<前回までのあらすじ>  
 生まれ育った町で女装をやらかした盗賊・ジャミル。  
 あまりにもいたたまれなくなった彼は、 しばらくほとぼりを冷ますつもりで町を出たといいます。  
 少年・アルベルトと出会い、戦闘や冒険・泥棒家業を重ねていったといいます。  
   
 さて、そんなある日。   
 彼は、同じように冒険をしているパーティと出会いました。  
 そのパーティ中、唯一の女性であるクローディア。  
 そっけない態度と人見知りの激しい様子に、その逢瀬以外に縁はないと思っていたジャミルですが、  
 なぜか、事件解決後、彼女はバーバラと入れ替わりに彼の(正確にはアルベルトの)  
 パーティに 参加するようになりました。  
 
 旅を共にするようになったジャミルは、一見冷淡に見えるクローディアの優しさに気づき  
 どんどんと惹かれるようになったといいます。  
 …しかし、ジャミルは気づいてしまいました。  
 あまり感情を表に出さない彼女が、実は元パーティメンバーであったグレイに恋していたことを。  
 けれども、当のグレイはクローディアの気持ちに応えるつもりはなく、   
 それどころか、新しくメンバーになったバーバラと懇ろになったといいます。  
 
 クローディアの気持ちを踏みにじった男に対する怒りは頂点に達し、  
 ある日ついに、同じ宿屋に泊まっていたグレイを思いっきり、力いっぱい殴ってしまいました。  
『あんたに惚れてたクローディアの痛みはこんなもんじゃねーぞ!』  
 ジャミルがそう叫んだ時、そばにいたクローディアはいいました。  
 
『…ジャミル…あなた、何勘違いしているの? 私、グレイのこと、何も思ってないわよ…?』  
 …そう、全ては恋する男・ジャミルの壮大な勘違いだったのです。  
   
 その後しばらくしてから、ジャミルは1人で恐竜の卵を取りに行かされたらしいですよ。  
 
 
 
「…それは?」  
 部屋に入ってきたバーバラが手にしているのは、夕焼け色の液体が入った酒瓶と二人分の小さなグラス。  
 バーバラはそれには答えず、テーブルを挟んでグレイの向かい側に腰を下ろす。  
 椅子を引き座るしぐさ一つにも色香が漂うが、それには、相手を落とす為の物など微塵も感じられない。  
 その気になれば、地方豪族・貴族を初め、中央に食い込む有力者も陥落させられるだろうに、と、  
彼女がそうしてこなかったのを分かりきって、グレイが問いかけてみる。  
 バーバラは2、3度瞬きをした後、普段は見せたことのない笑みを浮かべると、  
「あんたはそれでいいのかい?」  
 非常に意地悪い様子で聞き返す。  
 問いかけに問いかけで返されたグレイはそれに怒ることはしなかったが、  
ともすれば見逃しそうになる程度の不機嫌さでもって、  
「良くはないな」  
 と、答えた。  
 先ほどと同じように瞬きをしたバーバラは、今度は花開く笑顔を見せると、  
とっておきは、ここぞという時以外には使わないものよと、なにやら穏やかでないことを口にする。  
「…うム」  
 グレイの唇がややへの字になるのを、奇妙な幸福感を抱きつつ見つめていたバーバラだが、  
彼の視線がテーブルの上にある酒に向かっているのに気づくと、  
慣れた手つきで封を開けて小さなグラスに酒をそそぐ。  
 トクトクトク…と、オレンジと赤色の中間にある液体が、グラスの三分の二ほどを埋めた。  
 果実酒の一種なのだろうか、甘ずっぱい香りが二人の鼻腔をくすぐる。  
 悪くはないが、この香りはグレイの今までの冒険の中には存在しない。  
 バーバラが掌を見せて、酒の入ったグラスを取るように進めてきた。  
「……」  
 グレイはいぶかしげに眉をしかめながらも、それを自分の方へ引き寄せる。  
 手に持った酒を口に含むことはせず、軽く鼻をならしながら未知なる物の様子を伺っていた。  
 子供のようにも見える仕草に、思わずバーバラは軽くふきだししまう。  
「なんだ?」  
「あんたのそんな仕草が、なんか珍しくてさ」  
(それに、可愛い…)  
 などとは、グレイの矜持の為にも口にしない。  
 
「正体の分からぬ物を、うかつに口には出来んだろう」  
 新しい土地での第一歩を踏み出す時にも似た気配が、グレイから漂っている。  
「私が勧めるものに不安があるの?」  
「お前が好んで買う種類の酒とは思えんが」  
 何気ない切り返しに、バーバラは軽く舌を巻いて降参した。  
「…まあね? でもさ、そんな胡散臭いものみたいに言ったら、ジャミルがかわいそうじゃない。  
せっかく持ってきてくれたんだから、ご好意に甘えなきゃ」  
 香りをかいでいたグレイの動きが、ピタリと止まった。  
 ゆっくりと顔が上がる。  
「あいつが持ってきたのか?」  
 バーバラがうなづくと、ひどく真剣な面持ちで至極真面目な声で結論を出した。  
「ならば、細心の注意をもって確かめねばならんな」  
 バーバラは、今度こそ大きな声で笑ってしまった。  
 
