先日、高山からふんだくった金の一部を静奈が使った。  
泰輔と二人で焼肉食べて、少し飲んで…  
ほろ酔いの二人は外に出ると外気の寒さに身体を堅くした  
 
「寒っ。どーする?お兄のトコでも行く?」  
 
静奈がはぁーっと白い息を出しながら言う。  
そんな様子を見ながら泰輔  
 
「行ってどーすんだよ。戸神がいるかもしれねぇじゃん。  
 っつーか、兄貴のとこ行っても面白い事ねえだろ。帰ろうぜ」  
 
寒っ、と言って歩き出す二人。  
泰輔の頭の中では、功一の言葉がアルコールと一緒に妙にまわっていた。  
 
『現実として、しーは俺たちと血の繋がりはない。だから、余計に  
 守ってやらなきゃいけないんだよ』  
 
…別にそんな事は関係なく、妹として守ってやればいいだろう  
違和感のある功一の言葉が…嫌な感じで引っかかっている。  
 
「どうしたの?泰にい。酔った?」  
 
珍しく黙り込んでしまった泰輔の様子に気づいて、静奈が聞いてきた  
 
「別に?そうだなー、酔った酔った。人の金で飲む酒ってうめぇー!」  
 
はしゃいで泰輔が言うと静奈も「高山のバーカ!」と叫んで二人で笑う。  
そうして自宅に帰る。  
 
…しーを、普通に「守りたい」って思うのは、おかしくないよな…  
泰輔はまだ、何かすっきりしない感じで考えていた  
 
部屋に戻ると泰輔は自分の布団に倒れこむ。  
横になると酔っているのがわかる、目を開けると緩い回転を感じた  
壁の向こうから静奈が話しかけてきた  
 
「泰にい、大丈夫?なんか今日変だよ。やっぱ。」  
「お前さ……好きなヤツとか、いたりすんの?」  
 
唐突な質問に、静奈の返事はない  
おそらく着替えてるんだろう、布の擦れる音だけがする  
 
「何いきなり…。……いないよ」  
 
その「間」が、いることを指しているようだった。  
そしてそれが誰か…勝手に予測がついてしまい、回る天井を見ながら泰輔は呟く  
 
「戸神行成だろ」  
 
――静奈の返事はない。少し遅れるようにしてカーテンが開く音がすると  
泰輔の部屋スペースの前に、部屋着のピンクのジャージの上下で静奈が立っている。  
 
「そんな訳、ないじゃん。お金目当てで近づいてるだけだし」  
 
静奈の顔は…少し困っている様子だった。それが泰輔には嘘をついているとしか思えない。  
身体を起こし冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを出して、飲んで一息つく  
…やっぱり、この違和感。俺のせいだ。  
 
「しい。…あいつはさ、ターゲットなんだよ」  
「わかってるってば…。わかってる」  
「わかってるけど感情は押さえられない――って?」  
「…。」  
 
ふらり、と立ち上がり静奈の前に立つ。泣きそうな顔の静奈を見て  
どこか冷静に、水を飲んでボトルのキャップを閉めると  
意思とは関係なく、衝動的に、静奈を抱きしめた  
 
「……泰にい?」  
 
泣く寸前の声で、静奈が聞く。  
その声で、抱きしめる力を強くする  
 
「俺やっぱ、しーの事好きだわ」  
 
子供でも宥めるように、静奈は泰輔の背中に手を回してポンポンと叩いて  
 
「ありがと。私も泰にい好きだよ?おにいだって好き」  
「そうだよな…うん、そう言うと思った」  
 
自分の言っている「好き」の意味が間違っているのは自分でわかってる。  
それでも酒で理性が緩いのか、続けて言葉が勝手に出て行く  
 
「好きだし大事だから、しーの事は守りたいし、傍にいてやりたい。  
 …戸神とか、いきなり出てきたヤツに、取られたくないんだよ…」  
 
最後の言葉に、違和感をやっと感じた静奈は顔をあげて泰輔の顔をじいっと見る  
首を傾げるようにして  
 
「――泰にい?なんか…彼女にでも言うような内容なんだけど…」  
 
戸惑いの色が出ている静奈の顔を見ると、それをごまかすように  
自分の中では自然に、そっと静奈の唇に軽いキスをする。  
瞬きすらせずに驚いた顔の静奈…思わず、笑ってしまった  
 
