とあるパブの一角。カウンターに銀髪ショートの色っぽい女性と  
まだ幼さを残すタラール族とおぼしき衣装をまとった少女が座っていた。  
そう、バーバラとアイシャだ。  
客の数がまばらなのはここが辺境の街だからか。  
バーバラとアイシャは何を話すでもなく詩人の奏でる音楽に心を預けていた。  
「これはあちらのお客様からです」  
マスターの声で現実に引き戻される。  
テーブルの上には二つの青いカクテルが並べてあった。  
「あら、素敵。」  
マスターが指を指した方向を見るとホークと談笑中のゲラ=ハが軽く会釈する。  
「粋なことしてくれるじゃない。ねぇ、アイシャ。アイシャ?」  
アイシャはぼんやりとゲラ=ハの方を見つめている。  
「アイシャったら何ぼんやりしているの?まだ飲んじゃいないのに。」  
「あっ、バーバラ。ごめんなさい。」  
バーバラはため息をついてアイシャに問い掛けた。  
「もう、どうしたんだい?ぼーっとしちゃってさ。そんなんじゃサルーインの所にたどり着く前に  
モンスターに食べられてしまうよ」  
 
アイシャはまっすぐ前を向き少し考えてから云った。  
「なんかね、突然胸が苦しくなったりドキドキしたりするの。  
一つのことに頭が支配されて他の事が考えられなくなるの。」  
「好きな人が出来たんだね・・・。」  
「うん、あのね。正確には“人”じゃないんだけどね。」  
一瞬、バーバラは何と返事をしたらいいのか戸惑った。  
「ゲラ=ハか。確かに彼は紳士だしいい男だと思うよ。で、彼はアイシャの気持ちを知っているのかい?」  
慎重にアイシャの顔を見ながらバーバラは聞いた。  
「うん、振られちゃった。『ゲッコは基本的に人には恋愛感情を抱きません』って云われちゃった。  
でもね、彼は嘘ついてる。」  
アイシャは薄暗く埃っぽいパブの奥のほうにいるゲラ=ハに目をやりながら続けた。  
「あのね。戦闘中にゲラ=ハにガードしてもらったの」  
それくらい私だってホークだってしてもらってるわよ。喉まででかかったセリフをバーバラは飲み込んだ。  
「それにね、アイシャの事を人間の中では一番好きだって云ってくれたよ」  
それって・・・。色々な突っ込みが頭をよぎりながらも一つため息をついてバーバラは呟いた。  
「彼はゲッコだよ。わかっているのかい?」  
アイシャは黙って頷いた。  
 
「困ったねぇ。サルーインの居場所を突き止めたっていうのにあんたがそれじゃぁ・・・」  
バーバラは浮かない顔をしていつも持ち歩いているバックから小さな瓶を取り出した。  
「あまりいい方法とは云えないけど・・・。体から始まる関係だって馬鹿に出来ないしね。  
試してみるかい?それであんたが元気になるんなら・・・。」  
さっきまで曇っていたアイシャの瞳がぱぁっと輝きだす。  
顔中の笑みがまるでポピーのようだとバーバラは思った。  
「バーバラありがとー!バーバラ大好き!で、それをどおすればいいの?」  
「いいかい?これは媚薬といって・・・。」  
そんな二人の様子をゲラ=ハは遠くから穏やかな気持ちで見守っていた。  
これから自分の身に降りかかる恐怖も知らずに。  
   
  ***           ***  
 
ゲラ=ハは考えた。今自分が置かれている状況を。  
つい先ほど仲間たちにお休みの挨拶をして部屋に戻った。  
軽く武器の手入れをし、いつもと同じ時間に床についた。  
何も変わったことはない。この体のしびれとうずき以外は。  
闇の中天井に目をやり必死に理性を保とうとしていた。  
押さえても押さえても後から沸いてくる劣情。うずき。  
慰めようにも手足がしびれて動くことすらままならない。  
モンスターの襲来?小さな蟻の群れが体中を這いまわるような感覚。  
確かめようにもベットから起き上がる事すら出来ない。  
ゲッコ族は虫が生理的に好きです。しかし、こんな・・・。  
ホークは明け方まで帰らない。貴重品はクロークにあずけてある。  
泥酔して戻るホークの為に部屋の内鍵は開いているが誰かが入ってくることはないだろう。  
まずはこの体の痺れを何とかしなければ・・・。  
そのとき耳障りな軋む音と共に扉が開いた。  
「ゲラ=ハ・・・」  
少し鼻にかかった高い甘い声。  
「アイシャ?そこにいるのはアイシャですか?助けてください。私は虫に襲われています。」  
「虫?そんなのどこにもいないよ。薬が効きすぎたのかな?ごめんなさい・・・」  
「!?」  
 