 ひとしきりバーバラが笑い終わった頃、笑われた方のグレイがコホンと一つ、咳払いをする。  
「ごめん、ごめん」  
 目じりにたまった涙を拭くと、バーバラは自分の近くにあったグラスをキレイな指先で挟んで  
グレイの前に掲げて見せた。  
「大丈夫。 毒じゃないから」  
 バーバラの様子に、グレイがほう、と一言漏らす。  
「お前は、これがなんなのか、知っているようだな」  
 だからそれほど落ち着いていられるのかと、1人納得していた。  
「うーん…。 知ってるけど、実は内心、それほど落ち着いているわけじゃあないのよね、これがまた。  
知ってるからこそ、落ち着かないというか…」  
 おどけたように軽く肩をすくめるバーバラに対して、グレイの髪の毛からハテナマークが飛び出す。  
「…というか、あんた、これが何なのか、本当に知らないの?」  
「ああ。 分からんな」  
 分からないものははっきりと分からないという男、グレイ。  
「これはねぇ…」  
 唇を軽く尖らせたバーバラは、ふう、と悩ましげな吐息をかけ、赤い水面に波紋を広げた。  
「恋人達の園って言われる場所に生えてる木から取った実で作った酒でね。  
…まあ、恋人たちが、夜、飲むにふさわしい酒ってところかな?」  
 
 恋人たちが、夜、飲むにふさわしい酒と言うことは、つまり。  
「飲んだ後は盛り上がるらしいよ。 …ベッドの上で」  
 バーバラが、笑いながら片目を瞑る。  
「…余計なことを」  
 己の思い描く答えが正しいことを知って、グレイは小さなため息をついた。  
 彼にしては珍しく、微妙に苦い顔を見せている。  
 それを見たバーバラは苦笑すると、再び、掌で包んでいる水面を揺らした。  
 自分のことを話題に出されるのを極端に嫌うこの男が、  
ベッドでのことを他人に干渉されるのを良しとするはずはない。  
(ジャミルからは、あんたがえらく淡白な男に見えるらしいよ)  
 と思ったが、それは口には出さない。  
「あんたとクローディアのことを邪推して、殴ったワビも込めてのことだろうけどね」  
「恐竜の卵だけで十分だ」  
 そういうグレイの顔には、もう苦いものは浮かんでいなかったが、  
「で、だ。 お前はこの酒の正体を知りながら俺に勧めてきたというわけか」  
 おそろしく冷静な顔と声でそんなことを言う。  
 グレイの性質に耐性のない人間なら、胃に氷の塊を詰め込まれたような気分になるのだろうが、相手は耐性のあるバーバラだ。  
 バーバラはグラスを弄ぶのをやめると、わずかに肩をすくめて蠱惑的に唇を吊り上げた。  
「これを飲んだあんたがどんな風になるのか、ちょっと見たくてね」  
「………」  
 グレイを試すようなバーバラの言い草。  
 怒っていいのか、困っていいのか、それとも残念がっていいのか分からない顔をして、  
グレイがバーバラを見つめる。  
 手に杯を持つ姿は成人男子として堂にいったものではあるが、  
反面、バーバラに見せている表情はひどく無防備で繊細だった。   
(うーん…。 もしかして、失望されたかな?)  
 失望、という言葉を思いついた途端、バーバラは胸の辺りに針が落ちるのを感じた。  
 その時の気持ちを正直に言っただけなのだが、これは隠しておくべきだったのだろうかと  
ほんの僅か、後悔に似た気持ちを抱く。  
(後悔するのは好きじゃないんだどねえ)  
 思っていた以上に、目の前の男を気に入っている自分に気づいてしまった。  
 少なくとも、失望されてそのまま捨て置ける対象ではない。  
 
 グラスの酒を捨ててこようかと、口を開きかけた時に、  
「そうか…」  
 しばらくは複雑な顔でバーバラを見つめていたグレイが、突然、小さく息を吐いた。  
 形容しがたい表情はそのままで、やや、伏せがちな視線を酒に送っている。  
「…………」  
「ならば、お前の期待に答えるとしよう」  
「え!?」  
 バーバラが何をと問い返す前に、顔を上げたグレイは手に持った杯に口をつけた。  
「あー…」  
 咄嗟に伸ばした指先の向こうで、グレイが酒を飲み干すのが見える。  
 あっというまに、グラスの色が赤色から透明になっていった。  
 恋人たちの為の酒を飲み終えたグレイは、空になったグラスをテーブルに置くと、  
「飲んだぞ」  
 今度は、追う側の顔をしてバーバラに問いかける。  
 わずかに動かされた顎は、彼女の酒を指していた。  
「…参ったね…」  
 バーバラは心の中で、額に手を当て天井を見上げた。   
 目の前にいる男の表情はギラついてはいないが、今は余裕をもって彼女を見つめている。   
 さきほどの繊細さの尻尾すら、掴むことは出来ない。  
(てっきり、やめるかと思ったんだけどね)  
「お前が俺に飲ませたがったんだろう? これを」  
「そうなんだけどさ」  
 ふわりと笑うと、バーバラは色気のある風情で杯に唇をつけ、味わうようにゆっくりとグラスを傾ける。  
 バーバラの白い喉が動くたびに、赤とオレンジの間にある液体は彼女の中を通り、胃へ落ちていった。  
 香りは甘酸っぱく、味は甘く濃厚、同時にあざやかにさわやか。  
 催淫作用があると知っているからではないだろうが、何かが体中にじんわりと広がっていくような気がした  
 
「ふ、う…」  
 その吐息すら、ほのかに色づいていて思える。  
「飲んだか」  
「飲んだわよ?」  
 即効性ではないはずなのだが、体が熱くなっているような気がした。  
 バーバラは立ち上がるとグレイの横に行き、綺麗な指先で彼の顎を自分の方に向けた。  
 慣れ親しんだ男の唇に、そっと優しく噛付く。  
 グレイは、口付けを仕掛けてきたバーバラの背に掌を回すと、  
そうするのが当然のように舌を彼女の口内へ忍び込ませた。  
 温かいものが二人の口の中で蠢き、絡み合う。  
 味の無いはずのそれが、異様に、甘く感じる。  
「ふ…」  
「ん…」   
 否、味ならあった。  
 今しがた二人が飲み干した、恋人たちの為の酒の味が。  
 口の中から広がる香りが鼻腔を犯し、脳にまで染み渡っていった。  
 息が徐々に苦しくなり、何度も唇をわずかに離して空気を取り入れ、再び  
唇を重ねては舌を絡め、その温かさ、柔らかさ、質感に背筋を震わせる。  
 掌ににじむ汗とせわしない呼吸が、いつもと違う自分たちであることを知らせていた。  
 逃れたくとも、自分を絡め取ってくるものを手放せない。  
 グレイもバーバラも、はあ、はあ、という細切れの呼吸と口付けを幾度となく繰り返していた。  
 
