「……まったく、しょうがねぇなこの姉御は……」  
「…………んぁ〜〜〜〜、呑んだぁ……」  
 
**  
 
 海賊たちの楽園・パイレーツコースト。  
 まさか再び、この地に足を踏み入れられるとはホークも思っていなかった。  
 
 未練が残っていると云っても、残っていないと云っても。  
 それは嘘になる。  
 慣れ親しんだ雰囲気に、船が着岸した時には思わず深呼吸してしまった。  
 
 桟橋に降り立って、足が向かうのは当然のようにパブ。  
 それもやはり、慣れた道のりと風景。  
 
 そこのテーブル席に『彼女』は、座っていた。  
 
 「あんた、シルバーか?」  
 低い声が不躾に名を呼ぶと、怪訝そうに振り向く『彼女』。  
 「……ああ、あんたたち。久しぶりだねぇ」  
 呼ばれた方を確認すると途端、怪訝な面差しは柔らかくほぐれ、  
 こっちに来なよ、と空いた席を勧める。  
 
 ホークは先にカウンターで何かマスターと軽く会話している様子。  
 マスターは一度頷いてから、所狭しと並ぶ後ろ酒瓶の群れの中から  
 四角い瓶を選び出し、どん、とホークの前に置いた。  
 金貨をおもむろに置いて、シルバーが促した席へ。  
 
 「久しぶりだな。景気はどうだ?」  
 「景気も何も、何もかも変わっちまって、まずは慣れるのに手一杯だよ。」  
 封を開けたホークのラムの瓶と、  
 置いてあったシルバーのラムの瓶が、硬質的な音を分け合った。  
 
 ホークはそのまま瓶の口からラムを喉へと流し込む。  
 瓶の中身は確かにアルコールの筈なのに、  
 流し込まれるスピードは普通の飲料と大差ない。  
 ホークの口がが瓶の口から離れた時には、中身は既に3分の1ほど減っていた。  
 
 「いい呑みっぷりだねぇ。  
 今時そんな呑み方するヤツ、ここでも殆ど見かけないよ。」  
 「そうか?んなこたぁねぇだろ?」  
 頬杖をついて、ホークがアルコールを呑んでいくのを  
 楽しそうに見ていたシルバーが突如。  
 「マスター!これと同じヤツ!」  
 と、テーブルをバンと叩いて空けたばかりの自分の瓶を高々と掲げて見せた。  
 
**  
 
その結果が、現状。  
ホークはそうでもなかったのだが、シルバーにはハイペースだったらしく、  
いきなりテーブルにバダン、と豪快な音を立てて突っ伏されてしまったのだ。  
 
「……おい姉御、大丈夫か?」  
ホークの背に負われてきたシルバーは、年季の入ったベッドにどさりと降ろされる。  
 
最初はしっかりとベッドサイドに座っていたのだが、  
時期にその体勢も保てなくなったのか。  
結っていた髪を解いてから、そのままの体勢でころりと寝転んでしまった。  
「ほらよ、水」  
階下のフロントから貰ってきたポットのミネラルウォーター。  
差し出されたグラスを受け取れる様子ではなさそうで。  
呆れたように溜息をついてから、グラスの水はホークが仰った。  
 
互いの間に横たわる、気まずい空気と重い沈黙。  
ホークは部屋の外へとその視線を向けるばかり。  
 
「…………んっ」  
小さく呻いてから、寝返りを打つシルバー。  
ぎしりと響く耳障りなスプリングの音。  
急に狭い部屋に乱反射した声に、ホークの気配がベッドサイドまで近づいてきた。  
 
 
「気がついたか?」  
 
 
低い声の後に、数瞬の沈黙。  
 
覗き込んできた面差しの唇を塞ぎにかかったのは、女の方からだった。  
同じアルコールの匂いを幾分含んだ、熱い吐息が時折漏れる。  
しかし、塞がれた方も動じない。  
不躾に口内へと侵入してきた舌に簡単に絡み取られる事もなく。  
歯列の裏までも辿る自らのものではない舌の感触を確かめている。  
 
「……何のつもりだ」  
「何のも何も、こんな狭い部屋で男と女がするコトつったらひとつしかないだろ?」  
呆れたような溜息を漏らした男と、その唇を軽く吸い直す女。  
 
