「これで決まりだあっ!」
掛け声と共に、光の弧を描く斬撃がモンスターの首を捉える。
耳を劈く咆哮は、そのまま長く続いた戦いの終止符となった。
「やるじゃないか、アル!見違えたぜ」
「すっかり腕を上げましたねぇ。勇者の凱歌を歌うのにも気合が入るというものです」
「お見事です。日々の修練の賜物ですね」
「そ、そうですか…?ありがとうございます」
仲間達に褒められ照れを隠せない少年。
しかし、パーティー唯一の女性は冷淡に言い放つ。
「まだまだだね。剣の振りが遅いし、体捌きも甘い。そんなことではこの先、生き延びられないよ」
「シフ…」
声を詰まらせた彼を顧みることなく、シフは足早に去っていった。
宿に戻ったアルベルトは、思い切って彼女の部屋を訪ねた。
「戦うものとして私に足りないのは何ですか?教えて下さい。あなたや殿下のような天賦の才は無いにしろ
…私はもっと強くなりたい。他の誰よりも、あなたに認められたいんです!」
シフは少し困った顔をして俯き、やがて決然と顔を上げた。
「アルは強くなったよ。初めて会った時とは比べ物にならないくらいにね。殿下とやらがどれほどの腕かは
知らないけれど、確実にあたしよりは才能があるよ。天才と言ってもいいくらいさ」
アルベルトは面食らって目を瞬かせた。
「なら…どうして、さっきはあんなことを…?」
「だって…皆の前で褒めたりなんかしたら、全員にばれてしまうじゃないか」
長い睫を伏せて、彼女はぼそりと呟く。
「…あたしが、あんたに惚れてるって」