 バーバラが衣服を全て落とした途端、グレイは熱を持った腕で彼女を抱きしめた。  
 腕だけではない。  
 バーバラの胸を押しつぶさんばかりに押し付けられるグレイの胸板も、唇を舐めとる舌も、  
言葉をふさぐ唇も全てが熱く、バーバラを溶かしてしまいそうだった。  
 性交の時には普段より体温が高くなるグレイだが、今の彼の熱さをバーバラは知らない。  
 絡めあう舌がそのまま溶け合い交わり、一つになる。  
 二人の間で窮屈そうにしていたバーバラの乳房をグレイの掌が揉みしだく。  
 大きすぎず、だが豊かで形のよい胸が、男の掌にいいように弄ばれた。  
 グレイの指が、既に赤く立ち上がっていた乳首に触れるたび、バーバラの腰に震えが走る。  
 己の指一つで体を震わせるバーバラの反応に気づいているのかいないのか、  
いつもより随分と性急にグレイはそこを責め始めた。  
 余裕がないらしく、やや、乱暴なほどに。   
「あ…、ふ…、ちょっと、グレ…イ…」  
 長い接吻のあと、わずかに唇が離れた隙をついてバーバラが声を上げる。  
 なんだと問いかけるグレイの声は、既にいつもより低く濡れていた。  
 ぞくり、ぞくりと、子宮の奥から背筋をつたって何かが駆け上る。  
(ああ…、もう、こんなに早く…、そんな声を…)  
 所在なさげにグレイの背中をさまよっていたバーバラの腕が、ますます途方にくれた。  
 指に絡む細いものがグレイの髪の毛であることにも気づけない。  
「どうし、た?」  
「少し…乱暴じゃない…?」  
 そういうとグレイの唇を軽くついばむ。  
 グレイとて、酒のせいで普段では考えられないくらいに突き動かされている事は自覚していた。  
 が、指摘されたからといって収められるものではない。  
「すまんな」  
 といいつつ、敏感すぎる乳首をさらに指先で弄る。  
 
 はさみ、つまみ上げ、ひっかく。  制御できない快楽が下半身へ落ちた。  
「あ…! んん、…、ま、また…!」  
 びくん、と大きく腰が跳ねる。  
 茂みの奥は一度も触られていないというのに、既に液体が体内からあふれ出していた。  
 バーバラが足を動かすたび、閉ざされた入り口がぬるりと擦れ合う。  
「いつにもまして、良い反応だ」  
 男の声は女の性感を刺激するように出来ているという。  
 今のグレイの声はまさに、バーバラの性欲を思うままかきまわす官能の音そのものだった。  
「…馬鹿…」   
 普段、そんなことを言わない男が自分を追い詰めるような言葉で攻めて来たことに、  
バーバラは驚きつつも胸を高鳴らせる。  
(…あたしも、やっぱり普通じゃないわね)  
 その事実に気づいたバーバラは、グレイの頬にキスをしながら微笑んだ。  
 その間も、バーバラの胸は絶え間なくグレイの責めにさらされ、翻弄されていた。  
 左右に首をふり身をよじり、目じりから涙を落とし、バーバラはそれらを全て受け入れる。  
 受け入れながら、切ない声をもらし続けた。  
 体が、熱かった。  
 責められている胸だけではなく、グレイが触れる全ての箇所が熱い。  
 グレイがバーバラが体を震わせるたびに、触れ合う皮膚が快楽の悲鳴をあげる。  
 気持ちよさからのがれようと身をよじれば、ますます追い詰められる。  
 バーバラが声を出せば、グレイの体も震えた。  
「…く…」  
 何かを堪えるような声を出した後、また、バーバラを愛撫する。  
 唇は自分と相手の唾液で濡れ、何度舌でそれらを舐めとったかわからない。  
「ぁ…、ふ…、グレ、イ…、ぁ…」  
 グレイの背に回していた手を、わき腹、腰、尻にすべらせ、熱くなった男の皮膚をまさぐる。  
「…っ…! おい…」  
 苦しそうに眉をしかめながら、グレイが小さな声でとがめた。  
 バーバラは艶やかに微笑む。  
「気持ちいいんだね?」  
「…嬉しそうにいうな…」  
「ふふ…、だってさ…」  
 
