シルバーを『介抱』して戻ってきてみると、  
パブの中から聞こえてくるのは、男たちの怒号のような声援と幽かにギターの旋律。  
おおよその事は予想は出来るのだが…。  
 
「なんでぇ、騒がしいな…」  
とりあえず中に入ってみると、軽く20人ほどは居るだろうか。  
ぐるりと取り囲むように人垣が出来ていた。  
その中心に立つのは、短い銀髪を振り乱す痩身の女。  
その隣りに、テーブル席の椅子を持ってきてギターを爪弾く吟遊詩人の姿。  
 
足元に置いてある彼の帽子には、金貨が山のように積まれている。  
 
「あらホーク、遅かったわね」  
 
秀麗な笑顔を向ける女、バーバラは人垣を分けてホークの許へ。  
 
「何やってんだよ」  
「踊ってって云われたから踊ってただけよ」  
 
ひとつ息をついてから、ふとテーブル席を見てみると、  
ゲラ=ハとジャミル、そしてアイシャの姿。  
「そろそろ戻るぞ」と、そのままホークは踵を返してしまったので、  
アイシャは真っ先に立ち上がってホークの後ろをついていこうとする。  
 
 以前、そうやってホークの後ろを必死についていく姿を  
 ジャミルに『かるがも』と云われ、笑われた事があって。  
 無論、その場で覚えたての術法を駆使してきっちりと制裁はしてやった。  
 
ゲラ=ハはカウンターで会計をすませ、  
バーバラは詩人との『分け前』を確認してから、金を受け取る。  
 
袋いっぱいに詰め込まれた金は、重さからして2000は余裕であるだろう。  
「うわ、こんなに貰っちゃってもいいの?」  
「礼を言うのはこっちだよ。久しぶりにいい稼ぎになった。」と、詩人は帽子をかぶり直す。  
またここに来て下さいね、と見送られ、一行はパブを後にした。  
 
**  
 
ほどなくパイレーツコーストを出、メルビルへと戻る船内。  
 
既に陽は水平線の許へ没し。  
濃紺がくまなく空に広がる中、船は進んでいる。  
 
海水の温度が高く、天候が非常に不安定なサンゴ海近海だが、  
今回は至って順調に航海を続けている。  
メルビルに戻るまでは、どんなに早い船でも丸1日近く掛かるが、  
この調子で進んでいければ、明日の昼までには入港出来るだろう。  
 
 
各人、宛がわれた個室で休憩しているのだが、  
ホークだけは密閉空間を嫌って、  
外の空気を吸いに行こうと甲板へと続く廊下を歩いている。  
 
甲板への出口に差し掛かると、そこから淡い銀色の輝きがにじみ出ていた。  
見てから思い出したが、今宵は満月。  
美しい月を肴にラムに酔うのも悪くない。  
 
ラムの瓶を取りに、一度船室へと戻ろうとしたが。  
 
 
もうひとつ、自分以外の影がある。  
 
 それは、月を見上げている。  
 しかし銀の月が満ちた姿に見惚れているというよりも、  
 寧ろ赫い月に何かを託し、希うかのようで。  
 
夜目はあまり効く方ではないが、はっきりと解るのは、  
空にぽっかりと浮かぶ、ふたつの月が。  
小さな姿を、鮮やかな赤髪を、淡く優しく照らすから。  
 
「嬢ちゃん」  
 
低い声に呼ばれて、振り向く前。  
確かに何かを拭ってからこちらを見た。  
いつもは奇妙な形に結われている髪を下ろしている所為か、姿はどこか儚げで。  
柔らかな風が一度、背の中ほどにまで達している夕陽の輝きをさらりと撫でる。  
 
