キィ…。  
誰もが寝静まる真夜中。小さな音をたててドアが開かれる。  
いつもの彼なら、些細な音も気配も聞き逃さずに、  
その浅い眠りから目を覚ましていた事だろう。  
だが、今夜ばかりは少し良い気になって  
飲み過ぎたアルコールが、それを妨げていた。  
旅馴れたグレイにとっては、それは不覚な事であった。  
パタン。カチャリ。  
扉の閉まる音と、鍵を閉める音。  
コツコツコツコツ…。  
ゆっくりと近づいてくる誰かの足音。  
グレイはそれに気が付かず、未だ眠りの淵にいた。  
 
「ん……?」  
自由の効かない身体を疑問に思い、うすく瞳を開く。  
「!?」  
気が付けば、自分の両腕が上に伸ばされ、  
ベッドの格子状のヘッド部分にきつく縛られていた。  
どうにも足首も同じ感覚がするから、  
両手両足、ベッドに拘束されているらしい。  
この感触は荒縄か。  
「これは…?」  
気色ばんで、グレイの頭はアルコールも抜けて一気に覚醒する。  
人の気配のいる方へ顔を向けるが、上げられた自分の腕が邪魔で、  
その人物がうまく視界に入らない。  
ベッドの隣にあるサイドボードの上にある薄暗いランプの光りが揺れて、  
その人物の影だけを壁に映し出していた。  
「もう気が付いたの?」  
少し驚いたような、あまり抑揚のない声。  
「……クローディア…!?」  
あまりに意外な人物の声に、グレイは驚きの声をあげる。  
「さすが…と言うべきなのかしらね…」  
ふっとクローディアが彼の視界に現われた。  
ランプの揺れる炎の明かりを受け、  
見慣れた物憂げなヘイゼルの瞳がグレイを見下ろす。  
「これは一体…何の真似だ?」  
ひどく困惑して、グレイは彼女を見上げる。  
「あなたが悪いのよ…」  
「俺が…?」  
わけがわからないまま、グレイは彼女を見続けた。  
 
クローディアは寝間着に使っている薄い肌着を身につけ、  
しばらくグレイを見下ろしていたが、  
やがて身を乗り出してベッドの上に乗ってきた。  
彼女の体重で、ベッドがぎしり、という音をたててきしむ。  
クローディアはグレイの胴をまたぐと、  
四つん這いになってさっきよりもずっと間近な距離でグレイを見下ろした。  
お互いの呼吸が感じられる程の距離。  
「クローディア…?」  
困惑したまま、再度グレイは彼女の名前を呼ぶ。  
それに呼応するかのように、クローディアはグレイにすっと近寄って、  
その唇に深い接吻を落とす。  
「…んっ…」  
最初は軽く、ついばむようなキスを繰り返していたが、  
やがて深く舌を挿入してきた。  
「……ふっ……んっ…」  
まるで別の生き物かのように、  
クローディアの舌は激しくグレイの口内を侵していく。  
今まで数度、彼女とは口づけを交わした事があるけれど、  
こんなにも激しいのは初めてだ。  
キスを続けながら、クローディアはその身をグレイに密着させ、押し付けてくる。  
見た目よりも豊かな乳房がグレイの胸を圧迫する。  
「っ…」  
さすがのグレイも身をよじらせるが、  
四肢をベッドに拘束されていては、なす術がない。  
ただ、ベッドがわずかにきしんだだけだ。  
 
やっと唇が離れ、その軌跡には糸が光って消えた。  
それと同時に柔らかな肉体も、グレイから離れる。  
「クローディア。これは一体…何の真似だ?」  
静かな声で問いかけるが、彼女はいつもの物憂げな瞳で見下ろすばかり。  
グレイの問いに答えないまま、クローディアは一つ、  
また一つと彼の寝間着のボタンを外していく。  
さすがに寝ている時にまでは武装していない。  
何かあった時のために、枕元には小型剣が、  
ベッドの近くには刀を置いてはある。  
ただ今の現状は襲われている…とも言えなくもなかったが、  
こんな襲われ方は初めてだ。  
ボタンをすべて外してしまい、左右に開くと普段はあまり見ない、  
彼の厚い胸板が現われる。  
筋肉で張られた胸をそっとなで、  
グレイの乳首をクローディアはその白い指でつまんだ。  
「! …っおい!」  
彼の声をまるっきり無視して、クローディアはそれをしばらくいじくっていたが、  
やがて顔を近づけて、柔らかい舌でゆっくりとなめはじめた。  
「っ…!」  
えも言えぬ感触に、グレイは身体を起こそうとするが、  
やはりベッドをきしませるだけ。  
そのまま、クローディアはグレイの身体を丁寧になめはじめる。  
「っく……っ……」  
ぎしっ、ぎっ…。  
グレイの身体の動きに合わせ、安普請のベッドが小さくきしむ。  
 