 自分の手で相手が気持ちよくなるのが嬉しいのだと、  
バーバラは焼けそうなほどに甘い吐息で囁く。  
 耳たぶにかかる息と声はグレイの熱を一気に膨張させた。  
 胸をまさぐっていた指を、肌から離すことなく濡れた茂みへと滑らせる。  
 バーバラが声を上げるまもなく、グレイの指先は愛液にまみれた入り口に滑り込み、  
刺激を待ちわびていたクリトリスを軽く撫でた。  
「…は…、ぁあ…!」  
 一度撫でられただけなのに、見えない何かをねじこまれたような錯覚を覚える。  
 バーバラが背中をのけぞらせるのを、グレイが片腕で抱きしめた。  
「このまま果てそうだな」  
「え…?」  
 動くことを禁じられたバーバラが、苦しい呼吸を繰り返しながらもグレイの言葉を追う。  
「グレイ、何を…」  
 その先は言えなかった。  
 大きくなった芽に指の腹を押し付けると、先から付け根までの全てを使って何度もこする。  
 同時に、周りの襞も指全体を使ってひっかくように、さすりあげた。  
 バーバラの中からあふれ出る液体がそれらのすべりを良くする。  
 くちゅくちゅという音を恥しげもなく立てながら、  
液体にまみれた指が途絶えることなくバーバラをおいやった。  
「や…、ぁ…ああ、…グレイ…グレイ…、あああ…、やめ…」  
 グレイがこのまま自分をイかせようとしているのを知って、  
バーバラは腕の中から逃れようと腰を動かし声をあげる。  
 が、グレイの腕は彼女を捕らえたままだった。  
 肉芽を苛む指はますます激しくなり、バーバラの世界がだんだんと白く狭くなっていく。  
 抵抗のための動きのはずが、知らない間に、  
グレイのもたらすものを最大限に受け入れるためのものとなった。  
「グレイ…このまま…、…ぁ…ああ…。 ……ぁ…ああ…っ!!」  
 細く鋭い快楽の針が一本、クリトリスから脳天をまっすぐに貫いた。  
「…ぁぁあ…、…ん…!」   
 愉悦が肺を満たす瞬間、入れ替わりに呼吸が止まる。  
 体全体が、軽い痙攣を起こしていた。  
 
 きぃん、と耳鳴りが聞こえたかと思うと、大きな波のような愛液があふれ出てくる。  
 バーバラは、それが体の中から出てくる瞬間を感じていた。  
 か細い、悲鳴のような呼吸を繰り返しながら、恥しさと気持ちよさで頬を赤らめる。  
 バーバラが予想外の恥じらいを見せたこにグレイの片眉がわずかに下がった。  
「バーバラ?」  
 きっとこの気持ちは男連中にはわからないのだろうと、  
バーバラは自分に覆いかぶさっている男に無言で笑いかける。  
(出てくる瞬間が分かるってのは、結構恥しいもんだんだよ)  
 この気持ちが分からない男…グレイは、それ以上特に追求しようとせずに体を離した。  
「?」  
 バーバラがいまだ快楽の残る体を投げ出しながら怪訝そうな顔で見つめると、  
グレイは力なく弛緩している彼女の両足を左右に割り開き、  
愛液を流し続けている部分に彼の熱を宛がう。  
 酒とバーバラの痴態のせいで、それはすっかり熱い塊となっていた。  
 バーバラの本能が、余韻さめやらぬ体を庇う。  
「…ま、待って…!」  
「待たん」  
 さんざん指で嬲れた部分を無視して、グレイの雄はまっすぐに体内の奥を目指す。  
 いつもの柔らかさや余裕が感じられない行為にバーバラの腰が逃げを打った。  
 しかし、すぐさま腰を掴んだグレイの手によってそれは阻まれる。  
 どころか、自分の方へと力強く引き寄せたのだった。  
 その分、熱いものがより奥へ押し付けられ、バーバラの支配者となる。  
「! そんな、いやぁ…!」  
 いきなり、子宮の入り口…感じやすいところを責められ、  
バーバラは、普段の彼女からは考られないような声を上げた。  
 生娘が出しそうなその声に、グレイが目を丸くして動きを止める。  
 バーバラも、思わず口に手を当ててグレイを見つめてしまう。  
 灰色の髪をバサリと垂らし、顔に影を作った男は驚いた風にバーバラを見下ろした。  
「あ…あの、グレ…イ…。 今のは…」  
 何を言うつもりなのか決めてなかったが、何かを言わずにはいられない。  
 快楽以外のもので頬を染めるバーバラを見つめていたグレイだったが、口角をつりあげると、  
彼女の言葉を遮るように、再び律動を開始する。  
 
「――――…っ!」  
 グレイが、果てて間もないバーバラの体を揺さぶる。  
 酒と一度目の絶頂のせいで過敏になっていたバーバラには、たまらない仕打ちだった。  
「ま、まだ…、いや…、体…、ああ…!」  
 手の甲を当てて声を抑えようとしても、突き上げの快楽はバーバラの手を唇から離していく。  
 女の腰を掴んで上下に激しく動かす、グレイの手。  
 バーバラの細い指が、その手に救いを求めて絡んでいく。  
 自分はやめてくれと言いたいのか、もっとしてほしいと望むのか、バーバラ自身にもわからない。  
 がくがくと揺れる体、乱れる髪、瞳から零れ落ちる涙、彼女は気づいていないが、  
それら全てがグレイの欲望を奮い立たせる。  
 二人の吐き出す細切れで不規則な呼吸が絡み合い、部屋の中を満たしていった。  
 バーバラもグレイも体中が汗に濡れている。  
 グレイが動くたび、バーバラの上にグレイの汗が雫となって落ちた。  
「…中に、出す、ぞ…」  
「………、…、…」  
 バーバラが唇を開いて何かを言おうとするが、  
言葉は全て切ない喘ぎ声と呼吸に吸い込まれて消えてしまい、  
ただひたすら、肯くことしか出来ない。  
「…バーバラ…ッ」  
 呼ばれた名前に返しをしたいと思うのにそれもままならず、思いの分だけ、嬌声があがる。  
 グレイの動きが、小刻みで単調になった。 バーラの頂点も近い。  
(あ…、グレイが…くる…――――)  
 その時のことを思った途端、中にあるグレイの雄を締め付けるように器官が収縮した。  
「――――、…ぅ…っ!」  
「あああ――――…っ…」  
 瞼の裏に青白い光が飛び散るのと、中に熱い液体が吐き出されたのはほぼ同時だった。  
「あ…、あ…ぁぁ…、ま、た…、イく…っ!」  
 先ほどよりも太く熱い針が、またバーバラを貫く。  
 貫いた男は、絶頂に身を震わせる彼女を更に追い詰めるかのように、揺さぶり続けた。  
 