ぼんやりとした優しい光が視界に入る。  
それは、ゆっくりとゲラ=ハの方へ近づいてきた。  
ゲラ=ハは首を扉のほうへ傾けた。  
火を灯した燭台を持ち恍惚とした表情のアイシャが立っていた。  
ピンクのネグリジェが光に透けて体のラインがくっきりと浮かび上がる。  
白くすらっと伸びた手足を隠すものは何もない。  
今のゲラ=ハにとってあまりに刺激的なその姿に思わず顔をそむけた。  
「ピンクのネグリジェ。バーバラに借りたんだよ!似合う?」  
「そんなことよりも、この状況を説明していただけませんか?」  
アイシャは大きくため息をついて枕もとに燭台を置く。  
「痺れ薬が効きすぎると虫が這ったような錯覚を起こすって昔おじいちゃんが言ってた。  
調合間違っちゃったんだね。ごめんなさい。そんな事より・・。ねぇ、わたしを見て!」  
そういうとアイシャはおもむろにネグリジェの裾をたくし上げる。  
白く膨らんだ胸で蝋燭の光が怪しくゆれる。  
ゲラ=ハは目を逸らしながら云った。  
「何故、こんなことを・・・・。」  
「ゲラ=ハ好き!全部欲しいの。わたしの全部あげるから!」  
「云った筈です。ゲッコ族は基本的に・・・。あっ・・・。」  
下半身に走る甘い感覚にゲラハは思わず声を漏らした。  
 
「あはっ。バーバラの言ったとおりだわ。ここ気持ちいいんでしょ?  
体の奥がうずうずして熱いでしょ?私にもわかるわ。私もビヤク飲んだから。」  
ゲラ=ハは全てを理解した。体の疼きの正体も湧き上がって消えない劣情の正体にも。  
「きて・・・。」  
白い手が鱗に守られたゲッコの手をその白い胸に導く。  
アイシャの乳首は堅い皮膚の上からでもそうとわかるくらいに堅くなっていた。  
「ゲラ=ハ冷たくて気持ちいい・・・。」  
おもむろにアイシャの指がゲラ=ハのズボンにかかる  
「アイシャ。いけません!」  
いまだ痺れ続ける体が制止など出来るはずもなくゲラ=ハのズボンは少女の手によってたやすく剥ぎ取られてしまった。  
「見てはいけない・・・。」  
「・・・・」  
「わかったでしょう。ゲッコと人は結ばれない。どんなに背格好が似ていても人の中に紛れ人のようにふるまっても私はゲッコ。人にはなれない。私はサルーインの子なのです。」  
痺れに耐えながらベットの端に手をつきゆっくりと体を起こしながら穏やかにゲラ=ハは言った。  
その声はアイシャの中に悲しげに響いた。  
「わたし初めてだから。男の人の見るの初めてだからゲラ=ハの此処が人とどう違うのかわからないよ。  
そんなことの為に今までわたしのことを避けていたの?ゲラ=ハのばか!」  
 
アイシャの深い緑色の瞳が涙で揺れる。真っ赤に染めた顔を左右に振りながら体をゲラ=ハに預ける。  
そんなアイシャの姿を見て胸の奥から込上げてくる感情にゲラ=ハは戸惑った。  
「ゲラ=ハわたし平気だよ。そこが二つに別れていても。ほら、わたしの穴も二つある・・・。」  
そう言って健気に微笑む少女を思わずゲラ=ハは胸に抱き寄せ耳元で囁いた。  
「貴女はこんな私を受け入れてくれるのですか?」  
返事の代わりにアイシャはゲラ=ハの手を自分の下腹部へ導いた。  
「ほら、こんなになっちゃった・・・。」  
アイシャのそこは媚薬のせいだけではないだろう。とても濡れていた。  
「あっ・・・ん」  
ねぇ、ニオイを嗅いで・・・・。  
アイシャが囁く。  
今まで保ってきた精神の均衡が崩れたゲラ=ハはアイシャの白い肩をつかむと一気に押し倒した。  
アイシャの下腹部に顔を近づけると赤く二つに割れた細い舌でチロチロと舐め始めた。  
「ああん。ゲラ=ハ気持ちいいよ・・・。体が熱いの!」  
アイシャの腰が怪しくうごめく。  
もっと・・・。  
部屋中がアイシャの香りとため息に包まれる。  
「アイシャ。いいですか。行きますよ」  
ゲッコのそこがアイシャの敏感なところに押し当てられる。  
「うん、優しくしてね!」  
 
  ***      ***  
 

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