尚も噛みつくような勢いで吸いにかかる唇を振り切り、  
「先に云っておくが、そっちは十分間に合ってるんだがな?」  
ホークは若干距離を置く。  
「そこらへんの売女とあたしを同等に扱うとは、いい根性してるね」  
「そうじゃねぇよ」  
 
「じゃあ、あの赤毛のお嬢ちゃんかい?」  
あんなヒヨコからあんたを奪い取るなんて、容易い事じゃあないか。と、小さく嗤う。  
 
「残念ながら、嬢ちゃんは俺が奪ってきたんでな…」  
あの嬢ちゃんは、俺の『王国』なんだ。と、軽く嗤った。  
 
 解っていた。  
 酒場で、男の隣に座った、背の低い夕陽の艶やかな輝きを  
 そのまま髪の一筋に余す事無く閉じ込めたような、鮮やかな赤毛の少女。  
 
 そのエメラルドグリーンの瞳は、いつもあの夜闇の隻眼を見上げている。  
 
 そして、男は少女を『王国』と云った。  
 自らが命を賭して護るべき、不可侵領域なのだと。  
 
 解っていた。  
 だから、なのだろうか。  
 
「………構わないよ」  
『伝説の海賊』と銘打たれる者が浮かべるには、淡すぎる女の笑み。  
 
 陥落したのは、女か。それとも、男か。  
 
「なら、これ以上は云わねぇ……」  
潮風に晒されてざらついた栗色の髪。  
幽かに潤んで見える黒緋(くろあけ)の瞳。  
勝気な笑みだけ浮かべていればよかったのに、と内心苦笑しながら。  
 
そっと、唇を重ねた。  
 
「…んっ、くぅっ……、ふっ……」  
先ほど、散々まさぐっても頑として動かなかった舌は  
早々にシルバーの舌を絡み取り、今度は口腔の片隅までも余す事無く冒していく。  
 
流された方が負け。  
 
それだけを手繰って応戦を試みるが、  
放り出されたシルバーの掌の上に、そっと被さる大きな掌。  
こうやって何人もの女を追い詰めたのだろう、と内心苦笑しながら。  
握る力をほんの少しだけ強めた。  
 
動悸を、ごく近い場所で感じる。  
被さる掌を振り払い、ホークの纏うコートを乱暴に剥ぎ取ると、  
彫像の如き上半身が露わになる。  
褐色の背をかき抱くと、密着した肌の火照りに酩酊しそうになった。  
 
唇が離れ、柔らかい感触が首筋に落ち、  
小さく吸われる音と共にいつのまにか腰に廻されたホークの手は  
固く結ばれた腰紐にかかっている。  
腹部の軽い圧迫感から解放されたと同時に、肌にまつわる衣(きぬ)の感触が急に遠くなった。  
 
被さるホークの身体を軽く押し退け起き上がると、  
引っかかっているだけになってしまった衣を自分から脱ぎ捨て、  
背に両の手を廻して、シルバーは胸部を圧迫する晒しを解き始めた。  
程なく重力に引き寄せられる晒しの向こうから豊かな乳房が姿を現す。  
 
すると、ホークもターバンと眼帯を邪魔そうに一度に脱ぎ捨てた。  
眼帯の下から現れた刀傷と思しき深い傷。  
シルバーは指先で軽く触れて。  
 
「……庇い傷かい?」  
「授業料みたいなモンだな」  
 
「バカ高い授業料ふっかけられたね」と呆れるように溜息をつくと  
低い声は軽く哂いながら、それ以上は触れず。  
露わになった両の乳房を掌に収め、同時に回すようにして愛撫し始めた。  
 
「…んっ……、」  
 
最初はゆっくりと、そして整ったかたちを鷲掴みにして。  
まさぐられる内に身を固くし始めた突起にも愛撫を加える。  
 
片方を舌先で転がしながら、軽く歯を立てて苛め、更に固く存在が大きくなると、  
今度は口に含んで卑猥な音を立ててきつく吸ってやる。  
もう片方は指の腹で軽く触れる程度に焦らし、  
かたちになるまで触れてから爪で乱暴に引っ掻く。  
 
「あぁ……、ふうっ…」  
 
柔らかく包まれるような人肌のぬくもりと、引き裂かれるような甘い電流。  
両方に同時に苛まれ、徐々にシルバーの頬に薄い紅が差してきた。  
ホークの左の手はそれを見計らい、女の躰の曲線を辿るように  
するすると中心へと向かって密やかに降りてゆく。  
 