「…クローディアっ…」  
荒い息と一緒にグレイは彼女の名前を呼ぶが、やはり無反応だ。  
彼女と肌を重ね合わせた回数はそう多くはない。  
育ての親に先立たれた、彼女の寂しさをごまかすに過ぎない行為で、  
慣れるとまでには至らない回数なはずだ。  
それなはずなのに、今夜の彼女の様子はどうであろうか。  
クローディアの舌はどんどんグレイの身体を下っていき、  
とうとうズボンにまで近づく。  
躊躇なく、彼女はグレイのズボンを膝下までずり降ろした。  
「……おい……」  
いつもと雰囲気の違うグレイの声を流して、  
クローディアは両足の間にあるそれをつかむと、舌でねっとりとなめはじめた。  
「…っ……」  
背中にビリビリとした感触が走り、グレイは思わずベッドの上でのけ反った。  
じっくりなめた後は、口に含んでさらに責め立てる。  
「…っく……う……ハァ、ハァ……っ!」  
だんだんグレイの息遣いが荒くなっていき、身体も汗ばんでくる。  
もどかしげに身体をよじらせるが、拘束されていては大した動きにならない。  
クローディアの方も興奮してきたらしく、  
自分の胸をもみしだきながら、グレイのそれをしゃぶり続ける。  
「……っうぅっ…、……ぅあっ…!」  
存分になめられた後に吸われて、たまらなくなったグレイは息と声を吐き出す。  
「…んっ……」  
クローディアが口を離した時には、すっかり大きくなっていた。  
 
彼女は身を起こすと、その薄い肌着を脱ぎはじめた。はらりとそれを脱ぎ捨て、  
腰の下着を降ろすと一糸纏わぬ姿となる。  
それから、彼女が身体を回転させて、下半身をグレイの頭の方に持ってくる。  
「……キレイにして……」  
グレイの頭をまたぎ、クローディアから声がかかった。  
「おい、クローディア…」  
「あなたの口で、キレイにして」  
「………………」  
静かだが、反論を許さないような声。四肢を縛られているとはいえ、  
少し頭を上げるくらいはできる。  
「それなら、もう少し腰を降ろせ」  
そう言うと、ゆっくりと腰が降りてきて、グレイは頭を起こし、舌をのばした。  
「はぁっ…」  
甘くて切ない声がクローディアの口から漏れる。  
サイドボードの薄暗いランプの光と、  
記憶を頼りにグレイは彼女の感じる所を舌でなぶる。  
しばらく感じるままにあえいでいたクローディアだが、  
やがて自分も目の前のそれを再度口に含みはじめる。  
室内にはお互いになめあう音だけが響き、熱い息遣いが充満してくる。  
「っふ……う……はあっ…ぅあっ…!」  
経験の差か、クローディアの方が音をあげたように、腰をあげた。  
 
「はぁっ、はぁっ…、はぁっ…」  
四つん這いのまま、息を整えていたが、再度、身体をゆっくりと回転させた。  
そして、グレイのそそりたつそれを心なしかうっとりと眺めると、  
クローディアは位置を確かめ、静かにその身を沈めていく。  
「はああぁ…っ…」  
「…っう……!」  
十二分に濡れた穴は抵抗なく飲み込んでいき、すっかり包み込んでしまう。  
上ずった声をあげるほどにそれは気持ち良くて、  
グレイは縛られた荒縄を強く引っ張った。  
鍛え上げられたグレイの腹筋に手を添え、馬乗りになると腰を動かしはじめる。  
ギッシ、ギシッ、ギシッ  
安普請のベッドは先ほどよりもさらに音をたててきしみ、  
彼女の動きに合わせて揺れはじめる。  
「…ハッ…あっ……、あうっ…うっ…グレイっ…」  
柔らかな茶色の髪の毛を振り乱し、だんだんと彼女の動きも激しくなってくる。  
「……くっ……うっ……っ!」  
声を押し殺してはいるが、グレイの快感もなまなかな事でなく、  
手首に縛られた荒縄が食い込むほどに、引っ張っている。  
ギッギシッギシッギッギシッ!  
二人を乗せたベッドも、彼らの動きに合わせるかのように激しくきしみだす。  
ランプの炎が揺れ、つながる二人の影を壁に映し出す。  
久しぶりの女の身体は、吸い込まれそうなほどの気持ち良さで、  
グレイは歯を食いしばった。  
 