「キャプテン? どうしたの?こんな時間に……」  
 
まだ『こんな時間』と云えるほど夜が更けている訳ではない。  
ホークはアイシャの隣りへと歩を進める。  
こちらを見上げて小さく微笑む、その面差し。  
 
幽かに、目元が腫れている。  
思い当たる節があるだけに少々胸が痛い。  
 
「それは俺の科白だろうが」と、軽く頭を撫でてやる。  
 
撫でた手は、そのまま小さな肩へと運ばれ、  
アイシャが驚く間もなく、そっとホークの領域の内側へと引き寄せられてしまう。  
 
「………独りで泣くなって云ったろう?」  
 
 同族に置いていかれた事実を知った日から。  
 いつも、いつも。  
 同室のバーバラに隠れ、声を殺し、膝を抱えて泣いていた。  
 
 偶然にそれを目撃してしまい、  
 たとえ一時でも苛烈な事実から遠ざけ、慰める為の手段として  
 この小さな少女を抱いてからどれくらい経ったろう。  
 
 いつしかそれは、確かな『想い』を伴い。  
 必ず訪れてしまう別離から何としてでも逃れる手段を模索するようになった。  
 
ホークの腰に巻きついた細い腕に、軽く力が込められる。  
 
そして。  
 
 
「……誰にも、あげないんだからぁ」  
 
 
軽い涙声のようにも聞こえる薄い声で  
小さく呟いた少女の声は、波間に疾(はや)く消えていく。  
『もの』にはならない、と云うのが身上だったが、  
この少女の独白であるのなら、話は全く別の事だ。  
 
 
こんな些細な一言で、しっかりと焚きつけられてしまった自分をどこかで哂いながら。  
アイシャの肩に置かれた右腕はそのままに、  
ホークの左の腕は素早くアイシャの膝の裏へと運ばれ  
そのままホークが体勢を立て直すと、  
アイシャの体重はホークの両腕へとあっさり託される。  
 
「うわあぁっ!」  
 
素っ頓狂に驚いた声を上げたが、  
細腕は無意識に頼る場所を求めて、ホークの首へと廻された。  
悠々と『お姫様だっこ』の体勢のまま、ホークは自らに宛がわれた部屋への道のりを辿っていく。  
 
ドアノブだけはアイシャに廻してもらい、  
足だけで巧みに船室のドアを開けてから施錠もせず。  
ベッドにアイシャの体重を乗せた後、すかさずその上にホークが被さる。  
 
その面差しは、いつも浮かべている不敵な笑みとは少しだけ属性が違うような。  
精悍なのには変わりないのに、心なしか焦っているようにも見える。  
 
「残念ながら、俺ァ『あんな事』云われて正気で居られる人間に出来てる憶えは無ぇ」  
 
エメラルドグリーンを丸くさせて驚いているアイシャ。  
ホークの云う『あんな事』がどんな事なのか、さっぱり解っていない。  
それでもホークの気配が近いのが心地よくて、そっと手を伸ばすと。  
 
応えて。  
あたたかく柔らかな感触を、互いの唇で分かち合う。  
 
最初は触れ合い、軽く吸いあうだけのバードキス。  
繰り返すうちに口を覆われて、舌を捻じ込まれる。  
歯列を隅々まで辿られ、ホークの味を刷り込まれてしまうかのように。  
 
「ふっ、……んぅ、ッ」  
 
舌の侵入に苦しげに声を上げ、夢中でかき抱いたホークの肩を数度引っ掻く。  
コートの上から落ちてくる主張は息苦しげで。  
一度だけ口を離すと、閉じ込められていた吐息が解放されて一気に溢れ出た。  
 
「くぅっ!ぷあぁ……ッ」  
 
酸素を貪る少女の姿を映す隻眼は、僅かに細められる。  
アイシャが呼吸を整えるその間に、  
ホークは自らに纏わるコートを脱ぎ捨てて適当に放り投げてしまった。  
遠くで布にしては重たげな音がばさり、と落ちたと同時に、  
被さってくる大きな気配は、至近距離どころか内側にまで入り込んでくるかのようで。  
 
口づけただけで甘く蕩け、薄いキラメキにコーティングされたエメラルドグリーンは  
年不相応に壮絶な艶を醸し、容赦なくホークを射抜く。  
しかしそれは、本人の与り知らぬ事だというのだから、始末の悪い事この上ない。  
 
再びに、小さな口を塞ぎながら。  
 
大胆に開いた服のサイドから左手を忍ばせ、  
右の掌は肌の滑らかな感触を確かめるかのように、頬から首筋、うなじをゆっくりと這った。  
覆い隠す布を徐々に取り払っていく衣擦れと、  
身体の上に点在する自らのものではないぬくみに翻弄されて、  
喉の奥に蟠る声は、ある程度留まった後、自然に押し上げられてしまう。  
 
ランプの暖色がゆったりと揺れ、それを合図にしたかのように。  
対照のぬくみは、アイシャの両の乳房を包み込んで中へと寄せ  
その先を彩る小さな左の蕾に、軽く舌を乗せた。  
 