彼女の体に纏わる最後の薄布を剥ぎ取って侵入する。  
ざらりとした叢を一度撫でてから、軽く花弁を指の腹で掬うように辿ると、  
指先に薄く蜜が落ちてきた。  
 
「なんだよ、濡れてるじゃねぇか」と、揶揄るように哂う低い声。  
「もっと…濡らしてくれるんじゃ……、ないのかいッ、はぁっ!!」  
 
いきなりナカに挿入られたホークの中指に、思わずシルバーの背が撓んだ。  
熱く、甘く、媚肉の圧迫を振り切りながら指を動かすと、  
溢れて落ちる淫らな水音に、部屋の空気が一変する。  
 
「久しぶりなんだからさ……、ヨくしてくれるんだろぉ……?」  
シルバーらしからぬ切なげな声に含まれたのは、  
ことばの響きと意味に覆われた、別の意味。  
 
 『王国』を持つ男である以上 そして自らが自らである以上  
 死んでも口にはしたくない 別の意味  
 
 はからずも汲んでしまった その意味への答えは  
 
「あああっ!!!ゆびぃ……、もっとォ!!!もっと……ッ!!!」  
穿たれたホークの指がナカを乱暴にかき回し始めると、  
連続してぐちゅぐちゅと響く水音は徐々に音の間隔を狭め。  
「ふあぁぁッ!!!」  
もうひとつ、太い指がシルバーを押し分けて挿入される。  
2本の指を絡ませて、根元深くまで穿ち更にかき回すと、  
容赦なく溢れ落ちる蜜は、ホークの掌とシーツを淫らに濡らして。  
 
それでも貪欲に求め、絡み付いてくる熱い媚肉を慰めるかのように。  
 
胸の突起から口を離すと、唾液が糸を引いて乳房の上にぽたりと落ちる。  
「んぅ…、くっ、ン……!!!」  
唇は呼吸を荒げるシルバーの口を被さるようにして塞ぎ、零れる嬌声を飲み込んだ。  
苦しそうにホークの厚い胸板を押し退けようとするシルバーの躰がビクンと大きく震える。  
 
塞いでいた唇を離すと同時に、  
内側から強く押し上げてくる波に身を委ねるかのように数度。  
シルバーの躰が波打ってから、安堵に似た溜息が漏れた。  
「うっ……、んぅ……」  
達したシルバーのナカから引き抜かれたホークの2本の指には、ねっとりとした蜜が絡みつき、  
柔らかく弛緩するシルバーの口許に運ぶと、自らそれを口に含む。  
一心不乱に指に舌を絡め、蜜を舐め取る姿に  
加虐心にも似た昏い炎が深層で燃え立つのを感じ、ホークの口角が邪に吊り上がる。  
 
「こんな程度じゃ足りねえだろ、姉御?」  
 
『姉御』と呼ぶ声は、憎らしいくらいに甘く響いて、下腹部を刺激する。  
呼吸を整えて、軽い倦怠感が蟠る身体を起こすと、  
シルバーの手は、ホークの股間へと伸びた。  
 
ベルトを外して、既に布の下で屹立しているモノに引っかかりながら  
ホークに纏わる衣服を一度に剥ぎ取る。  
 
昼陽が幽かに入り込むとはいえ薄暗い部屋の中、浮き上がる褐色の裸身。  
 
口内に軽く唾液を溜め込んでから、シルバーの手がその中心へと宛がわれ  
天へと反り勃つホークの自身を数度扱いて口に含む。  
「んむっ…、っぷ、……んんっ…」  
ギリギリ咥えられる所まで含んでから、先端を残して外気に戻し。  
咥えきれない根元は指で愛撫しながら、根元の果実も転がしてやる。  
 
一度口を離し、根元から先端までねっとりと舐め上げ、  
果実を片方ずつ口に含んで舌で愛撫すると、  
栗色の髪を梳くホークの手が頬にそっと当てられた。  
 
 柔らかな頬に薄い紅を差し こちらを見上げてくるふたつの黒緋。  
 海賊の世界に身を投じた者ならば  
 知らぬ者など居ない大海賊が自らの前に傅(かしず)いて。  
 そして、その口に頬張っているのは、紛れも無く自らの分け身。  
 