「クッ…、クローディアっ…!」  
「はあっ、ああっ、ああっ、はあぁっ!」  
「は、離れろ…俺からっ…」  
夢中でグレイの身体を貪るクローディアに声をかけるが、  
聞こえているのかいないのか、行為は激しさを増すばかり。  
「このまま……出るぞ……!」  
「ダメ…、ダメ…、出してはダメ…!」  
そんな無茶なと思いながら、グレイは再度声をかける。  
「クローディアッ!」  
こんなにも気持ち良くては我慢にも限界がある。  
だがしかし、クローディアはなおも行為をやめようとしないし、  
離れようともしない。  
今まで、彼女だからこそ、中に出した事はなかったのに。  
「ああっ…あああああぁぁ!」  
クローディアの方が先に限界が来たのか、喉の奥から声をあげ、  
弓なりに身体をのけ反らせる。  
その瞬間、すごい収縮感がグレイに襲いかかる。  
「くぅっ!」  
絞り取るように吸い付くこの感覚に、グレイも我慢の限界を超えた。  
「はああぁんっ!」  
艶やかに悲鳴をあげ、クローディアはびくんと身体を震わせる。  
どくどくと全身に鳴り響くかのような放出感を、  
グレイは半ば茫然としながら感じていた。  
 
「ハァ…、ハァ…、ハァ…、ハァ…」  
肩で大きく呼吸を繰り返し、クローディアはまだグレイから離れなかった。  
やがて息を整えて、ゆっくりと腰を上げる。  
「あ……」  
栓が抜かれ、とろりと流れ出したものに思わず手にやる。  
「……こんなに…いっぱい……」  
「離れろと……言ったはずだ…」  
「もし私があなたの子を身ごもったら、帝国は何て言うかしら…」  
「…………………」  
ほとんど脅迫に近いその言葉を、グレイはひたすらに困惑した頭で聞いていた。  
「……いけない人……」  
ため息のような声を出して、クローディアはグレイの厚い胸板に頬を寄せる。  
その声色には恍惚感が混じっているような気がしたのは、  
グレイの気のせいだったのだろうか。  
 
「ハァ…、ハァ…、ハァ…、ハァ…」  
肩で大きく呼吸を繰り返し、クローディアはまだグレイから離れなかった。  
やがて息を整えて、ゆっくりと腰を上げる。  
「……何故……こんな事をする……」  
相変わらず縛られたままで、毛布を上にかけて  
自分に寄り添うクローディアに静かに声をかける。  
「……あなたがいけないのよ……」  
「……俺の何がだ……」  
「……あなたは……私を迷いの森から連れ出して…  
…帰れなくしてしまった……」  
「それは、ジャンではなかったのか?」  
「あの人はそのきっかけに過ぎないわ。私の心を  
あの森から連れ出してしまったのは…グレイ、あなたよ……」  
甘く嘆息して、クローディアはグレイに擦り寄る。  
「サルーインを倒して、私たちの旅はもうすぐ終わる。  
私達は、きっとそこで別れるのでしょう。……でも、  
何かがもどかしくて、とても寂しくて。  
どうして良いかわからなくて……」  
「こんな事をしたのか…?」  
「バーバラに相談をしたの…」  
あの踊り子は、世間知らずのこの娘に一体何を吹き込んだのであろうか。  
先ほどのあれも、バーバラから手ほどきを受けたのだと思うと妙に納得がいく。  
苦々しい気持ちも、クローディアの安らかな寝息が聞こえてくると、  
どこかに霧散してしまう。  
ふーっとため息をついて、グレイは手首をひねらせて、  
枕元に置いてある小型剣をどうにか動かし、少しずつ荒縄を切っていく。  
少し時間がかかったが、やがてグレイの両手は自由になる。  
 
暗くてわからないが、手首には荒縄の跡がきっちりと残っている事だろう。  
隣で寝ているクローディアを起こさないようにして、足首の縄も断ち切る。  
そして、自分の胸元で眠る彼女を優しく抱き寄せて、しばらく見つめていた。  
彼女は現バファル帝国皇帝の一粒種であり、  
それを知った時も、グレイは別段驚かなかった。  
ジャンのいわくありげな依頼。襲いくる数々の暗殺者。なるほど、と思った。  
グレイはモンスターから、暗殺者から、そして寂しさからも彼女を護っていた。  
彼にしては珍しくぎりぎりの所にまで踏み込んで、  
でもそれ以上は己の身をわきまえて踏み込まずにいた。  
けれど、彼女の方からそれを踏み越えてくるとは思わなかった。  
参ったな……。  
心の中で独りごちながら、グレイは長い前髪をかきあげる。  
ランプの光は油が途絶え、だいぶ前に消えていて、  
腕の中で眠る彼女の表情はよく見えない。  
それでも、グレイは手をのばし、眠る彼女の頬をゆっくりとなでる。  
これからどうするか、どうなるのか。  
とりあえず、ぐっすり寝た後に考えようと思った。  
まずは、あの踊り子を問い詰めるのが一番だが、  
今はこの腕の中のぬくもりを感じていよう。  
グレイはゆっくりとまどろんでいった。  
 
 

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