「んー…、んん…!」  
 かぶりを振ってやめるように頼んだが、彼女を翻弄する男はそれを聞き入れない。  
 吐き出せるものをとことん吐きつくすまで、バーバラの揺さぶり続けるつもりなのだろうか。  
「あぁ…! グレイ…、やめ…っ …て…、ってば…」  
 最初とは比べ物にならない絶頂の持続に、バーバラは本気の懇願をする。  
 指先から、胃から、喉から、脳みそまで全てが欲と快で埋め尽くされた。  
 バーバラは体を痙攣させながら、このまま気をやれたらどれほど幸せなのだろうかと  
白い海の中で思う。  
 部屋中に性欲と愛欲と液体の匂いが満ちていた。  
 未だ自分を貫いている雄を不思議に思いながら、バーバラは追い出す真似をせず、  
温かい粘膜でそれを包む。  
 きっと、今、彼女の中ではグレイが吐き出した精液と彼のペニスが絡み合って  
凄い状態になっているだろう。  
(あの酒、本当にすごい…)   
 幸せともいえる気分の中、“快楽”しか感じられなくなった神経が、皮膚のすぐ下に浮上してきた。  
 体を流れる汗の一筋すら、今のバーバラにとっては啼かせるための愛撫となる。  
「グレイ…」  
「なんだ」  
「こういうのを 気持ちいい、…て言うんだろうね。 …なんだか、全部埋め尽くされた感じだよ」  
「……」  
 瞼を閉じながら、バーバラがうっとりと言う。  
 目を閉じているバーバラからは、グレイがどういう表情をしているのかは見えない。  
 もし、男の顔を見ていたなら、貫かれているよりも更に奥の場所…子宮に、  
痛いほどの疼きを覚えたことだろう。  
「グレイ?」  
 バーバラが目を開けた時には、彼にしては嬉しそうな笑顔のグレイがいるだけだ。  
 女の体液と汗の匂いが満ちる部屋には、不釣合いな笑みだった。  
 それだけでも体の奥が、きゅう、と新たな欲望を訴えてくる。  
(……!?)  
 “またなの?”あるいは“まだなの?”と、自分の際限のなさに身を震わせた瞬間、  
皮膚の真下にある神経が、グレイの指先を敏感に感じ取った。  
 
 尖ったままの乳首をなんの準備もなく再び摘み上げ、コリコリと回す。  
 もどかしくもあり激しくもある快楽に、 さんざん動いたはずの腰が、また、  
バーバラの意思ではなく愉悦の命ずるままに動きはじめる。  
「…っ、う…」  
 入れたままのものを締め付けられる形となったグレイもまた、息を呑む。  
「…ぁ…ああ、は、ぁ…! い…ぅ…! き、…急に…!」  
「さっき…よりも、随分とよさそうだな…」  
「だ…て、さっき、イったばっかり…、ぃ…っ」  
「このまま、もう一度…イく、か?」  
「馬鹿なこと、言わないで…っ!」  
 このままでは本当に果ててしまいそうなバーバラが、  
涙に濡れた目でたしなめるようにグレイを睨んだ。  
 幾分かの哀願を含めて。  
 目元を赤く染めながら年上の顔で睨んでくるバーバラを、  
グレイは愛しいものを見つめる瞳で迎え入れた。  
「そうだな、このまま果てては…お前がかわいそうだ」  
 苦しさと楽しさが混ざった声でそんなことをいうと、乳首を弄んでいた指をクリトリスに移し、  
押しつぶすように小刻みに揺らした。  
 バーバラの脳裏に、あの白い絶頂が思い浮かんだ。  
(また、あそこに連れて行かれる…!?)  
 が、グレイは軽く指の腹でひっかけた後はそれ以上攻めず、バーバラの腰に手を当てると  
彼女の中にあったペニスをゆっくりと引き出す。  
 粘膜をこすられる感覚が、バーバラに声をあげさせた。  
 煽られた体は休む間もなく、更に煽られている。  
 
 
 伝わり落ちる液体は尻にまで届き、シーツに大きなしみを作る。  
 恥しさを感じつつもそこをぬぐおうという気力もおこらず、  
愛液と精液を溢れさせながらバーバラは足を投げ出したまま震えている。  
 全身を覆う痺れはまだやまない。  
 いつもより感じやすくなった身体をいつもより激しい行為で攻め立てられ、いつもより容赦なくイかされた。  
 全てを快楽を受け取る器官に変えられてしまった今のバーバラの世界には、彼女とグレイしか存在しない。  
「…はぁ…はぁ…」  
 体中の皮膚を襲うむず痒い痺れにさいなまれつつも、なんとか呼吸を整えようとしている。  
 シーツとの摩擦すら、彼女にとっては甘美な愛撫になる。  
 身じろぎの寝返りもできないまま、彼女の体を意思から奪い去ろうとする物をやりすごそうとした。  
 バーバラは涙目になりつつ願う。  
(もう、これ以上は…)  
 せめて、敏感になりすぎて優しい愛撫にすら狂ってしまいそうになるこの感覚が戻るまでは  
そっとしておいて欲しいと、言葉にだせぬまま瞼を閉じた。  
 ――――が。  
 太ももに感じた他人の体温とそこから湧き起こる寒気に、バーバラは白い絶望を見る。  
 がくがくと震える腰は快楽を期待してのものなのか、快楽に怯えてのものなのか、  
バーバラにはそれすらもわからなくなっていた。  
「は…、ぁ…ぁ…!」  
「そんなに感じては、つらかろう」  
「つ、らい…と思うんなら、…もう、やめてくれる…?」  
 途切れ途切れになりつつもグレイに問いかける言葉は、しかし、  
「それは出来ないな」  
 彼女の性感を支配する男の容赦ない一言と、  
太ももを掴んでいた手が足の付け根に滑って行く事によって砕かれた。  
 親指で付け根のくぼみを力強く押され、バーバラの全身がわななく。  
 やめてという事も出来ずひきつった息を吐き出した。  
 
