行成に抱きついて「さよなら」の後部屋でヤケ酒飲むシー。
放っておけないけど、このまま同じ部屋にいたら激ヤバの予感があって
そっと部屋を出て行く泰輔。
キャバクラハシゴで、明け方香水とお酒と煙草の香り満載でドアを開けると
シーが泣きながら飛びついてきて
「お兄、お兄まで私からいなくなったらヤダ!」。
兄としての感情で、シーを抱きしめて「帰ってきたから。帰ってきたらシー」
そう呟いて、シーを安心させようとする泰輔。
抱きしめられて、泰輔の体中から匂うキャバクラの残り香に、シー逆上。
「泰兄は、いつでも逃げられる場所があってそこへ逃げてずるい」
泣き叫ぶシーに、必死で謝る泰輔。
その時、シーの携帯が鳴り、行成の声がする。
「戸神です」
ハッとしたように、その携帯を同時に見る二人。
シーを抱きしめた手を解き、その携帯の電源を切ろうとする泰輔と
携帯を取って行成と話そうとするシーはもみあい、
泰輔が携帯の電源を切るより早く、シーがその手を押さえるが
そのシーの手首を泰輔が押さえてしまう。
行成の声が室内に響く。
「高峰さん。今は僕と話したくないなら、せめて僕の話を聞いてください」
理性が決壊した泰輔は、シーの手首を片手で押さえ、もう一方の手で携帯を投げる。
「泰兄!」シーが悲鳴をあげるが、泰輔は聞かない。
「いやだ、あいつが仇の息子だからじゃない、兄貴でもいやだ。
お前の心にいるのは俺だけ、俺だけだ」
泰輔に投げつけられた携帯は、壁にあたった弾みでオンになり
「出てくれたんですね。高峰さん」そう安心したような行成の声を
シーは、遠い世界からのように感じていた。
「泰兄、いやぁああああ!」
「戸神にも誰にもやらない!」
「高峰さん!!」
三人の声が、マンションの部屋に響きあった。、