「なんちゅう顔してるんだよ」  
 
数秒、驚きで固まってた静奈が、怒り出して、身体を離そうと泰輔の身体を押す  
 
「何すんのよっ!最っ悪!キスとか、有り得ないんだけど!」  
 
押さえ込むように抱きしめて、抵抗する静奈ともみ合いになり  
バランスを崩して二人で布団の上に倒れこむ  
 
「おかしいよ泰にい、妹なんだよ?いきなりキスって訳わかんない!」  
「俺だって訳わかんねぇよ!でも…しーの事、好きだと思ったんだよ!」  
 
いつもの兄妹ケンカの口調で言い争うが、内容は兄妹ケンカのレベルじゃない  
泰輔の顔を叩こうとした静奈の手を、素早く捕まえて、布団に押さえ込む。  
腹を蹴ろうとした静奈の脚を、自分の膝を割り込ませて封じる  
 
「離してよーっ。酔っ払いにも程があるっ!」  
 
怒る静奈を、やっぱり冷静に見てる自分がいる――泰輔は、上から静奈の顔を見て  
 
「そんな暴れんなよ。俺に勝てる訳ねぇだろ。っつーかさ…  
 兄妹とかって括り関係なく、静奈が好きで…誰にも取られなくない。  
 …兄貴にも」  
 
訳がわからず、パニックに近づいていく静奈の抵抗を、力ずくで抑え込む。  
 
「泰いに!何言ってるかわかる?ねぇ…どうしちゃったのよお…」  
 
遂に泣き出す静奈。零れた涙を…舌で、舐めてやる。  
 
「泣き虫は治んねぇな」  
 
泣いて、少し怯える静奈に唇を重ねて…文句を封じた  
舌を相手の口に押し込んで、優しく舐めまわしてやると、抵抗する手足が脱力していった。  
柔らかい唇や舌が…愛おしい。暫く一人で愉しんで、唇を離して静奈の顔を見ると  
涙を浮かべた呆けた目で、自分の顔を見ている  
 
「…泰にい…」  
「取られたくない…いつも一緒にいただろ、俺ら…」  
 
もう自分では止められない。静奈のジャージのファスナーを下げて下に着ているTシャツをたくし上げる  
そしてそのTシャツの中に手を進めていき、下着の上から優しくゆっくりと胸を揉み  
再び唇を重ねて…。押さえ込んでいる静奈の手が、泰輔の手に指を絡めてきた。  
その小さい行動が…理性を完全に飛ばした。  
 
「しー…」  
 
耳元から首筋へ、吸い付くようなキスをしていくと、鼻先から静奈の小さい声が漏れる  
くすぐったそうに肩を堅くして「泰にい」と呟く。  
聞こえないのか、没頭してるのか…泰輔は夢中で静奈の匂いと感触を貪る。  
だんだんと静奈も…泰輔を真似するように頬や耳に、優しく口付けはじめた  
 
「…酔っ払ってるのかな…私たち…」  
「…そうかもな」  
 
他人の話でもするような口調で言うと、また…唇を重ねて、互いの舌を味わい始める  
 
自分の服を脱ぎ捨て、ジーンズのベルトを外しながら  
ほとんど裸に近い格好で横になっている静奈を眺める。  
何分…キスしてたか、わからない  
今まで何度かそれなりに一瞬つきあった彼女だとか少しは経験はあったが  
こんなにキスだけで…愛おしいと思った事は、なかった。  
 