 付け根にあった指は更に中心に移り、どろどろに濡れていた場所を左右に割り広げる。  
 液体は完全に止めるものを失い、その勢いと量を更に増した。  
「ん…。あ…はぁ…」  
 快楽の象徴ともいえる液体がどくりと漏れる様子を、グレイに見られる。  
 そこから逃げる術を持たないバーバラは首を左右に振って見ないでくれと懇願するしかない。  
 グレイは、自分の動き一つで身も心も翻弄される女のいう事を素直に聞いた。  
 バーバラの瞳が安堵で細められる。  
「見なければいいのだな?」  
「…え?」  
 力を抜いた瞬間に腰骨が捕らえられ、濡れそぼった場所に硬い物が押し付けられた。  
 敏感になりすぎた芽を圧迫するのは、再び力を得ていたグレイの雄だ。  
 バーバラの身体が酒のせいで過敏になった同じく、グレイもまた酒の影響を受けていた。  
 バーバラは、腰を掴む指の力強さに身体をこわばらせ、赤く熟れきった肉芽に感じる熱さに喉をひきつらせる。  
「や…」  
 ぐちゅりという音と共に、先ほどまでバーバラを泣かせていた物がゆっくりと動き始めた。  
 グレイはバーバラの腰を掴んで上下に揺らすと、クリトリスに熱を押し付けたまま、  
自身の先端と棹の部分を使って愛液に濡れる部位を上下に蹂躙しだす。  
 指でさすられた時とは比べ物にならないほどの、大きなこすりあげが敏感な場所を襲った。  
 バーバラは大きく息を吸った後、それを吐き出す事も忘れて背をそらせる。  
「いや、…グレ、イ…、いや…!」  
 ペニスが上下するたびに形を変える肉芽は、コリコリと動く様をバーバラに伝えた。  
 皮膚からダイレクトに伝わってくる衝動にバーバラは腰を捩じらせ逃げようするが、当然、  
グレイがそれをさせるはずもなく、かえって動きは激しくなる。  
 あふれ出る愛液は枯渇する事を知らず、それどころかますます嬉しそうにグレイのペニスを濡らしていく。  
 聞くに耐えない音は途切れることなくバーバラとグレイの耳を犯し続けた。  
 芽に与えられる直接的な悦楽と、襞と壁を擦られた時の包み込むような快楽がバーバラを襲い、  
彼女の呼吸と声を高いところへと押し上げる。   
 白く霞んだ視界には何も見えず、濡れた音とグレイの呼吸、自身の嬌声のみが彼女の中に入ってきた。  
 休むことなくうねりをあげる快感の渦は一つの大きな波となってバーバラを突き上げる。  
 波は容赦なく彼女を翻弄し、今までの世界を全て壊してしまう。  
 天頂まで押し上げられたかと思うと、次の瞬間には波間に落とされた。  
 グレイはそれを何度も繰り返す。  
 
「あ、あ…ああ、あ…、あ、あはあ…!」  
(や…ぁ…)  
 このまま、自分は快楽によって殺されてしまうとバーバラは涙を流す。  
 魔物でもなく敵でもなく、仲間であるこの男の酷い行いのせいで自分は自分でなくなってしまうのだと、  
グレイを責めるかのような嬌声をあげた。  
 それを聞いた男の唇が、普段の静かな笑みとは正反対の色を含んで吊り上げられる。  
 バーバラにはそれを見ることは出来ないが、  
「お前を殺せるのは、俺だけか…」  
 そう囁かれる声がとても嬉しそうなのだけは分かった。  
「ならば」  
「!! …あ…、あああ、あ…! 、、あっ、あっ、あっ…!」  
 グレイの動きが、バーバラを落とすためのものに変わる。  
 愉悦の波が、クリトリスのみを責めてきた。  
 次々と送り込まれる痛みにも似た気持ちよさは拡散することなく、ひたすら下腹部の奥に流れ込んでいく。  
 滝つぼに落ちる水のように、大きな愉悦は最後には一箇所に集まっていった。  
 どこにも逃げられない快楽はバーバラを苦しめる。  
「い、や…ぁ…! もう、これ以上は…、はぁ…、あ…、グレイ…!」  
「…イけ…、バーバラ…」  
「――――――――! ぁあああ、また…!」  
「ク…!」  
 壊す事を目的とした動きが、今、バーバラに止めを刺す。  
 これ以上はだめだというところまで追いつめられた性感は、とうとう耐えきれずにバーバラの体内で弾け飛んだ。  
 同時にグレイも果てる。 吐き出される白い液体。  
 身体の奥で起こった爆発は、快楽の元をそこかしこの細胞に染み渡らせていった。  
 果てるたびに長くなる絶頂の時間が、彼女を更に知らない所へと引きあげる。  
「あああ…ああ…! も、う…いや…!」   
 