「……たまんねぇな」  
しかし、見下ろす夜闇には蔑視は微塵も含まれてはおらず。  
寧ろ、その色は愛おしさに似た甘さすらも滲ませて。  
 
「んっ……、んぶっ…、くっ……ン」  
今度は横から咥え、根元から先端へと向かって数度、  
スライドさせるように愛撫してから、再び先端から含みなおす。  
舌先に固さを込めて雁首と裏筋を刺激すると、軽い溜息が落ちてきた。  
 
が、ホークの掌は栗色の髪の房を耳の後ろへと掛け直してやってから  
「もういいぜ」と、シルバーの肩を離してしまった。  
口内から急に離れたホークの自身とシルバーの唇を結ぶ唾液の糸は  
妖しく煌きながらシーツへと零れ落ち、新たなシミを作ってしまう。  
 
夜闇の視線が向けられたのは自身を愛撫していた左手ではなく、自らを慰めていた右手。  
 
「欲しけりゃ欲しいって云やぁいいのに……」  
と、軽く哂うホークに反論出来ず、頬を上気させたまま睨みつけていると、  
確かにホークの云うとおりだと、不意に可笑しさが込み上げてきて。  
思わず、笑みが浮かんでしまった。  
 
笑む唇を軽く塞ぎ、割って入ってきたホークは  
そのまま身体を進め、惑いもなくシルバーのナカへと自身を一気に捻じ込んだ。  
 
「んあああっっ!!!」  
根元まで媚肉の甘さに囲われたのを認識しきる前に打ち付けてきた。  
互いの内股の肉を叩き合う音と、  
混じって蜜壺を掻き混ぜられて溢れて落ちる淫猥な水音。  
荒く吐き出される互いの呼吸。  
 
しなやかな肢体が熱望した硬さと熱さと質量に満たされて、  
一番深い場所から際限なく湧き上がる快感は留まる事を知らない。  
貪り喰われるかのように激しく暴れ狂う快楽に、ただただ翻弄されるのみ。  
肉壁を先端できつく抉られる度に、黒緋の瞳に意志とは無関係に浮かぶ潤い。  
それがころりと目尻から転がり落ちたと同時に、掴んでいたホークの腕に爪を立てた。  
 
幽かに震えながら、自らが与えるがままに狂うシルバーの艶姿。  
単純に愛おしくて、手元にその熱を抱き寄せる。  
 
耳元に唇を寄せて、低く囁くのは彼女の名前。  
今まで、この名を呼ぶ時に  
誰一人として含む事のなかった彩を添えて。  
 
矢継ぎ早に襲ってくる快楽の波に  
正気を連れて行かれそうなシルバーの恍惚に満ちたその笑顔は。  
たった、ひとことだけ。  
 
「あんた……、イイ男だね……」  
 
その意味までも求めてはいけない事は、互いに熟知している。  
熱を求めて伸ばしてきた腕を取り、打ちつける強さと速さを増して更に追い詰める。  
「んうっ、くあぁっ!!!ホー…ク!!!」  
絶頂が近いのか、きつく絞り上げてくる媚肉に  
陥落しそうになるのをギリギリの所で堪えるホーク。  
「………ッ!!!」  
奥歯をきつく噛みすぎて苛む耳鳴りと一緒に響くシルバーの嬌声。  
「はあっ!!ああああっっっ!!!!!…イ、ク……ぅぅっっ!!!!」  
その声と殆ど同じくして、絡み付いてくるシルバーから自身を抜き出し、  
溢れてくる大きな波に身を任せるシルバーの乳房に白濁の精をぶちまけた。  
何度か扱いて出しきると、乳房の上に散らばる粘着質を指で掬い、  
それを桃色の唇に塗りつけると、蕩けきった視線で見つめていたシルバーの舌が  
ぴちゃぴちゃと音を立てながら、塗りつけられた精を口内へと導いていく。  
 
口角は艶やかに、妖しく。  
笑みを浮かべた。  
 
それから数度、求め合ってから。  
短く別れの言葉だけを残して部屋を出て行く男の姿。  
ドアの向こうに消えていく広い背を見つめながら  
 
 もう少しだけ…  
 
そう思いかけて、頭(かぶり)を振る。  
 
 
「これから、神にケンカを売りに行く」と、そう云っていた。  
しかも、どこか嬉しそうに。  
愚かだとか、無謀だとか、そういう次元の話ではない。  
 
 
それでも、もし無事にこのサンゴの海に帰ってこれたのなら。  
 
 
「…ラムの1本くらいは奢ってやろうかね…」  
薄く微笑って、そのまま睡魔に身を委ねた。  
 

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