とても静かな・・・夜。
ルビィはひとり、テントを離れて星を眺めていた。
普段はなんでも楽観視できるが、時々どうにもうまくいかない時がある。
ただ未来が不安で、怖くなる。
あの変なおっさんに誘われて旅に出て、楽しかったり、足が痛かったり、ヒロユキをいじめたり、おっさんにちょっかいをかけたり・・・ふと、自分は何をやってるんだろうと考えてしまう。
「何を見ている?」
何の気配もなくいきなり声をかけられて、でも別段驚かなかった。
多分・・・来るんじゃないかって思ってたから。ううん、来て欲しかったんだ、きっと。
「別に。星が綺麗だから、ちょっと見てただけよ。そういうおっさんは何してんのよ、こんな夜中に。」
「散歩だ」
「こんな夜中に出歩くなんて、怪しい人じゃない」
「それはお互い様だろう」
「・・・ま、確かにね」
ふぅ、と大きく息を吐いて、
「あのね・・・」
言いかけて、やめた。
間。
気まずい・・・だけど、おっさん・・・(イスカンダールだって?誰が?)・・・は何も聞かなかった。
全部分かってる気がする。良く分からないけど、全部。だから、聞かないで欲しいことは聞かない。一緒に旅をしていて、なんとなくそう思ってた。
「・・・体が冷えるぞ・・・そろそろ戻ろう」
「ん・・・ねぇ、おっさん、奥さんいるの?」
「・・・?」
いきなり、ふっかけてみた。なんとなく、まだ戻りたくなくて、適当にどんどんまくしたててみる。
「いないの?別れちゃったとか?子供とかは?ねぇ・・・」
何を言っているんだ、この小娘は、とでも言いたげな顔。でも今まで何を言っても軽くあしらわれていたからチャンスだと思った。
「あ、もうおっさんだから使い物にならないとか?あははっ・・・」
「なら、試してみるか?」
「え?」
言い過ぎた、そう気付いたのはそのすぐ後だった。おっさんはまっすぐに私を見つめて、口元にはかすかに笑みを浮かべている・・・が、いつもと雰囲気が違う。
あちゃー、ちょっと・・・怒らせちゃったかな?
何がどう動いたのか分からなかったけど、目の前に満天の星が広がっていた・・・それを遮るおっさんの顔。私はおっさんに押し倒されていた。
「ちょ・・・ちょっと、何よ、何本気にしてるのよ!冗談よ冗談!ねぇ?ちょっと・・・やだ・・・ッ待って、ねえ待ってよ・・・待・・」
「うるさい口だな」
「ンッ・・・
唇を重ねられた。マジかよ?・・・でも、それは想像を遥かに超えて柔らかくて、心地よかった。
って、そんな悠長な事考えてどうすんのよ!?このままじゃ私・・・
カチリ、金具の外れる音がして、ひとつずつお気に入りの飾りが外されていく。
結構複雑な構造になってる・・・んだけど、そんなの全然問題にならないって感じで手際よく脱がされていって、とうとう・・・私の、そのまんまの乳房におっさんの手が触れた。
両方の乳房を包み込むように・・・ゆっくりと揉まれる。
やだ、やだよぅ・・・ヒロユキ・・・って、なんでここでアイツの名が・・・
と、唇が離れた。
何か怒鳴ってやろうと思い・・・その瞬間、乳首をつままれて、思わず
「あんッ・・・」
恥ずかしい声が出た。
コリコリと転がされて、指の腹で先端を撫でられると体の力が抜けて、何か別の感覚が沸き上がってきた。
「あふ・・・や、やだ・・・ん・・・」
「取り返しがつかなくなる前に、少しは素直になる事だな。失ってからでは遅いのだぞ」
そう言うとおっさんは乳房から手を離し、これまた手際よくはだけた服を元に戻した。
「・・・・」
何も言えないでいる私に、
「さあ、戻るぞ」
そう言ってさっさと歩き始めた。ちょっと、一体なんなのよ?
黙って歩き去っていく後ろ姿を眺めながら、待ってくれる素振りもないのを悟ると慌てて追い掛けた。
無言のまましばらく歩いて、
「あの・・・ありがとう」
「ん?」
「あの・・・滝・・・
「あぁ、あの事か」
本当に察しのいいおっさんだ。言いたいことを分かってくれる。
私、あの時、おっさんに怒られて・・・ちょっとムカっとはしたけど、でも多分、嬉しかったんだと思う。
怒ってくれる人なんかいなかったし、それよりももっと・・・優しくて。
得体の知れないおっさんだけど、何故か安心できる。頼りになる。そう思ったから、姉さんもこの人について行くことを決めたんだと思う。
それに・・・予感がする。
このおっさんとの旅の先に、答えがあるって。