…星達が煌めく、暗い夜の事その星達の光さえ届かぬ洞窟の中、二つの人影があった。  
 
「ほらっ、さっさと行くわよ、早くっ!」  
「ちょっと待てよ…全く、人使いが荒いなぁ…。」  
「文句言わないの、男でしょ!」  
 
ラークバーンにて占いを営む少女ルビィと、その連れ人、ヒロユキだ。  
どうやら、いつもの如く、ルビィがヒロユキを振り回す形で、この洞窟へと来たらしい。  
 
「はぁ…何でわざわざこんな夜中にこんなトコ来るんだよ、しかも、荷物持ち全部俺だし…。」  
「うるさいわね、なんでって、私の占いだと、この洞窟の奥に宝物がざくざくあるって出たからよ。」  
「インチキ占いだろ? そんなの当たる訳…」  
「いーいーから、あんたは黙って付いてきなさいっ!」  
 
ヒロユキの発言は全く認められないままに、二人は洞窟へと入っていく。  
水音が響く洞窟の中。ぼんやりと照らされる洞窟内は、デートと言うにはあまりにも陰鬱過ぎる。  
 
文句を言いながらも、洞窟の中を進んでいく二人の前は、不意に開けた小部屋の様な所へと出る。  
その壁の一部が、ぼんやりと、明らかに天然のものでは無い何かが施されているのを見ると、  
荷物袋からランプを取り出し、それを照らす……すると、見えるのは、獅子の彫刻が施されたもの。  
 
「何だ…これ?」  
 
ヒロユキが首を捻る。魔物には見えないが、だからといって何をするものかも見当が付かない。  
と、振り返ると、ルビィが荷物袋の中から何かを取り出そうとしているのが見えた。  
その様子を暫く眺めていると、やがて、彼女は一つの緑色に輝く丸い玉を取り出した。  
彼女は自信満々に、その玉を持ち、獅子の彫刻へと近づく。  
 
「ルビィ…何だよそれ?」  
「私の占いによると、この玉を此処にはめると、お宝への道が開けるってね。」  
「おい、大丈夫か? 変に仕掛け動かしたりなんかしたら…」  
「平気平気、何とかなるわよ。」  
 
あっけらかんとした様子で、その玉を獅子の彫像の窪みへと填めた。  
 
………  
 
「何も起こらないじゃねえか?」  
「変ねぇ…確かに、私の占いだと…」  
 
その、瞬間、洞窟全体が揺れ、地を突き破って…何か、巨大なものが二人の前に姿を現した。  
 
「うわぉっ!?」  
「きゃっ…や、やだ、何ッ…この、魔物…っ…」  
 
太く、柱の様に突き出た身体、その表面は肉色に、うねり、奇妙な音を醸し出して。  
そして何よりも、特徴的なのは、大小様々な触手が周囲を取り囲んだ、宝の番人たる魔物。  
その巨大さから、そして、グロテスクな外観から、生理的嫌悪が起こるのを抑える事は出来ず、  
ルビィは手に持った短剣を構えながら、一歩、間合いを取り…。  
 
「こうなったら仕方がないわね…ヒロユキ、援護してっ!」  
 
そう叫び、彼が居るであろう方を向けば、腰を抜かし、その場にへたり込む姿が見てとれる。  
 
「馬鹿っ、あんた、男で……あぐッ…!?」  
 
瞬間、ルビィへと向かい放たれる触手の一撃。   
横薙ぎに彼女の身体を打ち据えると、軟体生物とは思えぬ程の力で、軽々と壁へと叩き付けられる。  
 
「ぁ…う……。 けほ…ッ…い…痛い…わねぇ…っ」  
 
岩へとめり込んだ身体に鞭打ち、立ち上がると、短剣を構え直し、触手蠢く相手を見据える。  
魔物からの敵意は歴然で…少女は、唇を噛みしめた。  
 
「やるしか…無いわよね…やっぱり」  
 
ヒロユキが使い物にならないのを見ると、既に思考からは除外し、短剣を強く握り締め、  
おもむろに地を蹴ると、一直線に相手へと向かっていく。  
短剣を前に構え、相手に向かう速度を極限まで高めて突きを繰り出す「音速突き」と呼ばれる技だ。  
技としては下位に属するものの、低級モンスターならば一撃で致命傷を与える事も可能であり、  
使い手に依っては、十分に強力な技である…筈だった。  
 