「しー…俺、本当にしーが好きだ…」  
 
脱いだジーンズと下着を投げると、再び静奈に圧し掛かる。  
お腹から手を伝わせて…下着の中に潜り込んで、指で探って、潤う感覚を、穿る。  
細い声を漏らす静奈の様子を見ていると…掻き立てられるばかりだ  
指をゆっくりと入れて動かすと、面白いように静奈の身体が操れる  
ぐっと静奈の指が、自分の背中に爪を立てる。  
 
「…いい、か…?でも我慢とか…無理」  
 
さすがにそれは、と遠慮がちに聞くと、静奈は指で操られながら頷いた  
 
「泰にいなら…いい…」  
 
それは本心か、感情か…欲情か。わからない。けど、受け入れられるのは素直に嬉しい。  
静奈の下着を下げると、すっかり溢れ出て潤うそこに自分のそれを宛がう  
そこで……気がついた  
 
「しー…お前、初めてじゃ…?」  
「いいから…」  
 
言い終わるか終わらないかで遮るように静奈が答える。  
…ここにきて、迷いが出た。さすがに初めてとなると…  
それを静奈は感じたのか、泰輔の頬に手を伸ばして  
 
「泰にい?…私もね、泰にいがいつも傍にいるのが普通で…おかしいって言われるかもしれないけど  
 なんかね、今は…泰にいの、一番近くが、いいんだ…」  
 
甘えるような目で呟かれ、迷いは衝動に負ける。  
腰をゆっくり迫り出して…締め付けを掻き分けながら奥へと入れていく  
 
「…っ、しぃ…」  
 
気持ちよくて息が詰まりそうだ。  
静奈は…全身が小さく震えて、声混じりの溜息を漏らす。  
 
「…きもちぃ…」  
 
静奈が呟く。ゆっくりと動かし始めると、不規則に締め付けられて…  
 
「お前…処女って嘘だろ…」  
 
動かしながら、反応を見て泰輔が聞くと視線を合わせた静奈が微かに微笑む  
 
「バレちゃったね…おにいには内緒だよ…?」  
「内緒も何も…なんで処女じゃないってわかったか、理由が絶対言えねえ」  
 
そういう事は初めての相手がいたという事で…  
誰だ?いつだ?そんな疑問は気持ちよさで、吹っ飛んでしまった  
動けば動く程、静奈は愛おしく反応して見せてくれる。  
 
「泰にい…きもちい…」  
 
スピードをあげて腰を打ち付けると、いつもの「泣きそう」な顔とは違う顔を静奈が見せる。  
細い腕が、自分の首に巻きつくとキスをねだられる  
 
「好きだ…しー…」  
 
もう限界が近い。静奈の身体を抱きしめて、力加減ができない感じで動き続ける  
快感か痛みかわからないけど静奈は眉間にシワを寄せて表情が歪む。  
 
「泰、にいっ…」  
「名前…呼べよ…。俺の」  
 
理由なんてもうない。ただの衝動。男として、見て欲しかった  
静奈は甘い声で、要望に答えた  
 
「泰輔…」  
「あ…、もう、いく…!」  
 
最後に強く、トン、トン、と打ち付けてから慌てて引き抜くと  
静奈の腹の上に…放つ。  
激しい呼吸をしながら…いった様子を眺める静奈  
 
「っていうか…多くない?」  
 
ふふっと笑って呟いた。え、と顔を上げ視線を合わすと  
 
「多いとか少ないとか…誰と比べてんだよ」  
 
思わず突っ込まずにいられなかった。息切れしながら泰輔はティッシュの箱を手にして  
静奈の腹を拭いてやる  
 
暫くお互いが…無言だった。気まずい訳ではないが、言葉が出なかった。  
罪悪感も、なかった。静奈は部屋着を着て泰輔に抱きつく  
 
「泰にいのせいだからね…変だよね。兄妹でやっちゃうなんてさ…」  
「やっちゃうとか言うなよ。……そう…だよな…」  
 
本当は兄妹じゃない、簡単には告げられない真実を今言ったらどうなるんだろう。  
しかしそんな勇気もなく…泰輔は静奈を抱きしめた。  
 

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