「あっ……!はんっ……、ッ」  
 
乳輪を何度も舌先で虐め、徐々に蕾が綻ぶかのように膨らんでくると軽く歯を立てる。  
じゅうっとわざとらしく音を立てて強く吸ってやると、  
過ぎる刺激に、その背を撓ませて悦ぶ事など承知の上。  
空いた右の乳房は、鷲づかみに掴まれてかたちを柔軟に変え、  
指の腹でなぞるように蕾を弄ぶ。  
 
「んぅ…、くあぁッ!!」  
切なげに響くアイシャの声と共に、部屋に満ち始める濃密で淫猥な空気。  
乳房への執拗な愛撫の所為か、ホークの左の掌は既に離れ、  
アイシャの内股の肌の感触をまさぐっている事に気付いていない。  
 
漸くそれに気が付いたのは、身体を覆い隠す最後の布を剥ぎ取られた時。  
咄嗟に足を閉じようとしても、ホークが既に割り込んでいて閉じ様が無い。  
一糸もまとわぬ姿を故意に見つめてくるホークの視線に言い様の無いもどかしさを感じながら  
麻痺しかかった思考の下す命令は、視線を外す事。  
 
命じられるがままに熱い視線から逃れた瞬間に、  
身体の中心を異質でありながら柔らかな熱が、確かな形状を伴って刺激してきた。  
秘められた花弁の中心を、ゆるりと撫で上げる。  
 
「あっ!!!んうぅ…っ、あああっっ!!!」  
 
何度も、何度も。  
ただ、ゆるりと撫で上げるだけ。  
それでも敏感な肉芽にわざと触れたり、ほんの少しだけ入り口を掠めたり、で  
ホークの指を淫らに濡らす蜜は、触れた分だけ上塗りされる。  
 
そのエメラルドグリーンに浮かんだキラメキは、ついに泪へと姿を変えて。  
ころりと一粒、枕の上に乱れた夕陽の輝きの束の中へと転げ落ちる。  
細く、白い腕はホークの熱を求め、宙を何度も掻いて。  
 
「……お、ねがぁ、ぃ、……もぉっ……、やぁ……」  
 
今にも泣き出しそうな声を絞り出したアイシャの肩を抱き、口づけてやると  
こちらが舌を差し入れる前にアイシャの方から挑みかかってきた。  
自ら舌を絡め、重ね合い、吸いついてくる。  
 
満足するまで応えてやってから。  
 
「俺にどうして欲しいんだ、アイシャ?」  
 
 閨事の最中にしか 呼んでもらえない名前  
 ふたりきりの時にだけ 呼んでもらえる名前  
 
 大好きな 甘く低く響く声の誘惑  
 
「もぉ……、ほしいの……、ホー…クが、ほしいのぉ……」  
 
 身体を重ねる時にだけ 呼ぶ名前  
 意識を飛ばしかけた時にしか 呼ばない名前  
 
 愛してやまない 囀り唄う旋律の罠  
 
ホークの口角に笑みが上り、同時に花弁を撫でていただけの指先は  
惑いも無くアイシャのナカへと埋められていった。  
 
「んああっっ!!!」  
根元まで穿って、指の腹で媚肉を擦る様に動いてから  
道筋を広げるかのように激しくかき回す。  
 
「あぁああっっ!!ゆび、がぁ……!!!ふあっ!!!」  
突如として身体の奥深くから伸びて全身を絡め取る愉悦の蔦に  
身動きと正常な思考を奪われ、急速に与えられる甘さのみを追い求める。  
伴って、溢れて落ちる蜜は量を増し、くちゅくちゅと卑猥な水音を乱反射させながら  
それは互いの耳へと戻ってくる。  
 
時期にアイシャを翻弄する指は数を増やされ、  
突き立てられて、悦び滴り落ちる蜜は  
ホークの指を過ぎ、掌を伝ってぽたりぽたりとシーツの波間に消えていく。  
 
「はあっっ!!!もっ……、んくぅっっ!!!」  
 
一際、懇願するような嬌声が響くと、アイシャの小さな身体が小刻みに震え  
内側から押し上げられる波紋に押し流されるリズムに身体を任せて、同じように波打つ。  
 
柔らかく弛緩しきったしなやかな身体は、薄い紅に染まり、  
虚ろにホークを映す瞳も、視線も、ひどく扇情的で。  
 
「ほら…、こんなに溢れてるぞ……?」と、  
先ほどまで散々アイシャを弄んだ左手の掌に溜まった蜜を  
わざわざ見せ付けるようにして口に運び、自らの舌で掬い取った。  
滴り落ちて手首まで流れるそれを、一滴すらも逃さぬように舐め上げる。  
 
