを掛ける。
「明日、起きたらなんて言われるか…」
そう言うと桐生はシーツを被り、深い眠りに着いた。
「…ん…んんっ」
「おっ、起きたか」
薫が目を覚ますと、隣の桐生が声をかける、当然だが2人とも裸である。
「うん…おはよ」
薫は桐生に体をくっつける。
「どうした」
「ちょっと、寒くて…あかん?」
「いや、悪くねぇ」
そう言うと、桐生は薫の頭を片腕に乗せて、腕枕をする。
薫も桐生の胸板に腕を回し、抱きつく様な状態になる。
「薫」
「なに?一馬」
「悪かったな、無理させちまったみたいで、まさか、気を失うとは思わなかったからな…あまり経験無かったんだろ?」
「うん…ていうか、1回しか…した事無かったから」
「なんだ、それじゃ尚更辛かったんじゃないのか?」
「ううん、最初はちょっと痛かったけど、途中からスゴいキモチ良うなって…何か変になってしもたもん」
「それなら良いが…」
薫の顔は、安心感からか安らかな表情を浮かべている。
昨日までの悲しげな薫の姿は、どこかに消え失せていた。
「なぁ…薫」
「ん?」
「刑事、辞めるなよ」
「うん…」
「辛くなったら、いつでも電話しろよな」
「うん…」
「後な、薫」
「なに…一馬」
「愛してる」
「…あたしも、ん…」
そう言うと2人は熱く口付けを交わした。
唇を離すと薫が熱っぽく瞳を潤るませながら言う。
「…一馬」
「どうした?」
「もう1回…せえへん…?」
「…大丈夫なのか?」
「だって…さっきからあんたのがおっきくなってて…それ、見てたら…何か…その…ムズムズして来て…お願い…そのまま入れてええから…」
その申し出を断る術も、理由も無い。
桐生は、薫の秘部に指で触れてみる。
そこは蜜が溢れ、洪水の様になっていた。
指を動かせば、グチュッ、グチュッと音がする程に。
桐生は、薫を四つん這いにさせる。
薫の顔は恥ずかしそうに赤くなっていた。
そして、バックの体位で生のまま挿入する。何の抵抗もなく、桐生の肉棒は薫の中へ入っていった。
桐生は薫の背後から、勢い良く動く。
「…んっ、あぁっ!あんっ!…すご…あぁっ!はあぁ!ふあぁっ!…はぁ…あぁ!…すご…キモチぃっ…んああ!」
激しい桐生の責めの快感に、薫はこの後ヘトヘトになるまで鳴き続けたという…。
―1ヶ月後―
桐生は、いつもの闘技場の帰り道を歩いていた。
今日も勝利し、記録はまた更新らしい。
―「♪〜♪〜♪」―
着メロが鳴り響く、桐生の携帯の物だ。
あの大阪での夜以来、携帯は持ち歩く様になった。
「もしもし」
「一馬?あたし」
「おう薫か、どうしたんだ?」
電話の相手は薫、2人はあの大阪の夜以来こうやって電話でやりとりをしている。
時々は会いに行ったりもするが、こうやって電話で会話をする事のほうが多い。
「あたし、来月から刑事に復帰する事になったんや」
「そうか、良かったじゃねぇか」
「うん…それでな、また2人で会いたいんやけど…」
「俺は別に良いが、何かあるのか?」
「いや、特に何も無いねんけど…たまには会いたいな〜思て、久しぶりに一緒にゴハン食べたり、話したりしたいねん」
「それに…久しぶりに…して欲しいし…」
電話口での薫の不意打ちに桐生の顔は赤くなる
恐らくは薫の顔も真っ赤になっているだろうが。
「…分かった、じゃあ今度の週末にそっちに行くからな」
「うん…待ってる」
そう言うと、電話は切れた。
「…プレゼントでも買っていくか…」
桐生は呟くと、アパートへの道を歩いていった。
無機質な白いドアを開け、中に入る。
「遥、帰って来たぞ」
桐生がそう言うと、この前とは違い。
「おじさんっ、お帰りっ!」
と遥の元気な声が聞こえてきた。
完。