 己の意思を無視してガクガクと大きく動く腰は、  
意図せずにクリトリスをグレイの雄に押し付ける格好となった。  
 ずるずると、強い力で棹の部分を上から下へと撫でる赤い肉芽と温かい肉壁。  
 果てている最中の身体に与えられる新たな責めに、バーバラの身体が痙攣を起こす。  
 バーバラと同じく果てたばかりのグレイも、この刺激に背を奮わせる。  
「…っく…!」  
「あ…ぁ…はぁ…、あ……、勝手に…腰が…ぁ、う…うごく…」  
 彼女の身体は完全に、彼女の意思から離れてしまった。  
 なおも、彼女の腰は揺れ続ける。  
 グレイが果てたときに吐き出された精液は、バーバラの引き締まった腹とグレイの白い顔を汚した。  
 液体を散らせながら痙攣するバーバラは哀れでもあり、愛しくもあり、同時に淫猥で美しかった。  
 絶頂の時が過ぎてもまだ、二人の身体は落ち着きを取り戻していない。  
 グレイは高ぶったままの気持ちをなんとか押さえつつ、身体と顔についた精液をふき取る。  
 そして、焦点の定まらない瞳を天井に向けたままのバーバラにキスをした。  
 溢れる涙を唇ですくい、耳に息を吹きかける。  
 優しい愛撫だが、今のバーバラには自分を狂わせるためのものでしかなかった。  
「お願い…触らないで…、今は…、あ…」  
 ガクリ、ガクリと。  
 誰にされているでもないのに一人で腰を揺らすバーバラは、見る者に何かしらの感情を与える。  
 グレイは女の哀れな願いを聞かずに、丸い乳房を一撫ですると二本の指で赤いものを摘んだ。  
 バーバラの呼吸がひきつる。  
「このまま一晩中責め続けたら、お前はどうなってしまうのだろうな」  
 聞いているだけで気をやってしまいそうな言葉を、  
性交の時のみに聞くことが出来る声で囁かれ、バーバラは涙を流した。  
 脳裏を、過ぎた快楽のせいで闇に落ちていった人間の話が浮かんでは消えていく。  
 やめてと。 震える唇でそれだけを繰り返した。  
 
 踊っている時の彼女も、魔物と戦っている時の彼女も、そして仲間達と歓談している時の彼女も、  
そのどれもここにはいない。  
 いるのは、身体の自由を快楽によって奪われた女だ。  
 それに支配されながらもグレイの声を求める。  
「グレイ、お願い…」  
「分かっている。 そんな事はしない」  
「グレイ…」  
「だが、バーバラ。 お前を追いつめて泣かせたい気持ちなのは本当だ」  
「…ぁ…、あ…ああ…、そん、な…ぁ…」  
「こんな風に思えるのは、相手がお前だからか」  
「…はぁ、ん…」  
 麻薬のような言葉は呪文となって女を捕らえる。  
 この男の声はバーバラにとっては抗いがたい力を秘めていた。  
(なんでこんな男がいるんだろう…)  
「明日になれば、俺もお前も元に戻る。 これは今だけだ。 だから共に」  
 グレイはそう囁くと右手で乳首を引っかきつつ、左指で濡れた茂みに指を絡めてそこの皮膚を擦った。  
 時折わざと指を滑らせて、大きく育ちきった芽を引っかく。  
「こ、壊れ…」  
 のけぞるバーバラを引きよせ、グレイは宥めの口付けを与える。  
 嬲るような指とは反対の、愛情をたっぷりと含んだ唇が彼女を覆う。  
 舌で口内を犯され、両手で胸と秘部を弄られ、バーバラは身体どころか心の奥底までをグレイに掴まれた。  
 男の指に翻弄される自分を想像すると、新たな火がともるのを感じる。  
(どうせ逃げられないのなら…)  
 明日になれば戻るのだというグレイの言葉は、彼女に狂う事を選ばせた。  
 バーバラは進んでグレイの舌を求め、愛されていない方の乳房に指を伸ばすと、  
グレイがしているのと同じように弄び始める。  
 女の白い指先が自身の乳首を摘み上げる図は男にとってはなかなかの刺激になるらしく、  
それを見たグレイの方も、更に愛撫の動きを強めていった。  
「ん!」  
 言ったとおり、バーバラを泣かせ追いつめていく。   
 
 グレイの口内に投げ込まれるバーバラの喘ぎは振動となって彼の舌を痺れさせ、  
もどかしい震えは欲を更に奮い立たせる。   
 唇を離したグレイは、恍惚の表情を浮かべて震えるバーバラにそっと耳打ちをした。  
「分かるな?」  
「…!」  
 太ももに押し付けられるそれは、先ほど果てたはずのものだった。  
 酒は、女には男を受け入れるための力を、男には女を貫くための力をもたらす。  
 バーバラは甘い吐息と共にうなづいた。  
 あの絶頂を、今度は少しの恐れもなく受け入れる。  
 呼吸すらままならず泣いて叫んで許しを請う事しか出来なくなる世界を思い、  
バーバラの身体が歓喜に震えた。  
 想像するだけで新たな愛液があふれ出し、吐き出す息にも濃密な欲情が滲んでくる。  
 おそらく今夜のバーバラは、求められれば求められただけ果てるだろう。  
 例え身体の限界を超えようとも、グレイが求める事ならばためらいなく受け入れる。  
 腕を回して男を抱きしめ、自分の気持ちを伝えた。  
 グレイも、バーバラを弄ぶ手を止めると同じように強く抱きしめる。  
 
   
 体液の匂いが満ちる部屋に、バーバラの嬌声と腰を打ち付ける音が響く。  
 四つんばいの格好をしたバーバラは、後ろからグレイに貫かれていた。  
 内壁を擦られて声をあげかぶりをふって、許しと更なる攻めを同時に願う。  
 向き合っている時とは違う場所を責められ、新鮮な快楽に身を焦がして涙を流した。  
「あ…は、ぁ…。 い、いい…」  
 扇情的に動く腰がグレイを誘った。  
 バーバラが乱れるたびに中の壁が雄を絡みつき、奥へ引き入れようとする。  
 このままでは、バーバラに促されるままに果ててしまう。  
 もう少しこの嬌態を楽しみたいグレイは、腹筋に力を入れると、  
「…、まて…」  
 無理やり外へ引きずり出した。  
「あぁああ……、やめて…!」  
 