蜜がホークの口内に収まり、そのまま飲み下した事は喉仏の上下で露骨に現されてしまう。  
 
不敵な笑みと額に唇のぬくみを残し、ホークの姿が一旦視界から消えてしまった。  
しかし気配は近く、耳に入るのは衣擦れの音。  
快い気だるさに浸されているアイシャは、それにも気付けず  
ただその瞬間が訪れるのを待っているのみ。  
 
程なくして被さってきたホークは自分と同じく、一糸もまとわぬ姿。  
均整の取れた彫像のようなこの裸身に、  
これから熱と快楽を存分に与えられる事への淫らな期待に満ちた吐息が  
軽い溜息のように、無意識に零れ落ちる。  
 
「うっ、ああああっっ!!!!」  
 
ゆっくりとアイシャの一番深い場所を目指して、  
指とは比べ物にならないくらい熱く太い楔が打ち込まれた。  
焦がれた甘さはくまなく全身に広がり、  
徐々にホークのぬくもりと気配が近くなるのに、言語では尽くせぬ安堵感に酔いしれる。  
根元まで挿入しきると、ホークから強く抱きしめてきた。  
吸い寄せられるように腕を伸ばし、熱を寄せると、どちらからともなく唇を合わせる。  
感触を確かめると、ホークはゆるやかに波打つかのように動き始めた。  
 
「あぁっ!!んっ、ふあぁああっっ!!!」  
 
衝動に任せて叩きつけるような動きではなく、  
アイシャの奥底から生まれてくる愉悦の波紋を確実に増幅させるようなゆるやかな抽送。  
暫くそれを繰り返され、新たに生まれる火照りと  
全身に拡がる愉悦がアイシャの感覚を確実に蝕んでいく。  
夢中で縋りつくホークの耳元で、殆ど無意識に。  
 
 
「ホークぅ……、すき……、だい…すき……っ」  
 
 
後から溢れ出る嬌声に掻き消されそうなほどか細い声で、うわ言のように繰り返した。  
ホークの芯を焦がす愛慕は、自らの限界さえも打ち砕き。  
箍が音を立てて崩れ、同時に堰き止めていた昏い炎は全身を容赦なく焦がし始める。  
 
夜闇の奥、チカリと火花が散った。  
 
同じくして、ホークは貪り喰らいつくかのように、アイシャのナカをかき混ぜる。  
「あっ!!!あぁああっ!!!ふあっ、くうっ!!!」  
互いの肉を叩き合う鈍い拍手のような音が連続し、伴って蜜が淫らな水音と共に溢れ落ち。  
たゆたう空気が一瞬にして、濃密で淫猥な甘さを孕んだものへと変貌していった。  
硬い先端で媚肉の壁を強く抉られて、生まれて拡がる甘い電流は  
アイシャの正常な思考と感覚を嘲りながら毟り取っていく。  
 
すると、ホークは突然媚肉の誘惑を振り切って、自身を抜き出してしまった。  
「あんっっ!!!」  
急な喪失感に思わず声が洩れるアイシャ。  
肩で呼吸を整えるアイシャの身体をころりと反転させて、  
ベッドにうつ伏せる体勢にさせ、後ろから貫こうとする。  
が、アイシャは振り返って何度も何度も首を振って嫌がった。  
 
余りに嫌がるものだから、再び仰向けに寝かせ、数度口づける。  
「そんなに嫌なのか?」  
そう聞きながら、慰めるように抱きしめてやると、腕の中のアイシャは何度も頷く。  
 
「ホークのかおが、ね……、みえなきゃ、ヤなの……」  
 
小さな声がぽつりと零れ、蕩けて消える。  
柔らかな頬を朱に染めて、拗ねるように唇を尖らせて。  
あのエメラルドグリーンに上目遣いで見つめられる。  
 
 これ以上の誘惑が この地上に存在しようか  
 
再び少女の熱を自らに寄せ、片方の足を肩に掛けて交差位で  
溢れる蜜でしとどに濡れた花弁の中心に、己が楔を突き立てる。  
「ああああっっ!!!!」  
欲しがった場所に再び収められた膨大な熱は、先ほどよりも質量を増しているような気がする。  
与えられた熱を絞り上げると、歓喜と快感に苛まれ。  
それは愉悦の記憶として、その場所に刻み付けられる。  
 
