昂ぶる。どうしようもない高揚に鼓動が早まった。
自分の身体が、自分のものでは無いような、ふわふわとした感覚。
柔らかな熱を、欲していた。
(……眠れないなぁ。)
大いなる神エロールよりサルーインの居場所を告げられた一行は、
サルーインの眠るイスマス城からさほど遠くないアルツールに宿をとっていた。
しかし、明日はいよいよ最終決戦かもしれない。
そう思うと、皆とてもゆっくりなど休んでいられなかった。
アイシャとてそれは同様で、一度はベッドに潜り込んだものの、夜も更けてから目が覚めてしまった。
散歩でもしてこようかと思い、窓の外をふと眺めたとき。
月光の下に人影を見つけた。―――否、正確には人ではなかったが。
「…ゲラ=ハ?」
街路から逸れるように歩いていくその影は、仲間の一人であるゲッコ族のゲラ=ハだった。
散歩、というには道が外れているように見え、アイシャは首を傾げる。
部屋へ戻り、寝巻きの上に一枚上着を羽織って、慌てて宿の外に出た。
「ゲラ=ハ!」
「……アイシャ。どうしたんですか?」
大木の幹に触れていたゲラ=ハは、駆け寄る足音と、自分の名を呼ぶ声に振り返る。
アイシャに返す声は、紳士的な彼らしく丁寧な口調ではあったけれども、少しだけ冷たく感じられた。
いつもと違う。困惑にアイシャは、一瞬返す言葉に詰まる。
「えっと……、えぇっと、わたし眠れなくて。
で、起きたらゲラ=ハが見えたから…。ゲラ=ハも眠れないの?」
ばつが悪そうに苦笑して、アイシャは頬を掻く。
その様子を静かに眺めたゲラ=ハは、先よりも冷ややかな声で返した。
「そうです。…少し散歩をして来ますので、アイシャはもう戻って下さい。
身体を冷やすと良くないでしょう」
ぴくり。アイシャの肩がわずかに震えた。
やはり、いつものゲラ=ハではない。
自分が知らぬ間に何かをしでかして、彼を怒らせてしまったのだろうか。
不安になったアイシャは、手を伸ばし一歩を踏み出した。
「嫌だよ。だってゲラ=ハ、怒ってるでしょ?
わたし、ゲラ=ハに何か酷い事とか、言っちゃった…?」
震えた声で言いながら、ゲラ=ハの背中に抱きついた。ひんやりとした肌の感覚が、衣服越しに伝わる。
自分の腰へと回された細い腕に、ゲラ=ハは手を重ねた。
(…え?)
アイシャは、暫く何が起きたのか把握できなかった。
手首を掴まれ、半回転するような形で、木の幹に突き飛ばされた。
その事を、手首と背中に走った痛みでようやく察する。
「ゲラ=ハ………?」
「……アイシャ。戻って下さい。今の私は、あなたに何をしてしまうか分からない」
懇願する、震えた声だった。常に柔らかい物腰であった彼の、こんな声は滅多に聞いた事が無い。
それに驚いたアイシャは、身動きも出来ず、ただ張り付けられたように木の幹に背中を凭れさせていた。
「サルーインの居場所を聞いた時から私はおかしいのです。
無性に何かを襲いたくなるような…そんな衝動が。このままでは、私は、あなたを」
ゲッコ族を立たせたのはサルーインだった。
エロールの子であるヒトよりも、サルーインに近いその身が、復活を遂げた破壊神の力の影響を受けたのかもしれない。
「―――嫌だよ。わたしも、おかしいの。怖いの。だから、今夜はゲラ=ハと一緒にいたいの」
帰りたくないと、アイシャは首を振る。
「ゲラ=ハが好き。…でも、帰ってこれるか分からないもん。
殺されるならゲラ=ハがいい。ゲラ=ハなら…いいよ」
自分の言葉が、残酷なものなのだろうと、彼女は気付いていた。
しかし、伝えずにはいられなかった。今夜を逃せば、もしかしたら一生言えないままかもしれない。
ゆっくりと声を絞り出しながら、アイシャはずっとゲラ=ハを見つめていた。
その両腕が、自分の顔の両脇に押し当てられても、動じもせずに、静かに。