「え……」  
 
音速突きは、間違いなく魔物の身体、柱の様な部分へと突き刺さった。  
だが、この魔物は今の彼女にとっては、あまりにも格が違いすぎた。  
根本まで埋まった短剣の刃も、その分厚い身体にとっては、致命打とはならず、  
僅かな損傷を与えたのみに止まった。  
…それが、彼女に出来た、唯一の抵抗だった。  
 
魔物からしてみれば、わざわざ獲物が懐に飛び込んできたという事であり、  
一斉に、魔物を取り巻く触手が、彼女へと襲い掛かり…。  
 
「ゃ…、い、嫌ぁー…ッ!!!」  
 
暗い洞窟に、少女の叫び声が聞こえた。  
 
少女の手首に、足首に。 絡みつく細い触手。  
服越しではあっても、その滑った表面は、少女に嫌悪感を与えるには十分過ぎて。  
感触に驚き、短剣から手を離し、その触手を払おうとした瞬間…更なる触手が彼女を襲う。  
二の腕に、スカートごと、足に、たすきがけの様に、身体に。  
手首に絡みついた触手を一本取ろうとすれば、その他の部分へと絡みつく触手は、10本以上で。  
そうして、もがいている内に、程なく、彼女の身体は触手に完全にからみ取られる事となった。  
 
「嫌…ぁ、こんなの…気持ち…悪い…っ」  
 
手を動かそうとしても、ロープで縛られた様に固く、動かす事が出来なく。  
そのくせ、触手の表面は無数の皺と粘液で包まれ、止めどなく動く為、  
言いしれぬ気持ち悪さが、彼女を襲い…もがけばもがく程、それは、深くなっていく。  
不意に、身体が軽くなる感触を覚えると、触手に包まれたまま身体、持ち上げられて。  
 
「ヒロ…ユキぃ…助け…て………」  
 
一縷の望みを掛け、彼が居るであろう方向を向いても、そこには、腰を抜かした男が一人居るだけで。  
本当に駄目男、と溜息を付いた瞬間…裾口から服の中へと潜り込もうとする、触手。  
止めて、と言った所で、抵抗しようと藻掻いた所で、彼女にそれを止める事は、出来ない  
素肌に直接感じる触手の感触。嫌だ、と心の中で訴えれば、スカートの中へも、進入する触手が見えて…。  
 
「やぁ…はぅ…やめ…てよぉ…気持ち…悪い…よぉ……」  
 
おぞましい感触に、平常でいる事が難しくなれば、自然、声も上擦って。  
彼女の肢体を楽しむ様に、裾口から進入した触手は、肩から徐々に彼女の身体へ絡みついて。  
スカートから潜り込んだ触手は、素足へと絡みつきながら、上へ、上へと伝い。  
衣服の内部で、触手の粘液が混ぜ合わされる、水音が響いた。  
 
「ひ…ぅ…。 や…はぁ……ぁ。」  
 
感じている、とも表現出来るその痴態。 触手の動きが進むごとに、ルビィの理性も、溶かされて。  
上からの触手、その小さな丘へと乗り上げると、意に介さぬ様に、ぞろぞろと進行する。  
先端の突起へと触手が触れれば、小さな身体、僅かに跳ねて。  
 
「んっ…ぁ…はぁ…」  
 
少女の頬は紅く染まり、悩ましげな吐息を吐く。  
事実、それは性的に感じている、という事で。触手によって蹂躙されている自分を、  
気持ち悪い触手にいいようにされている自分を…どこか、背徳的な快楽にも感じて。  
いつしか、身体をばたつかせる僅かな抵抗も止み、触手の、されるがままとなって。  
 
「あ…ぅ…ん…、…ひぃ…。……ヤダ……嫌だ…けど…っ…」  
 
衣服の盛り上がりが、彼女の身体に絡みついた触手の数の多さを如実に伝え、  
彼女の小さな胸を、肩を、鎖骨を、臍を…粘液と肉とで、埋め尽くし。  
…不意に感じるのは、秘所へと押し当てられる、触手の先端。  
彼女の聖域へと、魔の手が伸びて…それに対して、少女は、あまりにも無力だった。  
 