「ああっっ!!!ひっ、くんぅっ!!!……、はあっっ!!!」  
一番弱い箇所を硬い先端で強く突き上げられ、  
突き上げられる強さとリズムのままに身体を震わせながら  
その度に細く白い喉から搾り出される、泣き叫ぶような嬌声。  
しかしその端々には、望むがままに与えられる快感に  
髄まで浸って酔いしれる声も確かに混じっている。  
 
その証拠にアイシャの全身は既に紅潮し、珠のような汗が滴り落ちている。  
 
頃合と見計らったホークは、再び突き上げる動きを止めてしまった。  
今度はアイシャの両の膝を乳房に付くほどにまで上げさせる。  
その上に圧し掛かるようにして貫き、  
アイシャの両の足と腕とを一緒に、固く囲って身動きを赦さない体勢で  
一片の容赦もせず、強く速く腰を叩きつけた。  
 
楔を挿入される角度を急に変えられ、  
普段は擦られないような場所を先端が強く擦っていく。  
未知の快感により、ホークを抜き差しされる事そのものに  
ひどく敏感になっているような気すらしてきた。  
「ああぁあっっ!!イ、イ…!!!イイ……よぉっっ!!!」  
そこから溢れる異質な電流に急速に押し上げられ、ガクガクと身体が震える。  
背筋を撫でながら脳天へと響き渡る衝撃はアイシャが享受するには余りにも大きすぎて。  
 
「もぉ……だめぇっっ!!!イッ……ちゃう、ああっ!!!やああっっ!!!」  
 
絶頂が迫っているアイシャを更に追い詰めるように腰を打ちつけ続けると。  
 
溢れかえっていた嬌声が途切れたと同時に、  
淫猥な水音も、互いの肉を叩き合う音も途切れてしまい。  
残ったのは、絡みつくような吐息だけ。  
 
ビクンビクンと大きく震えるアイシャの白い乳房に、白濁の精が落とされた。  
後から上塗りするかのように落ちてくるそれを  
虚ろな視線のまま指で掬い取り、指先で混ぜ。  
左の五指に満遍なく精を塗り込めてから、小指から順番に口に含んでいく。  
 
視線の先には、被さってくるホークの面差し。  
満足そうにこちらを見下ろし、汗で顔に貼りついたアイシャの髪を梳きながら整えてやる。  
最後の親指の精を舐めとって、ひとつ微笑むその面差しは、  
いつもどおりのあどけなく無邪気な少女の笑顔。  
 
腕の中に引き寄せて、  
その額と頬と唇に何度も極上の愛おしさを込めて口づけると、  
ホークのぬくもりに安堵して、意識を手放してしまった。  
 
**  
 
背中に重く圧し掛かってくる重みとぬくみが快くて。  
もう少し、このままで居たいと思ってみても。  
 
どうも臍の付近で組まれていたハズの大きな手が、突如として動き出し  
アイシャの全身を撫で擦ってくる。  
そろそろ起きろという合図らしいのだが……。  
 
「もおっ!!朝から変なコトしないでよっ!!!キャプテンのえっち!!!!」  
 
頬を膨らませて寝返りを打つと、やはり夜闇の隻眼は既に目覚めていて。  
ホークの歳には不相応な悪戯っぽい笑みですらも精悍に見えてしまうのは、  
きっと自分は『病』にかかっているからなんだろう、と。  
内心、呆れてみる。  
 
「ほぉ〜、じゃあ……夜ならいいんだな?」  
 
それ以上は言い返せず、口を噤んでしまう。  
得意げな笑みは、そのまま尖らせたアイシャの唇の甘さを掠め取って。  
腕の長さの分だけ離れてしまった気配を、再び自らの領域の中へと引き寄せた。  
 
「嬢ちゃん」  
「なに?」  
 
「そろそろメシ食いに行かねぇと、モーニングが終わっちまうんだがな?」  
 
掛け時計を見てみると、9つ半。制限時間は30分。  
一瞬、飛び起きようかと思案したが、  
確か食堂は時間が過ぎても開いていることは開いている。  
 
 
「………もちょっと、このままがいいなぁ…」  
 
 
我慢したクラブサンド分は、きっちり取り返そうと。  
ホークのぬくもりに思いきり抱きついた。  
 
外の天気は、マリンブルーとスカイブルーの競演眩しい、晴天である。  
 

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