じっと見つめてくるエメラルドに、ゲラ=ハは苦しげに口を開く。
奇異なる姿の自分に怯えもせず、一緒に行こうと手を差し伸べてくれた少女だった。
その明るさに幾度救われた事だろう。
彼にとって、初めてついていきたいと思った人間がホークなら、
初めて守りたい、愛しいと思った人間がアイシャだった。
「ありがとうございます、アイシャ。
…こんなときでなければ良かった。そうすれば、あなたにもっと優しく出来たのかもしれないのに」
そう言って、彼女の首へと顔を寄せた。
「ああ・・・。ゲラ=ハ」
少女の未知の部分に爬虫類のそれが突き進んでいく。
アイシャは痛みに顔をゆがめた。
「傷みますか?」
あたりまえの問いに弱弱しく微笑みながら痛くないと答える少女の健気さに
ゲラ=ハは思わず強く抱きしめた。
アイシャの暖かな唇が冷たく無機質なゲッコの口にそっと触れる。
やわらかな舌が堅く閉じたゲラ=ハの口をこじ開け、
爬虫類の虫を捕るために発達した細くて力強い舌と交じり合う。
「ね・・・。ゲラ=ハ。口の中きもちいいよ・・・。」
少女は熱いため息をつきながら快楽をねだる。
穏やかな揺らぎに身を任せてお互いをむさぼり、視線を絡ませながら愛を確かめ
どれくらいの時間がたっただろう。
「ゲラ=ハ。私のはじめて・・・。もう一つの初めてをゲラ=ハにあげる。」
おもむろにアイシャが切り出した。
暖かな手のひらがゲラ=ハの冷たい腕をつかみアイシャの一番暗く深い部分へ導く。
「ほら、こんなになっているの・・・。」
アイシャのそこは暖かくやわらかな液体が流れ込みゲラ=ハの指を容易に受け入れる。
が、ゲラ=ハはゆっくりと指を引き抜き顔を背けた。
「これ以上、あなたに負担をかけることは出来ません。」
ゲラ=ハの重々しいセリフも快楽の中を夢中で泳ぎ続けるアイシャには届かない。
アイシャはおもむろに体を離すと今度は手足を地面につけ顔を低くし白い尻を高く突き出した。
「ねぇ、これならゲラ=ハの両方とも入るよ。来て・・・。」
真っ白な双丘に赤く開いた大輪の花。
ゲラ=ハは今まで見てきたものの何よりも今目の前にいる少女が美しいと思った。
自ら信仰する神に背いてまでこの旅を続けてきたのも今この瞬間の為だったのではないかとすら錯覚した。
おおきく息を吸い込み試しにもう一度後ろの穴に指を入れてみる。
アイシャが熱いため息を漏らす。どうやら気持ちいいらしい。
そこはもともと生殖行為に使う為の場所ではない。充分にほぐさねばなるまいと
ゲラ=ハは長い舌を這わす。チロチロとその舌がうごめくたびにびくついていたアイシャだったが
ついに耐えられなくなり甘い声をあげた。
「はやくちょうだい!」
ゆっくりとゲ=ラハのそれが沈んでいく。後ろと前両方の穴に。
「愛しています。アイシャ」
アイシャは苦しげに真っ赤な顔をゆがめていたがゲラ=ハのその言葉を聞き幸せそうに笑った。
「ねぇ、ゲラ=ハ。ずっとこうしていたいね。」
乱れたシーツの上で、全てが終わった後にアイシャが言った。
「サルーインを倒したら私はどうなるのでしょう?
サルーインが封印されていたとき基本的に我々ゲッコ族は平和に暮らしていました。」
アイシャのやわらかな髪を撫でながらゲラ=ハは続けた。
「しかし万が一次のサルーイン戦で我々があの邪神を倒してしまったら?」
「なぁ〜んだ。おめぇ、神を倒すなんて大それた事考えてたんかぁ〜?」
突然聞こえて来た低くたくましい聞きなれた声にゲラ=ハは慌てて身を起こす。
「キャプテン!!!」
「ハッハッハ。お前たち随分面白いことやってんじゃないか〜。
俺が部屋に戻ってもぜんぜん気がつきやしねぇ。大丈夫。お前らなら勝てるよ。サルーインにでも何にでも。」
部屋中に響き渡るホークの声にゲラ=ハは自分の体が白く干からびていくのを感じていた。
完