其処への感触を感じれば、一瞬、身を強張らせる。  
自分で触る事すら殆ど無かった場所、触手の無造作な動きで弄くられれば、敏感に身体は反応して。  
 
「はぅ…っ…。 な…何…まさか…ひ…ぁ…っ!」  
 
せめて、足を閉じようと思った時には、既に遅かった。  
一際太い触手が、彼女のその部分を突き刺し、抉る。  
…激痛と、屈辱と、そして、快楽が混ざり合った感覚が、ルビィの全身を駆けめぐり、  
続けざま、菊座へと、そして、彼女の小振りな唇へも、進入する触手。  
 
「……………ッ!!! ………ーー!!」  
 
触手に口を塞がれれば、声を上げる事すら敵わず、むしろ、自分がどうなっているかすら分からず。  
身体へと差し込まれた3本の触手、それぞれが、深くまで潜り込むと、また、引き出され、  
そして、再び潜り込み、更に、他の触手達も彼女の身体を求めて穴へと殺到する、  
 
翻弄される、彼女の身体。  
感情も何も無く、ただ、電撃を全身に浴びた様に、何も考えられず、触手に弄ばれ。  
身体の全てを、触手に嬲られ、粘液まみれになり、秘部の結合部からは純潔の証が流れ落ちる。  
後ろの穴もまた、無惨に蹂躙されたまま、粘液が擦れ合う音を響かせて。  
 
「…………………ーーー!」  
 
 
そして、達した。  
 
全身の力が抜け、筋肉が弛緩する。  
それと同時に、秘部より溢れ出る液体、羞恥も無く、ただ、それを流して。  
…  
既に、少女の目に光は無く、虚ろな表情まま、涙が一滴…零れた。  
 
その時、不意に部屋に通じる通路から、二つの人影が姿を現す。  
一つはルビィの実の姉である、サファイア。  
もう一つは、最近行動を共にしている、イスカンダールを名乗る人物。  
慌てた様子で、二人がその惨状の現場へとたどり着くと、眉を顰めて。  
 
「ルビィ…!?」  
「…占い師が嫌な予感がするからと来てみたら、これか。…全く、付き合いきれんな」  
「でも、まずは、あの子を助けないと…」  
「あぁ、分かってる。援護は任せたぞ、占い師。」  
 
魔物が二人へと気が付いた刹那、サファイアは槍を、イスカンダールは長剣を構え、魔物へと駆ける。  
幾本もの触手が二人へと襲い掛かるも、サファイアが槍を一薙ぎ、二人の寸前で触手は切断される。  
それに合わせ、イスカンダールが飛び上がると、落下の威力を乗せた、強烈な一撃を袈裟切りに放つ。  
豪快に魔物の肉が抉られ、呻き声を上げる…も、致命傷には至らず、  
怒りに任せた魔物が、幾本もの触手を振り上げ、イスカンダールへと叩き付けようとした瞬間、  
 
「…そらぁッ!」  
 
上空からの斬撃の流れで振り下ろされた剣、その勢いは殺さぬまま、  
速度を力任せに正反対へと反転させ、更に身体ごと回転を加えた斬撃を逆袈裟に。再び切り上げる。  
…上空からの強撃と、更に地からの強撃。「天地二段」が、魔物の身体へと鈍い音を立てて直撃する。  
一撃目で脆くなっていた身体に二撃目は耐えきれず、身体を真っ二つに両断される魔物。  
巨体を地へと倒れ伏し、その中から緑の体液が流れ出すと、やがて、触手の動きも止まる。  
 
「ふぅ。こんな魔物がこんな所に居たとはなぁ…それにしても、無理をするお嬢さんだ。」  
「すいません…私がもっと言っておけば…。」  
「まあ、過ぎた事を言っても始まらん、早く介抱してやる事だ。」  
「…はい。」  
 
そうして、完全に魔物の活動が停止すると、触手に包まれたルビィの元へ、サファイアが駆け寄る。  
指先が汚れるのも構わず、ルビィへと絡みついた触手を一つ一つ、剥がしていき、  
ルビィの身体からあらかた触手を剥がし終わると、彼女の身体を抱き締める。  
怒りの気持ちと、安堵の気持ちとが混ざり合って…静かに、嗚咽を漏らし初めて。  
 
…ルビィもまた、ぼんやりとしたまま、姉の温かさを感じ、静かに、抱き返して…。  
 

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