 意地悪なほどに強い力で中を蹂躙していく男に、バーバラは腰を揺らして抗議する。  
 溢れる液体は太ももに幾重もの筋を作り、バーバラの足を汚していた。  
 バーバラが動くとそれにあわせて、濡れた音が男を受け入れる場所から聞こえる。  
 はしたなくも無防備なその姿は、女の欲を隠すことなくグレイに見せつけた。  
「獣じみた…とは、よく言ったものだな…」  
「な、に…が…?」  
「悪く…ない」  
「――――ああああ、ああ…!」  
 後ろを向こうとしたバーバラだが、再び激しく突き入れられたペニスの前には崩れ落ちるしか出来なかった。  
 えぐるように押し付けられた熱い先端は、子宮の入り口近くにある性感を徹底的に攻める。  
「あ、あ、あ、あ、あ…! ああ…っ、はぁ…。あああ…!」  
 バーバラは、髪を振り乱し瞳をきつく閉じ、涙を散らしながらグレイを受け入れた。  
 内臓も子宮も、何もかもがめちゃくちゃにかき回されるような感覚に陥りつつもそれに不快なものを抱く事はない。  
 ただ、もっと、もっとと熱いものを欲するだけだった。  
 豊かな胸はバーバラが動くたびに、たわわな果実のごとく揺れる。  
 何かに耐え切れなくなったグレイは彼女を後ろから抱きすくめると、豊満な乳房を鷲掴みにして揉みしだいた。  
「グレイ、ちょっと乱暴…!」  
 バーバラが涙声で抗議するのも聞かず、愛しさと激情をぶつけるかのような胸への愛撫は続く。  
 立ちる乳首をこねくり回されるたび、そこから遠く離れた下腹部が更に熱くなった。  
「ぁあ…! ひ、ぃぁ…!」  
「バーバラ…」  
「ん、…グ、グレイ…」  
 背中に当たる体温と乳房を包む熱さが、バーバラの体内に欲望を生み出す。  
 
(もっと…中を…)  
 グレイが、胸への愛撫に夢中で突きいれを止めた事に物足りなさを感じ、バーバラは自分の意思で、  
己の中にいる男をうながすため腰を左右に動かした。  
「お前…」  
 耳を掠める息は大いに乱れ、それを聞く女をたちどころに溶かしてしまうであろう声は低く震えている。  
 この声をもっと聞いてみたい衝動に駆られ、バーバラが二人が繋がっている部分をきゅうと引き締めた。  
「…ぅ…く、ぁ…」  
 きつい締め付けに、グレイは息をのみ白い背中に額を押し付ける。  
 気を許せばこのまま果ててしまいそうだった。  
 バーバラの意思どおりに雄を締め付ける入り口も、男の精を中へ引き入れようとする熱い器官も、  
全てがグレイを受け入れ愛していた。  
「く…っ」  
 グレイが苦しそうに首を振るたび、長い髪がバーバラの皮膚に纏わりつく。  
 切なく漏れる吐息が背中にかかるたび、バーバラは歓喜に震えた。   
「胸ばか…りじゃなくて…、あ……っ、こっちも…ね?」  
「は、ぁ…」  
「もっと…」  
 そして、その日の宴は夜明けまでずっと続いた。  
 この体勢でさんざん泣かされた後は、交差するようにして入ってきたグレイに翻弄され、  
それから、仰向けになったグレイの上にまたがって腰を動かし果てた。  
 その時にもやはり、グレイはバーバラの揺れる胸を責め上げ泣かせる。  
 
 シーツの上での性交が終わった後、身体を清めるために浴室に入った。  
 …その時も、素直にそれだけで終わらなかったのはいうまでもない。   
 げに恐ろしいのは酒の効力。  
 もっとも、本当に全てが酒のせいかなのかどうかは非常に怪しいところではあるが。  
 
「まだ、残っているな」  
 テーブルに置いてある酒を見つめ、グレイがぼそりとつぶやく。  
 全身を襲う疲労感に負けそうになっていたバーバラは、そんな言葉に肝を冷やした。   
 夢の世界に行きかけていた心も戻ってこようと言うものだ。  
 隣で仰向けになっているグレイの方を向くと、覇気のない声で抵抗する。  
「今日はもう勘弁してよ。 さすがに少し眠りたいわ」  
 うつぶせのまま横向きになる気力すら残されていないバーバラの、心からの訴えだった。  
 そんなバーバラを見るグレイは、ふわりと表情を和らげると、   
「俺もだ」  
 低い声で同調する。  
 そして、付け加えるのも忘れない。  
「残りは次の機会だな」  
「また、あんな風になれっての?」  
 色々な事を口走り、腰をいかがわしく揺らめかせてグレイを煽り、拒絶しながらも求めむせび泣く。  
 身体とシーツを汚し、恥しいところを開かされ、見られた。  
 ついでに言えばグレイもいつもより激しかったし、性癖が変わっていたように思う。  
「ほんっと、あの酒は凄いよ…」  
 数々の痴態を思い出して顔を赤らめるバーバラに向かってグレイはにやりと笑う。  
「どうする?」  
「…あたしに選べっていうのかい? 嫌な男だね、全く…っ」  
 バーバラは、力の入らない掌でグレイの顔をへしゃりと叩いた。  
 グレイが、今度はにやりとではなく楽しそうに笑う。  
 
 なお、その後も酒は捨てられることもなく、また、他の人間が飲む事もなかった。  
 そして旅が終わるまでには全てなくなっていたという。  
 
 
〜〜〜〜〜終  
 
 

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